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平成30年10月5日
証券取引等監視委員会

第一稀元素化学工業株式外6銘柄に係る特殊見せ玉を用いた偽計に対する課徴金納付命令の勧告について

 

1.勧告の内容

証券取引等監視委員会は、第一稀元素化学工業株式外6銘柄に係る特殊見せ玉を用いた偽計について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

  • 2.法令違反の事実関係

    課徴金納付命令対象者は、第一稀元素化学工業株式会社外6銘柄の各株式につき、別表記載の各株式に係る通番2の注文を発注する以前、各株式の立会市場において、同通番1のとおり、他の投資家が発注した引け条件付き成行注文(以下「引成注文」という。)のうち、買い側の引成注文(以下「引成買い注文」という。)の発注株数が売り側の引成注文(以下「引成売り注文」という。)の発注株数を上回る状況、又は、引成売り注文の発注株数が引成買い注文の発注株数を上回る状況であり、当該発注状況を見た第三者が発注株数の少ない側に引成注文を発注するなどして、新たな売買を行うことが想定される状態であったところ、真実は、約定意思がなく、引け直前に指値注文に変更して約定を回避するつもりであるにもかかわらず、発注株数の少ない側に引成注文(以下「本件各引成注文」という。)を発注することによって、あたかも約定意思があるかのように装い、引成買い注文と引成売り注文の発注株数が同程度である状況を作出し、第三者をして、引けまで当該発注状況が維持されるであろうとの錯誤を生じさせ、第三者の新たな売買を阻害した上、本件各引成注文を引け直前に、引け条件付き指値注文に変更して約定を回避することによって、引けにおいて、引成買い注文の発注株数と引成売り注文の発注株数のいずれかが他方を上回る状況にすることで、自らに有利な売買を行うことを企て、

    (1)  各株式につき、同通番2の各発注日時に、引成買い注文の発注株数と引成売り注文の発注株数が同程度になる数量だけ、発注株数の少ない側に約定意思のない本件各引成注文を発注し、引成買い注文と引成売り注文の発注株数が同程度である状況を作出した上、同通番4の各発注日時に、本件各引成注文を引け条件付き指値注文に変更して約定を回避することにより、引けにおいて、引成買い注文の発注株数と引成売り注文の発注株数のいずれかが他方を上回る状況にすることで、同通番2の各発注日時から同通番4の各発注日時までの間、引成買い注文の発注株数と引成売り注文の発注株数とが同程度である虚偽の発注状況を作出し、第三者に、引けまで、当該発注状況が維持されるであろうとの錯誤を生じさせ、もって、有価証券の売買のため、偽計を用い

    (2)  当該偽計により、各株式につき、同通番2の各発注日時から同通番4の各発注日時までの間、第三者による新たな売買を阻害しつつ、同通番4の各発注日時に、本件各引成注文を引け条件付き指値注文に変更して約定を回避することによって、引けにおいて、引成買い注文の発注株数と引成売り注文の発注株数のいずれかが他方を上回る状況にし、もって、各有価証券の価格に影響を与え、別表記載のとおり、同通番2の各発注日時から同通番4の各発注日時までの間、自己の計算において、同通番3のとおり、買い付け、又は、売り付け

     たものである。

    違反行為事実の概要については、別図のとおり。

    課徴金納付命令対象者が行った上記の行為は、金融商品取引法第173条第1項に規定する「第158条の規定に違反して、偽計を用い、」これにより「有価証券等の価格に影響を与えた」ものと認められる。

  • 3.課徴金の額の計算

    上記の違法行為に対し金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は、73万円である。

    計算方法の詳細については、別紙1及び別紙2のとおり。

    4.その他

    本件については、日本取引所自主規制法人より提供された情報も参考として、実態解明を行ったものである。

    なお、一般的な見せ玉は、例えば、最良買い気配付近に大口の買い注文を発注し、売り注文に比べて買い注文が多く発注されているようにするなどして、買い優勢の発注状況を作出することで他の投資家の買付けを誘引しようとするものである。それに対し、本件の見せ玉は、例えば、既に発注されている第三者の引成売り注文に対して、約定させる意思のない引成買い注文を発注することで、買い側と売り側の引成注文の発注株数が同程度である引けの発注状況を作出するものであり、他の投資家を誘引しようとするものではないことから、「特殊見せ玉」と表記している。


