Note: This page is machine translated. Translated pages are not necessarily correct.
平成17年度版年次公表
証券取引等監視委員会の事務処理状況の公表について |
平成18年8月29日 |
証券取引等監視委員会 |
1. |
事務処理状況の公表 |
|
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」という。)は、金融庁設置法第22条の規定に基づき、毎年、事務処理状況を公表することとしており、本日、平成17年7月1日から平成18年6月30日までの期間(以下「平成17事務年度」という。)における事務の処理状況を「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表した。なお、本公表は、証券監視委発足後14回目となる。
|
2. |
全般的な評価 |
|
取引の公正の確保を図り、市場に対する投資者の信頼を保持するため、市場監視機能の充実・強化は近年とりわけ重要になってきている。こうした中、平成17年4月に課徴金制度が導入され、その調査権限が証券監視委に委任された。また、同年7月には、虚偽の有価証券報告書等提出に係る検査権限が証券監視委に委任された。さらに、これまでの証券会社等の取引の公正確保に関する検査に加え、財務の健全性等に関する項目が検査対象となったほか、投資信託委託業者、投資法人(REIT等)及び投資顧問業者(以下「投信・投資顧問業者等」という。)等に対する検査権限も委任され、また、新たに外国為替証拠金取引を行う業者が金融先物取引業者として検査の対象となるなど、証券監視委の検査範囲が大幅に拡大された。平成17事務年度においては、従前からの犯則事件の調査や証券会社等の取引の公正確保の検査はもとより、これらの大幅に拡大された権限に基づき調査・検査を実施してきたところである。
犯則事件の調査・告発については、証券監視委発足以来最多であった昨事務年度と同様、11件の告発を行ったが、これらはいずれも証券市場の信頼を揺るがす重大・悪質なものであった。中でも、特に社会的に大きな影響を与えたものとして、カネボウ(株)に係る虚偽の有価証券報告書提出嫌疑事件(カネボウ事件)、(株)ライブドアマーケティング株券に係る風説の流布及び偽計嫌疑事件(ライブドアマーケティング事件)、(株)ライブドアに係る虚偽の有価証券報告書提出嫌疑事件(ライブドア事件)、いわゆる村上ファンドによる(株)ニッポン放送株券に係る内部者取引嫌疑事件(ニッポン放送事件)があった。
課徴金調査については、平成18年1月に課徴金制度導入後初の課徴金納付命令の発出を求める勧告を行うなど、合計で9件の課徴金納付命令(いずれも内部者取引に関するもの)の発出を求める勧告を行った。
開示検査については、22件の検査を実施し、その結果、平成18年5月に(株)ペイントハウス提出の有価証券報告書に係る訂正報告書の提出命令の発出を求める勧告を行ったほか、開示検査に基づく自発的訂正が10件行われた。
証券会社等に対する検査については、新たに検査対象先となった外国為替証拠金取引を行う金融先物取引業者12社、投信・投資顧問業者等29社を含む150社の検査を終了し、問題点が認められた93社のうち、29社について行政処分等の勧告を行った。
建議については、平成4年の証券監視委設立以来、前事務年度までに7件行ってきたところであるが、最近のインターネット取引やクロスボーダー取引の増加、制度改革、相次ぐ会計不正事件といった、証券市場を取り巻く環境の変化に対応し、金融庁長官に対し、年間最多となる5件の建議を行った。
|
3. |
業務別の概要 |
|
(1) |
犯則事件の調査・告発 |
|
犯則事件の調査の結果、虚偽の有価証券報告書提出につき 4件・16名、相場操縦につき1件・1名、風説の流布及び偽計につき1件・6名、内部者取引につき5件・9名、計11件・32名(法人を含む)について、証券取引法に違反するとして告発を行った。
そのうち主なものの概要は次のとおりである。 |
|
○ |
カネボウ事件(虚偽の有価証券報告書提出)
カネボウ(株)の代表取締役会長兼社長であった犯則嫌疑者らは、同社の監査証明の業務に従事していた中央青山監査法人の公認会計士ら(犯則嫌疑者)と共謀の上、同社の業務に関して、大量の不良在庫等を抱え、業績が悪化していた子会社を連結決算の対象から外すなどの方法により、虚偽の記載のある連結貸借対照表及び連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出した。 |
○ |
ライブドアマーケティング事件(風説の流布及び偽計)
