平成23年7月15日

証券取引等監視委員会

新東京シティ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会が新東京シティ証券株式会社(東京都渋谷区、資本金4億3,000万円、役職員11名、第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反等の事実が認められたので、平成23年7月8日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

  • 業務の運営及び財産の状況に関し重大な問題が認められる状況

    • (1)支払未済の経費等を簿外とすることなどにより財産状況を仮装している状況

      新東京シティ証券株式会社(以下「当社」という。)は、検査基準日(平成23年6月2日)現在、一部の経費等について、当社が支払うべき費用等であることが確定しているにもかかわらず、支払未済であり、かつ、当社の帳簿に未払費用等の負債として計上していなかった。

      当社は、上記の支払未済の経費等を計上すれば、純財産額及び自己資本規制比率の法定の水準を維持できないことは明白であったことから、事実と異なることを知りながら、当該経費等を簿外にすることで、虚偽の純財産額及び自己資本規制比率を算出し、関東財務局長あてに届け出るとともに、平成23年3月末の財産の状況として虚偽の自己資本規制比率が記載された書面を公衆の縦覧に供していた。

    • (2)内部管理態勢の問題

      • 常勤役員が不在である状況

        当社においては、平成23年3月中旬以降、A代表取締役社長(以下「A社長」という。)をはじめ会社の運営を取り仕切る常勤役員が当社に不在の状況が続いており、金融商品取引業者として法令等を遵守し、的確な業務運営を行える態勢にはない状況が認められた。

      • 役員による業務管理が行われていない状況

        当社は、平成23年2月に合同会社2社との間で両合同会社の社員権に係る販売委託契約を締結したとしている。両合同会社の社員権の販売については、両合同会社の営業員により当社の社名入りの封筒を用いて営業が行われ、また、当社名義の口座を顧客からの入金先として使用されていたとして、当社は、同年3月28日付で関東財務局長あてに報告をしているところである。

        今回検査において、当時の事実関係及び業務管理の状況について、A社長等からヒアリングを行ったところ、当社名義の口座の管理状況、当社の名義を用いた合同会社における営業状況等の事実関係についての詳細な説明ができない状況であった。

        また、A社長は、当社の財産状況に照らして多額と認められる資金の動きについて全く把握しておらず、当社役員による業務管理が機能していない状況であった。

    上記(1)及び(2)に記載のとおり、当社の純財産額や自己資本規制比率が法定の基準を下回っている状況を隠すために純財産額等を仮装するといった極めて悪質な行為を行っている状況や、平成23年3月中旬以降、常勤役員が長期にわたり不在であるなど内部管理が実質的に機能していない状況は、業務運営上重大な問題があると認められる。

    また、上記(1)に記載のとおり、当社の純財産額は、金融商品取引法施行令第15条の9第1項に規定する金額(5,000万円)に満たない状況となっており、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者に対して、監督上の処分を命ずることができる場合の要件となる金融商品取引法第52条第1項第3号に該当するものと認められる。

    更に、当社の自己資本規制比率の状況は、金融商品取引法第53条第2項に定める「金融商品取引業者が第46条の6第2項の規定に違反している場合(自己資本規制比率が、100パーセントを下回るときに限る。)において、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。また、実際は自己資本規制比率が140%を下回っているにもかかわらず法定の届出を行わずに、虚偽の自己資本規制比率を関東財務局長あてに届け出ていた状況は、金融商品取引法第46条の6第1項に、平成23年3月末時点の虚偽の自己資本規制比率を公衆の縦覧に供していた状況は、金融商品取引法第46条の6第3項にそれぞれ違反するものと認められる。


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(登録の拒否)

第二十九条の四 (略)

一~四 (略)

五 第一種金融商品取引業又は投資運用業を行おうとする場合にあつては、次のいずれかに該当する者

イ (略)

純財産額(内閣府令で定めるところにより、資産の合計金額から負債の合計金額を控除して算出した額をいう。)が、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める金額に満たない者

ハ~ヘ (略)

六 (略)

2~5 (略)

(自己資本規制比率)

第四十六条の六 金融商品取引業者は、資本金、準備金その他の内閣府令で定めるものの額の合計額から固定資産その他の内閣府令で定めるものの額の合計額を控除した額の、保有する有価証券の価格の変動その他の理由により発生し得る危険に対応する額として内閣府令で定めるものの合計額に対する比率(以下「自己資本規制比率」という。)を算出し、毎月末及び内閣府令で定める場合に、内閣総理大臣に届け出なければならない。

金融商品取引業者は、自己資本規制比率が百二十パーセントを下回ることのないようにしなければならない。

金融商品取引業者は、毎年三月、六月、九月及び十二月の末日における自己資本規制比率を記載した書面を作成し、当該末日から一月を経過した日から三月間、すべての営業所又は事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない。

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)

第五十二条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

一・二 (略)

第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う金融商品取引業者が、第二十九条の四第一項第五号イ又はロに該当することとなつたとき。

四~十一 (略)

2~5 (略)

(自己資本規制比率についての命令)

第五十三条 (略)

内閣総理大臣は、金融商品取引業者が第四十六条の六第二項の規定に違反している場合(自己資本規制比率が、百パーセントを下回るときに限る。)において、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、三月以内の期間を定めて業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。

3 (略)

○ 金融商品取引法施行令(昭和40年第321号)(抄)

(金融商品取引業者の最低資本金の額等)

第十五条の七 (略)

一・二 (略)

三 第一種金融商品取引業又は投資運用業を行おうとする場合(前二号に掲げる場合を除く。) 五千万円

四 (略)

2 (略)

(金融商品取引業者の最低純財産額)

第十五条の九 法第二十九条の四第一項第五号ロ(法第三十一条第五項において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める金額は、第十五条の七第一項各号(第四号を除く。)に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。

2 (略)

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