平成29年3月17日

証券取引等監視委員会

Caspian Trading Ltd.(旧Celera Global Ltd.)による江崎グリコ株式会社株式外3銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会は、Caspian Trading Ltd.(旧Celera Global Ltd.)(以下「セレラ」という。)による相場操縦について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

  • 2.法令違反の事実関係

    セレラは、英国領ヴァージン諸島、トルトラに登記事務所を置き、自己資金により株式売買等を行って収益を得ることを業とする会社であるが、同社の株式売買業務に従事していた者らにおいて、同社の業務に関し、株式の売買を誘引する目的をもって、株式会社東京証券取引所等において、別表1記載のとおり、いずれも東京証券取引所市場第一部に上場されている

    (1) 江崎グリコ株式会社(以下「江崎グリコ」という。)の株式につき、平成26年12月8日午後零時32分頃から午後2時28分頃までの間、最良売り気配値から上値の複数の価格帯に多数の売り付ける意思のない売り注文を発注したり、最良買い気配値から下値の複数の価格帯に多数の買い付ける意思のない買い注文を発注するなどの方法により、同株式合計23万4900株を売り付ける一方、同株式合計23万4900株を買い付けるとともに、同株式合計208万8900株の売付けの委託及び合計167万5100株の買付けの委託を行い、

    (2) 株式会社カナモト(以下「カナモト」という。)の株式につき、平成26年12月8日午後零時31分頃から午後1時40分頃までの間、前記同様の方法により、同株式合計15万8400株を売り付ける一方、同株式合計15万8400株を買い付けるとともに、同株式合計65万7600株の売付けの委託及び合計63万1500株の買付けの委託を行い、

    (3) 株式会社デンソー(以下「デンソー」という。)の株式につき、平成26年12月9日午前9時56分頃から午後2時12分頃までの間、前記同様の方法により、同株式合計61万5600株を売り付ける一方、同株式合計61万6300株を買い付けるとともに、同株式合計158万3300株の売付けの委託及び合計190万4000株の買付けの委託を行い、

    (4) 大東建託株式会社(以下「大東建託」という。)の株式につき、平成26年12月11日午前9時46分頃から午後2時47分頃までの間、前記同様の方法により、同株式合計23万3500株を売り付ける一方、同株式合計23万3900株を買い付けるとともに、同株式合計233万6400株の売付けの委託及び合計209万800株の買付けの委託を行い、

    もって、自己の計算において、上記各株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における上記各株式の相場を変動させるべき一連の売買及び委託をしたものである。

    セレラが行った上記の行為は、金融商品取引法第174条の2第1項に規定する「第159条第2項第1号の規定に違反する一連の有価証券売買等」及び「委託等」に該当すると認められる。

    違反行為事実の概要については、別紙1のとおり。

  • 3.課徴金の額の計算

    上記の違法行為について金融商品取引法に基づき算定される課徴金の額は、1332万円である。

    計算方法の詳細については、別紙2のとおり。

    4.その他

    本件については、日本取引所自主規制法人より提供された情報も参考として、実態解明を行ったものである。


(別紙1)

○違反行為事実の概要について


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(別紙2)

○課徴金の額の計算方法について

  • 1.金融商品取引法第174条の2第1項に基づき、課徴金の額は、

    (1) 売買対当数量(注1)に係るものについて、

    (自己の計算による当該有価証券の売付け等価額)-(自己の計算による当該有価証券の買付け等価額)

    と、

    (2) 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等数量が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、

    (有価証券の売付け等価額)-(当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の金融商品取引法第67条の19又は第130条に規定する有価証券の最低価格×当該超える数量)

    または、

    当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等数量が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、

    (当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の金融商品取引法第67条の19又は第130条に規定する有価証券の最高価格×当該超える数量)-(有価証券の買付け等価額)

    を合計し、

    (3) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、前記(1)及び(2)の合計額に一万円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てる

    ことで算出される。

    (注1)売買対当数量:当該違反行為に係る有価証券の売付数量と買付数量のうち、いずれか少ない数量をいう。

  • 2.課徴金納付命令対象者の各違反行為について、本件における課徴金の額は、下記(1)ないし(4)によりそれぞれ算定される額の合計 13,320,000円(注2)

