歴代委員長からのメッセージ

証券取引等監視委員会創立25周年に寄せて、歴代委員長からメッセージをいただきました。

水原 敏博 元委員長(1992.7~1998.7)

     

証券監視委の設立背景や求められた役割についてお聞かせください。

 平成3年に大手証券会社が大株主や反社会的勢力に対して損失補てんをしていたことが発覚しました。そのことをマスコミが大々的に報道したために、一般投資家の証券市場に対する不満が噴出しました。

原因を検討した結果、従前の証券行政が、主に証券業者に対する指導・育成であり、損失補てんに対する罰則の整備がなされておらず、証券市場に対する市場監視機能が不十分であることが判明しました。そこで市場監視の部門を証券行政から分離独立するとともに、損失補てんに対する罰則の整備が一番大事だということで、厳正公正・健全透明な市場建設のため、平成4年7月20日に証券監視委が発足しました。平成4年に初代委員長として就任し、私は公正公平・透明健全な市場監視を目指しました。

証券監視委は、当初職員84名で構成され、従前の大蔵省証券局の職員として証券行政に従事していた者が大半を占めました。そこで私は、証券市場に対する「指導・育成」という立場から、「監視」という立場へ変わったことを意識づけるために、機会があるごとにそのようなマインドの切り替えを求めました。さすがに優秀な大蔵省の職員です。早期にマインドの切り替えができたようで、その後の実績を見ていただければ、それがよく分かっていただけると思います。マスコミにも大々的かつ好意的に報道していただきました。私は、職員共々その使命の重大性に身が引き締まる思いがしたことを、昨日のように思い出します。

求められた役割をどう果たしましたか。

証券監視委が発足するまで、犯則事件の調査を行う部署が組織内にございませんでした。そこで、証券監視委が発足した時に、犯則事件の調査・告発の権限を持つ特別調査課が設けられました。ところがそれらの職員のうち国税査察官といった犯罪捜査の経験がある者を除いて大半は、犯則事件の捜査については未経験の者ばかりでございました。

特別調査課の部屋を時々見回っておりますと、「やり方がわからない、どうしたら良いのだろうか」と本当に困った顔をしている職員がほとんどでございました。これは大変だと思い、私は30年あまりの検察官の経験がございましたので、捜査の手順だとか犯則事件調査の心構えがどういうものであるか、どういう取り調べを行ったらよいかという、基礎的な研修がまず必要なことだと感じ、それに注力いたしました。発足当時の職員は選りすぐりの精鋭ばかりでございまして、証券犯罪の中で最も難しいとされる株価操縦事件を、第1号事件として東京地検に告発いたしました。その後も職員は着実に実力をつけ各種犯則調査事件を摘発し、検察庁へ告発してまいりました。平成9年には、大手証券4社の社長など幹部が自己勘定から顧客への付け替えによる損失補てんを行っていたことが判明し、告発いたしました。このように、市場監視の責任感・正義感に燃え、多くの実績を出してくれた職員に対し、感謝の気持ちで一杯でございます。

今後の証券監視委へのメッセージ

証券監視委の活動を見ておりますと、年々犯則事件の告発件数は増加しております。これは職員の精進努力の賜物だと、敬意を表しております。これからも公平公正・透明健全な市場の発展ために、是非とも、不正は許さないという強い信念をもって、眼を常に研ぎ澄まして市場監視、それから市場の不正の摘発に努めていただきたいと考えております。これからも引き続き市場の番人としての存分の活躍、そして、組織の発展を心から願っております。

佐藤 ギン子 元委員長(1998.7~2001.7)

     

大きな組織体制の変革の中で、証券監視委に求められた期待や役割は、どのようなものでしたか。

証券監視委に対しては、行政から独立した市場監視組織としての高い期待があったので、金融システム改革に伴う監視委員会の活動強化に努めました。

今後の証券監視委へのメッセージ

私が働いていた時に比べて、IT技術の進展や新しい金融商品などが出てきて、証券市場は大きく変化をしております。市場の番人として、証券市場の発展のために活動する証券監視委の皆様には、目的達成のためにますますご努力をお願いいたします。

佐渡 賢一 元委員長(2007.7~2016.12)

     

どのように課徴金制度を活用していきましたか。

就任時に課徴金は制度として用意されていましたが、未だこの新しいツールをどのように運用するかを模索する段階でした。端的に言えば、犯則事件の処理になぞらえ、より簡易な事案を処理する程度の認識でした。
しかし、そもそもが行政処分ですから、行政目的に従った運用が必要であり、法解釈、立証の程度、事実の構成、調査のあり方も犯則処理とは異なるものであり、新しい分野を切り開く気持ちで、積極的な運用に取り組み、経験を積み重ねることで、課徴金の有効性が実感されてきました。それは迅速な処理にあります。当初予想されていた簡易なものよりも、むしろ大規模で複雑困難な事案でこそ有効だということです。このような案件は、なによりも早期の市場秩序の回復・維持が要請されます。大企業の粉飾やクロスボーダーの案件等で、大いに力を発揮してくれたことが課徴金の有効性を認識させてくれました。その結果、「行政処分も犯則処理も」という案件をも経験できたことは、証券監視委にとって幸いでした。事案に即し、持てるツールを最大限に活用し、真相に迫ることの大切さを学びました。

今後の証券監視委へのメッセージ

証券監視委には、証券市場の番人としての役割をきちんと果たしてもらいたい、ということに尽きます。情報収集力の強化と迅速着実な処理態勢をしっかりと構築して、証券監視委の存在感を高めていただきたいと思います。皆さんのご活躍を期待しております。

長谷川 充弘 委員長(2016.12~)

     

これからの抱負についてお聞かせください。

日本の資本市場が大きな変革の時代にあるからこそ、我々証券監視委自身も、変わっていかなければなりません。「誰もがルールを守る」といった相互信頼を確立し、安心して投資できる市場環境を整備・発展させなくてはならないのです。
このため証券監視委では、各自が最高水準を目指す意識を常に持ち、フォワード・ルッキングな視点で先々を見据えた活動を行ってまいります。具体的には、タイムリーな情報収集及びその分析、問題の未然防止、根本原因の究明、ITの活用や人材の育成、といった取り組みを進めてまいります。
また、従来以上に、自主規制機関や内外の関係機関と連携しつつ、建設的な対話を通じた市場の自己規律の促進と、悪質な法令違反の摘発に努めてまいります。
証券監視委は創立25周年を迎え、より広く、より早く、そしてより深い市場監視を行っていく所存です。

 PDF証券取引等監視委員会創立25周年記念国際コンファレンス

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