平成23年12月9日

証券取引等監視委員会

シティグループ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会がシティグループ証券株式会社(東京都千代田区、資本金963億円、常勤役職員729名、第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • (1)報告徴取命令に対する対応の不備

      当社は、当社役職員のユーロ円TIBOR(以下「TIBOR」という。)及び円LIBORへの関与等に関し、金融庁から、金融商品取引法第56条の2第1項の規定に基づく報告徴取命令を受けて同庁に報告書を提出している。

      今回検査において、報告書の内容について、その正確性及び十分性を検証したところ、呈示レートに関する不適切な働きかけに係る重要な事項について、記載に漏れがあり、かつ、事実と異なる記載及びこれに基づく結論付けが行われており、不適切な内容となっていた。

      当社の報告徴取命令に基づく報告書への重要な事項についての記載漏れ及び事実と異なる記載は、金融商品取引法第56条の2に基づく金融庁長官の報告徴取命令に違反しており、かかる当社の行為は、同法第52条第1項第6号に規定する「金融商品取引業に関し法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき」に該当するものと認められる。

    • (2)ユーロ円TIBOR等に係る不適切な行為

      当社常務執行役員金利商品本部長(当時。以下「A本部長」という。)は、遅くとも平成22年4月頃から、TIBORのレートを呈示するシティバンク銀行株式会社の職員(以下「呈示担当者」という。)に対し、また、金利商品本部円金利トレーダー(当時。以下「Bトレーダー」という。)は、当社に入社した平成21年12月から、TIBORのレートを呈示する他の銀行の職員(又は、そのグループ証券会社の職員。以下、呈示担当者と合わせて「呈示担当者等」という。)に対し、A本部長及びBトレーダー(以下「A本部長等」という。)が行っていた円金利に係るデリバティブ取引に有利になるようTIBORを変動させることを目的として、呈示レートの変更を要請するなどの働きかけを継続的に行っていた。

      A本部長等が行った当該行為は、TIBOR(3ヵ月)が株式会社東京金融取引所において上場されているユーロ円3ヵ月金利先物の取引対象であり、A本部長等が当該取引所において当該先物の取引を行っていたこと及びTIBORは金融機関が資金を調達・運用するときの基準金利となるなど極めて重要な金融指標であることに鑑みれば、著しく不当かつ悪質であり、市場の公正性を損なうおそれがあるなど、公益及び投資者保護上、重大な問題があると認められる。

      更に、Bトレーダーは、平成21年12月から、シティバンクグループが呈示する円LIBORの呈示レートについても、変更を要請するなどの不適切な働きかけを継続的に行っていた。

      金利商品本部の営業責任者でもある当社代表取締役社長は、上記行為を認識していながら、これを看過し、また、当社としても適切な対応を行っていないなど、当社の内部管理態勢には重大な問題が認められた。

      このように、(1)A本部長等は、TIBORについて、当社の自己取引として行っていた市場デリバティブ取引のために呈示担当者等に対し働きかけを行ったものであり、当該行為は当社における金融商品取引業に関し行ったものと認められること、(2)当該行為は、市場の公正性を損なうおそれがあるなど、公益及び投資者保護上、著しく不当かつ悪質であると認められること、(3)Bトレーダーは、TIBORだけでなく円LIBORについても働きかけを行っていたこと、(4)当社の内部管理態勢に重大な問題が認められること、から、当社の行為は、金融商品取引法第52条第1項第9号(金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき)に該当するものと認められる。

    • (3)上級管理職による外務員登録外の外務行為

      A本部長は、平成21年11月12日から市場デリバティブ取引を行っていた。

      しかしながら、当社は、A本部長について、平成22年6月16日に至るまで、市場デリバティブ取引を行うために必要な一種外務員登録を日本証券業協会に対し行っていなかった。

      また、当社代表取締役社長は、A本部長が登録外の外務行為を行ってることを認識した後も、コンプライアンス本部等の関係部署に対応を指示するなどの適切な措置を講じていないなど、当社の内部管理態勢には重大な不備が認められた。

      当社は、登録を受けた者以外の者に外務員の職務を行わせており、かかる当社の行為は、金融商品取引法第64条第2項に違反するものと認められる。


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)

第五十二条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる

一~五 (略)

六 金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令(第四十六条の六第二項を除く。)又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき

七・八 (略)

九 金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき

十・十一 (略)

2~5 (略)

(報告の徴取及び検査)

第五十六条の二 内閣総理大臣は、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、金融商品取引業者等、これと取引をする者、当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)がその総株主等の議決権の過半数を保有する銀行等(以下この項において「子特定法人」という。)、当該金融商品取引業者等を子会社(第二十九条の四第三項に規定する子会社をいう。以下この条において同じ。)とする持株会社(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第九条第四項第一号に規定する持株会社をいう。以下この条において同じ。)若しくは当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者に対し当該金融商品取引業者等の業務若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料(当該子特定法人にあつては、当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)の財産に関し参考となるべき報告又は資料に限る。)の提出を命じ、又は当該職員に当該金融商品取引業者等、当該子特定法人、当該金融商品取引業者等を子会社とする持株会社若しくは当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者の業務若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件の検査(当該子特定法人にあつては当該金融商品取引業者等(登録金融機関を除く。)の財産に関し必要な検査に、当該金融商品取引業者等を子会社とする持株会社又は当該金融商品取引業者等から業務の委託を受けた者にあつては当該金融商品取引業者等の業務又は財産に関し必要な検査に限る。)をさせることができる

2~4 (略)

(外務員の登録)

第六十四条 金融商品取引業者等は、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、その役員又は使用人のうち、その金融商品取引業者等のために次に掲げる行為を行う者(以下「外務員」という。)の氏名、生年月日その他内閣府令で定める事項につき、内閣府令で定める場所に備える外務員登録原簿(以下「登録原簿」という。)に登録を受けなければならない。

一~三 (略)

2 金融商品取引業者等は、前項の規定により当該金融商品取引業者等が登録を受けた者以外の者に外務員の職務(同項各号に掲げる行為をいう。以下同じ。)を行わせてはならない

3~6 (略)

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