令和8年6月5日
証券取引等監視委員会

moomoo証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1.勧告の内容

 証券取引等監視委員会がmoomoo証券株式会社(東京都渋谷区、法人番号4120001077369、代表取締役社長 伊澤 フランシスコ、資本金32億5000万円、常勤役職員91名、第一種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

2.事実関係

 ○ 投資者保護上問題のある業務運営
 moomoo証券株式会社(以下「当社」という。)は、令和5年10月から、個人向けにインターネット取引サービス(以下「ネット取引」という。)を開始し、国内上場株式(国内上場投資信託を含む。以下同じ。)、米国上場株式、米国上場投資信託(以下「米国ETF」という。)及び米国上場指標連動証券(以下「米国ETN」という。)の売買の取次ぎ等のほか、公募投資信託の募集の取扱い等を行っている。
 また、当社は、令和6年1月から、少額投資非課税制度(以下「NISA」という。)による金融商品の提供を開始し、ネット取引を通じ、NISAの対象商品として、米国上場株式及び米国ETFの売買の委託の取次ぎ等を行っている。
 なお、当社は、ネット取引開始以降、株式の買付代金の贈呈などを内容とする口座開設のキャンペーン等を展開することにより、新規の口座開設者数を増加させている。
 こうした中、今回検査において、当社の業務運営の状況について検証したところ、以下の問題が認められた。
 
 (1) NISAの対象商品に係る登録業務等における不適切な業務運営
 ① 米国ETF及び米国ETNの契約の締結に関し、顧客に対して虚偽のことを告げる行為
 租税特別措置法及び租税特別措置法施行令等においては、上場投資信託(ETF)などがNISAにおける成長投資枠の対象商品と規定されている一方、外国社債券であって、その償還価額が特定の指標に連動することを目的とする上場指標連動証券(ETN)などが対象外商品とされている。また、NISAの対象商品の除外要件として、毎月分配型又はヘッジ目的等以外のデリバティブ取引が利用されている投資信託等が規定(以下、対象外商品と併せて「本件除外要件等」という。)されている。
 こうした中、当社では、NISAの対象商品をシステムへ登録する業務を担当する部署(以下「担当部署」という。)において本件除外要件等を正確に認識しておらず、内部規程にも本件除外要件等の定めを設けていなかったことから、令和7年2月21日から同年5月27日までの間、少なくとも米国ETF及び米国ETNの計77銘柄(以下「本件銘柄」という。)に関し、本件除外要件等に該当するにもかかわらず、自社ウェブサイト又はアプリを通じて、顧客が閲覧可能なネット取引の注文画面において、NISAの対象商品である旨の事実と異なる内容を告げて、販売を行った。
 その結果、59顧客(以下「本件対象顧客」という。)が、本件銘柄のうち25銘柄について、NISA口座において売買を行った。
 その後、当社は、顧客からの問合せを受けて上記の行為を把握し、令和7年5月27日にNISAの対象商品としての販売を停止等したが、内部規程の見直しやチェック態勢の構築といった実効性のある改善策を策定しなかったことから、同年11月19日から同8年1月14日までの間、本件除外要件等に該当する米国ETF1銘柄に関し、本件銘柄と同様、事実と異なる内容を告げて、当該銘柄の販売を行ったことが、今回検査において判明した。
 その結果、1顧客が、上記1銘柄について、NISA口座において買付けを行った。
 
 当社における上記行為は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第38条第1号に規定する「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」に該当するものと認められる。
 
