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令和2年3月11日
証券取引等監視委員会

株式会社ディーティーシーに対する検査結果に基づく勧告について

1.勧告の内容
  福岡財務支局長が株式会社ディーティーシー(福岡県福岡市、法人番号1290001037788、代表取締役 大久保 貴広(おおくぼ たかひろ)、資本金300万円、常勤役職員4名、投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

2.事実関係
  株式会社ディーティーシー(以下「当社」という。)は、当社ウェブサイトや無料のメールマガジン等に広告を掲載することにより、投資顧問契約の締結の勧誘を行い、会員向けメール配信等により、助言を行っている。
 
  そのような中、今回検査において当社の業務運営の状況を検証したところ、以下の問題が認められた。
 
(1) 投資助言・代理業を適確に遂行するに足りる人的構成が確保されていない状況及び投資助言・代理業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていない状況
  当社は、設立当初から、実質的な業務運営は五十森達哉(株式会社アイエフリバース(福岡県福岡市、法人番号7290001048103)の代表取締役。当社の株主や役職員ではなく、金融商品取引業の登録はない。以下「五十森」という。)によって行われ、同人が当社を実質的に支配している状況が認められた。
  このような状況の下、当社経営陣(大久保貴広代表取締役及び深谷浩三専務取締役(以下「深谷専務」という。))は、五十森の指示どおりに従い、法令等遵守意識及び投資者保護意識が著しく欠如したまま、漫然と業務を行っている。
  また、当社は、管理部長(非常勤)を「法令等を遵守させるための指導に関する業務を統括させる使用人」として当局に届け出ているものの、遅くとも平成24年5月以降は当人及び他の役職員が当該業務に従事している事実はなく、当社に当該業務を統括する者がいない状況を放置している。
  そのほか、当社は、投資助言・代理業を適確に遂行するために、業務の内容及び方法に関する社内規程を定めているものの、規程に沿った業務の遂行がほとんど行われておらず、投資助言・代理業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていない。
 
  当社における上記の状況は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第29条の4第1項第1号ホに定める「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者」に該当し、また、同号ヘに定める「金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者」に該当することから、このような当社の状況は、同法第52条第1項第1号に該当するものと認められる。
 
  そして、このような状況の中で、当社経営陣は法令違反行為であることを認識しながら以下の行為を行っていた。
 
(2) 顧客取引を利用して実質的支配者らの利益を図る目的をもって行った正当な根拠を有しない助言行為
  当社は、五十森からの指示に基づき、株式会社トラフィックトレード(福岡県福岡市、法人番号1290001025859、代表取締役 橋口 隆二、資本金1000万円、常勤役職員4名、投資助言・代理業)と共同するなどして、五十森らが買い付けた銘柄の株価を上昇させて、五十森らの利益獲得を目的として、以下の手口により、複数の顧客に対し、正当な根拠を有しない助言を行っていた。
ア 五十森は、自己名義の口座等を利用して、特定の株式を買い付ける。深谷専務は、五十森からの当該株式に係る買付指示に基づき、五十森らが運用する口座等を利用して、当該指示のあった銘柄を買い付ける。
イ 当社は、顧客の買付けに基づく価格変動を利用して五十森らの利益を図る目的をもって、五十森からの指示に基づき、チャートや周辺情報を確認・分析することなく、正当な根拠を有さずに五十森の買付銘柄を買い推奨とする助言を行う。
ウ 上記イに前後して、大久保貴広代表取締役らは、五十森からの指示に基づき、当社と無関係を装ったSNSアカウントを利用し、見込顧客に対して、五十森の買付銘柄を推奨する投稿を行う。
エ 五十森の買付銘柄の株価が上昇したところで、五十森は、当該銘柄を売り抜けることにより、五十森の利益を確定させる。また、深谷専務は、五十森からの売付指示又は深谷専務の判断等に基づき、当該銘柄を売り抜けることにより、取引していた口座の利益を確定させる。
 
(具体的な事例は別紙1のとおり。)
 
  当社の上記行為は、金商法第41条の2第2号に掲げる「特定の金融商品に関し、顧客の取引に基づく価格の変動を利用して当該顧客以外の第三者の利益を図る目的をもつて、正当な根拠を有しない助言を行うこと」に該当するものと認められる。
 
(3) 金融商品取引業者等の役員が、自己の職務上の地位を利用して、顧客の有価証券の売買その他の取引等に係る注文の動向その他職務上知り得た特別の情報に基づいて、有価証券の売買その他の取引等をする行為
  深谷専務は、顧客に対する助言の内容を事前に知り得る立場にあることを利用して、助言を受けた顧客の取引に基づく価格の変動を利用して自己の利益獲得を目的として、第三者名義の口座を用い、顧客に助言を行う前に当該助言の内容に係る有価証券と同一の銘柄の有価証券の売買等を行った。
  なお、深谷専務は、知人であるA(当社の顧客ではない。)の利益獲得を目的として、Aに対し、顧客に助言を行う前に当該助言の内容の情報提供も行った。
 
(具体的な事例は別紙2のとおり。)
 
  当社の役員が第三者名義の口座を用いて有価証券の売買を行った行為は、平成29年法律第37号による改正前の金商法第38条第8号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第12号に掲げる「金融商品取引業者等の役員が、自己の職務上の地位を利用して、顧客の有価証券の売買その他の取引等に係る注文の動向その他職務上知り得た特別の情報に基づいて、有価証券の売買その他の取引等をする行為」に該当するものと認められる。
 
