平成11年度版年次公表


証券取引等監視委員会の事務処理状況の公表について

平成12年9月28日
証券取引等監視委員会

1.事務処理状況の公表

 証券取引等監視委員会(以下「監視委員会」という。)の活動状況については、金融再生委員会設置法第34条の規定に基づき、本年は、平成11年7月1日から12年6月30日までの期間における事務の処理状況を9月28日に「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表した。本公表は、監視委員会が発足後、8回目となる。
 なお、本年7月1日に金融庁が発足したが、監視委員会は、従来の体制のまま金融庁に移管された。

2.全般的な評価

 金融システムの抜本的な改革が進むなか、クロスボーダー取引の一層の拡大、国内外における市場間競争の活発化、さらに情報通信技術の飛躍的な発展に伴い、インターネットを利用した取引も増大してきている。このような証券市場を取り巻く環境の変化のなかで、顧客に損失を表面化させないことを約束して複雑なデリバティブを組み込んだ、いわゆる「飛ばし類似金融商品」の取引の勧誘を行ったり、有価証券の募集のため偽計を用いたりする行為など、従来とは異なる違法行為が摘発されており、監視委員会が対象とすべき取引は複雑化・広域化してきている。こうした状況のもと、監視委員会の役割は、ますます大きくなってきている。
 なお、本年から、監視委員会の平成12検査事務年度の検査基本方針及び検査基本計画についても資料編に掲載し、公表することとした。

3.概要

(1) 犯則事件の調査・告発
 犯則事件の調査の結果、有価証券報告書等の虚偽記載につき3件、偽計販売につき2件、内部者取引につき1件、相場操縦につき1件、計7件を証取法違反の罪に該当するとして告発を行った。その主なものの概要は次のとおりである。
○ 日本債券信用銀行事件(有価証券報告書虚偽記載)
 (株)日本債券信用銀行の代表取締役会長、代表取締役頭取、代表取締役副頭取及び役員2人は、共謀の上、平成10年3月期において、取立不能と見込まれる貸出金について適正な引当・償却を行わず、当期未処理損失を過小に圧縮するなど、重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。
○ ヒューネット事件(相場操縦)
 行為者2名は、共謀の上、ヒューネット株式につき、借名口座を含む8名義を用いて、同株式の売買取引が繁盛であると誤解させる等の目的で、仮装売買を反復継続し、相場を変動させるべき一連の売買取引を行い、株価を高騰させるなど相場操縦を行った。
○ クレスベール証券事件(偽計販売)
 クレスベール証券の代表取締役会長は、プリンストン債の月間運用成果報告書の時価資産残高が過大に粉飾され、あるいは、約定どおりに期限前償還がされないおそれが高いことを認識しながら、プリンストン債の販売に当たり、安全に運用されているかのごとく虚偽の説明をし、有価証券の売買のため偽計を用いた。

(2) 検査
 検査については、本事務年度中に国内証券会社72社、外国証券会社14社に対して検査に着手した。
 本事務年度において検査が終了したものは、前期繰越分を含め、国内証券会社79社、外国証券会社15社となっている(合計94社)。このうち80社に問題点が認められた(問題点の割合85.1%)。

(3) 勧告
 金融再生委員会及び金融監督庁長官に対して、検査結果に基づいて重大な法令違反として37件(うち財務局分25件)の勧告を行った。事案の内容別内訳は次のとおり。

    会社 個人
向い呑み及び呑行為 2社 1人
取引報告書の不交付又は虚偽の取引報告書の交付 3社 3人
取引一任勘定取引の契約を締結する行為 2社 34人
有価証券の売買に関し虚偽の表示をする行為等 1社 4人
特別の利益を提供することを約して勧誘する行為 4社 4人
作為的相場を形成させるべき売買をする行為 2社 5人
作為的相場が形成されることを知りながら売買の受託をする行為 3社 4人
投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買取引 5人
損失を補てんするため財産上の利益を提供する行為等 4社 11人
通常の取引条件と著しく異なる条件での親法人等との取引 2社
有価証券の募集のため偽計を用いる行為 1社 1人
その他 6社 7人

(4) 建議
 有価証券報告書の虚偽記載に関する犯則事件の調査及び証券会社の検査を行った結果、問題点が認められたので、次の点について必要かつ適切な措置を講じるよう大蔵大臣及び金融監督庁長官に対して建議を行った。
○ 銀行業等の財務諸表の注記事項に関する建議
○ 証券会社の営業姿勢に関する建議

(5) 取引審査
 本事務年度中に行った審査件数は、株価が急騰するなど不自然な動きをしたもの等の価格形成に関するもの78件、投資者の判断に著しい影響を及ぼすと思われる情報の公開により株価が大きく変動したもの等の内部者取引に関するもの236件、その他風説の流布等に関するもの12件、合計326件となっている。

(6) その他の活動状況
 近年のインターネットの普及により、国際的に連携した監視活動が重要であるとの考えから、証券監督者国際機構(IOSCO)が平成12年3月28日に行った「インターネット・サーフ・デイ」に監視委員会も参加し、国際的に連携して一斉にインターネット上の証券取引に係る不正行為の実態把握を行った。
 また、ホームページを利用して相場の変動を意図した悪質な情報が流される可能性が増大しているため「インターネット巡回監視システム(IPS)」を開発し、効率的な監視に努めている。
 その他、新たな市場の開設に対応した取り組みを行うなど取引の公正性の確保に努めている。

 なお、「証券取引等監視委員会の活動状況」は、監視委員会事務局のほか、各財務局等において閲覧することができる。また、9月28日17時から監視委員会のホームページ、10月2日には官報に掲載する予定である。


 

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