平成25年4月26日

証券取引等監視委員会

MRI INTERNATIONAL,INC.に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会がMRI INTERNATIONAL,INC.(本店 アメリカ合衆国ネヴァダ州ラスベガス市、日本支店 東京都千代田区、資本金181億円、常勤役職員347名、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    MRI INTERNATIONAL,INC.(以下「当社」という。)は、アメリカ合衆国において行う診療報酬請求債権(Medical Account Receivables。以下「MARS」という。)の購入及び回収事業(以下「本事業」という。)から生じる利益の一部を配当することを内容とする権利(以下「本件ファンド持分」という。)の販売勧誘を行っている。本件ファンド持分は、配当金等に関する条件の異なるファンドAとファンドBの2種類が存在する。

    当社は、多数の個人顧客に対し、出資金は、第三者機関の名義で開設された信託口座等で分別して管理していると説明している。しかしながら、顧客から本件ファンド持分の取得のための出資金としてファンドA用の信託口座に入金された資金は、そのおおむね全額が、ファンドB用の信託口座に送金されている事実が認められた。また、ファンドB用の信託口座からは、当社名義の銀行口座への送金並びにファンドA及びファンドBの顧客への送金がなされており、少なくとも平成23年以降において、当社の固有財産並びにファンドAに係る財産及びファンドBに係る財産の分別管理が行われていない状況が認められた。

    そのような中、当社の業務の運営状況等を検証したところ、以下の問題点が認められた。

    • (1)顧客からの出資金を他の顧客に対する配当金及び償還金の支払いに流用する行為等

      上記の信託口座の入出金記録によれば、当社においては、上記のとおり、少なくとも平成23年以降、財産の分別管理が行われていない状況において、本件ファンド持分を取得するために出資した顧客の資金は、本事業に用いられることなく、他の顧客に対する配当金及び償還金の支払いに充てられていた。

      このような取扱いを継続する中、当社においては、顧客への配当金及び償還金の支払遅延が発生している。当社は、顧客による出資金の入出金を管理する信託口座に係るこのような状況にもかかわらず、本件ファンド持分の取得勧誘を継続していた。

      上記の行為等は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第52条第1項第9号に掲げる「金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき」に該当するものと認められる。

    • (2)金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為

      当社は、多数の個人投資家に対し、本件ファンド持分の取得を勧誘しているが、今回検査において、当社の平成24年における勧誘に関し、当社ウェブサイト、顧客向けパンフレット、契約締結前交付書面及び契約書の内容を検証したところ、以下の問題点等が認められた。

      • ア出資金の使途

        当社は、当社ウェブサイト、顧客向けパンフレット、契約締結前交付書面及び契約書の記載において、顧客に対して「出資金はMARS購入及び回収事業にのみ充てられる」旨を告知していたところ、上記(1)のとおり、少なくとも平成23年以降、当社は顧客からの出資金を他の顧客への配当金及び償還金の支払いに充てる取扱いをしていた。

      • イ配当金の支払い

        当社は、契約締結前交付書面及び契約書の記載において、顧客に対して「配当金は出資対象事業によって得られた利益から支払う」旨を告知していたところ、上記(1)のとおり、少なくとも平成23年以降、当社は顧客からの出資金を他の顧客への配当金の支払いに充てる取扱いをしていた。

      出資金の配当金及び償還金の支払いに係る上記ア及びイの状況を踏まえれば、当社ウェブサイト、顧客向けパンフレット、契約締結前交付書面及び契約書の記載による告知は、虚偽のことを告げる行為であり、金商法第38条第1号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」に該当するものと認められる。

    • (3)虚偽の内容の事業報告書を作成し、関東財務局長に提出する行為

      当社は、第12期事業報告書(事業年度:平成22年1月1日から同年12月31日まで)及び第13期事業報告書(事業年度:平成23年1月1日から同年12月31日まで)において、各期末における資産合計及び負債・純資産合計について、実態とは異なる数値を記載するなどしたこれら事業報告書を関東財務局長に提出した。

      上記の行為は、金商法第47条の2に違反するものと認められる。

    • (4)報告徴取命令に対する虚偽の報告

      当社は、証券取引等監視委員会が今回検査の過程において当社代表取締役社長等に対して発出した報告徴取命令に対し、第三者機関と共同して信託口座に対する内部査定を実施した旨回答している。しかしながら、当社と第三者機関が共同して内部査定を行った事実は認められない。

      上記の行為は、金商法第52条第1項第6号に掲げる「金融商品取引業に関し法令又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき」に該当するものと認められる。

    さらに、今回検査において、当社は、平成25年版のパンフレット等の勧誘資料を作成済みであり、新たに多数の顧客に対する取得勧誘を行う計画を進めている状況が認められるなど、投資者保護上極めて不適切な状況が継続しており、緊急に是正を要するものと認められる。

  • 3.その他

    本件検査においては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)より協力がなされている。

PDF参考資料(PDF:176KB)


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(禁止行為)

第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。(略)

一 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為

(以下、略)

(事業報告書の提出)

第四十七条の二 金融商品取引業者は、事業年度ごとに、内閣府令で定めるところにより、事業報告書を作成し、毎事業年度経過後三月以内に、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)

第五十二条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

一~五 (略)

六  金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令(第四十六条の六第二項を除く。)又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき。

七・八 (略)

九 金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき。

(以下、略)

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