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平成31年1月25日
証券取引等監視委員会

CLSA証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について 

1.勧告の内容
 証券取引等監視委員会がCLSA証券株式会社(東京都港区、法人番号5010401098017、資本金19億6,400万円、常勤役職員79名、第一種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
 
2.事実関係
 (1)空売り規制違反等
  CLSA証券株式会社(以下「当社」という。)においては、外国に居住する法人顧客から受託した取引所金融商品市場における空売り注文について、当該空売りに係る有価証券について借入契約の締結その他の当該有価証券の受渡しを確実にする措置(以下「決済措置」という。)が講じられていることを確認しないまま、長期間にわたり多数の空売り注文を執行していた。また、当該注文の執行に際して、これらの決済措置に係る有価証券の調達先についても確認していなかった。
 こうした杜撰な空売り注文の受注・執行態勢により、当社が行った空売りについて、当社と顧客との間で多数の決済遅延が発生している。
 
 当社が行った上記行為のうち、決済措置が講じられていることを確認しないまま行った空売りは、金融商品取引法施行令第26条の2の2第1項に違反し、金融商品取引法第162条第1項に該当する。また、決済措置に係る有価証券の調達先を確認しなかった行為は金融商品取引法第38条第9号(平成29年法律第37号による改正前は同条第8号、平成26年法律第44号による改正前は同条第7号)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第24号の2に該当するものと認められる。
 
 (2)売買管理態勢の不備
  当社は、実勢を反映しない作為的な相場を形成させるべき行為を防止するための売買審査について、売買審査を行うべき取引を著しく狭く限定するとともに、抽出された取引についても、実質的な売買審査を行っていなかった。
 また、当社において売買審査を行うべき取引を抽出するためのシステムには、当社が受託した取引の一部が取り込まれておらず、売買審査を行う上で必要となるデータそのものが不足している状況が認められている。なお、当社は、これを改善するためのシステム修正を行っているが、当該システム修正の結果、必要なデータが全て取り込まれているかどうかについて、未だ検証できていない。
 
 当社における上記の状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第12号に該当するものと認められる。
 
 (3)問題の背景
  当社においては、収益拡大に積極的に取り組む一方、第一種金融商品取引業者に課せられている市場のゲートキーパーとしての役割をほとんど意識しない業務運営が行われている。また、コンプライアンス部門においても、営業部門に過度に配慮し、法令等遵守態勢に問題意識を持ちながらも必要な措置を講じておらず、さらに、経営陣においても、決済遅延の発生状況や、不適切な売買管理態勢の状況を認識しながら長期間にわたって黙認し、特段の措置を講じていない状況が認められた。
 
(参考条文)
○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)
 
(禁止行為)
第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。
 一 ~ 八(略)
 九 前各号に掲げるもののほか、投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為
 
(適合性の原則等)
第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。
 一(略)
 二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。
 
(空売り及び逆指値注文の禁止)
第百六十二条 何人も、政令で定めるところに違反して、次に掲げる行為をしてはならない。
 一 有価証券を有しないで若しくは有価証券を借り入れて(これらに準ずる場合として政令で定める場合を含む。)その売付けをすること又は当該売付けの委託等若しくは受託等をすること。
 二(略)
2(略)
 
 
○ 金融商品取引法施行令 (昭和40年政令第321号)(抄)
 
(借入れ有価証券の裏付けの確認等)
第二十六条の二の二 金融商品取引所の会員等は、当該金融商品取引所の開設する取引所金融商品市場における空売り(次の各号のいずれかに該当する売付け又は有価証券等清算取次ぎの委託(売付けの委託に限る。以下この項及び次条第一項において「清算取次ぎ委託」という。)をいう。以下同じ。)を受託した場合において、当該空売りに係る有価証券(大量の空売りが行われることにより当該空売りに係る有価証券の受渡しに支障を生じさせるおそれがあるものとして金融庁長官が指定する有価証券に限る。以下この項(各号を除く。)から第四項までにおいて同じ。)について借入契約の締結その他の当該有価証券の受渡しを確実にする措置として内閣府令で定める措置(以下この条において「決済措置」という。)が講じられていることを確認できないときは、当該空売りを行つてはならない。
 一 有価証券を有しないで又は有価証券を借り入れてする有価証券の売付け(有価証券等清算取次ぎを除く。)
 二 前条に規定する場合における有価証券の売付け(有価証券等清算取次ぎを除く。)
 三 有価証券を有しないで又は有価証券を借り入れてする清算取次ぎ委託
 四 清算取次ぎ委託後遅滞なく有価証券を提供できることが明らかでなく行う清算取次ぎ委託
2 ~ 7(略)
 

○ 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)
 
(禁止行為)
第百十七条 法第三十八条第九号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
 一 ~ 二十四(略)
 二十四の二 令第二十六条の二の二第一項に規定する決済措置(次号、第百五十七条第一項及び第百五十八条の二において単に「決済措置」という。)に係る有価証券の調達先の確認をせずに、空売り又は当該空売りの委託の取次ぎを行う行為
 二十四の三 ~ 四十(略)
2 ~ 32(略)
 
(業務の運営の状況が公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの)
第百二十三条 法第四十条第二号に規定する内閣府令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
 一 ~ 十一(略)
 十二 取引所金融商品市場における上場金融商品等又は店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場若しくは相場若しくは取引高に基づいて算出した数値を変動させ、若しくはくぎ付けし、固定し、若しくは安定させ、又は取引高を増加させることにより実勢を反映しない作為的なものを形成させるべき当該上場金融商品等若しくは当該店頭売買有価証券に係る買付け若しくは売付け若しくはデリバティブ取引又はこれらの申込み若しくは委託等若しくは受託等をする行為を防止するための売買管理が十分でないと認められる状況
 十三 ~ 三十(略)
2 ~ 11(略)
 
 
○ 有価証券の取引等の規制に関する内閣府令(平成19年内閣府令第59号)(抄)
 
(有価証券の受渡しを確実にする措置)
第九条の二 令第二十六条の二の二第一項(同条第六項及び第七項において準用する場合を含む。)に規定する内閣府令で定める措置は、空売りに係る有価証券について借入契約の締結その他の当該有価証券の受渡しを確実にする措置とする。

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