1.事務処理状況の公表 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」という。)は、金融庁設置法第22条の規定に基づき、毎年、事務処理状況を公表しており、本日、平成19年7月1日から同20年6月30日までの期間(以下「平成19事務年度」という。)における事務の処理状況を「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表した。なお、今回の公表は、証券監視委発足後16回目となる。
2.全般的な評価 金融システム改革をはじめとする様々な改革の成果やIT技術の進展などを受けて、インターネット取引やクロスボーダー取引の増加、投資ファンド等を使った複雑な取引の増加など、金融・資本市場を取り巻く環境は大きく変化している。 こうした中、市場監視機能の充実・強化も行われてきており、中でも、平成17年には、従来からの犯則事件の調査や証券会社等の取引の公正確保に係る検査に加え、新たに導入された課徴金調査のほか、開示検査、証券会社等の財務の健全性等に係る検査及び投資信託委託業者・投資顧問業者等に対する検査の権限も証券監視委に委任され、また、新たに外国為替証拠金取引を扱う業者が金融先物取引業者として検査の対象となるなど、証券監視委の検査範囲は大幅に拡大された。 さらに、同19年7月には、新たに委員長及び両委員が就任し、中期的な活動方針である「公正な市場の確立に向けて」を公表し、近年の金融・資本市場を取り巻く環境の変化に対して、機動性・戦略性の高い市場監視の実現と市場規律の強化に向けた働きかけの2本柱を掲げ、その使命達成に向けて取り組んでいるところである。
(不公正取引に対する勧告・告発) 不公正取引に対する勧告については、21件の課徴金納付命令(いずれも内部者取引に関するもの)の発出を求める勧告を行った。この中には、公認会計士が監査の過程で知った監査先企業の内部情報を利用して取引を行ったもの(新日本監査法人職員による内部者取引)や、報道機関の職員が情報端末に入力された放送用原稿を閲覧したことにより重要事実を知り公表前に取引を行ったもの(NHK職員による内部者取引)など、上場会社の重要情報を知り得る立場にある者の職業倫理やその所属する法人等の情報管理体制にも問題があるような事例も見受けられた。 不公正取引に対する告発については、風説の流布及び偽計の嫌疑で2件、相場操縦の嫌疑で4件、インサイダー取引の嫌疑で2件の合計8件の告発を行った。この中には、アイ・シー・エフ株取得に係る偽計事件において、大阪府警察本部と合同で強制調査を実施したものなど、事件の状況に応じて他の捜査機関と連携を図りつつ、効果的・効率的な調査の遂行に努めた。
(ディスクロージャーに関する勧告・告発) ディスクロージャーに関する勧告については、平成20年6月19日に、課徴金額の過去最高額である15億9,457万9,999円の課徴金納付命令勧告(株式会社IHIに係る有価証券報告書等の虚偽記載)を行うなど、開示書類の虚偽記載に関して10件の課徴金納付命令の発出を求める勧告を行った。 ディスクロージャーに関する告発については、虚偽の有価証券報告書等の提出につき2件・9名(アクセス事件、アイ・エックス・アイ事件)について、証券取引法に違反するとして告発を行った。
3.概要
(1) 市場分析審査
○ 一般からの情報の受付 平成19事務年度中に投資者など一般から受け付けた情報は5,841件となっている。情報の内容としては、個別銘柄に関するものが4,612件、金融商品取引業者の営業姿勢等に関するものが847件、その他の意見等が382件となっている。
- ○ 取引審査等の状況
平成19事務年度の取引審査件数は、合計1,098件であり、前事務年度と比較すると59件増加しており、平成4年の発足以来最高の審査件数となっている。その内訳は、価格形成に関するもの141件、内部者取引に関するもの951件、その他6件となっている。 同事務年度においては、自主規制機関及び海外当局との連携を一層強化しつつ、市場監視の精度の向上を図ってきた。また、発行市場・流通市場全体に目を向けた市場監視を行い、問題点を早期に探知し、迅速に対応することを心がけた。さらに、直ちに法令違反とはいえないような取引についても幅広く注意を払っているほか、個別取引や市場動向の背景にある問題を重点的に分析する等、包括的かつ機動的な市場監視に努めた。
(2) 証券検査
