平成28年12月2日

証券取引等監視委員会

アセットクリエーション株式会社に対する検査結果及び勧告について

  • 1.検査結果

    関東財務局長がアセットクリエーション株式会社(長野県長野市、法人番号4100001024364、資本金500万円、常勤役職員2名、適格機関投資家等特例業務届出者。金融商品取引業の登録はない。以下「当社」という。)を検査した結果、下記のとおり、当該適格機関投資家等特例業務届出者に係る問題が認められた。

  • 2.事実関係

    当社は、適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」という。)として、自らを業務執行組合員とする4本の任意組合及び自らを営業者とする3本の匿名組合(以下、これらの組合を「ファンド」という。)の権利の取得勧誘及び出資金の運用を行っている(出資者:延べ309名、出資総額:約10億円(途中解約を含み、適格機関投資家を除く。))。今回検査において、当社の特例業務の運営状況を検証したところ、以下の問題が認められた。

    • (1)無登録で第二種金融商品取引業及び投資運用業を行っている状況

      当社は、前回検査結果(検査基準日:平成27年1月19日)に基づいて同年8月4日付けで関東財務局長から警告書が発せられたことを受け、全てのファンドを清算することとしたものの、検査基準日(同28年6月7日)現在、運用財産として株式等を保有している。

      このような中、当社は、運用する全てのファンドに適格機関投資家として唯一出資していた甲投資事業有限責任組合(以下「甲LPS」という。)が平成27年3月9日に解散し、その翌日以降、平成27年法律第32号による改正前の金融商品取引法第63条第1項第1号及び第2号に規定する特例業務の要件を満たしていない。

      しかし、当社は、甲LPSの解散後、適格機関投資家からの出資のない状態で、1つの組合において、出資持分の取得勧誘を行っていたほか、株式取引による運用を継続している。

      当社が行った上記の行為は、金融商品取引法第28条第2項に規定する「第二種金融商品取引業」及び同条第4項に規定する「投資運用業」に該当し、当社が同法第29条に基づく登録を受けることなく、当該行為を行うことは、同条に違反するものと認められる。

    • (2)投資者保護上問題のある業務運営

      当社のファンドに係る業務運営の状況を検証したところ、以下の問題が認められた。

      • アファンドの運用財産を買収資金に流用している状況

        当社は、平成27年1月及び2月にファンドの投資先である乙合同会社に投資金額の返還等を請求(以下「解約金債権」という。)したが、その回収は難航した。

        他方、平成27年3月、当社は、第二種金融商品取引業の登録を受けていた株式会社インフィニット(以下「インフィニット社」という。)を買収するために、当時同社の取締役であり、乙合同会社からの借入金でインフィニット社の株式を全て保有していたA氏との間で、株式譲渡に係る交渉を行っていた。

        そこで、当社のB代表取締役は、解約金債権が運用財産であることを認識しながら、その大半を流用してA氏に譲渡する一方、A氏の所有するインフィニット社の株式を全て取得する契約を締結し、インフィニット社の買収を成立させた(インフィニット社は、買収と同日付けで福美株式会社に商号変更。以下「福美社」という。)。

      • イ組合契約の解約等に伴うリスクを説明していない状況等

        当社は、上記(1)に記載のとおり、全てのファンドを清算することとしたため、平成27年8月中旬までに出資者の組合契約を解約するとともに、当該解約に伴い生じた出資者に対する解約違約金(出資金相当額とその利息)の支払債務を福美社に移転する契約を締結することを決定した。

        しかし、当社は、福美社の債務返済能力が乏しい状況にあること等を把握していたにもかかわらず、出資者との契約変更に際し、出資者に対して、元本償還や高利息の支払いについて説明する一方で、福美社の財務状況等を説明することなく契約を変更させている。

        また、当社は、解約違約金の算出に当たり、出資者によって異なる方法により解約違約金の支払額を算出しており、出資者間で公平性に欠ける取扱いを行っていた。

      • ウ解約違約金の利息支払資金等を調達するための社債発行における不適切な取得勧誘

        当社は、解約違約金の利息や当社の会社経費等に充当するため、社債を発行するとともに、当社が一体となって業務を運営している福美社、株式会社泉(以下「泉社」という。)、株式会社フィナンシャルパートナーズジャパン(以下「FPJ社」といい、当社とこれらの会社3社を合わせて「当社外3社」という。)にも、社債を発行させているが、社債の取得勧誘の状況について検証したところ、以下の問題が認められた。

        • a当社は、第一種金融商品取引業の登録を受けていないにもかかわらず、顧客に対し、福美社が発行する社債の取得勧誘を当社職員に行わせていた。

        • b当社は、顧客に対し、当社外3社が発行する社債の取得勧誘を福美社の従業員に行わせていた。なお、福美社は、第一種金融商品取引業の登録を受けていない。

        • c当社及び福美社は、当社外3社が発行する社債の信用リスクが高い状況にあるにもかかわらず、当該状況を顧客に説明していないほか、当社は、福美社による泉社及びFPJ社が発行する社債の取得勧誘に際し、事実に反する資金使途を記載した社債発行趣意書等を使用させていた。

      • エファンドの運用財産と自己の固有財産の分別管理を行っていない状況

        当社は、ファンドの運用財産と当社の固有財産を渾然一体として管理していることから、ファンドごとに出資金を分別しておらず、投資先からの収益及び損失が、どのファンドに帰属するのか判別できない。

        当社は、平成27年法律第32号による改正後の金融商品取引法の施行日(平成28年3月1日)以降においても、上記アからエまでの状況等(ウ.aを除く。)の改善を図ることなく、不適切な業務運営を継続しており、このような当社の業務運営は、投資者保護上重大な問題があると認められ、金融商品取引法第63条の5第1項に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。

        また、当社が行った上記ウ.aの行為は、金融商品取引法第28条第1項に規定する「第一種金融商品取引業」に該当し、当社が同法第29条に基づく登録を受けることなく、当該行為を行うことは、同条に違反するものと認められる。

  • 3.勧告の内容

    上記事実関係のうち、無登録で投資運用業を行っている状況及び投資者保護上問題のある業務運営(2.(2)ウ.aを除く。)については、平成27年法律第32号による改正後の金融商品取引法の施行日(平成28年3月1日)以降も継続していることから、当該事実について、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

別紙1(PDF:337KB)

別紙2(PDF:253KB)


(参考条文)

○金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(登録)

第二十九条金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。

(適格機関投資家等特例業務)

第六十三条次の各号に掲げる行為については、第二十九条及び第三十三条の二の規定は、適用しない。

一適格機関投資家等(適格機関投資家以外の者で政令で定めるもの(その数が政令で定める数以下の場合に限る。)及び適格機関投資家をいう。以下この条において同じ。)で次のいずれにも該当しない者を相手方として行う第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利に係る私募(適格機関投資家等(次のいずれにも該当しないものに限る。)以外の者が当該権利を取得するおそれが少ないものとして政令で定めるものに限る。)

イ~ハ(略)

二第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利(同一の出資対象事業(同項第五号に規定する出資対象事業をいう。)に係る当該権利を有する者が適格機関投資家等(前号イからハまでのいずれにも該当しないものに限る。)のみであるものに限る。)を有する適格機関投資家等から出資され、又は拠出された金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)の運用を行う同条第八項第十五号に掲げる行為

(以下、略)

(特例業務届出者に対する監督上の処分等)

第六十三条の五内閣総理大臣は、特例業務届出者の業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該特例業務届出者に対し、業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(以下、略)

(注)第六十三条の条文は、平成28年3月1日に施行された平成27年法律第32号による改正前のものである。

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