犯則嫌疑法人(株)ライブドアの代表取締役であった犯則嫌疑者らは、子会社であった(株)ライブドアマーケティングの株式について、実質的に(株)ライブドアが買収済みであった企業との株式交換によりこれを取得し、(株)ライブドアマーケティングの業績を粉飾して公表するなどの方法により同社の株価を上昇させた上で、これを売却して利益を得ようと企て、虚偽の内容等を含む公表を行い、もって、有価証券の売買その他の取引のため及び有価証券の相場の変動を図る目的をもって、偽計を用いるとともに、風説を流布した。 |
○ |
ライブドア事件(虚偽の有価証券報告書提出)
犯則嫌疑法人(株)ライブドアの代表取締役社長であった犯則嫌疑者らは、同社の監査証明の業務に従事していた港陽監査法人の公認会計士ら(犯則嫌疑者)と共謀の上、同社の業務に関して、売上計上の認められないライブドア株式売却益約38億円を売上高に含め、また架空売上約16億円を計上するなどの方法により、連結経常利益を約50億円と粉飾した虚偽の記載のある連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出した。 |
○ |
ニッポン放送事件(内部者取引)
犯則嫌疑法人(株)MACアセットマネジメントの取締役であり実質経営者であった犯則嫌疑者は、(株)ライブドアが(株)ニッポン放送の総株主の議決権数の百分の五以上の株券等を買い集める旨の公開買付に準ずる行為の決定について(株)ライブドアの幹部らから伝達を受け、その公表前に(株)ニッポン放送株券を買い付けて利益を得ようと企て、同公表前に同社株券を買い付けた。
|
|
|
|
(2) |
課徴金調査 |
課徴金調査の結果、9件(個人8件、法人1件)について課徴金納付命令の発出を求める勧告を実施した。勧告事案は、いずれも内部者取引に関するものであったが、その内容は発行会社社員、発行会社自体、発行会社の取引先社員によるもの等多岐にわたっている。
課徴金制度導入後初の勧告案件(内部者取引)
(株)ガーラにおいて営業等の業務に従事していた社員(課徴金納付命令対象者)及び経理等の業務に従事していた社員(課徴金納付命令対象者)は、同社が第三者割当増資及び業務提携を行うことについて決定した事実を、業務管理等の業務に従事していた社員(課徴金納付命令対象者)は、同社が業務提携を行うことについて決定した事実を、その職務に関して知り、その公表前に、それぞれ株券を買い付けた。 |
(3) |
開示検査 |
本事務年度中に22件の開示検査に着手した。内訳は、東京証券取引所上場企業11件、大阪証券取引所上場企業5件、名古屋・福岡・札幌証券取引所上場企業2件、ジャスダック証券取引所上場企業8件及び発行会社以外の者1件である。(注)
本事務年度における検査の結果、有価証券報告書に係る訂正報告書の提出命令の発出を求める勧告を1件行い、検査の指摘に基づく自発的訂正が10件(うち1件は平成18事務年度に訂正報告書を提出)行われた。 |
(注) |
同一会社が複数の取引所に上場している場合があるため、合計は着手件数を上回っている。 |
|
訂正報告書の提出命令勧告案件(虚偽の有価証券報告書提出)
(株)ペイントハウスは、平成17年11月30日に関東財務局長に対して提出した同年8月期有価証券報告書において、連結純資産が約89億円の債務超過であったにもかかわらず、連結純資産に相当する「資本合計」欄に約27億円と記載するなどした連結貸借対照表及び連結当期純損益が約83億円の損失であったにもかかわらず、これを約33億円の利益と記載するなどした連結損益計算書を掲載した。 |
|
|
(4) |
証券検査 |
|
本事務年度中に証券会社98社(うち外国証券会社10社)、登録金融機関28社、証券仲介業者1社、外国為替証拠金取引を行う金融先物取引業者13社、投信・投資顧問業者等41社及び自主規制機関2社の合計183社に対して検査に着手した。
本事務年度において検査が終了したものは、前期繰越分を含め150社となっているが、このうち93社に問題点が認められた(問題点が認められた会社の割合62%)。問題点が認められた93社中、50社において投資者保護に関する問題点が認められたほか、財産・経理等や業務運営に関する問題点も多数認められた。
検査の結果、重大な法令違反が認められた、外国為替証拠金取引を行う金融先物取引業者7社、投信・投資顧問業者等8社(うち不動産投資法人(REIT)2社)を含む29社については、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し、行政処分等の勧告を行った(うち財務局等分19社)。
|
(検査結果の内訳) |
|
検査終了 |
問題点が
認められ
たもの |
問題点の内訳 |
勧 告 |
不公正
取引に
関するもの |
投資者
保護に
