平成18年度版年次公表


証券取引等監視委員会の事務処理状況の公表について


平成19年8月31日
証券取引等監視委員会


 

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 事務処理状況の公表

 

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」という。)は、金融庁設置法第22条の規定に基づき、毎年、事務処理状況を公表しており、本日、平成18年7月1日から平成19年6月30日までの期間(以下「平成18事務年度」という。)における事務の処理状況を「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表した。なお、今回の公表は、証券監視委発足後15回目となる。
 

2.

 全般的な評価

 

 「貯蓄から投資へ」といった投資活動の促進のためには、公正かつ透明性の高い健全な証券市場を確立するとともに、市場に対する投資者の信頼を保持することが不可欠の課題となっている。こうした中、市場監視機能の充実・強化も行われてきており、中でも、平成17年には、従来からの犯則事件の調査や証券会社等の取引の公正確保に係る検査に加え、新たに導入された課徴金調査のほか、開示検査、証券会社等の財務の健全性等に係る検査及び投資信託委託業者・投資顧問業者等に対する検査の権限も証券監視委に委任され、また、新たに外国為替証拠金取引を扱う業者が金融先物取引業者として検査の対象となるなど、証券監視委の検査範囲は大幅に拡大された。平成18事務年度においては、従前からの犯則事件の調査や証券会社等の取引の公正確保に係る検査はもとより、これらの大幅に拡大された権限に基づき調査・検査を実施してきたところである。
(不公正取引に対する告発・勧告)
 不公正取引に対する告発については、証券監視委発足以来の年間最多の12件の告発を行った。IT技術の進展などを背景に、全国どこからでもインターネットを利用した情報伝達や発注が可能となり、いわゆるインターネット取引を通じたインサイダー取引や相場操縦などの不公正取引の可能性も増大していることから、こうした不公正取引に関しても全国に広く監視の目を向け、各地の捜査当局等と連携することにより、証券市場の信頼を揺るがす重大・悪質な犯則事件に対して告発を行った。この中には、法定公告を担当する新聞社の従業員が行ったインサイダー取引(西松屋チェーン他4銘柄事件)、重要事実に関する公表資料の作成等について業務委託契約を締結した法人の役員等によるインサイダー取引(ホーマック他1銘柄事件)事件などがあった。
不公正取引に対する勧告については、9件の課徴金納付命令(いずれも内部者取引に関するもの)の発出を求める勧告を行った。これらの中には、上場会社が重要事実の公表前に自己株式を買い付けたことがインサイダー取引に該当するとして、多額の課徴金の納付を求めた事例もあった。また、これらの勧告を契機として、上場会社が内部規程や社内管理体制の見直しを行うなど、インサイダー取引の未然防止に取り組む契機となった。
(ディスクロージャーに関する告発・勧告)
 ディスクロージャーに関する告発については、犯則事件の調査の結果、虚偽の有価証券報告書等の提出につき1件・3名について、証券取引法に違反するとして告発を行った(サンビシ事件)。
 ディスクロージャーに関する勧告については、開示検査の結果、平成18年11月に初の課徴金納付命令の発出を求める勧告(東日本ハウス(株)に係る有価証券報告書の虚偽記載)を行ったのをはじめ、開示書類の虚偽記載について計5件の課徴金納付命令の発出を求める勧告を行ったほか、訂正報告書等提出命令の発出を求める勧告を1件行った。これらの中には、(株)日興コーディアルグループに係る発行登録追補書類の虚偽記載に対する課徴金納付命令の発出を求める勧告があり、ディスクロージャーに対する社会的関心を高める契機となった。
(証券検査)
 証券検査については、発足以来最多となる209社の検査を終了し、問題点が認められた142社のうち、28社について行政処分等の勧告を行った。特に、平成18事務年度には、自主規制機関に対して、自主規制業務が実効性の高いものとなっているか、その機能が適切に発揮されているか、という観点から検査を行い、売買審査業務に係る不備等が認められた3機関に対して行政処分の勧告を行った。
(建議)
 建議については、平成4年の証券監視委の設立以来、前事務年度までに12件の建議を行ってきたところだが、引受審査、市場指標を歪める取引の規制及び法定帳簿の保存期間の見直しについて、金融庁長官に対し、3件の建議を行った。

3.

