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平成31年3月29日
証券取引等監視委員会

ウィルグループ株式外4銘柄に係る特殊見せ玉を用いた偽計に対する課徴金納付命令の勧告について

 

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会は、ウィルグループ株式外4銘柄に係る特殊見せ玉を用いた偽計について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

    2.法令違反の事実関係

    課徴金納付命令対象者は、株式会社ウィルグループ外4銘柄の各株式につき、別表記載の各株式の立会市場において、各株式の通番1等(枝番を含む。以下同様。)記載のとおり、他の投資家が発注した引け条件付き成行注文(以下「引成注文」という。)及び指値出来ずば引け成行注文などの引けで約定する注文(以下「引けの注文」という。)のうち、買い側又は売り側のいずれかの引けの注文の発注株数が他方の引けの注文の発注株数を大幅に上回っている状況を見つけると、真実は、約定意思がなく、引け直前までには取消しを行うつもりであるにもかかわらず、引けの注文の発注株数の少ない側に、同通番2等記載のとおり、他の投資家が発注した引けの注文の株数と、概ね均衡する株数分だけ信用新規の引成注文を複数回に分けて発注することによって、あたかも約定意思があるかのように装い、虚偽の発注状況を作出し、第三者をして、引けまで当該発注状況が維持されるであろうとの錯誤を生じさせ、第三者に当該虚偽の発注状況を前提にした投資判断をさせた上で、自らは、引けにおいて、同通番1等記載の他の投資家が発注した買い側等の引けの注文と対当させて約定させるべく、同通番3等記載のとおり、信用新規の買付け等を行うとともに、当該買付け等に係る株式につき、同通番4等記載のとおり、売り側等に信用返済の引成注文を発注し、その後、同通番5等記載のとおり、売り側等に発注していた約定意思のない信用新規の引成注文の一部を取り消した上、更に引け直前に、最後まで残していた約定意思のない引成注文を取り消すことによって、引けにおいて、自らに有利となる引けの注文の発注状況にすることで、売り側等に発注した信用返済の引成注文を自らに有利な価格で約定させることを企て、

    (1)  各株式につき、同通番2等記載のとおり、売り側等に、約定意思のない信用新規の引成注文を複数回に分けて発注した上で、同通番5等記載のとおり、同注文を全て取り消すまでの間、同注文を維持することによって、虚偽の発注状況を作出し、第三者に同注文が引けまで維持されるであろうとの錯誤を生じさせて、第三者に当該虚偽の発注状況を前提にした投資判断をさせ、もって、有価証券の売買のため、偽計を用い

    (2)  上記(1)記載の偽計により、各株式につき、約定意思のない信用新規の引成注文の発注開始から、その全てを取り消すまでの間、第三者に対し、当該虚偽の発注状況を前提にした投資判断をさせるとともに、同注文を全て取り消すことによって、引けにおいて、自らに有利となる引けの注文の発注状況にし、もって、各有価証券の価格に影響を与え、別表記載のとおり、その間、自己の計算において、同通番3等記載のとおり、信用新規の買付け等をするなどし

     たものである。

    違反行為事実の概要については、別図のとおり。

    課徴金納付命令対象者が行った上記の行為は、金融商品取引法第173条第1項に規定する「第158条の規定に違反して、偽計を用い、当該偽計により有価証券等の価格に影響を与えた」ものと認められる。

  • 3.課徴金の額の計算

    上記の違反行為に対し金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は、96万円である。

    計算方法の詳細については、別紙1及び別紙2のとおり。

    4.その他

    本件については、日本取引所自主規制法人より提供された情報も参考として、実態解明を行ったものである。
     本件は、平成30年10月5日に勧告を行った、「第一稀元素化学工業株式外6銘柄に係る特殊見せ玉を用いた偽計に対する課徴金納付命令の勧告について」と同様に、特殊見せ玉を用いた事案である。一般的な見せ玉は、例えば、最良買い気配付近に大口の買い注文を発注し、売り注文に比べて買い注文が多く発注されているようにするなどして、買い優勢の発注状況を作出することで他の投資家の買付けを誘引しようとするものである。それに対し、本件及び上記事案の見せ玉は、例えば、既に発注されている第三者の引成買い注文に対して、約定させる意思のない引成売り注文を発注することで、買い側と売り側の引成注文の発注株数が同程度である引けの発注状況を作出するものであり、他の投資家を誘引しようとするものではないことから、「特殊見せ玉」と表記している。