関するもの |
財産・
経理に
関するもの |
その他
業務運営に
関するもの |
証券会社
(含外証) |
81社 |
51社 |
14社 |
21社 |
18社 |
35社 |
12社 |
登録金融機関 |
27社 |
10社 |
1社 |
6社 |
2社 |
4社 |
1社 |
証券仲介業者 |
1社 |
1社 |
― |
1社 |
― |
― |
1社 |
金融先物業者 |
12社 |
10社 |
3社 |
8社 |
4社 |
4社 |
7社 |
投信・
投資顧問
業者等 |
29社 |
21社 |
― |
14社 |
1社 |
17社 |
8社 |
合計 |
150社 |
93社 |
18社 |
50社 |
25社 |
60社 |
29社 |
|
(注 |
)同一会社において複数の問題点が認められる場合があるため、「問題点が認められたもの」と「問題点の内訳」の合計は一致しない場合がある。 |
|
|
|
勧告事案の主な内容は次のとおり。 |
○ |
証券会社の処分に係る勧告 |
|
イ |
顧客の有価証券の売買等に関する管理が不公正取引の防止上不十分な状況
被検査法人のコンプライアンス部売買審査室長は、各部店の指導・監督を十分に行わず、顧客の内部者登録が適切に行われているか否かの検証を行う等の十分な社内管理体制を構築しないことにより、内部者登録に多くの漏れを生ぜしめて、内部者取引に係る売買審査に多くの漏れが生じている状況のまま業務を営んでおり、これにより、顧客の有価証券の売買等に関する管理が不公正取引の防止上不十分な状況のまま業務を営んでいた。(SMBCフレンド証券)
|
ロ |
実勢を反映しない作為的相場を形成させるべき一連の有価証券の売買取引の受託等を防止するための売買管理が十分でないと認められる状況
被検査法人の営業部長は、寄付き前に、買い板を厚くする売り株数と買い株数が不均衡な成行きによる大口クロス取引注文の受託について、担当営業員から報告を受けていたにもかかわらず、顧客の売買動機の把握や注文の規制措置の検討などの日常的な売買管理を何ら行っていない。また、内部管理統括責任者は、当該取引を売買審査システムで抽出していたにもかかわらず、取引内容の検討について部下への指示を行わず、更に、当該取引について証券取引所の調査などを受けたにもかかわらず、取引内容を十分検証しないまま取引停止等の措置を行うことなく当該取引の受託を継続した。(エイチ・エス証券) |
|
○ |
金融先物取引業者の処分に係る勧告 |
|
・ |
不招請勧誘
被検査法人は、本社第二営業部及び八重洲支店において、受託契約等の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客に対し、電話をかけて受託契約等の締結の勧誘を行った。(日本エフエックス株式会社) |
|
○ |
投信・投資顧問業者等の処分に係る勧告 |
|
・ |
投資法人資産運用業に係る善管注意義務違反
被検査法人は、投資法人との間で締結した資産の運用に係る委託契約に基づき行っている資産の運用において、当該投資法人の運用資産に組み入れる不動産の取得時等に本来行うべき審査等の業務を適切に行っていなかった。(オリックス・アセットマネジメント株式会社) |
|
|
(5) |
建議 |
|
インターネット取引が増加する中、個人投資家によるインターネット取引を利用したいわゆる「見せ玉」による相場操縦事件が見られたこと等から、平成17年11月29日、いわゆる「見せ玉」について課徴金の対象とすること等を求める2件の建議を行った。
また、金融審議会金融分科会第一部会における投資サービス法(仮称)の議論の中で証券業等の業務範囲の見直しの検討が行われていたことから、同日、それに伴い、取引一任勘定取引契約の禁止の見直しが行われる場合にも顧客の利益を損なわないよう、必要かつ適切な措置を求める建議を行った。
更に、新株発行の事前需要調査の際に発行情報を入手した海外投資家が、当該情報の公表前に、対象企業の株式を売り付けている事例が見られたことから、平成18年4月14日、証券会社が公表前の発行情報等の外部への伝達が国内外の機関投資家による内部者取引を誘発することを防止する措置を求める建議を行った。
最後に、投資家に自己責任を問うためには、適正なディスクロージャーが確保されていることが前提であるが、カネボウ、ライブドアの虚偽有価証券報告書提出事件において、監査法人の公認会計士の犯則事件への深い関与が認められたこと等から、平成18年4月21日、刑事責任を含めた監査法人の責任のあり方について総合的な検討を求める建議を行った。
|
(6) |
市場分析審査 |
○ |
一般からの情報の受付