 概要

 

(1

) 不公正取引及びディスクロージャーに関する調査等

 

 不公正取引に対する告発・勧告

 

 不公正取引に対する告発
 不公正事件に関する犯則事件の調査の結果、相場操縦につき3件・10名、内部者取引につき9件・18名、計12件・28名(法人を含む)について、証券取引法に違反するとして告発を行った。
 そのうち主なものの概要は次のとおりである。

 

西松屋チェーン他4銘柄事件(内部者取引)
 (株)西松屋チェーン他4社は、それぞれ株式分割を行うことについての決定をし、平成17年12月から同18年1月にかけて、その旨を公表した。
 犯則嫌疑者は、上記5社との間で、株式分割に関する法定公告の記載に係る契約を締結していた広告代理店から、当該法定公告掲載を請け負っていた新聞社の社員であったものであるが、自己の職務に関して上記重要事実を知り、その公表前である平成17年12月から同18年1月までの間、当該5社の株券合計9万4,400株を代金合計約2億4,332万円で買い付けた。

ホーマック他1銘柄事件(内部者取引)
 ホーマック(株)及び(株)カーマは、ホーマック(株)、(株)カーマ及びダイキ(株)による共同持株会社を設立するために株式移転を行うことについての決定をし、平成17年7月、その旨を公表した。
 犯則嫌疑者は、ホーマック(株)及び(株)カーマとの間で、プレス配付資料の作成に係る契約を締結した法人の代表取締役であったものであるが、同契約の締結に関し、上記の重要事実を知り、その公表前である同年5月から6月までの間、ホーマック(株)及び(株)カーマの株券合計2万1,000株を約3,241万円で買い付けた。

 不公正取引に対する勧告

 

 不公正事件に関する課徴金調査の結果、9件(個人6件、法人3件)、7,633万円の課徴金納付命令の発出を求める勧告を行った。勧告事案は、いずれも内部者取引に関するものであったが、課徴金納付命令対象者が、上場会社自体、上場会社の役職員、子会社の役員、取引先社員等であったり、重要事実が、新株発行、業績予想の下方修正、子会社の解散、合併等であったりと、その内容は多岐にわたっている。
 そのうち主なものの概要は次のとおりである。

 

(株)小松製作所の株券に係る内部者取引の調査結果に基づく課徴金納付命令勧告
 (株)小松製作所の執行役員は、同社の子会社のオランダコマツファイナンス(有)が解散することについて決定した事実をその職務に関して知り、この事実が公表される平成17年7月13日以前の同月4日から13日までの間、(株)小松製作所の計算において、株券合計131万6,000株を11億7,746万1,000円で買い付けた。

(株)大塚家具の株券に係る内部者取引の調査結果に基づく課徴金納付命令勧告
 (株)大塚家具の役員は、同社が配当予想値の修正を行う事実をその職務に関して知り、この事実が公表される平成18年2月23日以前の同月10日から22日までの間、(株)大塚家具の計算において、株券合計7万9,000株を3億3,295万5,000円で買い付けた。

 ディスクロージャーに関する告発・勧告

 

 ディスクロージャーに関する告発
 ディスクロージャーに関する犯則事件の調査の結果、虚偽の有価証券報告書等の提出につき1件・3名について、証券取引法に違反するとして告発を行った。

 

サンビシ事件(虚偽の有価証券報告書提出)
 犯則嫌疑法人サンビシ(株)の代表取締役であった犯則嫌疑者A及び取締役であった犯則嫌疑者Bは、共謀の上、同社の業務に関し、平成15年3月期から平成17年3月期の3期にわたり、連結子会社が存在したにも関わらず、これがないと記載するなどした虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。

 ディスクロージャーに関する勧告

 

 開示検査の結果、開示書類の虚偽記載に関して5件、6億5,814万9,999円の課徴金納付命令の発出を求める勧告を行った。勧告事案は、虚偽記載のある開示書類が、発行開示書類(有価証券届出書、発行登録追補書類)や継続開示書類(有価証券報告書、半期報告書)であったり、虚偽記載の態様が、引当金の過少計上、売上原価の付替え、孫会社の連結除外、損失の繰延べ、架空売上の計上等であったりと、その内容は多岐にわたっている。
 そのうち主なものの概要は次のとおりである。