○ 金融商品取引業者等検査マニュアルの策定 平成19年9月30日の金融商品取引法の全面施行に伴い、証券監視委の検査対象となる業者の範囲や検査において検証すべき事項が拡大すること等を受け、従来の「証券検査マニュアル」及び「投信・投資顧問検査マニュアル」では十分に対応しきれない面が生じることから、新たに検査の基本的考え方や検査の具体的着眼点等を整理した「金融商品取引業者等検査マニュアル」(以下「検査マニュアル」という。)を策定した。
- ○ テーマ別検査
市場をめぐる問題点や関心事項について横断的なテーマを選定し、共通の課題がある検査対象先に対しては、特別検査(いわゆる「テーマ別検査」)を実施した。 事案の主な内容は次のとおり。
平成19年5月15日のOHT株式(東証マザーズ上場。以下「本件銘柄」という。)の株価急落により、本件銘柄の信用取引を受託していた多数の証券会社において顧客から決済損金が入金されず、多額の立替金が発生したこと等から、立替金が発生した証券会社31社に対して報告徴求を行うとともに、うち19社(証券監視委検査10社、財務局長等検査9社)に対して臨店検査を実施し、立替金の発生状況の把握と顧客管理態勢及び与信リスク管理態勢等についての検証を行った。 今回の検査は、顧客管理や与信リスク管理といった態勢面に重点をおいて横断的に実施した初めての検査であり、本件を踏まえ、既に各社において、また業界内においても、改善策が実施あるいは検討されている。 また、検査結果を踏まえ、信用取引における与信リスク管理に係る検証項目を追加する検査マニュアルの一部改正を行った。
平成19年8月の米国のサブプライムローン問題に端を発した経済情勢の急変やFX取引業者の破綻を踏まえ、特に、同年11月以降、FX取引業者に対し重点的に検査を実施し、財務の健全性やリスク管理態勢について重点をおいた検証を行った。検査実施先は、73社(同20年6月末時点。委員会検査5社、財務局長等検査68社で、専業のFX取引業者のみならず、証券業を兼業している社を含む。)である。
- 自己資本規制比率を嵩上げして登録を受ける等不正又は著しく不当な行為を行い、その情状が特に重いと認められること、
- 財産の状況に照らし支払不能に陥るおそれが認められたこと、
- 顧客から預託を受けた保証金等について自己の固有財産と区分して管理していない状況(区分管理違反)が認められたこと、
- 自己資本規制比率が120%を下回っている状況及び純財産額が最低純財産額である5,000万円に満たない状況が認められたこと、
- 区分管理違反及び自己資本規制比率について当局に虚偽の届出を行ったこと、
- システムリスク管理態勢が極めて杜撰であることが認められたこと、
- 受託契約等の締結の勧誘を受けた顧客が当該受託契約等を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為が認められたこと、
から、7社に対して行政処分を求める勧告を行ったほか、相当数のFX取引業者において法令違反等の事実が認められた。
- ○ 検査結果の概要
平成19事務年度中に金融商品取引業者187社(うち第一種金融商品取引業者138社(うち旧証券会社90社(うち外国証券会社1社)、旧金融先物取引業者48社)、第二種金融商品取引業者2社、投資運用業者26社、投資助言・代理業者21業者)、登録金融機関32機関、金融商品仲介業者1業者、投資法人10法人、自主規制機関1機関及びその他2社の計233社に対して検査に着手した。 同事務年度において検査が終了したものは、前期繰越分を含め219社となっているが、このうち122社に問題点が認められた(問題点が認められた会社の割合56%)。問題点が認められた122社中、49社において投資者保護に関する問題点が認められたほか、財産・経理等や業務運営に関する問題点も多数認められた。 検査の結果、重大な法令違反が認められた28社については、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し、行政処分等の勧告を行った(うち財務局等分15社)。
(検査結果の内訳)
|
検査終了 |
問題点が認められたもの |
問題点の内訳 |
勧 告 |
不公正取引に関するもの |
投資者保護に関するもの |
財産・経理に関するもの |
その他業務運営に関するもの |
金融商品取引業者 |
180社 |
108社 |
11社 |
42社 |
42社 |
73社 |
24社 |
|
第一種金融商品取引業者 |
139社 |
82社 |
