平成28年6月7日

証券取引等監視委員会

リーディング証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会がリーディング証券株式会社(東京都中央区、法人番号6010001090224、資本金17億6812万円、常勤役職員77名、第一種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    オークテック株式会社(東京都江東区、金融商品取引業の登録はない。以下「オークテック社」という。)は、合同会社ジェイ・マース1号、合同会社ジェイ・マース2号及び合同会社ジェイ・マース3号(以下、それぞれ「JM1社」、「JM2社」、「JM3社」といい、併せて「本件3社」という。)を設立・運営しており、本件3社において、医療機関等から診療報酬債権等の買取業務を行うためとして、それぞれ「診療報酬債権等流動化債券(愛称:J-Mars)」との名称の社債(以下、本件3社が発行するそれぞれの社債を併せて「本件3社債」という。)を発行し、資金を調達している。なお、本件3社は、劣後資金による信用補完のためとして、オークテック社及びリーディング証券株式会社(以下「当社」という。)から匿名組合出資を受け入れているとしている。

    また、オークテック社は、合同会社ジェイ・メディカル・プロパティーズ1号(以下「JMP社」という。)を設立・運営しており、JMP社において、医療機関等から病院不動産の買取業務を行うためとして、「病院不動産流動化債券」との名称の社債(以下「JMP債」という。)を発行し、資金を調達している。なお、JMP社は、劣後資金等による信用補完のためとして、第三者に「劣後信託社債」を発行するほか、JMP債の償還原資が不足する場合に「信用補完提供者」が当該不足額を補償するとしている。

    平成28年3月末現在、本件3社債の発行残高は、それぞれ約19億円、約14億円、約11億円、合計で約46億円、また、JMP債の発行残高は、約5.5億円となっており、それぞれ当社が販売している。

    証券取引等監視委員会において、本件3社債及びJMP債の実態を検証したところ、以下の実態が認められた。

    • (1)診療報酬債権等流動化債券について

      • ア金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為

        (ア)本件3社及びJMP社の間で、随意に資金の融通、社債の買付けや診療報酬債権等の売買が行われているなど、本件3社及びJMP社は渾然一体となって診療報酬債権等や病院不動産の買取業務の運営を行っている。

        こうした中、JM2社からJM1社への診療報酬債権等の売却、JM1社によるJM3社が発行する社債やJMP債の取得等が行われている。

        (イ)JM2社は、医療機関等から買い取った診療報酬債権等のうち、現在債権及び1か月に相当する将来債権をJM1社に売却しており、よりリスクの高い2~3か月に相当する将来債権のみを保有している。また、JM1社に売却した診療報酬債権等については、引き続きJM2社においても資産として計上している。

        (ウ)JM1社がオークテック社に支払った業務委託報酬について、費用の意図的な繰延べによる過少計上等、不適切な会計処理を行っており、これを適切な会計処理に修正した場合、JM1社の損失額が拡大することとなり、信用補完部分とされる匿名組合出資額も既に毀損している状況である。

        (エ)将来債権の買取りに関し、本件3社は「買取先選別基準」等を定めているが、JM1社及びJM2社において、当該基準に合致しない医療機関等からの将来債権の買取りが行われている。また、JM1社及びJM2社が診療報酬債権等を買い取った医療機関等には、将来債権について、実際に回収した診療報酬額が回収予定金額に満たない状況となっていた買取先も存在する。

        当社は、本件3社債の販売に当たって、商品内容や発行会社等の審査を実質的にはほとんど行っておらず、販売を開始した後も事後的なモニタリングをほとんど行っていないため、上記(ア)から(エ)までの事実をほとんど把握していなかった。こうしたことから、当社による本件3社債の販売について、以下の問題が認められた。

        ○上記(ア)に関し、当社は、販売用資料等において、本件3社及びJMP社が渾然一体となって診療報酬債権等や病院不動産の買取業務の運営を行っている実態に一切言及せず、本件3社が各々単独で診療報酬債権等に特化した買取業務の運営を行っているかのような誤解を与える表示を行った。

        ○上記(イ)に関し、JM2社は2~3か月に相当する将来債権しか保有していないにもかかわらず、当社は、JM2社が発行する社債の販売用資料において、「現在債権に加えて、将来債権の買取を計画しています」、「特定の条件を満たす場合に限り、最大3か月の将来債権まで買い取る場合があります」と記載し、JM2社が現在債権を含む診療報酬債権等を買い取り、保有しているかのような誤解を与える表示を行った。