 ② 本件対象顧客に対して著しく杜撰な対応を行っている状況
 当社は、内部管理統括責任者を中心に本件対象顧客への対応を検討した結果、令和7年6月10日、本件対象顧客に対し、課税口座(特定口座もしくは一般口座)への振替又は約定の取消処理の選択が可能なことなどについて通知(以下「本件通知(ⅰ)」という。)を行った。
 その後、当社は、自社システムの仕様により特定口座への振替ができないことを把握したため、再度、令和7年7月4日に本件対象顧客に対し、一般口座へのみ振替が可能なことなどについて通知(以下「本件通知(ⅱ)」という。)を行った。
 本件通知(ⅰ)及び本件通知(ⅱ)の時点において、当社は、本件対象顧客の成長投資枠に係る年間投資枠について個別に是正していく一方、複数の本件銘柄を保有する顧客について、課税口座へ振替えるか約定の取消をするかどちらか一方しか選択させず、当該顧客が銘柄ごとに区々の処理を希望しても対応しない方針を決定したとしている。
 しかしながら、当社は、上記決定の内容について、顧客の判断や税務申告に影響を及ぼす情報であるにもかかわらず、個別に当社に問合せを行った一部の顧客を除き、本件対象顧客に対してこれらの決定を周知していない。
 また、当社は、本件対象顧客に対する今後の対応を検討する際、システムでの対応の可否といった基本的な確認を怠り本件通知(ⅰ)を行ったほか、特定口座への移管を希望した顧客への代替案などを何ら検討しないまま、システムの仕様により一括処理ができないという自らの都合のみを理由として特定口座への移管を行わないことを決定し、本件通知(ⅱ)を行った。
 上記のとおり、当社においては、本件対象顧客に対して著しく杜撰な対応を行っている。
 
 ③ 本件対象顧客に対して異なる対応を行っている状況
 当社は、年間投資枠を是正するとしているところ、令和7年7月、本件対象顧客のうち1顧客からの要望を受け、当該顧客の年間投資枠を是正している一方で、人的リソースが不足していることから、検査基準日(同年8月25日)時点においても、当該顧客以外の年間投資枠の是正に向けたスケジュールや具体的な対応方法等について検討を行っていない。
 その結果、上記1顧客以外の本件対象顧客である58顧客の年間投資枠を令和7年12月まで是正しておらず、本件対象顧客に対して異なる対応を行っている。
 
 当社における上記の状況は、担当部署及び内部管理部門の法令等諸規則の理解が不足していることに起因し、顧客に対して本件除外要件等に該当する金融商品をNISAの対象商品である旨の事実と異なる内容を告げて販売するという専ら当社の責めに帰すべき事由により発生したものであり、本来、迅速かつ適切な顧客対応が図られるよう万全を期すべきである。
 しかしながら、当社は、新商品・新規サービスの導入などの業容の拡大を優先する一方で、顧客への影響を考慮する意識が不足していることから、上記②及び③のとおり、著しく杜撰な対応、かつ、顧客間での異なる対応を行っており、NISAの対象商品に係る登録業務等における不適切な業務運営を行っているものと認められる。
 
 (2) 有価証券等管理業務に係る善管注意義務違反
 当社は、有価証券等管理業務として、株式会社証券保管振替機構に口座を開設し、口座管理機関として振替制度で取り扱う国内上場株式及び公募投資信託(以下「株式等」という。)の振替業務を行っている。
 株式会社証券保管振替機構では、「社債、株式等の振替に関する法律」に基づき、「株式等の振替に関する業務規程」等を定めているところ、当該規程等において、口座管理機関は、顧客から株式等の入庫(他社の証券口座から当社の当該顧客名義の証券口座に有価証券を移管することをいう。以下同じ。)及び出庫(当社の証券口座から他社の当該顧客名義の証券口座に有価証券を移管することをいう。以下同じ。また、入庫と併せて、以下「入出庫」という。)の申請があった場合、申請に基づく対応を行わなければならないとされている。
 こうした中、当社は、新商品・新規サービスの導入などの業容の拡大を優先する一方で、法令等諸規則を遵守する意識の徹底が不十分であり、振替業務に係る法令等諸規則の理解が不足していることから、顧客からの入出庫の申請に基づく対応はあくまでサービスの一環にすぎず、申請に応じないことも許容されると誤認するなど、令和6年4月以降、国内上場株式に関し、顧客からの出庫の申請を一律に受け付けていない(国内上場株式に係る株式公開買付が行われる場合を除く。)。
 また、当社は、令和6年9月以降、公募投資信託に関し、当社及び他社でも取り扱っている商品であり、入出庫の対応が可能であるにもかかわらず、顧客からの入出庫の申請を一律に受け付けていない。
 さらに、当社は、遅くとも令和6年4月以降、自社ウェブサイトにおいて、国内上場株式の出庫が可能となるよう対応する予定である旨を表示しているにもかかわらず、検査基準日時点においても、システム開発計画の策定や予算措置などの出庫の実現に向けて必要な対応を何ら行っていない。
 
