平成25年4月16日

証券取引等監視委員会

ライツマネジメント株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    関東財務局長がライツマネジメント株式会社(東京都中央区、資本金10百万円、役職員4名、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • ○業務運営の状況に関し、公益又は投資者保護上重大な問題が認められる状況等

      ライツマネジメント株式会社(以下「当社」という。)は、平成22年7月から同24年1月までの間、A株式会社、B株式会社及びC株式会社(以下、各社を「A社」、「B社」及び「C社」という。)他3社(以下「本件発行者」という。)が発行した合計7本の信託受益権の私募の取扱いを行った。これにより、当社において、営業員16名が、少なくとも約1,900名の顧客に対し、総額約40億円の信託受益権を取得させている。当該取得に係る勧誘等の状況について検証したところ、以下のとおり、不適切な状況が認められた。

    • (1)信託受益権の取得勧誘において顧客に対し虚偽のことを告げる行為

      当社営業員16名のうち、少なくとも6営業員は、少なくとも16顧客に対し、実在しない証券会社の営業員を名乗る第三者をして、顧客に連絡させ、「ライツマネジメント株式会社が販売している信託受益権は限定商品であり、購入できない方が欲しいと言っている。同社に連絡して、当該受益権を購入できれば、転売することで、短期間で儲かる」などと述べさせた上で、この連絡を受けた顧客が当社に連絡してきた場合、顧客に対し、当社営業員が「当社が販売する信託受益権を購入すれば、転売により短期間で利益が得られる」などの虚偽の事実を告げることにより、信託受益権の取得勧誘(以下「本件劇場型勧誘」という。)を行った。

      当社は、平成22年10月頃、関東財務局から本件劇場型勧誘の疑いについて指摘を受けて勧誘の実態報告を求められたにもかかわらず、不十分な内容の報告を繰り返し、本件劇場型勧誘を停止することなく継続しており、上記16顧客のうち7名は、同年10月以降に当社営業員から本件劇場型勧誘を受けて信託受益権を取得している。

    • (2)本件劇場型勧誘に関する報告徴取命令に対する虚偽の報告等

      当社は、平成23年5月13日付で関東財務局長から本件劇場型勧誘に係る事実関係の調査及び報告を命じる旨の報告徴取命令を受けているが、同月25日付で「信託受益権のすべての取得者に対し、当社の勧誘行為の状況についてヒアリング調査を行った」、(一部の顧客に返金を行ったことについて)「返金は、不適切な勧誘がなされた顧客のうち継続保有の意思がない顧客に対し当社が自発的に行ったものである」などと虚偽の報告をした。

      さらに、当社は、こうした虚偽の報告を行う一方で、信託受益権の販売を継続していた。

    • (3)無登録の信託受益権を販売している状況

      当社が販売した信託受益権は、いずれも信託法第3条第3号に掲げる方法により設定された自己信託の受益権として発行されたものである。こうした信託受益権を50名以上の者に取得させる場合には、発行者は信託業法第50条の2第1項の規定に基づき内閣総理大臣の登録を受けなければならないところ、本件の7本の信託受益権のうち6本は、いずれも受益者が50名を大幅に超えているにもかかわらず、本件発行者のうち5社は、いずれも内閣総理大臣の登録を受けていない。

      それにもかかわらず、当社は、本件発行者が発行した信託受益権の販売を行っていた。

    • (4)信託受益権が適切に管理・運用されていないことを認識しながら、新たな信託受益権の取得勧誘を継続している状況等

      当社は、平成23年2月頃から、信託受益権の発行者から委託を受けて、信託受益権に係る配当金の必要額の計算及び顧客への支払業務を行い、信託財産に係る事業収益である利用権収入や配当収入を記載した信託財産状況報告書を、顧客に送付している。

      顧客に支払う配当金額は信託財産に係る事業収益に基づき算出されるものであるところ、当社は、平成23年6月8日に、同日まで信託受益権の発行を行っていたC社から1,600万円の入金を受け、同月10日に、この中から、A社の発行する信託受益権を取得した少なくとも延べ約260顧客に対し、合計約70万円を支払うとともに、B社の発行する信託受益権を取得した少なくとも延べ約300顧客に対し、合計約280万円の配当金を支払った。

      このように、当社は信託財産が本来の運用目的とは異なり適切に管理・運用されていないことを認識していたにもかかわらず、信託受益権の販売を継続し、さらには事業収益等について裏付けとなる資料を一切確認しないまま、発行者から口頭で伝えられた、信憑性に疑義のある事業収益等を記載した信託財産状況報告書を顧客に送付している。

    • (5)契約締結前交付書面等の記載の不備

      当社が信託受益権を販売した際に顧客に交付した契約締結前交付書面及び契約締結時交付書面には法定の事項が記載されていないなどの不備があることから、当社の顧客に対する情報提供は不十分であると認められる。

    当社が行った上記(1)の行為は、金融商品取引法第38条第1号に規定する「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」に、上記(2)の行為は、同法第56条の2第1項の規定に基づく報告徴取命令に対し虚偽の事実を記載した報告書を関東財務局長に提出したものであり、同法第52条第1項第6号に規定する「金融商品取引業に関し法令又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき」に、それぞれ該当するものと認められる。

    上記(3)及び(4)の状況は、金融商品取引業者として極めて不適切な業務運営の状況であり、公益又は投資者保護上重大な問題があると認められることから、同法第52条第1項第9号に規定する「金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき」に該当するものと認められる。

    上記(5)のうち、顧客に交付した契約締結前交付書面の記載の不備は同法第37条の3第1項の規定に、契約締結時交付書面の記載の不備は同法第37条の4第1項の規定に、それぞれ違反するものと認められる。


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(禁止行為)

第三十八条  金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。

一  金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為

(以下、略)

(契約締結前の書面の交付)

第三十七条の三  金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、顧客に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。ただし、投資者の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定める場合は、この限りでない。

(以下、略)

(契約締結時等の書面の交付)

第三十七条の四  金融商品取引業者等は、金融商品取引契約が成立したときその他内閣府令で定めるときは、遅滞なく、内閣府令で定めるところにより、書面を作成し、これを顧客に交付しなければならない。ただし、その金融商品取引契約の内容その他の事情を勘案し、当該書面を顧客に交付しなくても公益又は投資者保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。

(以下、略)

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)

第五十二条  内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

一から五 (略)

六  金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令(第四十六条の六第二項を除く。)又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき。

七及び八 (略)

九  金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき。

(以下、略)

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