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令和4年1月21日
証券取引等監視委員会

 

新生インベストメント・マネジメント株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1.勧告の内容
  証券取引等監視委員会が新生インベストメント・マネジメント株式会社(東京都中央区、法人番号1010001076871、代表取締役社長 平井 治子、資本金4.95億円、常勤役職員27名、投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

2.事実関係
 ⑴ 投資一任契約を締結した顧客のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行っていない状況
 投資一任業者には、投資一任契約を締結した顧客のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行う義務があり、その一環として、その運用財産について、契約締結前においても契約締結後においても、運用及び管理を適切に行うことを確保する必要がある。
 また、新生インベストメント・マネジメント株式会社(以下「当社」という。)は、前回検査(勧告日:平成24年12月7日)において、投資一任契約の運用に組み入れる投資対象資産の買付価格について十分な調査を行っていないなど、「投資一任業務に係る善管注意義務違反」として指摘を受け、平成24年12月、金融庁より金融商品取引法第51条の規定に基づき、投資一任契約の締結・運用に際して十分な体制を構築すること等の再発防止策の策定を含めた業務改善命令が発出されており、当社は、同命令を受け、商品特性別の調査プロセスと価格の妥当性検証のプロセスを社内規程等に加え、投資を決定する会議体において商品特性を踏まえた議論を行うなどとした業務改善を行うこととしていた。
 こうした中、前回検査以降に当社が顧客と締結した投資一任契約のうち、以下のAからFまでの他社運用の各ファンドを投資対象として組み入れている投資一任契約において、以下の問題が認められた。
 ア 商品特性に応じた調査の状況
  投資一任業者は、運用財産の適切な運用・管理を行うため、他社運用のファンドを投資対象として組み入れる場合には、投資一任契約締結前後を通じて、そのファンドの商品特性に応じた調査を行い、リスクの所在等を把握することが必要であるところ、当社は、以下のとおり、契約締結前後を通じて商品特性に応じた調査を十分に行っておらず、運用財産の運用・管理を適切に行っていない状況が認められた。
(ア) 多数の中小企業等に融資を行い、その元利金の返済を運用成果とする特性を有する海外運用会社のAファンドにつき、当社の調査は、そのような商品特性であるにもかかわらず、当該海外運用会社の組織体制やファンドの概要等の形式的な確認にとどまり、当該ファンドの具体的な融資先すら把握しておらず、融資の回収可能性の検証もしていない。
(イ) 世界のグロース株に投資し、投資可能通貨などにより複数のシェアクラスが存在する特性を有する海外運用会社のBファンドにつき、いずれのシェアクラスにおいても為替ヘッジが行われていないにもかかわらず、当社の調査では、為替ヘッジ付きのシェアクラスが存在すると誤認しており、その結果、為替ヘッジ付きでの運用を希望する顧客と投資一任契約を締結しており、契約締結後約1年もの間、シェアクラスにおける為替ヘッジが行われていない事実を認識しないまま運用している。
(ウ) プライム・ブローカーに顧客資産を担保や証拠金として差し入れてレバレッジをかけ、世界の様々な金融商品の先物、商品先物、ABSのマージン取引などに投資するという特性を有する海外運用会社のCファンド及びDファンドにつき、当社の調査では、そのような商品特性であるにもかかわらず、プライム・ブローカーについての調査を実施しておらず、プライム・ブローカーにおける顧客資産の分別管理の状況を確認していない。
(エ) 海外の未公開企業への投資という特性を有する海外運用会社のEファンド及びFファンドにつき、当社の調査では、そのような商品特性であるにもかかわらず、ファンドの投資対象企業の実在性を裏付ける情報を、当該海外運用会社を通じるなどして確認をしていない。
 
イ 時価評価体制に係る調査の状況
 投資一任業者は、運用財産の適切な運用・管理を行うため、非上場株式に投資をするファンドを運用財産に組み入れる場合には、運用財産の適切な運用・管理を行うため、運用先における時価評価体制を調査する等により、運用財産の正確な評価を実施することが必要である。
 しかしながら、当社は、Eファンド及びFファンドについて、非上場株式に投資するという特性を有するもので、運用先における時価評価体制を調査する等により、運用財産の正確な評価を実施することが必要であるが、顧客との投資一任契約締結前の調査時点で、当該ファンドの運用会社が行っていた時価評価に対する監査報告書による保証表明が得られていないにもかかわらず、自ら当該運用会社の時価評価体制の調査をしておらず、例えば、ファンドの投資先企業の財務諸表や評価方法等について入手の可否を確認しないまま投資一任契約を締結し、その後も適正な時価で評価されているかについての調査を行うことなく運用しており、運用財産の運用・管理を適切に行っていない状況が認められた。
 
