平成13年度版年次公表


証券取引等監視委員会の事務処理状況の公表について


平成14年9月30日
証券取引等監視委員会


1.事務処理状況の公表

 証券取引等監視委員会(以下「監視委員会」という。)は、金融庁設置法第22条の規定に基づき、毎年、事務処理状況を公表することとしており、本年は、平成13年7月1日から14年6月30日までの期間における事務の処理状況を9月30日に「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表した。本公表は、監視委員会が発足後、10回目となる。

2.全般的な評価

 犯則事件の調査・告発においては、虚偽の有価証券報告書提出について、当該会社の監査証明に従事していた公認会計士を初めて告発するに至った(フットワークエクスプレス事件)。
 証券会社に対する検査においては、従来同様、取引一任勘定取引の契約を締結する行為が多く認められたほか、EB(他社株券償還特約付社債券)の勧誘に際して重要な事項について投資者に誤解をさせるような表示をする行為などが認められた。また、平成13年9月に起きた米国同時多発テロ以降の我が国市場の不安定な状況の中、一部の証券会社において空売り規制違反等が把握されたところである。さらに、証券会社の営業姿勢や内部管理体制に関する重大な問題点も多数認められた。証券会社の役職員は、法令遵守の重要性を強く認識し、公正な業務遂行に向けて一層努力するとともに、内部管理体制の充実・強化に努める必要がある。
 なお、今回は、監視委員会の発足以来10年という節目の年の公表となることから、これまでの10年間を振り返り、監視委員会の活動状況及び展望を簡潔にまとめた記述を第8章に掲載した。

3.概要

(1) 犯則事件の調査・告発
 犯則事件の調査の結果、内部者取引につき3件、相場操縦につき1件、虚偽の有価証券報告書の提出につき3件、計7件を証券取引法違反の罪に該当するとして告発を行った。
 その主なものの概要は次のとおりである。

○ フットワークエクスプレス事件(虚偽の有価証券報告書の提出)
 フットワークエクスプレス(株)の当時の代表取締役社長、取締役副社長、専務取締役ら役職員6人及び同社の監査証明の業務に従事していた公認会計士3名は、共謀の上、同社の業務に関し、平成9年12月期、平成10年12月期及び平成11年12月期決算において、架空収益の計上等により、粉飾経理を行い、虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。

○ 志村化工事件(相場操縦)
 行為者3名は、志村化工(株)の株券につき、その株価の高値形成を図り、同株券の売買を誘引する目的をもって、連続した成行又は高指値注文を行って高値を買い上がるとともに大量に下値の買付注文を入れて下値を支えるなどの方法により、その株価を高騰させるなど、いわゆる株価の変動操作等を行った。

○ 三笠コカ・コーラボトリング事件(内部者取引)
 行為者2人は、コカ・コーラウェストジャパン(株)が三笠コカ・コーラボトリング(株)の株券の公開買付けを行う(重要事実)ことを知り、その重要事実の公表前に三笠コカ・ コーラボトリング(株)の株券を買い付けた上、公表後にこれを売り付けて利益を得ようと企て、同社株券を買い付けた。

(2) 検 査
 本事務年度中に証券会社96社(うち外証14社)、登録金融機関7機関及び証券取引所2社に対して検査に着手した。
 本事務年度において検査が終了したものは、前期繰越分を含め90社となっている。このうち57社に問題点が認められ(問題点の割合63%)、57社中、39社において市場ルール等違反の問題が認められた(問題点の割合43%)。

(3) 内閣総理大臣及び金融庁長官に対する勧告及び措置報告
 内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、検査結果等に基づいて重大な法令違反として、26件(うち財務局分19件)について行政処分等を求める勧告を行った。
 事案の内容別内訳は次のとおり。

   (会・個 ) (会社 ) (個人
 取引一任勘定取引の契約を締結する行為 2件 13件  
 有価証券の売買に関し虚偽の表示をする行為等 3件 1件
 特別の利益を提供することを約して勧誘する行為 1件
 作為的相場を形成させるべき売買をする行為等 2件
 法人関係情報に係る不公正取引の防止上不十分な管理の状況 1件
 政令で定めるところに違反した空売り 1件 2件
 投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買取引 8件
 損失を補てんするため財産上の利益を提供する行為 2件
 外務員の職務に関する著しく不適当な行為 1件

(4) 取引審査
 本事務年度中に行った審査件数は、株価が急騰するなど不自然な動きをしたもの等の価格形成に関するもの112件、投資者の判断に著しい影響を及ぼすと思われる情報の公表により株価が大きく変動したもの等の内部者取引に関するもの249件、その他風説の流布等に関するもの31件、合計392件となっている。

(5) 一般からの情報の受付
 本事務年度中に投資者など一般から受け付けた情報は、個別銘柄に関するものが1,208件、証券会社の営業姿勢に関するものが498件、その他の意見等が475件、合計2,181件(対前事務年度比約60%増)となっている。

(6) 監視委員会の10年及び展望

○ 監視委員会の10年
 平成4年7月20日に発足した監視委員会は、平成14年7月20日をもって満10年を迎えた。この間に、証券市場を取り巻く環境は様々な面で大きな変化を遂げ、監視委員会の活動も常に市場を取り巻く環境の変化や新たな問題に的確に対応することが求められてきた。監視委員会は、証券会社等の検査や犯則調査などの業務を通じ、与えられた責務を果すべく様々な問題に対処してきており、その結果、告発や勧告、建議などの実績を重ねてきた。

○ 展望(監視活動・機能強化への取組み等)
 市場監視体制の抜本的強化を図るため、平成13年度末の定員(122人)に対して61人の大幅な増員を行い、監視委員会の平成14年度末の定員は182人(定員削減1人を含む)となった。
 また、インターネット取引専業やPTS(私設取引システム)運営業務など専門的な特色を活かした新たな形態の証券会社が増加してきていること等に的確に対処するため、平成14事務年度から、検査班の編成方式として業態の特色に対応した部門制を採用し、的確かつ効果的で、更に専門性の高い検査を実施することとした。また、これとは別に、問題が発生した場合に機動的に対処するため機動部門を設置した。
 さらに、自主規制機関等との情報交換や市場情報の収集・分析、また、社会的に関心が高く、即時対応が必要とされる案件に対する機動的な審査等の実施、急増する一般投資家からの情報提供の効率的な処理のため、平成14事務年度から新たに総務検査課に市場分析審査室を設置した。
 その他、民間企業等での勤務経験を有し、証券取引等に関する専門的な知識を有する人材の積極的な採用、情報収集体制の充実や個人投資家との意見交換会の実施など様々な施策を実施し、証券市場の公正性・透明性を確保し、監視委員会の職責を果すための努力を行っている。

 なお、「証券取引等監視委員会の活動状況」は、監視委員会事務局のほか各財務局等において閲覧することができる。

 

 

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