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令和5年6月9日
証券取引等監視委員会

 

ちばぎん証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1.勧告の内容

 関東財務局長がちばぎん証券株式会社(千葉市中央区、法人番号4040001034601、代表取締役社長 稲村 幸仁(注1)、資本金43億円、常勤役職員303名、第一種金融商品取引業、投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
(注1)令和4年6月30日、前代表取締役社長 木村 理 氏が退任し、同日付で代表取締役社長に就任。

2.事実関係

○ 適合性原則に抵触する業務運営の状況

 ちばぎん証券株式会社(以下「当社」という。)は、当社の親会社である株式会社千葉銀行(千葉市中央区、法人番号2040001000019、取締役頭取 米本 努、以下「千葉銀行」という。)、及び千葉銀行とアライアンス契約を締結している株式会社武蔵野銀行(さいたま市大宮区、法人番号6030001002490、取締役頭取 長堀 和正、以下「武蔵野銀行」という。)との間で各々金融商品仲介業務に係る提携契約を締結し、千葉銀行及び武蔵野銀行に対し、金融商品仲介業務として当社に顧客を紹介する業務(以下「紹介型仲介」という。)(注2)を行わせている。当社全体の収益額における銀行からの紹介顧客に係る収益額の割合は高く、銀証連携に係る収益が当社の中心的な収益源となっている。
(注2)千葉銀行及び武蔵野銀行は、顧客を紹介する際、当社の取扱商品の概要説明のみを行い、個別商品の具体的な特性・条件等に言及した説明を禁止している。
 こうした状況を踏まえ、当社の業務運営状況を検証したところ、以下の問題が認められた。
 
⑴ 適合性原則に抵触する勧誘が長期的・継続的に発生している状況
① 当社は、以下のとおり、顧客の投資方針や投資経験等の顧客属性を適時適切に把握しないまま、多数の顧客に対し、複雑な仕組債の勧誘を長期的・継続的に行っている状況が認められた。
ア.顧客の投資方針と当社が把握している投資方針が異なっている事例
 個人の仕組債保有先(令和4年6月末時点で仕組債を保有していた8,424顧客)のうち、2,424顧客は、最もリスク許容度が高く、当社において複雑な仕組債を購入することが可能となる投資方針の「積極的値上り益重視」ではなく、これよりもリスク許容度の低い投資方針を有する顧客であった。
イ.顧客の投資経験と当社が把握している投資経験が異なっている事例
 銀行で投資経験を把握されずに紹介され、当社が投資経験を確認した上で仕組債の購入に至ったとしている80顧客のうち、34顧客は、金融商品の投資経験を全く有していない顧客や当社において複雑な仕組債を購入することが可能となる投資経験を有していない顧客であった。
② 当社は、複雑な仕組債の勧誘に際し、少なくとも3顧客に対し、仕組債の参照指標に係る変動により損失が生ずるおそれがある理由等について、顧客属性に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明を行っていないことが顧客への説明状況の検証において認められた。
 
⑵ 適合性原則を遵守するための態勢が不十分な状況
 当社は、銀行側において紹介型仲介契約で定めた業務を超えた商品説明がなされる等の適合性原則の遵守に支障を生じさせる要因が発生していたにもかかわらず、適切に実態把握するなどしてこれを解消しなかったほか、当社営業員に対して顧客の投資方針や投資経験等の適合性を適切に把握する方法を周知徹底しないまま、複雑な仕組債の勧誘販売を急拡大させた。
 この結果、仕組債を購入した顧客からの苦情が多数寄せられるようになったが、その苦情の中には、当社が把握している投資方針と顧客が述べる投資方針が一致していないものなど、当社における適合性原則の遵守状況に問題があることを示唆するものが含まれていた。当社は、それらの苦情の大半を「一方的申出」として処理を完了したため、苦情の中に含まれる適合性原則の遵守に関わる問題点を適切に抽出分析することなく看過し、業務改善に向けて苦情を適切に活用できなかった。また、多数の苦情が継続的に発生する状況を自ら解消し切れず、自主規制機関である日本証券業協会から適合性原則の遵守状況に関して計3回に及ぶ注意喚起を受けることにも繋がった。
 日本証券業協会から適合性原則の遵守状況に関する懸念が示されたことを踏まえ、当社は全社的かつ抜本的に苦情対策に取り組むことを目的として、社長自らも参加する会議体を発足させたものの、適合性原則に抵触する勧誘販売状況の実態把握やこれに基づく実効性ある態勢整備を行わなかったことなど、適合性原則に抵触する勧誘販売を防止・改善するための取組が不十分であった。
 以上のとおり、当社においては、適合性原則に対する理解やその遵守の重要性に対する意識の希薄さ等により、真の顧客利益を考えた投資勧誘ではなく、手数料収益を上げるためのツールとして仕組債の販売がなされ、適合性原則を遵守するための態勢整備も不十分であったため、適合性原則に抵触する不適切な勧誘販売を防ぐことができなかった。
 

 上記⑴②の行為は、金融商品取引法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第1号の「契約締結前交付書面の交付に関し、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為」に該当すると認められる。

 上記⑴及び⑵の状況は、適合性原則に抵触する業務運営を継続的に行っていたものと認められ、当社における仕組債の勧誘販売状況は、金融商品取引法第40条第1号の「顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること」に該当すると認められる。

 なお、上記の状況は、当社経営陣において、銀証連携で生じていた問題を適切に把握していなかったこと、適合性原則に対する理解やその遵守の重要性に対する意識が希薄であったことにより発生したものであると認められる。

pdf 参考資料(PDF:662KB)


(参考条文) 

○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(禁止行為)
第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。
一~八 (略)
九 前各号に掲げるもののほか、投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為
 
(適合性の原則等)
第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。
一 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行つて投資者の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。
二 (略)

 

○ 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)

(禁止行為)
第百十七条 法第三十八条第九号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
一 次に掲げる書面の交付に関し、あらかじめ、顧客(特定投資家(法第三十四条の二第五項の規定により特定投資家以外の顧客とみなされる者を除き、法第三十四条の三第四項(法第三十四条の四第六項において準用する場合を含む。)の規定により特定投資家とみなされる者を含む。以下同じ。)を除く。以下この号において同じ。)に対して、法第三十七条の三第一項第三号から第七号までに掲げる事項(ニに掲げる書面を交付する場合にあっては、当該書面に記載されている事項であって同項第三号から第七号までに掲げる事項に係るもの)について顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為
イ 契約締結前交付書面
ロ 上場有価証券等書面
ハ 第八十条第一項第三号に掲げる場合にあっては、同号に規定する目論見書(同号の規定により当該目論見書と一体のものとして交付される書面がある場合には、当該目論見書及び当該書面)
ニ 契約変更書面
二~五十 (略)
2~56 (略)

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