平成24年6月29日

証券取引等監視委員会

ジャパン・アドバイザリー合同会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会は、ジャパン・アドバイザリー合同会社(以下「当社」という。)による内部者取引について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を行うことの勧告及び行政処分を行うことの勧告を行った。

  • 2.法令違反の事実関係

    • (1)内部者取引規制に違反した行為

      当社は,投資助言・代理業を行うことにつき,内閣総理大臣の登録を受けている会社であるが,当社は投資運用業を行うことにつき登録を受けることなく実質的にその顧客の資産に関する投資運用業をしており、当社の代表社員の主導により、国内の多数の証券会社に対して積極的な情報提供を求め、当社に対する情報提供の頻度・貢献度に応じて各証券会社を評価し、その評価を各証券会社に実際に提示した上で、評価に応じて取引発注分量・手数料率を決定するなどし、各証券会社を競わせることにより、各証券会社に対する影響力を強め、法人関係情報を含めた様々な情報の提供を慫慂してきたと認められる。当社は、外国籍の2つのヘッジファンドの財産を実質的に運用していたところ、当該運用を行っていた当社社員が、平成22年8月20日に、日本板硝子株式会社と株式引受契約の締結に向けた交渉を行っていた証券会社の社員甲から、同証券会社の他の社員乙らが交渉に関して知り、甲がその職務に関し知った、日本板硝子の業務執行を決定する機関が株式の募集を行うことについての決定をした旨の事実の伝達を受けながら,この事実が公表された平成22年8月24日より前の平成22年8月20日に、上記外国籍ヘッジファンドの計算において、日本板硝子の株式合計265万3000株を売付価額5億4178万6532円で売り付けたものである。

      当社の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第1項又は第3項の規定に違反して、同条第1項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。

      • 課徴金の額の計算

      上記の違法行為に対し金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は、37万円である。

      計算方法の詳細については、別紙のとおり。

    • (2)無登録で投資運用業を営んだ行為

      当社は、投資助言・代理業を行うことにつき内閣総理大臣の登録を受けていた会社であり、当社は、海外所在の運用会社との間で、投資助言契約を締結し、当該運用会社が投資判断を一任されるとともに必要な権限を委任されていた外国籍の2つのヘッジファンドその他の顧客の財産に関し、当該運用会社に対して投資助言を行っているとしているが、実際には投資運用業を行うことにつき内閣総理大臣の登録を受けることなく、当該運用会社から当社にその投資判断を再委任されるとともに、当該投資判断に基づき上記外国籍ヘッジファンドその他の顧客のため投資を行うのに必要な権限を再委任されることを内容とする契約を締結し、当該契約に基づき、当社の代表者を含む複数の運用担当者が、遅くとも平成22年6月以降、上記外国籍ヘッジファンドその他の顧客の財産の運用として、反復継続して上場株式の売買を行っていた状況が認められた。

      当社の行為は、金融商品取引法第28条第4項に規定する「投資運用業」に該当するものであり、当社は、その代表社員の関与の下、組織的に、同法第31条第4項に基づく変更登録を受けることなく、投資助言という名目で、潜脱的に無登録で「投資運用業」を反復継続的に行っていたものであり、同法第29条に違反するものと認められる。

    • (3)法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況

      当社は、関東財務局長から、平成20年12月12日付で法人関係情報の管理に係る内部管理態勢が機能していない状況及び法人関係情報を利用した助言を行ったものとして、法人関係情報の管理に関する内部管理態勢の整備を図ること等及びこれらについて改善策を提出することを内容とする業務改善命令を受け、平成21年1月16日付で改善報告書を提出し、当該報告書において「助言記録を毎日検証し、法人関係情報のある銘柄の取引がないことを確認する」旨を報告している。

      しかしながら、当社においては、上記報告書提出以降も、当社の社内システムを用いた助言以外の電話等を用いた助言について、法令に反して助言記録を作成・保存していないところ、助言記録が適切に作成されない状況においては法人関係情報のある銘柄の取引の有無を確認することは事実上不可能である。このとおり、当社は、自身が提出した改善報告書に記載した改善策を何ら履行しておらず、金融商品取引法令及び当局の業務改善命令を軽視する姿勢において甚だしく、法人関係情報の管理に係る内部管理態勢につき、改善が著しく不十分で、法人関係情報を利用した銘柄の取引がなされるおそれが全く排除されていない状況で取引が継続されている状況が認められた。

      当社における上記の業務の運営の状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に規定する「法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況」に該当するものと認められる。

      上記のとおり、(I)当社が、投資助言という名目で潜脱的に投資運用業を行っていること、(II)(I)の結果形式的に内部者取引規制に抵触しない外観になっている状況において、当社が、各証券会社に対する影響力を強めて法人関係情報を含めた様々な情報を提供するよう慫慂しつつ内部者取引を行った点につき重大な悪質性が認められること、ならびに、(III)当社の金融商品取引法令及び当局の業務改善命令を軽視する姿勢において甚だしく、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じていないと認められる状況が継続していること、を併せ考えると、このような状況は、我が国の市場の公正性・信頼性を著しく損ねており、公益及び投資者保護の観点から緊急に是正を要するものと認められる。


別紙

  • (1)金融商品取引法第175条第1項第3号・金融商品取引法第六章の二の規定による課徴金に関する内閣府令第1条の21第1項第1号の規定により、金融商品取引法第175条第1項第3号に規定する売買をした者(以下「違反者」という。)が運用財産の運用として当該売買を行った場合、(ア)当該売買が行われた月について違反者に当該運用財産の運用の対価として支払われ、又は支払われるべき金銭その他の財産の価額の総額に、(イ)当該売買が行われた日からその月の末日までの間の当該運用財産である当該売買の銘柄の総額のうち最も高い額を乗じ、(ウ)当該取引が行われた月の末日における当該運用財産の総額で除した額。

    本件では、対象となる取引は、2つの運用財産の運用として行われているため、各運用財産について課徴金額を計算し、それらを合計する金額になる。

    運用財産(I)について
    (ア)37,083,375円×(イ)397,488,000円
    ÷(ウ)55,354,310,770円
    = 266,288円

    運用財産(II)について
    (ア)16,033,222円×(イ)154,336,000円
    ÷(ウ)22,723,585,720円
    = 108,895円

    合計 266,288円+108,895円=375,183円

  • (2)金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て。

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