(4) 著しく人を誤認させる表示のある広告をする行為
  当社は、無料のメールマガジンを配信する等の方法により、遅くとも平成31年1月以降、助言実績として掲載した株価上昇率について、実際には数%の上昇にとどまるにもかかわらず、実際の助言を行った期間とは異なる期間の株価上昇率を取り出し、あたかも助言を行った期間で株価が数倍に急騰したかのような記事を掲載していた。
 
  当社の上記行為は、投資助言・代理業に関する広告において、助言実績に関する事項について、著しく人を誤認させるような表示を行うものであり、金商法第37条第2項に違反するものと認められる。
 

参考資料(PDF:232KB)
 


(別紙1)

 顧客取引を利用して実質的支配者の利益を図る目的をもって
行った正当な根拠を有しない助言行為の例
 
平成30年
当社助言日:X
行為
X-6営業日  深谷専務は、五十森から(五十森が買い付けた)a銘柄の買付指示を受け、五十森らが運用する口座1を利用して、a銘柄を買付ける(X-1営業日、助言日にも追加で買付け)。
X-3営業日  深谷専務は、五十森らが運用する口座2を利用して、a銘柄を買付ける(X-1営業日、助言日にも追加で買付け)。
 その後、当社と共同してa銘柄の株価を上昇させるよう五十森から指示を受けた株式会社トラフィックトレードが、a銘柄を買い推奨(新規)とする助言を実施(X-1営業日、助言日にも買い推奨(フォロー)とする助言を実施)。
X-2営業日  当社は、五十森からa銘柄を買い推奨とする助言を行うよう指示を受ける。
助言日  当社は、a銘柄を買い推奨とする助言を実施。
X+1営業日  a銘柄の株価が上昇したところで、五十森及び深谷専務は、それぞれの口座で買い付けたa銘柄を売り抜け、五十森らの利益を確定。
 
 
(別紙2)
 
金融商品取引業者等の役員が、自己の職務上の地位を利用して、顧客の有価
証券の売買その他の取引等に係る注文の動向その他職務上知り得た特別の
情報に基づいて、有価証券の売買その他の取引等をする行為の例

 
平成29年
当社助言日:Y
行為
遅くともY-6
営業日までの間
 顧客に配信する予定のb銘柄に係る助言内容を深谷専務らに共有。
Y-6営業日  深谷専務は、第三者名義の口座を利用して、b銘柄を買い付ける(Y-5営業日~助言日(Y-3営業日を除く)にも追加で買付け)。
 深谷専務は、知人であるAに、b銘柄の買付けを勧める。
Y-3営業日  深谷専務は、知人であるAに、b銘柄の買い推奨時期とSNSでの推奨時期を伝達。
Y-1営業日  深谷専務は、知人であるAに、再度b銘柄の買い推奨時期とSNSでの推奨時期を伝達。
助言日  深谷専務は、知人であるAに、本日b銘柄の買い推奨を行うことを伝達。
 当社は、b銘柄を買い推奨(新規)とする助言を実施(同日、Y+1営業日にも買い推奨(フォロー)とする助言を実施)。
 深谷専務は、b銘柄を一部売却。
Y+1営業日  大久保貴広代表取締役らは、当社と無関係を装ったSNSアカウントを利用し、b銘柄を推奨する投稿を実施(Y+8営業日まで連日投稿)。
 深谷専務は、Y+6営業日までの間に、保有していたb銘柄を売り抜け、利益を確定。
 
 
(参考条文)
○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)
(登録の拒否)
第二十九条の四 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはこれに添付すべき書類若しくは電磁的記録のうちに虚偽の記載若しくは記録があり、若しくは重要な事実の記載若しくは記録が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
一 次のいずれかに該当する者
イ~ニ (略)
ホ 金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者
ヘ 金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者
(以下、略)

(広告等の規制)
第三十七条 (略)
2 金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業に関して広告その他これに類似するものとして内閣府令で定める行為をするときは、金融商品取引行為を行うことによる利益の見込みその他内閣府令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。

(禁止行為)
第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。
一~七 (略)
八 前各号に掲げるもののほか、投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為
※ 上記条文は、平成29年法律第37号による改正前の金融商品取引法に基づくもの。
 
(禁止行為)
第四十一条の二 金融商品取引業者等は、その行う投資助言業務に関して、次に掲げる行為をしてはならない。
一 (略)
二 特定の金融商品、金融指標又はオプションに関し、顧客の取引に基づく価格、指標、数値又は対価の額の変動を利用して自己又は当該顧客以外の第三者の利益を図る目的をもつて、正当な根拠を有しない助言を行うこと。
(以下、略)

(金融商品取引業者に対する監督上の処分)
第五十二条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 第二十九条の四第一項第一号、第二号又は第三号に該当することとなつたとき。
(以下、略)
 

○ 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)
(誇大広告をしてはならない事項)
第七十八条 法第三十七条第二項に規定する内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一~五 (略)
六 金融商品取引業者等の金融商品取引業(登録金融機関にあっては、登録金融機関業務)の実績に関する事項
(以下、略)

(禁止行為)
第百十七条 法第三十八条第八号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
一~十一 (略)
十二 個人である金融商品取引業者又は金融商品取引業者等の役員(役員が法人であるときは、その職務を行うべき社員を含む。)若しくは使用人が、自己の職務上の地位を利用して、顧客の有価証券の売買その他の取引等に係る注文の動向その他職務上知り得た特別の情報に基づいて、又は専ら投機的利益の追求を目的として有価証券の売買その他の取引等をする行為
(以下、略)
※ 上記条文は、改正前の金融商品取引業等に関する内閣府令に基づくもの。

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