平成28年5月31日

証券取引等監視委員会

ドラグーンキャピタル株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    関東財務局長がドラグーンキャピタル株式会社(東京都千代田区、法人番号2010001138381、資本金3000万円、常勤役職員5名、第二種金融商品取引業及び投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

    なお、A代表取締役(以下A代表という。)は適格機関投資家等特例業務の届出者である。

  • 2.事実関係

    ○金融商品取引業者としての業務運営に問題がある状況

    ドラグーンキャピタル株式会社(以下「当社」という。)は、第二種金融商品取引業及び投資助言・代理業の実績はなく、平成23年7月に、当社を代表社員とするドラグーンスナイパーズ合同会社(適格機関投資家等特例業務届出者。以下「スナイパーズ社」という。)を設立し、当社が業務執行社員としてスナイパーズ社の業務を行っている。

    スナイパーズ社は、適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」という。)として、ドラグーン日本ストロングファンド(出資者7名、出資総額7580万円)、ROI社転換社債投資事業ファンド(出資者3名、出資総額2000万円)、Dragoon Gold Fund(出資者4名、出資総額3000万円。以下これらを総称して「スナイパーズファンド」という。)を組成し、これらの出資持分の取得勧誘及び出資金の運用を行っている。

    また、A代表は、自らの特例業務として、平成23年8月、自らを唯一の無限責任組合員とし、AIP証券株式会社から適格機関投資家としての出資(以下「適格機関投資家出資」という。)を受けるトリスタン1号投資事業有限責任組合(以下「トリスタンLPS」という。)を組成した。A代表は、トリスタンLPSにおいて、スナイパーズ社、同じく特例業務の届出者(以下「届出業者」という。)であるユニオン・キャピタル株式会社(東京都渋谷区、以下「ユニオン社」という。)、シュタイン・パートナーズ合同会社(東京都渋谷区、以下「シュタイン社」という。)他1者が運用する匿名組合(以下「ファンド」という。)に適格機関投資家出資を行ったとしている。

    今回検査において当社の業務運営の状況を検証したところ、以下の問題が認められた。

    • (1)ファンド出資金を費消している状況

      当社は、ユニオン社及びシュタイン社との間で、当該届出業者2者を営業者としてファンドを組成し、当該届出業者2者がファンドの取得勧誘を行うこと、当社が適格機関投資家と運用先を用意することについて、それぞれ取り決めを行った。当社は、運用先として、当社が設立した外国籍運用会社を用意し、上記届出業者2者から振り込まれたファンドの出資金(計約6億円)のうち約50%を当該届出業者2者が管理する会社にそれぞれ送金し、残りの出資金については、当社が運用するとしていたところ、実際には一切運用に回さず、当社の経費等に費消した。

    • (2)適格機関投資家への取得勧誘が行われていない状況

      スナイパーズ社の業務執行社員である当社は、スナイパーズファンドについて、自ら適格機関投資家及び一般投資家への取得勧誘を行っており、同ファンドはトリスタンLPSから適格機関投資家出資を受けているとしている。

      しかしながら、スナイパーズファンドの出資持分の取得勧誘に関する業務は、当社のA代表が一人で行っており、他方、A代表は、トリスタンLPSの唯一の無限責任組合員として、トリスタンLPSの業務を行っていることから、トリスタンLPSが行ったとする適格機関投資家出資については、取得勧誘を行った者と取得勧誘を受けた者はいずれもA代表となっている。したがって、スナイパーズファンドについては、適格機関投資家への取得勧誘が行われたとは認められず、特例業務の要件を充足しない状況である。

      当社は、スナイパーズ社の業務執行社員であるところ、スナイパーズファンドについて、当該要件を欠いたままスナイパーズ社が行った一般投資家に対する取得勧誘及び出資金の運用は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第28条第2項に規定する「第二種金融商品取引業」及び同条第4項に規定する「投資運用業」に該当し、同社が同法第29条に基づく登録を受けることなく、上記行為を行うことは、同条に違反するものと認められる。

    • (3)適格機関投資家出資の外観を仮装する行為に積極的に加担した状況

      A代表が自らの特例業務として組成したトリスタンLPSは、スナイパーズファンド以外に、ユニオン社、シュタイン社他1者がそれぞれ運用する5本のファンドに適格機関投資家出資したとしているところ、このうち4本のファンドについては、当社と当該届出業者3者との間でファンド組成の支援を行うことなどを内容とする契約を締結し、当該契約の報酬に出資額に相当する金銭(以下「出資相当額」という。)を上乗せして支払うことを条件に出資を行った。当社は、当該届出業者3者から支払われた報酬のうち出資相当額をトリスタンLPSに振り込み、トリスタンLPSから同額が当該4本のファンドに出資されている。

      したがって、当該出資については、実際にトリスタンLPSが出資した実態がなく、トリスタンLPSからの適格機関投資家出資がなされているかのような外観を仮装したものに過ぎず、適格機関投資家出資とは到底評価し得ないものであり、当社は、適格機関投資家出資の外観を仮装することに積極的に加担していたものと認められる。

      上記のような当社の行為は、届出業者の特例業務について、適格機関投資家出資を要件とする金商法の趣旨をないがしろにするものであり、届出業者に特例業務の要件を充足しないまま違法にファンド持分の取得勧誘や出資金の運用を行わせることとなり得るものと認められる。

    • (4)顧客に対し虚偽の運用報告書を交付する行為

      スナイパーズ社の業務執行社員である当社は、同社が組成したドラグーン日本ストロングファンドについて、日経225先物取引等による運用を開始した平成26年1月4日以降、取引による損失からファンド財産が大きく毀損していたにもかかわらず、毎月利益が生じているとする虚偽の内容の運用報告書を顧客に交付している。

    • (5)金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない状況

      上記のとおり、当社は、多岐にわたって投資者保護上重大な問題のある行為を行っており、当社において当該行為を行ったA代表に法令等遵守意識及び投資者保護意識は皆無である。また、当社においては、ほとんど全ての業務をA代表が一人で行っており、他にA代表の行為を牽制し適切に業務を運営するための人的基盤は整っていない。さらに、当社は、金融商品取引業の登録を受けて以降、当該業務を全く行わず、当該業務に必要な社内規則の制定をはじめとした業務管理態勢は、全く整備されていない。

    上記(1)から(4)のとおり、当社の業務運営は、投資者保護上重大な問題があり、金商法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。

    また、上記(5)のとおり、当社は、金商法第29条の4第1項第1号ホに規定する「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者」に該当し、このような当社の状況は、金商法第52条第1項第1号に該当するものと認められる。

参考資料(PDF:55.9KB)


(参考条文)

○金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(登録)

第二十九条金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。

(登録の拒否)

第二十九条の四内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはこれに添付すべき書類若しくは電磁的記録のうちに虚偽の記載若しくは記録があり、若しくは重要な事実の記載若しくは記録が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。

一次のいずれかに該当する者

イ~ニ(略)

ホ金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者

(以下、略)

(金融商品取引業者に対する業務改善命令)

第五十一条内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)

第五十二条内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

一第二十九条の四第一項第一号、第二号又は第三号に該当することとなつたとき。

(以下、略)

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