        ○上記(ウ)に関し、JM1社の信用補完部分とされる匿名組合出資額が既に毀損しているにもかかわらず、当社は、販売用資料において、「優先劣後構造による信用補完」、「診療報酬債権等に損失が発生した場合、匿名組合が負担します」等と記載し、匿名組合出資によってJM1社の信用力が補完されているかのような誤解を与える表示を行った。

        ○上記(エ)に関し、将来債権の買取りに際して、医療機関等及び購入額等について適切な審査等が行われていないにもかかわらず、当社は、販売用資料において、「買取先選別基準」を記載するとともに、「診療報酬等の請求が安定的に継続され、かつ将来の診療行為の継続性に懸念がないと判断される医療機関等の診療報酬債権等又は回収の実効性が高いと評価される債権部分に限定」等と記載し、将来債権の買取りに際して適切な審査等が行われているかのような誤解を与える表示を行った。

        ○上記(ア)から(エ)までの実態からすれば、本件3社債は、安全性を考慮して設計されていると言うことはできないにもかかわらず、当社は、販売用資料において、事実に反し、「安全性を考慮して設計された商品」と記載し、説明していた。

        当社の上記の行為は、金融商品取引法第38条第8号(平成26年5月30日法律第44号による改正前は同条第7号)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められる。

      • イ虚偽の四半期運用報告書を交付する行為及び計算書類の未交付

        当社は、JM1社が発行する社債及びJM2社が発行する社債(以下、「両社債」という。)の投資者に対して、四半期ごとに、オークテック社が作成した資産、事業及び経理状況に関して記載した「四半期運用報告書」を交付している。

        しかしながら、当該四半期運用報告書には、JM1社において、純損失が発生しているにもかかわらず、純利益が計上され、「匿名組合(劣後資金)の残高及び増減」が過大に計上されているほか、JM2社からJM1社に対して売却された診療報酬債権等を引き続きJM2社においても資産として計上するなど、投資者がJM1社及びJM2社の財務状況等を的確に把握出来ないような虚偽の記載が行われていた。

        また、当社は、両社債の社債要項において、決算期ごとに計算書類を作成し、投資者に交付するとしていたが、交付していなかった。

        このような当社の業務運営の状況は、金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当と認めるとき」に該当するものと認められる。

    • (2)病院不動産流動化債券について

      • 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為

        当社は、JMP債の販売に当たっても、商品内容や発行会社等の審査を実質的にはほとんど行っておらず、販売を開始した後も事後的なモニタリングをほとんど行っていなかった。こうしたことから、当社によるJMP債の販売について、以下の問題が認められた。

        ○JMP社は、病院の建物のみを取得し、その土地は取得していないにもかかわらず、当社は、販売用資料において、「本社債は(中略)病院の建物及びその土地(“対象不動産”)を裏付資産とする資産流動化債券(信託社債)です。」と記載し、JMP社が病院の土地・建物双方を取得するかのような誤解を与える表示を行った。

        ○信用補完として発行される「劣後信託社債」の取得者は適格機関投資家や特定投資家でないにもかかわらず、当社は、販売用資料において、「“プロ”投資家」が「劣後信託社債」を取得する旨を記載することにより、適格機関投資家や特定投資家が劣後信託社債を取得しているかのような誤解を与える表示を行った。

        ○販売開始から3か月の間は、「信用補完提供者」は確保されていなかったにもかかわらず、当社は、販売開始当初から、販売用資料において、「信用補完提供者による信用補完」等と記載することにより、信用補完提供者が確保されているかのような誤解を与える表示を行った。

        ○上記の実態があるにもかかわらず、当社は、これをほとんど把握しておらず、販売用資料において、事実に反し、「安全性を考慮して設計された不動産裏付証券」と記載し、説明していた。

        ○また、当社は、JMP債の金利水準について、同期間・同程度のリスクの金融商品と比較していないにもかかわらず、販売用資料において「同期間・同程度リスクの金融商品と比較して高金利(※当社調べ)」と記載することにより、JMP債が同期間・同程度リスクの金融商品と比較して高金利であるかのような誤解を与える表示を行った。

        当社の上記の行為は、金融商品取引法第38条第8号(平成26年5月30日法律第44号による改正前は同条第7号)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められる。

参考資料(PDF:177KB)


(参考条文)

○金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(禁止行為)

第三十八条金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。

一~七(略)

八前各号に掲げるもののほか、投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為

(金融商品取引業者に対する業務改善命令)

第五十一条内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

○金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)

(禁止行為)

第百十七条法第三十八条第八号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。

一(略)

二金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為

(以下、略)

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