 当社においては、顧客の有価証券の移転を管理する口座管理機関としての責務を果たすことが求められるところ、上記行為は、顧客のために善良な管理者の注意をもって、有価証券等管理業務(振替業務)を行っておらず、金商法第43条に規定する「善良な管理者の注意義務」に違反するものと認められる。
 
 (3) 疑わしい取引の該当性を検討・判断していない状況
 当社は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」という。)に基づき、疑わしい取引の該当性を検討・判断し、疑いがあると認められる場合には、疑わしい取引の届出(以下「届出」という。)を行うことが求められている。
 しかしながら、当社は、法令等諸規則を遵守する意識の徹底が不十分であり、口座開設業務の開始以降、届出業務に係る法令等諸規則の理解が不足していることから、口座開設を謝絶等した顧客とは取引関係が生じておらず、疑わしい取引の該当性を検討する必要性はないと誤った認識をしていた。
 このため、当社では、令和5年9月から同7年7月17日までの間、口座開設を謝絶等した少なくとも延べ1,531顧客に関し、疑わしい取引の該当性を検討・判断していない状況となっている。
 
 当社における上記の状況は、本来届出を行うべき取引の届出がなされていないことが懸念され、犯収法に違反する可能性があるものと認められる。
 
 (4) 金融商品取引業に係る電子情報処理組織の管理が十分でないと認められる状況(サイバーセキュリティを含むシステムリスク管理態勢が不十分な状況)
 ① システムリスク評価等が不十分な状況
  当社においては、システムリスク評価に係る内部規程の整備が不足していることから、一部の基幹システムが情報資産の台帳に明記されていないなど、重要な情報資産におけるシステムリスク評価が十分に行われていない。また、システムリスク評価及びシステム監査等で特定された課題への対応状況について、一元的・整合的な進捗管理が行われておらず、システムリスクに係る課題管理が十分に行われていないなど、システムリスク評価等が不十分な状況となっている。
 
 ② サイバーセキュリティ管理が不十分な状況
  当社においては、サイバーセキュリティ管理に係る内部規程の整備が不足していることや台帳の整備が不足していることから、ハードウェア及びソフトウェア等の構成情報が適切に管理されていないほか、脆弱性診断等により判明した脆弱性について、業務への影響分析や対応の優先順位付けを実施しておらず、脆弱性に対するリスク対応が十分に行われていない。また、サイバー攻撃を想定したコンティンジェンシープランの実行性を確保するための対応が十分に行われていないなど、サイバーセキュリティ管理が不十分な状況となっている。
 
 ③ システム障害管理・問題管理が不十分な状況
  当社においては、システム障害管理に係る内部規程の整備や適切な人的リソースを配置していないことから、システム障害の適切な記録、根本原因の究明及び傾向分析が十分に行われておらず、システム障害管理・問題管理が不十分な状況となっている。
 
 ④ システムリスクに係るモニタリングが不十分な状況
  当社では、内部規程において、各部門の情報管理責任者が、情報セキュリティ管理の状況を確認すると定めているものの、当該確認が実施されておらず、各部門の情報セキュリティ管理の実態を適切に把握していないなど、システムリスクに係るモニタリングが不十分な状況となっている。
 
 ⑤ システム監査が不十分な状況
  当社においては、システム監査の人的リソースの不足により、システム監査の指摘事項に対して実効性のあるフォロー・アップが行われていないことから、指摘事項が改善されないまま同様の指摘を再度受けるなど、システム監査が不十分な状況となっている。
 