11社 |
26社 |
39社 |
52社 |
21社 |
|
旧証券会社(含外証) |
95社 |
51社 |
8社 |
20社 |
14社 |
32社 |
14社 |
旧金融先物取引業者 |
44社 |
31社 |
3社 |
6社 |
25社 |
20社 |
7社 |
投資運用業者 |
18社 |
12社 |
― |
3社 |
2社 |
11社 |
2社 |
投資助言・代理業者 |
23社 |
14社 |
― |
13社 |
1社 |
10社 |
1社 |
登録金融機関 |
31社 |
10社 |
― |
5社 |
2社 |
5社 |
1社 |
金融商品仲介業者 |
0社 |
0社 |
― |
― |
― |
― |
0社 |
投資法人 |
4社 |
1社 |
― |
― |
― |
1社 |
1社 |
自主規制機関 |
1社 |
1社 |
― |
― |
― |
1社 |
1社 |
その他 |
3社 |
2社 |
― |
2社 |
― |
― |
1社 |
合計 |
219社 |
122社 |
11社 |
49社 |
44社 |
80社 |
28社 |
勧告事案の主な内容は次のとおり。
- イ 第一種金融商品取引業者等の処分に係る勧告
取引所有価証券市場における上場有価証券の相場を固定させる目的をもって、一連の上場有価証券の買付けの受託・執行をした事例 被検査法人取締役リテール本部長及びリテール本部副本部長は、その業務に関し、当社が新規上場の際の株式公募に当たり引受主幹事会社を務めた上場会社の株式の株価について、上場日から当分の間、公募価格と同価格以上に固定させる目的をもって、本店営業部ほか6営業部店の部店長らに対し、顧客に公募価格と同価格の指値で当該株式の買付けを行うことを勧誘し、当該買付注文を受託・執行するよう指示した。 これを受け、当該部店長らは、それぞれの部店において営業員に上記指示を伝え、当該指示を受けた営業員らは、平成18年4月11日から同年5月23日までの間、顧客に対し、公募価格と同価格の指値で当該株式の買付けを行うことを勧誘し、103名の顧客から203件33,200株の買付注文を受託し、取引所有価証券市場で執行した。(丸八証券)
受託契約等の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客に対し、電話をかけて、受託契約等の締結を勧誘した事例 被検査法人外国為替営業部部長は、その業務に関し、FX取引の口座を解約した顧客のリストを作成した上で、平成18年1月から同年12月までの間、営業員に対し、それらの顧客にFX取引の受託等を内容とする契約(以下「受託契約等」という。)の締結の勧誘を行うよう指示した。 また、同部長は、その業務に関し、同年2月中旬頃、営業員に対し、当社が他社からFX取引業務を譲り受けた際、当社への口座移管に同意しておらず、口座が移管されていない顧客に受託契約等の締結の勧誘を行うよう指示した。 これらの指示を受けた営業員5名は、その業務に関し、同年2月23日から同19年1月12日までの間、受託契約等の締結の勧誘の要請をしていない一般顧客47名に対し、電話をかけて、受託契約等の締結の勧誘を行った。(フェニックス証券株式会社)
- ロ 投資運用業者、投資助言・代理業者等の処分に係る勧告
- ハ 自主規制機関等の処分に係る勧告
(3) 不公正取引及びディスクロージャーに関する調査等
○ 不公正取引に対する勧告・告発
イ 不公正取引に対する勧告 不公正事件に関する課徴金調査の結果、21件(すべて個人)、1,206万円の課徴金納付命令の発出を求める勧告を行った。勧告事案は、いずれも内部者取引に関するものであり、課徴金納付命令対象者は、上場会社の役職員、上場会社の契約締結先の役職員、これらの会社関係者から重要事実の伝達を受けた第一次情報受領者等であったり、その重要事実の内容についても、業務提携、公開買付け、業績予想の下方修正、新株予約権付社債の募集等であったりと、多岐にわたっている。 そのうち主なものの概要は次のとおりである。
NHK職員による内部者取引に対する課徴金納付命令勧告 NHK職員3名は、株式会社ゼンショーの社員から同協会の記者が職務上伝達を受けたカッパ・クリエイト株式会社と株式会社ゼンショーが資本提携を伴う業務上の提携を行うことをそれぞれ決定した事実を、その職務に関し知り、平成19年3月8日、この事実が公表される午後3時15分より以前に、カッパ・クリエイト株式会社及び株式会社ゼンショーの株券を買い付けた。 買い付けた株券の詳細は下記のとおり。 A職員:カッパ・クリエイト株式会社 合計3,150株(総額539万7,900円) 株式会社ゼンショー合計2,500株(総額327万6,000円) B職員:カッパ・クリエイト株式会社 合計3,000株(総額515万円) C職員:カッパ・クリエイト株式会社 合計1,000株(総額171万950円)