(別表)

○違反行為状況

違反行為状況
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違反行為状況
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違反行為状況
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違反行為状況
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違反行為状況
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違反行為状況
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(別図)

○違反行為事実の概要について

違反行為事実の概要について
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(別紙1)

○課徴金の額の計算方法について

別表の各違反行為に係る課徴金の額の計算の基礎は以下のとおりである。

1.金融商品取引法第173条第1項の規定により、当該違反行為に係る課徴金の額は、当該違反行為の開始時から終了時までの間(以下「違反行為期間」という。)において、

(1) 当該違反者が当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量が、当該違反者が当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量を超える場合、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該有価証券等に係る有価証券の買付け等についての金融商品取引法第67条の19又は第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額

(2) 当該違反者が当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量が、当該違反者が当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量を超える場合、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該有価証券等に係る有価証券の売付け等についての金融商品取引法第67条の19又は第130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格に当該超える数量を乗じて得た額から当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額

 として算定。

2.上記1.で算定された課徴金の額につき、金融商品取引法第176条第2項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて算定。

3.上記2.によりそれぞれ算定した額を合計し、課徴金の額とする。

以上につき、別紙2のとおり。


(別紙2)

別表に掲げる事実につき

  • 1.株式会社ウィルグループに係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(1,000株)が、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(0株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券等に係る有価証券の最高価格(1,380円)に当該超える数量1,000株(1,000株-0株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

      (1,380円×1,000株)
    -(1,133円×500株+1,137円×200株+1,139円×300株)
    = 244,400円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、240,000円となる。
     

  • 2.株式会社ミスミグループ本社に係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(1,100株)が、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(0株)を超えていることから、当該超える数量1,100株(1,100株-0株)に係る有価証券の売付け等の価額から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券等に係る有価証券の最低価格(2,697円)に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額。

      (2,799円×1,000株+2,800円×100株)-(2,697円×1,100株)
    = 112,300円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、110,000円となる。
     

  • 3.株式会社モブキャストホールディングスに係る株式の取引について(違反行為期間①)

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(2,800株)が、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(0株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券等に係る有価証券の最高価格(952円)に当該超える数量2,800株(2,800株-0株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

      (952円×2,800株)
    -(893円×400株+894円×900株+897円×500株+900円×500株
     +901円×500株)
    = 154,800円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、150,000円となる。

  • 4.株式会社モブキャストホールディングスに係る株式の取引について(違反行為期間②)

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(5,800株)が、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(0株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券等に係る有価証券の最高価格(940円)に当該超える数量5,800株(5,800株-0株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

      (940円×5,800株)
    -(918円×500株+919円×2,500株+920円×800株+921円×1,500株
     +922円×500株)
    = 117,000円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、110,000円となる。

  • 5.株式会社アズジェントに係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(1,300株)が、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(700株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券等に係る有価証券の最高価格(3,690円)に当該超える数量600株(1,300株-700株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

      (3,690円×600株)-(3,465円×600株)
    = 135,000円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、130,000円となる。

  • 6.株式会社フィスコに係る株式の取引について

    (1) 違反行為期間において、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の買付け等の数量(7,900株)が、当該違反行為に係る有価証券等について自己の計算において行った有価証券の売付け等の数量(0株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券等に係る有価証券の最高価格(381円)に当該超える数量7,900株(7,900株-0株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額。

      (381円×7,900株)
    -(352円×4,000株+353円×3,900株)
    = 225,200円

    (2) 金融商品取引法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、220,000円となる。

  • 7.1.ないし6.により算定した額の合計
    240,000円+110,000円+150,000円+110,000円+130,000円+220,000円=960,000円となる。

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