東日本ハウス(株)に係る有価証券報告書の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告
 東日本ハウス(株)は、退職給付引当金の過少計上により、連結純資産が約34億円であったにもかかわらず、連結純資産に相当する「資本合計」欄に約38億円と記載するなどした連結貸借対照表、及び経常利益が約15億円であったにもかかわらず、これを約22億円と記載するなどした連結損益計算書を平成17年10月期有価証券報告書に掲載し、この有価証券報告書を、平成18年1月27日、関東財務局長に対して提出した。

(株)日興コーディアルグループに係る発行登録追補書類の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告
 (株)日興コーディアルグループは、

 

i

 子会社である日興プリンシパル・インベストメンツ(株)(以下「NPI」という。)が、その株式のすべてを所有し、実質的に支配しているNPIホールディングス(株)(以下「NPIH」という。)を連結の範囲に含めず、

ii

 NPIHが発行しNPIが保有していた他社株券償還特約付社債券の発行日を偽るなどしてNPIの会計帳簿等を作成し、本来計上できない当該社債券の評価益を計上することにより、

連結経常利益が58,968百万円(百万円未満切捨て。以下、連結経常利益及び連結当期純利益について同じ。)であったにもかかわらず、77,717百万円と記載し、連結当期純利益が35,268百万円であったにもかかわらず、46,935百万円と記載するなどした連結損益計算書を平成17年3月期有価証券報告書に掲載し、平成17年11月9日、上記平成17年3月期有価証券報告書を参照書類とする発行登録追補書類を関東財務局長に対して提出し、平成17年11月22日、同発行登録追補書類に基づく一般募集により500億円の社債券を取得させた。


(2


) 証券検査
  平成18事務年度中に証券会社87社(うち外国証券会社9社)、登録金融機関27社、証券仲介業者1社、外国為替証拠金取引を行う金融先物取引業者12社、投信・投資顧問業者等58社、自主規制機関6機関及びその他1社の計192社に対して検査に着手した。
 本事務年度において検査が終了したものは、前期繰越分を含め209社となっているが、このうち142社に問題点が認められた(問題点が認められた会社の割合68%)。問題点が認められた142社中、74社において投資者保護に関する問題点が認められたほか、不公正取引、財産・経理等や業務運営に関する問題点も多数認められた。
 検査の結果、重大な法令違反が認められた28社については、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し、行政処分等の勧告を行った(うち財務局等分15社)。


(検査結果の内訳)
  検査終了 問題点が認められたもの

問題点の内訳

勧告
不公正取引に関するもの 投資者保護に関するもの 財産・経理に関するもの その他業務運営に関するもの
証券会社(含外証)

101社

69社

17社

30社

16社

45社

11社

登録金融機関

30社

15社

1社

11社

1社

6社

1社

証券仲介業者

1社

0社

0社

金融先物業者

12社

12社

1社

8社

7社

9社

5社

投信・投資顧問業者等

58社

39社

1社

25社

1社

34社

8社

自主規制機関

7社

7社

7社

3社

合計 209社 142社 12社 74社 25社 101社 28社
(注 )同一会社において複数の問題点が認められる場合があるため、「問題点が認められたもの」と「問題点の内訳」の合計は一致しない場合がある。
 


勧告事案の主な内容は次のとおり。

 

  証券会社の処分に係る勧告

 

課徴金調査に関連し、内部者取引のおそれのあることを知りながら顧客の有価証券の売買を受託した事例
 被検査法人姫路支店投資銀行業務担当課長代理Aは、その業務に関し、B社及びB社役員により行われたB社株式に係る内部者取引のうち、B社役員による平成17年10月4日及び6日の当社姫路支店に開設されたC社名義口座での計2回、1,500株の買付注文について、以下の事情から、証取法第166条第1項の規定に違反するおそれのあることを認識していたにもかかわらず、委託注文書を徴求するなどの必要な対応をとることなく、買付注文を受託していた。

 

 C社名義口座開設の経緯等から、同口座がB社役員の借名口座ではないかとの疑念を抱いていたこと。

 買付注文受注時点において、B社に株式分割を行うという公表されていない重要事実が存在することを認識していたこと。

 買付注文が、B社役員の指示によるものではないかとの疑いを持っており、かつ、同社の他の役員により発注されたものであったこと。

(大和証券)