本事務年度中に投資者など一般から受け付けた情報は7,526件であり、前事務年度と比較すると約6割増加しており、平成4年の発足以来最高の受付件数となっている。情報の内容としては、個別銘柄に関するものが5,390件、証券会社の営業姿勢等に関するものが1,296件、その他の意見等が840件となっている。 |
○ |
取引審査の状況
本事務年度の取引審査件数は、合計875件であった。その内訳は、株価が急騰するなど不自然な動きをしたもの等の価格形成に関するもの169件、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要な事実の公表により株価が大きく変動したもの等の内部者取引に関するもの693件、その他13件となっている。
本事務年度においては、新商品や新たな取引形態の出現、金融取引のグローバル化の更なる進展、個人投資家によるインターネット取引の増加など、市場における新たな動向の中で、不公正な取引が発生していないか、市場仲介者に不正な勧誘等がないか、といった観点から、幅広く審査を行った。
|
|
(7) |
監視活動・機能強化への取組み等 |
|
○ |
市場監視体制の充実・強化
平成18年度の機構・定員については、有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金調査体制の整備を大きな柱として増員要求を行った結果、11人の純増が認められ、平成18年度末の定員は318人となる。
また、財務局等の証券取引等監視官部門においても増員が認められ、平成18年度末の定員は246人となり、証券監視委の定員と合計すると全体で564人となる。
さらに、的確な市場監視及び職員の専門性向上を図るなどのため、証券業務等に関して専門的知識・経験のある者、弁護士及び公認会計士などの民間専門家を採用し、平成18年6月末現在において在籍している民間出身の専門家は83人となっている。 |
○ |
新たな監視機能について
金融審議会金融分科会第一部会において、平成17年12月22日に「投資サービス法(仮称)に向けて」と題する報告書がとりまとめられ、金融庁は、同報告書に基づき、「証券取引法等の一部を改正する法律案」等を取りまとめ、第164回通常国会に提出し、同法案は平成18年6月7日に成立した。
この法律は、金融・資本市場を取り巻く環境の変化に対応し、投資者保護のための横断的な法制として、証取法を改組して金融商品取引法(いわゆる投資サービス法)とする等の整備を行うことにより、利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上、貯蓄から投資に向けての市場機能の確保及び金融・資本市場の国際化への対応を図ることを目的としており、証券監視委による建議の内容も盛り込まれたものとなっている。
これにより、幅広い金融商品についての包括的・横断的な制度の整備が図られるとともに、公開買付制度及び大量保有報告制度その他の開示書類に関する制度に関する整備を行う等、所要の措置が講じられ、証券監視委においても、次のような権限の対象・範囲の拡大等が行われることとなっている。 |
|
イ |
例えばいわゆるファンド販売業者など、金融商品取引業の担い手に対する検査対象や範囲が拡大。 |
ロ |
企業内容等の開示制度について、四半期報告制度や財務報告に係る内部統制の評価制度が整備され、これにより開示検査の対象・範囲が拡大。 |
ハ |
いわゆる「見せ玉」について、新たに課徴金の対象とされ、また、取引誘引目的で行われる証券会社の自己の計算による「見せ玉」等売買の申込みについて、新たに相場操縦行為として禁止されるとともに、刑事罰及び課徴金の対象とされ、これにより、犯則事件の調査及び課徴金調査の対象が拡大。
(なお、これらの改正については、ハは平成18年7月4日から、その他については公布の日(平成18年6月14日)から一定の期間を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。) |
|
○ |
投資家への情報提供等の取組み
講演会の開催やインターネットを通じて証券監視委の活動状況等の情報を提供することにより、個人投資家等の証券監視委に対する理解と証券市場等に対する信頼を深めてもらう工夫に取り組んでいる。また、証券監視委の活動に有用な端緒となる情報がより多く寄せられるよう、政府広報等を通じてその提供を求めている。 |
○ |
関係当局との連携
金融庁や自主規制機関と緊密な情報交換等を行うとともに、海外の証券規制当局との意見・情報交換や主要な国際会議への参加を通じて、金融庁とともに海外の証券規制当局との連携強化にも努めている。 |
|
|
本公表については、証券監視委のホームページ上において、本日から公表。
なお、官報においては8月31日に掲載する予定。
|
|
|
|
|
|