1.事務処理状況の公表 証券取引等監視委員会(以下「監視委員会」という。)は、金融庁設置法第22条の規定に基づき、毎年、事務処理状況を公表することとしており、本年は、平成12年7月1日から13年6月30日までの期間における事務の処理状況を8月31日に「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表した。本公表は、監視委員会が発足後、9回目となる。 なお、監視委員会は、本年1月中央省庁再編に伴い金融再生委員会が廃止され、内閣府の外局として発足した金融庁に移管された。 2.全般的な評価 金融システムの抜本的な改革が進むなか、クロスボーダー取引の一層の拡大、国内外における市場間競争の活発化、さらに情報通信技術の飛躍的な発展に伴い、インターネットを利用した取引も増大している。このような証券市場を取り巻く環境の変化の中で、EB(他社株券償還特約付社債券)等の新たな金融商品の取引に関して、ボーナスクーポンの支払いを免れるような株価水準にまで株価を下落させたり、商品の重要な特性について誤解をさせるような勧誘を行うなど、新たな金融商品の取引に関して従来と異なる違法行為が摘発されており、監視委員会が対象とすべき取引は複雑化・広域化してきている。 なお、本年から、広く投資者の皆さんに証券取引を行う上で留意して頂きたい事項を「おわりに(投資者の皆様へ)」として、本文編の最後に掲載した。 3.概要 (1) 犯則事件の調査・告発 犯則事件の調査の結果、内部者取引につき2件、相場操縦につき1件、風説の流布につき1件、大量保有報告書の不提出につき1件、計5件を証券取引法違反の罪に該当するとして告発を行った。 その主なものの概要は次のとおりである。 ○ 東天紅事件(風説の流布、虚偽の大量保有報告書の提出) 行為者4名は、東天紅株の相場の変動を図る目的で、公開買付けをする旨等を記載した内容虚偽の文書を発表し、風説を流布した。また、行為者2名は、同株券の大量保有者になった旨の虚偽の記載をした大量保有報告書を提出した。 ○ アイカ工業事件(相場操縦) 行為者は、アイカ工業株につき、複数名義の口座を用いて、同株の売買取引が繁盛であると誤解させる等の目的で仮装売買を反復継続するとともに、株価の高値形成を図り、同株券の売買を誘引する目的で相場を変動させるべき一連の売買取引等を行った。 ○ 武藤工業事件(内部者取引) 行為者は、武藤工業が他社と資本提携を行う(重要事実)ことを決定したことを知り、これらの重要事実公表前に同社株券を買い付けた上で、その公表後にこれを売り付けて利益を得ようと企て、同社株券を買い付けた。 (2) 検査 検査については、本事務年度中に証券会社96社(うち外証14社)及び登録金融機関3機関に対して検査に着手した。 本事務年度において検査が終了したものは、前期繰越分を含め、証券会社95社(うち外証14社)及び登録金融機関2機関となっている。このうち証券会社60社及び登録金融機関2機関に問題が認められた(問題点の割合63.9%)。 (3) 内閣総理大臣及び金融庁長官に対する勧告及び措置報告 内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、検査結果等に基づいて重大な法令違反として、34件(うち財務局分22件)について行政処分等を求める勧告を行った。 事案の内容別内訳は次のとおり。
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(会・個) |
(会社) |
(個人) |
○ |
向い呑み及び呑行為 |
1件 |
- |
- |
○ |
取引一任勘定取引の契約を締結する行為 |
2件 |
- |
11件 |
○ |
委託注文に優先する自己の計算による売買をする行為 |
- |
1件 |
- |
○ |
有価証券の売買に関し虚偽の表示をする行為等 |
3件 |
5件 |
1件 |
○ |
特別の利益を提供することを約して勧誘する行為 |
2件 |
4件 |
- |
○ |
作為的相場を形成させるべき売買をする行為等 |
2件 |
- |
2件 |
○ |
損失を補てんするため財産上の利益を提供する行為等 |
1件 |
1件 |
1件 |
○ |
引受有価証券の親法人等への売却 |
- |
1件 |
- |
○ |
検査を忌避する行為 |
1件 |
- |
- |
○ |
取引報告書の不交付 |
- |
1件 |
- |
○ |
投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買取引 |
- |
- |
5件 |
○ |
その他 |
1件 |
1件 |
3件 |
(4) 取引審査 本事務年度中に行った審査件数は、株価が急騰するなど不自然な動きをしたもの等の価格形成に関するもの62件、投資者の判断に著しい影響を及ぼすと思われる情報の公開により株価が大きく変動したもの等の内部者取引に関するもの190件、その他風説の流布等に関するもの13件、合計265件となっている。 (5) 監視活動・機能強化への取組み 近年のマーケットのグローバル化等を背景として組成され販売されている新たな金融商品の株価形成や勧誘行為等の状況について、投資者保護上必要であるとの考えから、販売証券会社に対し独自の調査を実施し報告を求めるとともに、重点的な検査を行う等の取組みを行った。 また、ホームページを利用して相場の変動を意図した悪質な情報が流される可能性が増大しているため「インターネット巡回監視システム(IPS)」の機能を拡張し、効率的な監視に努めている。 その他、証券検査マニュアルを策定・公表するなど、透明な証券行政の確立に努めている。 なお、「証券取引等監視委員会の活動状況」は、監視委員会事務局のほか各財務局等において閲覧することができる。 |