    (注2)課徴金の計算の詳細については下記(1)ないし(4)のほか、別表2ないし5を参照。

    (1) 江崎グリコに係る課徴金の額は、下記により算定される額の3,077,810円

    ⇒課徴金の額は1万円未満を切り捨てるため、3,070,000円

    ア.当該違反行為に係る売買対当数量は、

    (i) 当該違反行為に係る有価証券の売付け等数量は、234,900株であり、

    (ii)当該違反行為に係る有価証券の買付け等数量は、234,900株である

    ことから、234,900株となる。

    当該売買対当数量に係るものについて、売付け等価額から買付け等価額を控除すると、

    売付け等価額1,045,164,990円-買付け等価額1,042,087,180円

    =3,077,810円

    (2) カナモトに係る課徴金の額は、下記ア.及びイ.により算定される額の合計2,879,050円

    ⇒課徴金の額は1万円未満を切り捨てるため、2,870,000円

    ア.当該違反行為に係る売買対当数量は、

    (i) 当該違反行為に係る有価証券の売付け等数量は、実際の売付け等の数量158,400株に、当該違反行為の開始時に有価証券を有しないで又は借り入れて売付けをしている当該有価証券の数量100株を加えた158,500株であり、

    (ii)当該違反行為に係る有価証券の買付け等数量は、158,400株である

    ことから、158,400株となる。

    当該売買対当数量に係るものについて、売付け等価額から買付け等価額を控除すると、

    売付け等価額595,204,710円(注3)-買付け等価額592,400,960円

    =2,803,750円

    (注3)売付け等価額の算定においては、金融商品取引法施行令第33の14第5項の規定により、当該違反行為に係る有価証券の買付けのうち最も早い時期に行われたものから順次当該売買対当数量に達するまで割り当てることとなる。

    本件においては、金融商品取引法第174条の2第7項及び同法施行令第33条の12第1号の規定により、違反行為の開始時点にその時における価格(3,710円)で売り付けたものとみなされるもの(みなし売付け)から割り当てられることとなる。

    イ.上記ア.のとおり、当該違反行為に係る有価証券の売付け等数量が、買付け等数量を超えることから、

    当該超える数量100株(158,500株-158,400株)について、

    売付け等価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最低価格(3,000円)に当該超える数量を乗じて得た額を控除すると、

    売付け等価額375,300円-300,000円(3,000円×100株)

    =75,300円

    (3) デンソーに係る課徴金の額は、下記ア.及びイ.により算定される額の合計3,213,300円

    ⇒課徴金の額は1万円未満を切り捨てるため、3,210,000円

    ア.当該違反行為に係る売買対当数量は、

    (i) 当該違反行為に係る有価証券の売付け等数量は、615,600株であり、

    (ii)当該違反行為に係る有価証券の買付け等数量は、616,300株である

    ことから、615,600株となる。

    当該売買対当数量に係るものについて、売付け等価額から買付け等価額を控除すると、

    売付け等価額3,650,908,800円-買付け等価額3,647,695,500円

    =3,213,300円

    イ.上記ア.のとおり、当該違反行為に係る有価証券の買付け等数量が、売付け等数量を超えることから、

    当該超える数量700株(616,300株-615,600株)について、

    当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(5,810円)に当該超える数量を乗じて得た額から、買付け等価額を控除すると、

    4,067,000円(5,810円×700株)-買付け等価額4,136,300円

    =-69,300円となることから、0円(注4)

    (注4)金融商品取引法第174条の2第1項第2号ロの規定により、当該額が零を下回る場合には零とすることとなる。

    (4) 大東建託に係る課徴金の額は、下記ア.及びイ.により算定される額の合計4,174,300円

    ⇒課徴金の額は1万円未満を切り捨てるため、4,170,000円

    ア.当該違反行為に係る売買対当数量は、

    (i)当該違反行為に係る有価証券の売付け等数量は、233,500株であり、

    (ii)当該違反行為に係る有価証券の買付け等数量は、233,900株である

    ことから、233,500株となる。

    当該売買対当数量に係るものについて、売付け等価額から買付け等価額を控除すると、

    売付け等価額3,060,005,700円-買付け等価額3,056,163,900円

    =3,841,800円

    イ.上記ア.のとおり、当該違反行為に係る有価証券の買付け等数量が、売付け等数量を超えることから、

    当該超える数量400株(233,900株-233,500株)について、

    当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(13,935円)に当該超える数量を乗じて得た額から、買付け等価額を控除すると、

    5,574,000円(13,935円×400株)-買付け等価額5,241,500円

    =332,500円

     

    【参考】課徴金の額の計算に係る考え方の例

    別表1(PDF)

    別表2(PDF)

    別表3(PDF)

    別表4(PDF)

    別表5(PDF)

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