令和4年6月28日
証券取引等監視委員会
証券取引等監視委員会の活動状況の公表について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」という。)は、金融庁設置法第22条の規定に基づき、毎年、活動状況等を公表しています。今回は、その30回目として、令和3年度(令和3年4月1日~令和4年3月31日)の「証券取引等監視委員会の活動状況」を公表します。
公表内容の主な記載内容
1.令和3年度の活動概要
- ・潜在的なリスクに着目した情報収集・分析を行うなど、タイムリーな市場監視
- ・金融商品取引業者に対するリスクアセスメントを踏まえた検査
- ・課徴金制度の活用による迅速・効率的な調査・検査と、重大・悪質事案に対する厳正な対処
- ・根本原因の把握と、再発防止・未然防止のための対話・情報発信
2.犯則事件の調査、告発
- ・犯則事件の告発件数は8件(内部者取引事件5件、相場操縦事件1件、偽計事件2件)
- ・公正・透明な市場の実現に向け、犯則調査の権限を適切に行使し、重大で悪質な不公正取引等に厳正に対応
3.不公正取引の情報収集・調査・課徴金勧告
- ・インサイダー取引規制違反
- 勧告件数は6件(うち、クロスボーダー事案は1件)。
- 上場会社の役員が内部情報を知得できる立場にあったことを悪用し、インサイダー取引を繰り返し行った事案を勧告。
- 公開買付け等事実や業務提携を重要事実とする勧告件数が多い。
- ・相場操縦規制違反
- 勧告件数は6件(うち、クロスボーダー事案は1件)。
- 売り見せ玉と買い見せ玉を繰り返すことにより株価を人為的に変動させたり、店頭デリバティブ取引である証券CFD取引を行うことにより、市場において見せ玉を行うなど、相場操縦の手口は複雑化・巧妙化。
- 過去5年以内に課徴金納付命令を受けた者が、再度違反行為を行った事案を複数勧告。
4.開示規制違反の情報収集・検査・課徴金勧告
- ・開示規制違反の勧告件数は5件(うち、1件は訂正報告書の提出命令勧告を併せて実施)
- ・以下のような事案について勧告を実施
- 架空循環取引による売上の過大計上等の不適正な会計処理が行われた事案。
- 売上の架空計上及び売上の前倒し計上等の不適正な会計処理が行われた事案。
- ・開示規制違反の再発防止・未然防止の観点から、上場会社の経営陣とその背景・原因等について議論し、問題意識を共有
5.金商業者等に対する証券モニタリング
- ・規模・業態を踏まえたリスクアセスメントを実施
- 規模業態別の業務運営上の課題及びリスクを取りまとめ。
- ・リスクアセスメントに応じた検査を実施
- 46件着手、2件の行政処分勧告。
- ・実効性ある内部管理態勢の構築等を促す取組みを実施
- 「留意すべき事項(問題は顕在化していないものの改善が必要な事項)」を検査終了通知書に記載し、問題意識をモニタリング先と共有。
6.金商法違反行為に対する裁判所の禁止命令等発出の申立て
- ・裁判所への禁止・停止命令の申立て
- 投資者被害拡大防止のため、裁判所へ無登録業者による金融商品取引法違反行為の禁止・停止命令発出を求める申立てを実施。
- ・関係機関との連携強化
- 金融庁関連部局、各財務局、捜査当局及び消費者庁等との連携を強化。
7.監視を支えるインフラの整備(デジタライゼーション、人材)
- ・既存のシステムインフラの見直しや整備を通じた、市場監視業務の高度化・効率化の推進
- (例)金融機関に対する預貯金照会サービス利用の実証実験の実施(令和4年1月~3月)
- ・市場監視の土台となるシステム等の機能強化
- ・デジタルフォレンジック技術の一層の向上及びシステムの高度化
- ・OJTを通じた職員の専門性向上や高い専門的知識を有する人材の登用
8.市場規律強化に向けた取組み
- ・事案の意義や問題点等を情報発信
- 個別の勧告事案等の公表、課徴金事例集等について積極的に寄稿や講演を実施。
- 各ステークホルダーに向けたメッセージを「監視委コラム」に記載(令和3年度年次公表)。
- ・自主規制機関との連携
- 売買審査などで日常的に連携。
- 定期的な意見交換により相互の問題意識をタイムリーに共有。
- ・海外当局との連携
- 世界233機関が加盟する証券監督者国際機構(IOSCO)において、証券規制の国際的調和や規制当局間の相互協力を目指す議論に積極的に参加。
- IOSCO MMoUに基づく海外当局との情報交換により、クロスボーダー取引による違反行為に対して迅速な法執行を実施。
- 海外当局職員への研修実施、海外当局主催オンライン研修への参加等により、当局間ネットワークの強化や問題意識を共有。