平成31年3月26日

証券取引等監視委員会

シティグループ・グローバル・マーケッツ・リミテッドによる長期国債先物に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会は、シティグループ・グローバル・マーケッツ・リミテッド(以下「CGML」という。)による相場操縦について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

  • 2.法令違反の事実関係

    CGMLは、英国に本店を置き、英国金融行為規制機構及び英国健全性規制機構に登録された金融業者であり、CGMLと密接な関係を有する者から、その日本国債先物取引口座における資産の運用を委託されたものであるが、CGMLのディーリング業務に従事していた者において、同社の業務に関し、株式会社大阪取引所(以下「大阪取引所」という。)に上場されていた長期国債先物2018年12月限月(以下「本件国債先物」という。)について、市場デリバティブ取引を誘引する目的をもって、別表記載のとおり、平成30年10月26日午後7時45分頃から同月27日午前1時11分頃までの間及び同月29日午後7時16分頃から同月30日午前1時2分頃までの間、大阪取引所において、証券会社を介し、約定させる意思がないのに、最良買い気配値以下の価格に多数の買い注文を発注する方法により、合計7603単位の買付けの委託を行うとともに、合計277単位を売り付ける一方、約定させる意思がないのに、最良売り気配値以上の価格に多数の売り注文を発注する方法により、合計4341単位の売付けの委託を行うとともに、合計311単位を買い付けるなどし、もって、CGMLと密接な関係を有する者の計算において、市場デリバティブ取引が繁盛であると誤解させ、かつ、大阪取引所における本件国債先物の相場を変動させるべき一連の市場デリバティブ取引及びその委託をしたものである。

    違反行為事実の概要等については、別紙1のとおり。

    CGMLが行った上記の行為は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第174条の2第1項に規定する「第159条第2項第1号の規定に違反する一連の有価証券売買等」及び「委託等」に該当すると認められる。

  • 3.課徴金の額の計算

    上記の違法行為について金商法に基づき算定される課徴金の額は、1億3337万円である。

    計算方法の詳細については、別紙2のとおり。

  • 4.その他

    本件については、日本取引所自主規制法人より提供された情報を参考として、実態解明を行ったものである。


(別紙1)

○違反行為事実の概要について


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(別紙2)

○課徴金の額の計算方法について

1.金商法第174条の2第1項に基づき、当該違反行為に係る課徴金の額は、

(1) 当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量(注1)に係るものについて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額

(注1)売買対当数量:当該違反行為に係る有価証券の売付け等の数量と買付け等の数量のうち、いずれか少ない数量をいう。

及び

(2) 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量が当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量を超える場合、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の買付け等についての金商法第67条の19又は第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額

を合計することで算出される。

2.本件では、別表に掲げる事実につき、

(1) 違反行為期間1の取引について

(ア)  売買対当数量(注2)に係る課徴金の額 70万円(注3)

(注2)当該違反行為に係る売買対当数量は、以下により202単位となる。

a. 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量は、金商法第174条の2第6項、金商法第六章の二の規定による課徴金に関する内閣府令第1条の17第1項第3号により、自己の計算によるものとみなされる当該違反行為に係るCGMLと密接な関係を有する者の計算による有価証券の売付け等の数量である61単位に、当該違反行為の開始時にCGMLと密接な関係を有する者の計算において当該違反行為に係る有価証券を有しないで又は借り入れて売り付けており、金商法第174条の2第7項及び金商法施行令第33条の12第1号の規定により、当該違反行為開始時にその時における価格(150.77円)で当該違反行為に係る有価証券の売付け等を自己の計算においてしたものとみなされる339単位を加えた、400単位となる。

b. 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量は、金商法第174条の2第6項、金商法第六章の二の規定による課徴金に関する内閣府令第1条の17第1項第3号により、自己の計算によるものとみなされる当該違反行為に係るCGMLと密接な関係を有する者の計算による有価証券の買付け等の数量である60単位に、当該違反行為の開始時にCGMLと密接な関係を有する者が所有しており、金商法第174条の2第8項及び金商法施行令第33条の13第1号の規定により、当該違反行為開始時にその時における価格(150.77円)で当該違反行為に係る有価証券の買付け等を自己の計算においてしたものとみなされる142単位を加えた、202単位となる。

