平成23年9月15日
証券取引等監視委員会
我が国証券市場における株式会社日本航空株式に係る不適切な取引について、香港の証券先物委員会が在香港投資運用会社及びその最高運用責任者に対して行った処分について
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1.本日、香港の証券先物委員会(The Securities and Futures Commission、以下「香港SFC」という。)は、いずれも香港SFCより許認可を受けているOasis Management(Hong Kong)LLC(以下「オアシス」という。)及び同法人の最高運用責任者であるA氏個人に対してそれぞれ香港法令上の戒告処分(Reprimand)及び750万香港ドルの制裁金を課した旨、発表した。かかる香港SFCによる処分は、オアシス及びA氏が2006年に日本の株式市場で2つのファンドの計算において行った一連の取引につき、適格性(the fitness and properness)を欠くおそれがあると香港SFCが判断したこと等を根拠としてなされたものである。
本件については、証券取引等監視委員会(以下「当委員会」という。)の取引審査を端緒として、当委員会が香港SFCに取引に関する情報とともに、日本における規制や取引慣行についての資料等を継続して提供するなど、当委員会と香港SFCとが緊密な連携を行って来た。その結果、今般の香港SFCによる処分に至ったものである。
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2.香港SFCによる処分事案の概要は、以下のとおりである。
オアシスは、その運用するファンドの取引として、平成18年に株式会社日本航空の公募増資が公表された後に、新株の募集に申し込んだ上、発行価格決定日となった同年7月19日に、以下の行為を行った。
(1)大引け直前の15分間に大量の引け成りの買い注文を発注し、その後それらを取り消した。
(2)大引け前5分間に、日本航空株式の大量の空売りを行った。これらの空売りには直近公表価格以下での空売りを禁じる日本の証券取引法(当時)に違反するものも含まれていた。
オアシスの運用するファンドは、一連の空売りの決済日において、その約定分の約7割という大規模なフェイルを発生させた。その後公募株券等で当該フェイルの約5割を解消させた。
香港SFCは、A氏により執行された上記のオアシスの一連の行為は、日本航空株式の同日の終値を引き下げることを意図する外観を有するものであること、及び、オアシスの運用するファンドが自ら引き下げた終値に基づいて算出される発行価格で日本航空株式の公募株券を取得することで利益を上げることができる状況であったことを認定し、これらの点から、香港法令上、オアシス及びA氏が適格性を欠くおそれがあると判断したものである。
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3.本件については、クロスボーダー取引における不公正行為に対する香港SFCと当委員会との間の緊密な協力の結果処分に至ったものである。当委員会としては、今回の香港SFCの処分について高く評価するとともに、今後とも行為者の居住地にかかわらず、我が国証券市場を舞台とする不公正取引に対して厳正に対応し、市場の信頼を高めていくため、海外当局との緊密な連携強化に取り組んでまいりたい。