令和8年5月29日
証券取引等監視委員会

キャピタル・パートナーズ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1.勧告の内容

 関東財務局長がキャピタル・パートナーズ証券株式会社(東京都千代田区、法人番号2010001067085、代表取締役社長 沓澤 武彦、資本金10億円、常勤役職員35名、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

2.事実関係

〇 外国債券営業に係る不適切な業務運営の状況
 キャピタル・パートナーズ証券株式会社(以下「当社」という。)は、外国債券営業を当社収益の柱の一つとし、検査基準日(令和7年10月17日)現在、10通貨で発行された外国債券を取り扱っているところ、当該債券のうち4割程度がトルコ・リラ建て債券(以下「トルコ・リラ債」という。)からの収益となっている。
 当社では、トルコ・リラ債として、利付債やゼロ・クーポン債のほか、発行者による期限前償還条項付きゼロ・クーポン債(以下「コーラブル債」という。)を顧客へ勧誘している。
 また、当社は、歩合制の営業員11名を、令和6年5月から同7年1月までの間に、当社の兄弟会社で当社を所属金融商品取引業者とする金融商品仲介業者であるキャピタル フィナンシャルアドバイザーズ株式会社(以下「CFA社」という。)へ順次移籍させている。
 今回検査において、トルコ・リラ債の勧誘状況等を検証したところ、以下の問題が認められた(以下、下記(1)及び(2)の行為を総称して「不適正な投資勧誘」という。)。
 
(1) トルコ・リラ債取引の勧誘に関し、顧客に不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げる行為
 リラ/円の為替が長期的なすう勢として大幅に下落している状況にあった中、当社営業員は、当社で取り扱っているトルコ・リラ債の債券価格の推移について日々容易に把握可能であり、実際に債券価格が上昇しておらず不安定な値動きをしている状況を確認していたにもかかわらず、自己の収益を確保することを目的に、同債券の積極的な買付意向を特段有していなかった34顧客に対し、債券価格が金利等の影響を受け下落するリスクには何ら言及せず、コーラブル債において提示されている外貨ベースのコール価格が段階的に上昇していく点を利用して、その債券価格も「コール条項価格に向かって確実に上がっていく」「トルコ・リラベースでは○倍に必ずなる」等の説明や、「その時の値段でいつでも売れる」等と言及するなど、期限前償還されなかった場合でも、少なくとも将来の債券価格が安定的に上昇し中途売却により外貨ベースの値上がり益を得られることが確実である旨又は確実であると誤解させるおそれがあることを意図的に顧客へ告げて勧誘を行っていた。
 また、期限前償還条項の付されていないゼロ・クーポン債の債券価格についても、「絶対、満期の100に向かって上がっていく」「株は変動が激しいが債券は嘘つかない」等の説明や、「満期まで待つということではなく、金利はつかずに単価が上がっていくため、いつでも売却できる」「○年後に売る時には良い結果が出る」等と言及するなど、少なくとも将来の債券価格が安定的に上昇し中途売却により外貨ベースの値上がり益を得られることが確実である旨又は確実であると誤解させるおそれがあることを意図的に顧客へ告げて勧誘を行っていた。
 そのほか、トルコ・リラ債に関し、勧誘時における発行体の高格付をもって、将来にわたり償還金の支払いを受けられることが確実である旨を告げる等の勧誘を行っていた(計38件、7営業員)。
 なお、当該営業員の一部においては、CFA社に移籍した後も同様の勧誘を行っていた(計10件、3営業員)。
 
(2) トルコ・リラ債取引に係る不適切な投資勧誘行為
   当社営業員は、上記(1)のほか、トルコ・リラ債の勧誘において、42顧客に対し、外貨ベースの高利回りや、当該債券の発行体が高格付であることによる償還金支払いの安全性といったメリットのみを強調する一方で、リラ/円の為替反転を期待させる説明をしつつ、損益分岐点となる為替レートや取引による損失が発生する可能性などのデメリットについて顧客に対し具体的に説明していないといった不適切な投資勧誘が認められた(計50件、8営業員)。
 なお、当該営業員の一部においては、CFA社に移籍した後も同様の勧誘を行っていた(計14件、5営業員)。
 
(3) 委託を行った金融商品仲介業者に対し実効性ある管理態勢を構築していない状況
 当社では、内部管理部門であるコンプライアンス部が委託先の金融商品仲介業者に対する管理・指導・監督を担う態勢となっているところ、当社及びCFA社では営業管理として共通の通話録音システムを使用し、CFA社の営業員に対する通話録音モニタリングを当社が直接行っているものの、同部においては、後述の当社営業員に対するモニタリング同様にCFA社に移籍した営業員についてトルコ・リラ債の投資勧誘の適切性に着目したモニタリングを全く実施していない。
 なお、CFA社の管理部門に対しては通話録音システムのアクセス権が解放されていないことから、CFA社も自ら不適正な投資勧誘に対する通話録音モニタリングを実施していない。
 また、当社は、委託先の金融商品仲介業者の業務運営状況について、内部監査室により定期的に監査するとしているものの、CFA社の法定書面の保管状況や上席者による営業日誌の確認状況等といった形式面のみの確認に終始しており、CFA社の営業員に対する投資勧誘の適切性確保のための観点からの具体的検証を何ら実施していない等の状況にある。
 当社の沓澤武彦代表取締役社長は、長年にわたり営業員が管理部門の営業姿勢等の指導を軽視している企業風土が根付いていることに問題意識を有しており、その解決のために、問題のある歩合制の営業員をCFA社に移籍させることでビジネスモデルの転換を図ったとしている。
 しかしながら、上記のとおり、当社は、CFA社に対する実効性ある管理態勢を全く構築しておらず、当社からCFA社に移籍した営業員が継続して行っていた不適正な投資勧誘を看過している状況が認められる。
 