ウ 投資判断の状況
 投資運用業は、他人の資金を運用することを業とする行為であり、一般に資金の運用を委託する顧客は、投資運用業者の専門能力等を信用して資金を投じ、投資運用業者は、その信頼を基礎に、通常広い裁量をもって顧客の利益のために運用を行う。
 また、投資一任契約とは、顧客から金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のために投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約であり、投資一任業者は、投資一任契約の相手方となる顧客のために、自らの専門能力等を活かして、また善良な管理者の注意をもって、その運用財産の適切な運用・管理を行う必要があり、その一環として、顧客のために、適切な投資判断を行う必要がある。
 しかしながら、当社は、Aファンドにつき、投資一任契約締結後に、当該ファンドの運用会社から当該ファンドの解約受付の一時停止、解約額の上限の引下げ設定等、顧客資産に重大な影響を与える可能性のある通知が断続的に行われるなど、投資一任契約に基づく当社の投資判断が求められる事象が立て続けに発生していたにもかかわらず、自らは投資判断を行っておらず、運用財産の運用・管理を適切に行っていない状況が認められた。
 
  当社による上記アからウまでの状況は、投資運用業者として、運用財産の運用・管理を適切に行っておらず、投資一任契約を締結した顧客のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行っていないものと認められ、金融商品取引法第42条第2項に定める「善良な管理者の注意義務」に違反するものと認められる。
 
⑵ 公募投資信託の受益者のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行っておらず、忠実に投資運用業を行っていない状況
  投資信託委託会社には、投資信託の受益者のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行う義務及び忠実に投資運用業を行う義務がある。
   こうした中、当社が設定した投資信託において、以下の問題が認められた。
ア 公募投資信託の設定前調査等が不適切な状況
 投資信託委託会社には、投資信託の受益者のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行う義務があり、その一環として、その運用財産について、その運用及び管理を適切に行うことを確保する必要があり、例えば、自らの専門能力等を活かして、受益者のために、適切な投資判断を行う必要がある。
 また、投資信託委託会社は、ファンド・オブ・ファンズ形式の投資信託を運用するに際して、受益者に対する受託者責任を果たす観点から、善良な管理者の注意をもって、投資対象先における運用財産の運用方法や管理方法等について、十分な調査・検討を実施・継続していくことが必要である。
 このような中、当社は、平成27年8月から同28年12月までにかけて、複数の公募投資信託(以下「公募投信シリーズ」という。)を設定している。当該公募投信シリーズは、ファンド・オブ・ファンズ形式で運用されており、当社は、国内運用会社が運用する国内外の複合資産に投資するラップ型の投資信託(以下「運用対象投信」という。)を組み入れている。
 公募投信シリーズの運用対象投信においては、基準価額の下落率が目標数値の範囲内にある場合には、様々なリスク資産間で機動的に資産を配分する運用が行われるが、目標数値を超過して下落した場合、リスク資産間で機動的に資産を配分する運用は行われず、最長1年間、運用対象投信の全運用資産が現金及び現金同等の性質を持つ短期債券(以下「現金等」という。)に固定化される運用となっていたため、公募投信シリーズは、運用対象投信の基準価額が目標数値の範囲内にあるか否かにより、運用方針が異なってくるという特色を有するものであった。
 しかしながら、当社は、公募投信シリーズの設定前における調査において、投資先ファンドの基準価額が目標数値を超過して下落した場合の運用方針を把握しないまま公募投信シリーズを平成27年8月以降順次設定し、令和2年3月に投資先ファンドを運用する国内運用会社より、公募投信シリーズのうちの一部の投資信託(以下「現金等配分公募投信」という。)の運用対象投信の全運用資産が現金等に固定化される運用となる旨の説明を受けるまで、当社は長期にわたって当該運用方針を認識せず、当該説明を受けた後も運用の見直しを検討するなど適切な投資判断を行わないまま公募投信シリーズの運用を行っていた。

 このような状況は、投資信託の受益者のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行っていないものと認められ、金融商品取引法第42条第2項に定める「善良な管理者の注意義務」に違反するものと認められる。
 
イ 公募投資信託の受益者対応が不適切な状況
 投資信託委託会社には、投資信託の受益者のために忠実に投資運用業を行う義務があり、専ら受益者の利益のためにのみ行動する必要がある。
 しかしながら、当社は、アに掲げた公募投信シリーズにおいて現金等配分公募投信が発生したことに関し、その一部では、受益者が負担し続けることとなる信託報酬やその他運用コストと、受益者が当該投信の中途解約時に負担することとなる信託財産留保額(以下「手数料等」という。)を比較すると、中途解約の方が受益者有利になる可能性があることを認識したにもかかわらず、令和2年4月10日に現金等配分公募投信の全ての受益者向けの臨時レポートを開示した際に、そのことに言及していない。
 また、当社は、受益者や販売会社の営業員から問い合わせを受けた際に、一部の営業員に対してのみ、受益者が手数料等を支払って中途解約した方が良い旨回答するなど、受益者公平性の観点から問題のある対応を行っている。

 このような状況は、投資信託の受益者のために忠実に投資運用業を行っていないものと認められ、金融商品取引法第42条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められる。

 


(参考条文) 
○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)
 
  (権利者に対する義務)
第四十二条 金融商品取引業者等は、権利者(次の各号に掲げる業務の区分に応じ当該各号に定める者をいう。以下この款において同じ。)のため忠実に投資運用業を行わなければならない。
一~三 (略)
2 金融商品取引業者等は、権利者に対し、善良な管理者の注意をもつて投資運用業を行わなければならない。

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