平成25年8月8日

証券取引等監視委員会

With Asset Management株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会がWith Asset Management株式会社(東京都渋谷区、資本金6千万円、役職員44名、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、法令違反の事実が認められたので、平成25年8月2日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • ○公益又は投資者保護上著しく不当な行為を行っている状況

      With Asset Management株式会社(以下「当社」という。)は、前回検査基準日(平成21年11月)から今回検査基準日(平成25年4月)までの間、当社等を営業者とする計30種類の匿名組合契約(以下「本件ファンド」という。)に基づく権利(以下「本件ファンド持分」という。)の取得勧誘を行っている。

      本件ファンドの多くにおいて、顧客の投資資金は、株式会社Infinity Holdings(以下「IH」という。)に対し、金銭貸付けを行うことで運用することとされている。

      • (1)本件ファンドの多くについて運用が適切でないと認識しながら行う勧誘行為等

        当社とIHは、平成24年6月までは、資本関係上、IHが当社を支配する関係にあった。また、同年7月以降も現在まで、当社運営ファンドの資金管理(顧客への分配金等の支払事務を含む。)をIHが行っているほか、IHの代表取締役が当社営業員に対し営業推進に係る指示を出しているなど、当社は、IHに従属しており、両社が一体となって業務を行う状況が継続していると認められる。

        こうした中、当社における業務の運営状況を検証したところ、下記ア及びイのとおり、不適切な状況が認められた。

        • ア.本件ファンドの多くについて運用が適切でないと認識しながら行う勧誘行為

          当社は、本件ファンドの多くについて、顧客の投資資金を、IHへの金銭貸付けによる運用の形式を採ってIHに提供していたが、IHは、かかる資金を、貸金業の登録を受けることなく、反復継続して多数の企業及び個人に対し金銭貸付けを行うことにより運用している(無登録貸金業(貸金業法第11条))。

          しかしながら、当社がIHに従属する中で、下記(ア)から(ウ)のとおり、当社よりIHへの金銭貸付けについては適切な債権管理が一切なされておらず、当社は、IHが貸金業の登録を受けていないと認識していたにもかかわらず、その後もファンド取得勧誘及びIHに対する資金提供を漫然と継続していた。

          このような当社の状況は、実質的には、IHの無登録貸金業の資金調達を行う機能を果たしていたに過ぎず、そのために、第二種金融商品取引業のファンド販売の形式が利用されていたものと認められる。その結果、本件ファンドの多くにおいては、ファンドの資金の運用として行う必要のある運用状況の把握等が、なんら行われていない状況にある。

          • (ア)IHにおける出資金の運用状況が把握されていない状況

            当社は、本件ファンドの多くがIHに貸し付けた資金のIHにおける運用状況について、基本的にIHから不定期に口頭で説明を受けるのみで、当社からは確認していなかった。また、当社は、今回検査においても、IHに貸し付けた資金の使途等について、IHに聞かなければ分からないと説明するなど、IHにおける資金の運用状況を適時、適切に把握する態勢を全く整備していなかった。

          • (イ)IHへの金銭貸付けに係る消費貸借契約の契約書が作成されていない状況

            当社は、IHへの金銭貸付けについて、弁済期や利息等の基本的な事項を盛り込んだ金銭消費貸借契約書を作成していなかった。

          • (ウ)IHの財務状況等が把握されていない状況

            IHへの金銭貸付けには、なんら担保が設定されていないため、本件ファンドは、IHの信用リスクを全面的に負う立場にある。

            しかしながら、当社は、IHの財務状況について、資産、負債及びキャッシュ・フロー等の一切の状況を把握していなかった。

        • イ.当社営業員により不当な社債の私募又は募集の取扱い(無登録の第一種金融商品取引業)が行われており従業員管理態勢が不十分な状況

          当社の営業員は、IHの投資先である会社の社債について、第一種金融商品取引業者の登録のないIHの代表取締役からの指示により、複数の既存顧客に対して勧誘をし、取得させていた。当該行為は、無登録金融商品取引業に該当するものと認められる(金融商品取引法第29条)。

          しかしながら、当該行為は、当社代表取締役及び当社管理部門において、漫然と見過ごされていた。

          当社の上記ア及びイの状況は、当社がIHによる金銭貸付けが適切でないことを認識しながら、本件ファンドの取得勧誘を漫然と継続し、IHの行う無登録貸金業の資金調達の機能を継続的に果たしていたものであり、また、当社営業員により不当な社債の私募又は募集の取扱い(無登録第一種金融商品取引業)が行われていることが見過ごされているといった従業員管理態勢が不十分な状況であり、金融商品取引法第52条第1項第9号(金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき)に該当するものと認められる。

      • (2)本件ファンド持分の取得勧誘に関して、顧客に対し、虚偽のことを告げる行為

        当社営業員は、実際の運用実績を上回る虚偽の運用実績を記載した運用報告書を使用し、本件ファンド持分に係る取得勧誘を実施していた。

        当社の上記の行為は、金融商品取引法第38条第1号(金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為)に該当するものと認められる。


(参考条文)

金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(禁止行為)

第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。

一 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為

(以下省略)

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)

第五十二条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

一~八(略)

九 金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき。

(以下省略)

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