(4) 合理的根拠適合性の検討が十分に行われていない状況
 当社では、トルコ・リラ債に関し、これまで取り扱ってきたゼロ・クーポン債に加え、当社営業員からの提案を契機に、令和5年12月よりコーラブル債の取扱いを開始している。
 当社は、リラ/円の為替の長期的な下落が大きく影響しこれまで販売したトルコ・リラ債で多数の顧客に償還損・売却損が発生していることを認識していた中、新規で取り扱おうとする商品の導入可否等を経営会議へ諮るための事前審議機関である新商品委員会やその後の経営会議において、本来であれば、新たにコーラブル債を導入・販売することの合理性のみならず、トルコ共和国の政治・経済情勢や、為替・価格変動リスク等の変化を踏まえたトルコ・リラ債の再検証を行い、販売を継続することの是非を含めた十分な検討・評価を実施すべきであったと考えられる。しかしながら、当社は、トルコ・リラ債で顧客に損失発生が継続している状況に対して何ら問題意識を有していなかったことから、コーラブル債の導入に際し、チェックシートによる形式的な確認に終始し、その商品特性、リスク、適合する想定顧客及び投資対象としての合理性などの観点から具体的な分析・検討を実施しないまま、漫然と当該債券の販売を開始し現在まで継続している。
 
 上記(1)から(4)の状況等は、当社において、内部管理態勢及び経営管理態勢が不十分なことに起因しているものと認められる。
 ア 内部管理態勢が不十分な状況
 当社では、第1線である営業部門の営業責任者は、営業員の投資勧誘の適切性等を把握する必要性を認識していなかったため、通話録音等によるモニタリングを通じてトルコ・リラ債に係る営業員の勧誘実態の把握を行っておらず、各営業責任者自らが不適正な投資勧誘を行っていることから、各営業員へのけん制機能を十分に発揮していない。
 また、第2線である内部管理部門においては、トルコ・リラ債において多額の評価損が顧客に発生している状況を踏まえ、同債券に係る営業員の投資勧誘の適切性等に対するモニタリングの必要性を認識していたにもかかわらず、他業務を兼務する2名のコンプライアンス部員の業務多忙を理由として当該顧客を抽出し重点的な確認を行うなどのモニタリングを一切行っておらず、実効性ある顧客管理や取引モニタリングを実施できていない。加えて、上記のとおり長年にわたり営業員が管理部門の営業姿勢等の指導を軽視している企業風土が影響し、営業員への適切な注意喚起をためらって不適正な投資勧誘を看過してきたほか、委託先への管理等が十分に行われていない。
 さらに、第3線である内部監査部門においては、明らかな人員不足から表面的な検証に終始し、実効性のある社内監査や委託先への監査を行っていない。
 当社においては、第1線から第3線で上記の不備がそれぞれ認められているほか新商品委員会において合理的根拠適合性の検討がなされていないなど、実効性のある内部管理態勢が十分に構築されていない状況が認められる。
 
 イ 経営管理態勢が不十分な状況
 当社は、過去の関東財務局の検査等において、営業部門に対するけん制が機能していないことや販売管理態勢の不備等に起因すると考えられる問題点が指摘されていた。
 しかしながら、当社においては、こうした状況について度重なる指摘を受けながら、今回検査でもなお(1)及び(2)の営業部門による不適正な投資勧誘の問題が認められており、当社経営陣は問題が発生した根本原因について十分な追究を行うことなく、抜本的な法令等遵守及び内部管理態勢の見直しを主導してこなかったものと認められる。
 また、当社はリテール営業部門の営業員に対し手数料実績を算定基礎とした奨励金を支給しており、当社経営陣はとりわけ新興国通貨建て債券の手数料率が高く設定されていることで同営業員が同債券の営業に注力する動機づけになっていることに問題意識を持っていたものの、報酬制度や合理的根拠適合性の検討を含めた販売管理態勢の抜本的な見直しをせず、トルコ・リラ債営業から得られる収益確保を優先してきた。
 このように、経営陣主導で適切な管理態勢を構築することをけ怠した結果、長年にわたって、収益面で貢献する営業員に対して管理部門がものを言えない企業風土が醸成され、営業員に対するけん制が機能せず、不適正な投資勧誘がまん延しやすい環境が常態化していたものである。
 
 当社が行った上記(1)の行為については、金融商品取引法第38条第2号に掲げる「顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」に該当するものと認められる。
 当社における上記(3)の状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第15号に掲げる「委託を行った金融商品仲介業者の金融商品仲介業に係る法令に違反する行為を防止するための措置が十分でないと認められる状況」に該当するものと認められる。
 また、当社における上記のような業務運営の状況は、金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
   
   pdf参考資料(PDF:430KB)  
 
(参考条文)
 
   〇 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

   (禁止行為)
第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。
 一 (略)
 二 顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為
 三~九 (略)
 
   (適合性の原則等)
第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。
 一 (略)
 二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。
 
   (金融商品取引業者に対する業務改善命令)
第五十一条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
 
〇 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)
 
(業務の運営の状況が公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの)
第百二十三条 法第四十条第二号に規定する内閣府令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
一~十四 (略)
十五 委託を行った金融商品仲介業者の金融商品仲介業に係る法令に違反する行為を防止するための措置が十分でないと認められる状況
十六~三十六 (略)
2~16 (略)
 

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