平成23年10月21日
証券取引等監視委員会
株式会社ビルウェル証券に対する検査結果に基づく勧告について
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1.勧告の内容
関東財務局長が株式会社ビルウェル証券(東京都港区、資本金3億1,700万円、役職員5名、第一種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、平成23年10月18日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
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2.事実関係
○純財産額及び自己資本規制比率が法定の基準を下回っている状況等
株式会社ビルウェル証券(以下「当社」という。)は、純財産額の大半を占める4,000万円を、平成23年4月12日(以下「計上日」という。)以降、現金勘定に計上しており、計上日から代表取締役が交代した同年7月15日までは前代表取締役(以下「前社長」という。)が、同日以降は現代表取締役(以下「現社長」という。)が現金で保管しているとしていた。
しかしながら、(1)計上日以降、当社は当該4,000万円について社内規程に基づく実査を行っていない。(2)現社長は、社長就任時に前社長から現金4,000万円を引き継いでいないとしている。また、(3)検査においても、現金4,000万円は確認されていない。
このようなことから、当社においては、遅くとも現社長の就任時以降、当社の現金勘定に計上されている4,000万円は存在しなかったものと認められる。
したがって、遅くとも平成23年7月15日から検査基準日(平成23年9月16日)現在まで、当社の純財産額は、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして金融商品取引法(以下「金商法」という。)第29条の4第1項第5号ロに基づく金融商品取引法施行令第15条の9第1項に定める額(5,000万円。以下「法定の純財産額」という。)に満たない額となっており、自己資本規制比率についても100%を著しく下回る状況となっている。
しかしながら、当社は、4,000万円が現金で当社の資産として存在するとして算出した虚偽の自己資本規制比率又は純財産額を金商法第46条の6第1項に定める月末の届出及び第56条の2第1項に基づくモニタリング調査において報告している。このため、当社は、同法第46条の6第1項に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第179条第1項第1号(自己資本規制比率が140%を下回った場合)及び同法第50条第1項第8号に基づく同府令第199条第11号イ(純財産額が5,000万円に満たなくなった場合)に定める届出を行っていなかった。
以上のとおり、当社の純財産額が法定の純財産額に満たない状況は、第一種金融商品取引業者に対して、監督上の処分を命ずることができる場合の要件となる金商法第52条第1項第3号(同法第29条の4第1項第5号ロ(純財産額が5,000万円に満たない者)に該当することとなったとき)に該当するものと認められる。
また、当社の自己資本規制比率が100%を著しく下回っている状況は、第一種金融商品取引業者に対して、監督上の処分を命ずることができる場合の要件となる金商法第53条第2項に定める「金融商品取引業者が第46条の6第2項の規定に違反している場合(自己資本規制比率が100%を下回るときに限る。)において、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
更に、当社が虚偽の自己資本規制比率を関東財務局長に届け出たことは、金商法第46条の6第1項に違反するものと認められる。また、同法第56条の2第1項に基づくモニタリング調査に対し虚偽の報告を行ったことは、同法第52条第1項第6号(金融商品取引業に関し法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき)に該当するものと認められる。
(参考条文)
○金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)
(登録の拒否)
第二十九条の四 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはこれに添付すべき書類若しくは電磁的記録のうちに虚偽の記載若しくは記録があり、若しくは重要な事実の記載若しくは記録が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一~四 (略)
五 第一種金融商品取引業又は投資運用業を行おうとする場合にあつては、次のいずれかに該当する者
イ (略)
ロ 純財産額(内閣府令で定めるところにより、資産の合計金額から負債の合計金額を控除して算出した額をいう。)が、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める金額に満たない者
ハ~ヘ (略)
六 (略)
2~5 (略)
(自己資本規制比率)
第四十六条の六 金融商品取引業者は、資本金、準備金その他の内閣府令で定めるものの額の合計額から固定資産その他の内閣府令で定めるものの額の合計額を控除した額の、保有する有価証券の価格の変動その他の理由により発生し得る危険に対応する額として内閣府令で定めるものの合計額に対する比率(以下「自己資本規制比率」という。)を算出し、毎月末及び内閣府令で定める場合に、内閣総理大臣に届け出なければならない。
2 金融商品取引業者は、自己資本規制比率が百二十パーセントを下回ることのないようにしなければならない。
3 (略)
(休止等の届出)
第五十条 金融商品取引業者等は、次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
一~七 (略)
八 その他内閣府令で定める場合に該当するとき。
2 (略)
(金融商品取引業者に対する監督上の処分)
第五十二条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一・二 (略)
三 第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う金融商品取引業者が、第二十九条の四第一項第五号イ又はロに該当することとなつたとき。
四・五 (略)
六 金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令(第四十六条の六第二項を除く。)又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき。
七~十一 (略)
2~5 (略)
(自己資本規制比率についての命令)
第五十三条 (略)
2 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が第四十六条の六第二項の規定に違反している場合(自己資本規制比率が、百パーセントを下回るときに限る。)において、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、三月以内の期間を定めて業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
3 (略)
(報告の徴取及び検査)
第五十六条の二 内閣総理大臣は、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、金融商品取引業者等、これと取引をする者、当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)がその総株主等の議決権の過半数を保有する銀行等(以下この項において「子特定法人」という。)、当該金融商品取引業者等を子会社(第二十九条の四第三項に規定する子会社をいう。以下この条において同じ。)とする持株会社(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第九条第四項第一号に規定する持株会社をいう。以下この条において同じ。)若しくは当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者に対し当該金融商品取引業者等の業務若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料(当該子特定法人にあつては、当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)の財産に関し参考となるべき報告又は資料に限る。)の提出を命じ、又は当該職員に当該金融商品取引業者等、当該子特定法人、当該金融商品取引業者等を子会社とする持株会社若しくは当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者の業務若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件の検査(当該子特定法人にあつては当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)の財産に関し必要な検査に、当該金融商品取引業者等を子会社とする持株会社又は当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者にあつては当該金融商品取引業者等の業務又は財産に関し必要な検査に限る。)をさせることができる。
2~4 (略)
○ 金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号)(抄)
(金融商品取引業者の最低資本金の額等)
第十五条の七 法第二十九条の四第一項第四号(法第三十一条第五項 において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
一・二 (略)
三 第一種金融商品取引業又は投資運用業を行おうとする場合(前二号に掲げる場合を除く。) 五千万円
四 (略)
2 (略)
(金融商品取引業者の最低純財産額)
第十五条の九 法第二十九条の四第一項第五号ロ(法第三十一条第五項において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める金額は、第十五条の七第一項各号(第四号を除く。)に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
2 (略)
○ 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)
(自己資本規制比率の届出)
第百七十九条 法第四十六条の六第一項に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 自己資本規制比率が百四十パーセントを下回った場合
二 (略)
2~6 (略)
(金融商品取引業者が休止等の届出を行う場合)
第百九十九条 金融商品取引業者にあっては、法第五十条第一項第八号に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一~十 (略)
十一 第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う者にあっては、次に掲げる場合
イ 法第二十九条の四第一項第五号イ又はロに該当することとなった場合
ロ~チ (略)
十二・十三 (略)