平成10年度版年次公表


証券取引等監視委員会の事務処理状況の公表について

平成11年10月8日
証券取引等監視委員会


1.事務処理状況の公表

 証券取引等監視委員会の活動状況については、金融再生委員会設置法第32条の規定に基づき、公表することとされており、本年は、平成10年7月1日から11年6月30日までの期間における事務の処理状況を10月8日に「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表した。
 本公表は、平成4年7月に委員会が発足後、7回目となる。
 なお、昨年12月15日に金融再生委員会が発足したが、証券取引等監視委員会は、金融監督庁とともに、従来の体制のまま金融再生委員会に移管された。

2.全般的な評価

 一般的には、ルール遵守の重要性の認識が深まりつつあると思われるものの、未だ十分であるとは認めがたい面がある。本公表期間においても、取引一任勘定取引の契約、投機的利益の追求を目的とした役職員の有価証券売買など法令違反行為のほか、証券会社の営業姿勢や内部管理体制に関する問題点も多数認められた。証券会社の役職員は法令遵守の重要性を強く認識し、公正な業務遂行にむけて一層努力する必要がある。
 現在、金融システムの抜本的な改革が進行していく状況の下で、日本の証券市場や金融先物市場が市場参加者の信頼を確保するためには、監視委員会が適切にその責務を果していくとともに、その活動が正確に関係者に理解されていくことが重要である。

3.概要

(1) 犯則事件の調査・告発
 犯則事件の調査については、内部者取引の事実につき4件、相場操縦の事実につき1件、有価証券報告書の虚偽記載の事実につき1件、計6件を証取法違反の罪に該当するとして告発を行った。その概要は次のとおりである。
○ 大都工業、日本エム・アイ・シー、トーア・スチール事件(内部者取引)
 大都工業(株)の会社更生法の手続開始、日本エム・アイ・シー(株)とインテック(株)の合併及びトーア・スチール(株)の解散に係る重要事実の公表前に、会社関係者が損失を回避又は利益を得る目的で当該株式の売買を行った。
○ 昭和化学工業事件(相場操縦)
 (株)フレックスの実質的な代表者である専務取締役及び同社職員は、昭和化学工業株式を仮名口座を用いて、同社株式の売買取引を誘引する目的で、売買取引を繁盛であると誤解させ、かつ、同社株式の相場を変動させるべき一連の売買取引を行った。
○ 日本長期信用銀行事件(有価証券報告書虚偽記載)
 (株)日本長期信用銀行の代表取締役頭取及び代表取締役副頭取2人は、平成10年3月期の当期未処理損失について、関連親密企業への融資の回収不能部分に対して適正な引当・償却を行わず、重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。

(2) 検査
 検査については、本事務年度中に国内証券会社68社、外国証券会社12社に対して検査に着手した。
 本事務年度において検査が終了したものは、前期繰越分を含め、国内証券会社66社、外国証券会社10、自主規制機関1機関、証券業務の認可を受けた金融機関1機関となっている(合計78社・機関)。このうち70社・機関に問題点が認められた(問題点の割合89.7%)。

(3) 金融再生委員会及び金融監督庁長官に対する勧告及び措置報告
 金融再生委員会及び金融監督庁長官に対して、犯則事件の調査及び検査結果に基づいて重大な法令違反として36件の勧告を行った。このうち検査結果に基づくものが34件、犯則事件の調査結果に基づくものが2件となっている。事案の内容別内訳は次のとおり。

    会社 個人
向い呑み及び呑行為 1社 13人
取引報告書の不交付又は虚偽の取引報告書の交付 2社 1人
取引一任勘定取引の契約を締結する行為 1社 28人
作為的相場を形成させるべき売買をする行為 2社 2人
作為的相場が形成されることを知りながら売買の受託をする行為 3社 4人
投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買取引 19人
損失を補てんするため財産上の利益を提供する行為等 2社 6人
外務員の職務に関する著しく不適当な行為 4人
有価証券を有しないでその売付けをする行為 3社
その他 5人

(4) 取引審査
 本事務年度中に行った審査件数は、価格形成に関するもの104件、内部者取引に関するもの165件、その他風説の流布等の観点からのもの6件、計275件となっている。
○ 価格形成に関する審査
 株価が急騰するなど不自然な動きをしたもの、株価が一定水準に固定されていると認められた銘柄を中心に審査。
○ 内部者取引に関する審査
 新株等の発行、会社の合併、会社更生手続き開始の申立て等会社の業績に著しい影響を及ぼすと思われる情報を公開することにより、株価が大きく変動したものを中心に審査。
○ その他風説の流布等の審査
 「会社更生法の適用を申請」「資金ショートする」「業務提携を解消する」等各種情報により株価が大きく変動したと思われる銘柄を中心に審査。

 なお、「証券取引等監視委員会の活動状況」は、委員会事務局のほか、各財務局・財務支局等において閲覧することができる。また、その本文は10月12日の官報及び監視委員会のホームページに掲載される予定である。


 

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