著しく不適当な引受価額での引受けを行った事例
 被検査法人公開引受部長(当時)は、A社の新規上場の際の株式公募及び当社によるA社株式の主幹事会社としての引受けに関して、A社との交渉を取り仕切っていたところ、同人は、A社代表取締役社長の主張を勘案し、A社の上場公募における主幹事会社たる地位を維持するべく、当該想定公募価格(発行価格)を、当社算定のA社株式の理論価格を著しく上回る金額とすることに同意した。
 その後、当社は、A社とともに、機関投資家に対してプレヒアリングを行い、その際、機関投資家は「望ましいと思われる公募価格」を提示してきているところ、当該価格は、上記の想定公募価格に沿う形でより高い価格に誘導され、かつ、これにより、プレヒアリングの結果を踏まえて設定されたブックビルディングの仮条件もより高い価格帯に設定されたものと認められる状況において、当社は、その取締役会において上記理論価格を著しく上回る価額でA社公募株式の引受けを行うことを決議し、その後、当該引受価額で引受けを行った。
(エイチ・エス証券)



 投信・投資顧問業者等の処分に係る勧告

 

新規公開株式の恣意的な配分(忠実義務違反)
 被検査法人は、投資信託財産及び投資一任契約資産(以下、これら2つを総称して「運用資産」という。)の運用における新規公開株式への投資に当たって、原則として運用資産の資産規模に応じた配分をする(以下「本件配分方針」という。)こととしていたが、配分を担当している運用部門の責任者において、本件配分方針に基づく配分を行わなければならないという認識が次第に希薄化し、パフォーマンスへの寄与度が大きくなるとの理由で資産規模の小さな運用資産に集中的に配分したり、パフォーマンスが相対的に低下した運用資産の改善策として一定期間に集中的に配分を行ったりするなど、本件配分方針を無視するような公平性を欠く配分を繰り返し行った。
(ピクテ投信投資顧問株式会社)



 外国為替証拠金取引を取り扱う金融先物取引業者の処分に係る勧告

 

不招請勧誘
 被検査法人大阪外国為替部部長は、その業務に関し、同人が所掌する同部第一課及び第二課の営業員に対し、外国為替証拠金取引の受託等を内容とする契約(以下「受託契約等」という。)の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客に対し、受託契約等の締結のための勧誘を指示していた。
 それを受け、同部第一課課長ほか2名及び同部第二課課長ほか2名の営業員は、その業務に関し、受託契約等の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客109名に対し、架電により受託契約等の締結の勧誘を行った。
 また、本店第一外国為替部部長においても、その業務に関し、同人が所掌する同部第一課の営業員に対し、大阪外国為替部部長と同様の指示を行っており、それを受けた同課係長ほか1名の営業員が、その業務に関し、受託契約等の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客8名に対し、架電により受託契約等の締結の勧誘を行った。
 加えて、本店第二外国為替部においても、同部第二課主任ほか3名の営業員が、その業務に関し、受託契約等の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客8名に対し、架電により受託契約等の締結の勧誘を行った。
(エース交易株式会社)



 自主規制機関の処分に係る勧告

 

売買審査業務に係る不備
 被検査法人は、その開設する取引所有価証券市場における有価証券の売買の審査について、審査対象取引の抽出基準等の具体的な監視及び審査基準を定めていないほか、立会時間内の売買監視及び立会内取引終了後の売買審査も不十分であるなど、多数の不備が認められた。
(札幌証券取引所)

システムリスク管理態勢の不備
 被検査法人は、システムリスクに関する認識が不十分であり、全社的なリスク管理の基本方針を策定していないなど、その管理態勢が不十分な状況にあると認められた。
(札幌証券取引所、福岡証券取引所、ジャスダック証券取引所)


(3


) 建議
 平成18事務年度については、金融庁長官に対し、平成19年2月16日、次の3件の建議を行った。

 

 証券会社の検査の結果、主幹事会社が発行体の業績の見通し等について適切な審査を行っていない事例等が認められたことから、証券会社が引受審査を適切かつ十分に実施することが確保されるよう、適切な措置を求める建議を行った。

 また、証券会社の検査の結果、証券会社のトレーダーが仮装取引により市場指標を歪めさせる事例等が認められたことから、証券会社が市場指標を実勢を反映しないものに歪めさせる取引を行うこと及び証券会社がこれらの取引を受託することが規制されるよう、適切な措置を求める建議を行った。