(注3)算定式は次のとおり。

(202単位×150.77円×1,000,000)-{(142単位×150.77円×1,000,000)+(20単位×150.73円×1,000,000)+(10単位×150.75円×1,000,000)+(30単位×150.78円×1,000,000)}
=700,000円

(注4)長期国債先物は、長期国債標準物を対象原資産とする先物取引であり、長期国債先物の最低取引単位(1単位)は、同先物の価格を1,000,000倍した金額となる。

及び

(イ)  当該違反行為に係る自己の計算によるものとみなされる有価証券の売付け等の数量が当該違反行為に係る自己の計算によるものとみなされる有価証券の買付け等の数量を超える場合の、当該超える数量に係る課徴金の額6020万円(注5)

(注5)当該超える数量は、上記(ア)(注2)a.記載の数値(400単位)から同b.記載の数値(202単位)を差し引いた198単位であるところ、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の買付け等についての金商法第67条の19又は第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格(150.47円)に、当該超える数量(198単位)を乗じて得た額を控除することで算出される。

{(158単位×150.77円×1,000,000)+(10単位×150.78円×1,000,000)+(20単位×150.79円×1,000,000)+(10単位×150.80円×1,000,000)}-(198単位×150.47円×1,000,000)
=60,200,000

を合計し、

6090万円となる。

(2) 違反行為期間2の取引について

(ア) 売買対当数量(注6)に係る課徴金の額 330万円(注7)

(注6)当該違反行為に係る売買対当数量は、以下により347単位となる。

a. 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量は、金商法第174条の2第6項、金商法第六章の二の規定による課徴金に関する内閣府令第1条の17第1項第3号により、自己の計算によるものとみなされる当該違反行為に係るCGMLと密接な関係を有する者の計算による有価証券の売付け等の数量である216単位に、当該違反行為の開始時にCGMLと密接な関係を有する者の計算において当該違反行為に係る有価証券を有しないで又は借り入れて売り付けており、金商法第174条の2第7項及び金商法施行令第33条の12第1号の規定により、当該違反行為開始時にその時における価格(150.72円)で当該違反行為に係る有価証券の売付け等を自己の計算においてしたものとみなされる414単位を加えた、630単位となる。

b. 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量は、金商法第174条の2第6項、金商法第六章の二の規定による課徴金に関する内閣府令第1条の17第1項第3号により、自己の計算によるものとみなされる当該違反行為に係るCGMLと密接な関係を有する者の計算による有価証券の買付け等の数量である251単位に、当該違反行為の開始時にCGMLと密接な関係を有する者が所有しており、金商法第174条の2第8項及び金商法施行令第33条の13第1号の規定により、当該違反行為開始時にその時における価格(150.72円)で当該違反行為に係る有価証券の買付け等を自己の計算においてしたものとみなされる96単位を加えた、347単位となる。

(注7)算定式は次のとおり。

(347単位×150.72円×1,000,000)-{(96単位×150.72円×1,000,000)+(25単位×150.69円×1,000,000)+(29単位×150.70円×1,000,000)+(197単位×150.71円×1,000,000)}
=3,300,000円

及び

(イ) 当該違反行為に係る自己の計算によるものとみなされる有価証券の売付け等の数量が当該違反行為に係る自己の計算によるものとみなされる有価証券の買付け等の数量を超える場合の、当該超える数量に係る課徴金の額6917万円(注8)

(注8)当該超える数量は、上記(ア)(注6)a.記載の数値(630単位)から同b.記載の数値(347単位)を差し引いた283単位であるところ、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の買付け等についての金商法第67条の19又は第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格(150.47円)に、当該超える数量(283単位)を乗じて得た額を控除することで算出される。

{(154単位×150.72円×1,000,000)+(29単位×150.70円×1,000,000)+(100単位×150.71円×1,000,000)}-(283単位×150.47円×1,000,000)
=69,170,000

を合計し、

7247万円となる。

上記(1)ないし(2)により算定した額を合計し、

1億3337万円が課徴金の額となる。

 

【参考】

違反行為期間1

違反行為期間2

別表(PDF)

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