(別表)

○違反行為状況

違反行為状況
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(別図)

○違反行為事実の概要について

違反行為事実の概要について
(クリックすると拡大されます)

(別紙1)

○課徴金の額の計算方法について

別表の各違反行為に係る課徴金の額の計算の基礎は以下のとおりである。

1.金融商品取引法第173条第1項の規定により、当該違反行為に係る課徴金の額は、当該違反行為の開始時から終了時までの間(以下「違反行為期間」という。)において、

(1) 当該違反者が当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量が、当該違反者が当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量を超える場合、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における有価証券の買付け等についての金融商品取引法第67条の19又は第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額

(2) 当該違反者が当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量が、当該違反者が当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量を超える場合、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における有価証券の売付け等についての金融商品取引法第67条の19又は第130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格に当該超える数量を乗じて得た額から当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額

 として算定。

2.上記1.で算定された課徴金の額につき、金融商品取引法第176条第2項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算定。

3.上記2.によりそれぞれ算定した額を合計し、課徴金の額とする。

以上につき、別紙2のとおり。


(別紙2)

別表に掲げる事実につき

  • 1.亀田製菓株式会社に係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(400株)が、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(0株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(5,650円)に当該超える数量400株(400株-0株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

    (5,650円×400株)
    -(5,420円×400株)
    = 92,000円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切り捨て、90,000円となる。
     

  • 2.アニコムホールディングス株式会社に係る株式の取引について(違反行為期間①)

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(600株)が、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(0株)を超えていることから、当該超える数量600株(600株-0株)に係る有価証券の売付け等の価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最低価格(2,550円)に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額。

    (2,580円×300株+2,581円×100株+2,582円×100株+2,584円×100株)
    -(2,550円×600株)
    = 18,700円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切り捨て、10,000円となる。
        

  • 3.アニコムホールディングス株式会社に係る株式の取引について(違反行為期間②)

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(600株)が、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(0株)を超えていることから、当該超える数量600株(600株-0株)に係る有価証券の売付け等の価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最低価格(2,550円)に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額。

    (2,592円×100株+2,593円×200株+2,596円×100株+2,597円×200株)
    -(2,550円×600株)
    = 26,800円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切り捨て、20,000円となる。
     

  • 4.マニー株式会社に係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(500株)が、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(0株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(2,974円)に当該超える数量500株(500株-0株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

    (2,974円×500株)
    -(2,888円×300株+2,891円×100株+2,895円×100株)
    = 42,000円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切り捨て、40,000円となる。
     

  • 5.KOA株式会社に係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(900株)が、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(0株)を超えていることから、当該超える数量900株(900株-0株)に係る有価証券の売付け等の価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最低価格(1,866円)に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額。

    (2,196円×100株+2,197円×100株+2,198円×100株+2,200円×600株)
    -(1,866円×900株)
    = 299,700円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切り捨て、290,000円となる。
     

  • 6.イーレックス株式会社に係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(1,300株)が、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(0株)を超えていることから、当該超える数量1,300株(1,300株-0株)に係る有価証券の売付け等の価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最低価格(942円)に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額。

    (1,012円×400株+1,013円×900株)
    -(942円×1,300株)
    = 91,900円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切り捨て、90,000円となる。
     

  • 7.第一稀元素化学工業株式会社に係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(600株)が、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(0株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(1,412円)に当該超える数量600株(600株-0株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

    (1,412円×600株)
    -(1,317円×300株+1,318円×100株+1,319円×100株+1,320円×100株)
    = 56,400円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切り捨て、50,000円となる。
     

  • 8.スターゼン株式会社に係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(300株)が、当該違反行為に係る自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(0株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(5,170円)に当該超える数量300株(300株-0株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

    (5,170円×300株)
    -(4,675円×300株)
    = 148,500円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切り捨て、140,000円となる。

  • 9.上記、1.ないし8.により算定した額の合計
    90,000円+10,000円+20,000円+40,000円+290,000円+90,000円+50,000円+140,000円=730,000円となる。

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