 最後に、平成18年証券取引法改正の際の罰則の見直しにおいて虚偽有価証券報告書等の提出等に係る懲役刑が延長されたことに伴い、これらの罪に係る公訴時効が延長された一方、法定帳簿のうち注文伝票の保存期間については延長された公訴時効に対応したものとなっていないことから、法定帳簿の保存期間につき、公訴時効の延長も勘案した適切な見直しを求める建議を行った。


(4


) 市場分析審査

 

 一般からの情報の受付
 平成18事務年度中に投資者など一般から受け付けた情報は6,485件となっている。情報の内容としては、個別銘柄に関するものが5,011件、証券会社の営業姿勢等に関するものが1,077件、その他の意見等が387件となっている。

 取引審査等の状況
 平成18事務年度の取引審査件数は、合計1,039件であり、前事務年度と比較すると約2割増加しており、平成4年の発足以来最高の審査件数となっている。その内訳は、株価が急騰するなど不自然な動きをしたもの等の価格形成に関するもの141件、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要な事実の公表により株価が大きく変動したもの等の内部者取引に関するもの884件、その他14件となっている。
 同事務年度においては、金融取引のグローバル化の更なる進展、個人投資家によるインターネット取引の普及などの中で、不公正な取引が発生していないか、市場仲介者に不正な勧誘等がないか、といった観点から、幅広く審査を行った。
 また、クロスボーダー取引の増加に伴い、我が国証券市場の公正を確保するために海外規制当局と連携することが不可欠になっていることから、証券監視委は海外規制当局との間で緊密な連携を図っているところであり、証券監視委の審査において端緒を把握し、海外規制当局に緊密な連携を働きかけた結果、同事務年度には海外規制当局による処分が2件行われた。
 さらに、新商品や新たな取引形態等が市場に与える影響、市場の構造的問題となり得る事象等について、幅広く市場動向分析を行った。


(5


) 監視活動・機能強化への取組み等

 

 市場監視体制の充実・強化
 平成19年度の機構・定員については、有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金調査体制の整備を大きな柱として増員要求を行った結果、26人の増員が認められ、平成19年度末の定員は341人となる。
 また、財務局等の証券取引等監視官部門においても、28人の増員が認められ、平成19年度末の定員は268人となり、証券監視委の定員と合計すると全体で609人となる。
 さらに、的確な市場監視及び職員の専門性向上を図るなどのため、証券業務等に関して専門的知識・経験のある者、弁護士及び公認会計士などの民間専門家を採用し、平成19年6月末現在において在籍している民間出身の専門家は76人となっている。

 投資家への情報提供等の取組み
 講演会の開催やインターネットを通じて証券監視委の活動状況等の情報を提供することにより、個人投資家等の証券監視委に対する理解と証券市場等に対する信頼を深めてもらう工夫に取り組んでいる。また、証券監視委の活動に有用な端緒となる情報がより多く寄せられるようポスターの掲示や政府広報等を通じてその提供を求めている。

 関係当局との連携
金融庁や自主規制機関と緊密な情報交換等を行うとともに、海外の証券規制当局との意見・情報交換や主要な国際会議への参加を通じて、金融庁とともに海外の証券規制当局等との連携強化にも努めている。


(6


) 金融商品取引法による業務の拡大等
 証券市場を取り巻く環境の変化に対応するため、平成18年の通常国会において、証取法を改組して金融商品取引法とする等の法改正が行われた。具体的には、幅広い金融商品について包括的・横断的な制度を整備するとともに、集団投資スキーム(いわゆるファンド)の販売・勧誘業者や運用業者等に対する検査権限を証券監視委に委任し、また、公開買付制度や大量保有報告制度その他の企業開示に関する制度の整備等を行ったところである。平成19年9月末の同法の本格施行により、証券検査の対象範囲の拡大や平成20年4月1日以降に開始する事業年度から四半期報告書の提出が義務づけられることに伴う検査対象の拡大など、証券監視委の業務はさらに拡大することとなる。
 証券監視委では、同法施行に向けて機構定員要求などを通じた市場監視体制の強化や、現行の「証券検査マニュアル」等を抜本的に見直した「金融商品取引業者等検査マニュアル」(仮称)の策定等にも取り組んでいるところである。

 

 

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