新日本監査法人職員による内部者取引に対する課徴金納付命令勧告 株式会社マーベラスエンターテイメントの契約締結先である新日本監査法人の職員(公認会計士)は、株式会社マーベラスエンターテイメントが平成19年3月期の個別及び連結業績予想を下方修正する事実をその契約の履行に関し知り、この事実が公表される平成19年3月20日午後3時より以前の同月12日から同月20日までの間に、株券合計261株を総額1,225万6,700円で売り付けた。
ロ 不公正取引に対する告発 犯則事件の調査の結果、風説の流布及び偽計の嫌疑で2件・6名、相場操縦の嫌疑で4件・13名、内部者取引の嫌疑で2件・5名の合計8件・24名(法人を含む)について、証券取引法の罪に該当するとして告発を行った。 そのうち主なものの概要は次のとおりである。
アイ・シー・エフ株券取得に係る偽計事件 犯則嫌疑者4名は、共謀の上、犯則嫌疑者のうち1名が実質的に支配する法人を(株)アイ・シー・エフの完全子会社とする株式交換を行うため、同法人の企業価値を過大に評価した上、同法人と(株)アイ・シー・エフとの間で締結された株式交換契約に基づく株式交換比率及び株式交換により発行する新株式数が正当なものである旨公表するなど偽計を用いようと企て、実体のない売上やこれに基づく利益を同法人に計上させ、将来的に同法人の業績が飛躍的に向上するかのように作出するとともに、同法人が債務超過状態にあったのを増資を装うなどして同法人の企業価値を過大に評価して算定した上、(株)アイ・シー・エフの取締役会決議を経て、同法人を(株)アイ・シー・エフの完全子会社化する旨の株式交換契約を締結し、虚偽の内容を含む公表を行うなどし、もって、有価証券取引のため、偽計を用いた。
野村證券(株)社員らによる内部者取引事件 犯則嫌疑者A及びBは共謀し、又は犯則嫌疑者Bが単独で、犯則嫌疑者Aがその職務上知った、三光純薬(株)他3社の各業務執行決定機関が株式交換等を行うことについての決定をした旨の重要事実等の公表前に、合計4銘柄の株券を買い付け、各重要事実等の公表後に売り抜けるなどし、また、犯則嫌疑者Cは、犯則嫌疑者Bが上記犯行に使用することを知りながら、自己名義の証券取引口座を開設し、犯則嫌疑者Bに自由に使用させ、同犯行を幇助した。
○ ディスクロージャーに関する勧告・告発
イ ディスクロージャーに関する勧告 開示検査の結果、開示書類の虚偽記載に関して10件、16億4,660万9,996円の課徴金納付命令の発出を求める勧告を行った。勧告事案は、虚偽記載のある開示書類が、発行開示書類(有価証券届出書、発行登録追補書類)や継続開示書類(有価証券報告書、半期報告書、訂正報告書)であったり、虚偽記載の態様が、売上原価の過少計上、有形固定資産等の過大計上、架空売上及び架空仕入の計上、関係会社株式の過大計上、売上の前倒し計上等であったりと、その内容は多岐にわたるものとなっている。 そのうち主なものの概要は次のとおりである。
ロ ディスクロージャーに関する告発 犯則事件の調査の結果、虚偽の有価証券報告書等の提出につき2件9名について、証券取引法違反の罰に該当するとして告発を行った。 そのうち主なものの概要は次のとおりである。
(4) 建議 平成19事務年度の建議の実績はないが、証券監視委は、取引の公正及び投資者保護の確保のため必要と認められる措置等について、金融審議会で意見を述べるなど、種々の形で金融庁や自主規制機関等に対して問題意識を伝達し、必要な政策対応等を促している。 具体的には、課徴金制度の見直しについては、平成17年の改正証券取引法附則において、おおむね2年を目途として、課徴金に係る制度の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされており、これを受け、執行当局である証券監視委としては、金融審議会金融分科会第一部会に設置された法制ワーキング・グループに参加し、課徴金制度の実施状況・運用実績を踏まえ、意見を述べた。具体的には、例えば、課徴金額の水準の引上げ、課徴金の適用範囲の拡大及び課徴金の加減算制度の導入などについて、現状を解説しつつ、意見を述べた。これを踏まえ、これらの内容の盛り込まれた「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が、平成20年6月6日に成立、同年6月13日に公布されており、建議を行うのと同様の効果を得ている。