 ⑥ システムリスクに係るガバナンスが不十分な状況
  当社では、情報セキュリティ委員会(委員長は代表取締役社長)を設置しており、同委員会が、情報セキュリティ管理に関する内部規程の整備、管理態勢の構築及び各部門における情報セキュリティに関する状況の確認など、ITガバナンスの中心的な役割を担っている。
  こうした中、情報セキュリティ委員会は、上記①、③及び④の状況を把握しているにもかかわらず、改善に向けた対応を指示しておらず、問題が継続した状況を放置している。
  また、当社経営陣は、ネット取引のサービス開始から数年が経過し、加えて、上記のとおり、情報セキュリティ委員会を通じて、システムリスク管理態勢に係る課題を把握しているにもかかわらず、適時・適切に対応を指示していない。
  以上のことから、当社においては、システムリスクに係るガバナンスが不十分な状況となっている。
 
    当社における上記①から⑥の業務運営の状況は、投資者保護に支障を生ずるおそれがあり、金商法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第14号に規定する「金融商品取引業等に係る電子情報処理組織の管理が十分でないと認められる状況」に該当するものと認められる。
 
   上記(1)から(4)の状況等は、当社において、経営管理態勢及び内部管理態勢が不十分なことに起因しているものと認められる。
  ア 経営管理態勢が不十分な状況
   当社経営陣は、新規の口座開設の獲得等に向けた取組みに注力するなど、営業施策を優先する一方で、コンプライアンスの実践計画(コンプライアンス・プログラム)の策定・見直しに適切に関与していないなど、役職員のコンプライアンス意識の醸成・向上に向けた十分な取組みを行っていない。また、新たにネット取引(口座開設サービスを含む。)を提供し、新商品・新規サービスを導入するにあたって、幅広い観点からリスク評価を行うため、業務や法令等諸規則、サイバーセキュリティを含むシステムリスク管理に精通した十分な人的リソースを配賦するなど、適切な経営管理機能を発揮すべきところ、適切な内部規程の作成・管理やコンプライアンス研修等による人材育成といった法令遵守を徹底するために必要な措置を怠っているほか、下記イに記載のとおり、当社において実効性のある内部管理態勢を構築しておらず、当社の経営管理態勢は不十分な状況にあるものと認められる。
 
  イ 内部管理態勢が不十分な状況
 当社では、上記アに記載のとおり、法令等諸規則を遵守する意識の徹底が不十分であり、内部管理部門の法令等諸規則の理解が不足していることから、内部規程の見直しが必要な場合であっても適時に見直しを行っていないほか、新商品・新規サービスの導入時等において、システムでの対応の可否や、法令等諸規則を遵守する観点からの十分な確認が行われていない。また、当社においては、サイバーセキュリティを含むシステムリスク管理に精通した十分な人的リソースが不足しているほか、必要な内部規程が整備されておらず、システムリスクの特定・分析・評価やサイバーセキュリティ対策を含めた業容に応じた適切な管理態勢が十分に構築されていない。さらに、当社においては、上記(2)の株式等の振替業務に関連する苦情等が多数寄せられていたにもかかわらず、その対応に向けた具体的な検討が行われていないなど、苦情等に対して迅速かつ適切に対処しておらず、当社の内部管理態勢は不十分な状況にあるものと認められる。
 
    当社における上記のような業務運営の状況は、投資者保護上重大な問題があり、金商法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
 
     

(参考条文) 

〇 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)  

(禁止行為)
 第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第四号から第六号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。
  一 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為
  ニ~九 (略)
 
(適合性の原則等)
 第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。
  一 (略)
 ニ 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。
 
(善管注意義務)
 第四十三条 金融商品取引業者等は、顧客に対し、善良な管理者の注意をもつて有価証券等管理業務を行わなければならない。
 
 (金融商品取引業者に対する業務改善命令)
 第五十一条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
 
 〇 金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号)(抄)  
 
(業務の運営の状況が公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるもの)
第百二十三条 法第四十条第二号に規定する内閣府令で定める状況は、次に掲げる状況とする。
一~十三の二 (略)
十四 金融商品取引業等に係る電子情報処理組織の管理が十分でないと認められる状況(金融商品取引業等として高速取引行為を行う金融商品取引業者等にあっては、法第六十六条の五十七第一号に規定する状況を含む。)
十五~三十六 (略)
2~16 (略)

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