(5) 監視活動・機能強化への取組み等
○ 市場監視体制の充実・強化 平成20年度の機構・定員については、課徴金・開示検査体制の整備を大きな柱として増員要求を行った結果、22人の増員が認められ、同年度末の定員は358人となる。 また、財務局等の証券取引等監視官部門においても、20人の増員が認められ、同年度末の定員は282人となり、証券監視委の定員と合計すると全体で640人となる。 さらに、的確な市場監視及び職員の専門性向上を図るなどのため、証券業務等に関して専門的知識・経験のある者、弁護士及び公認会計士などの民間専門家を採用し、同年6月末現在において在籍している民間出身の専門家は88人となっている。
○ 投資家への情報提供等の取組み 「活動方針」の第二の柱である「市場規律の強化に向けた働きかけ」の一環として、市場参加者との対話、市場への情報発信の強化を掲げ、投資者へも幅広く積極的に情報発信に取組んでいる。情報発信の手段としては、意見交換会、講演会、講義のほか証券監視委のホームページを通じて証券監視委の活動状況等の情報を提供することにより、市場参加者や個人投資家等に証券監視委の活動に対する理解と金融・資本市場に対する信頼を深めてもらうよう工夫を図っている。また、証券監視委の活動に有用な端緒となる情報がより多く寄せられるよう、上記の手段や政府広報等を通じてその提供を呼びかけている。
○ 関係当局との連携 金融庁や自主規制機関と緊密な情報交換等を行うとともに、犯則事件が地域的な広がりを見せる中で、警察及び検察との連携を一層深め、反社会的勢力による金融・資本市場への関与の排除に向けて、警察等との意見交換を実施している。また、海外の証券規制当局との意見・情報交換や主要な国際会議への参加を通じて、金融庁とともに海外の証券規制当局等との連携強化にも努めている。
(6) 金融商品取引法改正による業務の拡大等 金融商品取引法等の一部を改正する法律が平成20年6月13日に公布され、公布日から6月以内(ファイアーウォール規制の見直し等は1年以内)の政令で定める日からの施行に向けて、現在、関係政令・府令等の整備が行われているところである。 この法律は、我が国金融・資本市場の競争力の強化を図るため、金融に関する知識を有する特定の投資家に参加者を限定した市場(いわゆるプロ向け市場)を創設するとともに、投資信託商品の多様化、金融商品取引業者に係る兼職規制の撤廃等(いわゆるファイアーウォール規制の見直し)を行うほか、課徴金について金額水準の引上げ及び対象範囲の拡大を行う等の措置を講ずるため、金融商品取引法その他の関係法律の整備等を行うものである。 今般の改正により、証券監視委の行う検査・調査の対象・範囲も拡大している。具体的には、プロ向け市場の創設に関し、プロ向け市場における開示規制が緩和される中、プロ投資者への簡素な情報提供の枠組み等の実効性を確保するため、提供又は公表された情報が虚偽である場合などを念頭に、課徴金制度及び罰則が整備され、証券監視委がそれらの調査・検査を行うこととされている。 また、ファイアーウォール規制の見直しに関しては、有価証券関連業を行う金融商品取引業者の取締役等と、その親銀行等、子銀行等の役職員との兼職に係る規制が撤廃され、届出制となる(金商法第31条の4)ことに伴い、利益相反による弊害防止の実効性を確保し、金融グループとしての総合的な内部管理態勢の構築を促進する観点から、利益相反管理態勢の整備が求められ、証券監視委としては、こうした態勢の整備状況についても検証することとなる。 このほか、今般の改正により課徴金制度の見直しや金商法等に違反する行為の禁止・停止を裁判所に申し立てる権限が、新たに証券監視委に委任されたことなど、証券監視委の業務はさらに拡大することとなる。
┌ │ │ └ |
本公表については、証券監視委のホームページ上において、本日より公表。 なお、官報においては8月29日に掲載する予定。 |
┐ │ │ ┘ |
- 「証券監視委の活動状況」(一覧表)へ (PDF/59KB)
- 「証券取引等監視委員会の活動状況」の本文へ
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