平成22年5月31日
証券取引等監視委員会
証券取引等監視委員会の事務処理状況の公表について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」という。)は、発足以来毎年、事務処理状況を公表していますが、今回は、その18回目として、平成21年4月1日から同22年3月31日までの期間における事務の処理状況を「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表します。
公表内容の主なポイント
はじめに:現委員会体制の総括
この3年弱:金融危機、規制環境の変化
1.包括的・機動的市場監視
不公正ファイナンスへの対応、偽計の積極適用による摘発
新たな商品・取引の監視:CDS、証券CFD、DMA、ダークプール、アルゴリズム等
2.課徴金制度の活用
迅速性、効率性重視、勧告件数の飛躍的増加
課徴金事例集の公表:市場規律への働きかけ
3.金融商品取引法の適切な運用
検査対象業者の拡大
機動的検査:財務の健全性の検証、FX業者、ファンド等の集中検査
4.自主規制機関などとの連携
連携の深まり:双方向での問題意識、情報の共有
対象範囲の拡大:日本弁護士連合会、日本公認会計士協会、日本不動産鑑定協会、日本行政書士会連合会等
5.グローバル化への対応
個別事案の摘発:初のクロスボーダーのインサイダー取引摘発(21年4月)
海外当局との連携の強化:情報交換、MMOUの活用
第2章:金融危機等を踏まえた取り組み
1.不公正ファイナンス事案の監視強化
不公正ファイナンス事案のリスクの高まり
証券監視委の総力を挙げた監視:特に偽計の適用
規制・監視の包囲網:自主規制機関、法律事務所、監査法人、証券会社等との連携
2.財務の健全性の検証のための証券検査
検査体制の整備:リスク管理の専門家、会計士の採用等
監督部局との連携:オフサイトモニタリングとオンサイトモニタリングの連携
検査結果の通知の見直し:内部管理態勢に関する指摘
3.新たな商品等の監視
CDS
証券CFD
ダークプール
4.市場規律の強化
情報発信の強化:新たな対象、媒体、ツール(メルマガ、Webサイトの見直し等)
自主規制機関との情報共有:意見交換、講演、研修等の共催
5.国際関係業務の強化
G20、IOSCO等の議論への貢献:特に監視を通じて得られた問題意識の提供
海外当局との連携強化:証券会社等の検査、不公正取引の監視
海外への情報発信:海外当局、外資系証券会社、在日大使館等
第3章:市場分析審査
1.一般投資家等からの情報受付
平成21年度:7,118件
(内容別内訳)
個別銘柄に関するもの
3,889件
発行体に関するもの
835件
金融商品取引業者の営業姿勢等に関するもの
1,349件
その他の意見等(注)
1,045件
平成20事務年度(6,412件)に比べ約1割増
(注)証券監視委等の職員を装った者による未公開株に関する悪質な電話勧誘等に係る情報提供:348件
規制・監視の包囲網:自主規制機関、法律事務所、監査法人、証券会社等との連携
2.市場動向分析
最近の市場環境を踏まえ、以下の分析を強化
(1) 発行市場におけるファイナンス
(例:著しい希薄化を伴う第三者割当増資等)
(2) 新たな金融商品や取引形態
(例:CDS、証券CFD、ダークプール)
- 東証arrowhead稼動(22.1)後の取引パターンの変化等についても注視
監督部局との連携:オフサイトモニタリングとオンサイトモニタリングの連携
検査結果の通知の見直し:内部管理態勢に関する指摘
3.取引審査
平成21年度:749件
(内訳)
価格形成に関するもの
94件
内部者取引に関するもの
649件
その他
6件
取引審査に有益と考えられる手法を積極的に取り入れ
取引の規模の大小を問わずつぶさに分析
不公正ファイナンス事案の疑いがあるものについては、偽計等の観点から取引審査を実施
自主規制機関(取引所等)とも連携(双方向での情報共有)
第4章:証券検査
211社の検査を実施、うち123社(58%)に対し問題点を通知、うち21社に行政処分を求める勧告
(20事務年度は220社を実施、うち112社(51%)に通知、うち18社に勧告)
大型案件の勧告
ビー・エヌ・ピー・パリバ(株価固定等)
コスモ証券(投信勧誘)
SBI証券(システムリスク管理態勢)
ファンド業者に対する集中検査
出資金流用等の悪質な法令違反が認められた8社を勧告
フォワードルッキングな観点からのリスク管理態勢の検証
⇒民間専門家等を採用し、国内、外資系各社からリスク管理態勢等のヒアリングを実施
「信用格付業者検査マニュアル」の策定
⇒本年4月から新たに検査対象となった信用格付業者に対する検査への対応
第5章:課徴金調査
不公正取引事案に係る勧告状況
内部者取引事案38件、相場操縦事案5件、計43件、5,548万円の勧告を実施
内部者取引
- 公開買付け実施事実に基づく事案の急増
- 20年度3件→21年度12件
- 第一次情報受領者による事案が急増
- 20年度3件→21年度21件
- 企業情報の管理の徹底を求められる者による事案
- 監査役、会社のIR担当者、デューデリジェンス業務担当者、信用調査会社社員
相場操縦
取組み本格化 20年度1件→21年度5件
見せ玉事案の勧告(スズケン)
第6章:開示検査
開示検査結果に基づく勧告状況
開示書類の虚偽記載に対し、9件、7億397万9,998円の勧告を実施
公開買付開始公告の実施義務違反に対しても1件勧告
※20年の金商法改正により新たに対象となった違反行為に対する初の摘発
EBANCO HOLDINGS LIMITEDによる新株予約権証券の買付けに係る公開買付開始公告の不実施
開示検査の出口の多様化:課徴金勧告に至らない場合にも、上場企業が当方の慫慂を受け訂正(1件)
第7章:犯則事件の調査・告発
17件の告発(昨事務年度13件)
(内訳:インサイダー7件、相場操縦3件、偽計3件、虚偽有価証券報告書等提出4件)
主な告発事例
(1)不公正ファイナンスを偽計として告発(3件)
株式会社ペイントハウスの第三者割当増資を利用した偽計事件
ユニオンホールディングス株式会社の水増し増資偽計事件
(相場操縦事件としても告発した複合事案)
トランスデジタル株式会社の架空増資偽計事件
(2)デイトレーダー・グループによる大規模な相場操縦
ネット取引による「見せ玉」等の手法を用いたデイトレーダー・グループによる相場操縦事件(調査に際しては証券監視委独自プログラムも活用)
(3)東証一部上場企業による巨額粉飾決算事案
ニイウスコー株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件
(循環取引等を利用した架空売上を計上)
第8章:建議
1.金融庁によるルール整備への貢献
外国為替証拠金(FX)取引に係る区分管理の見直しやロスカットルールの制定等について建議(21年4月)
第三者割当増資に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」へのインプット(22年2月)
2.自主規制機関によるルール整備への貢献
証券監視委としての問題意識、材料の提供
第三者割当増資に関する各証券取引所上場規則等金融庁によるルール整備への貢献
第9章:監視活動の機能強化
1.監視体制の充実・強化
組織の拡充:定員374→384人(10人増)
民間専門家の増加:弁護士、公認会計士、IT専門家等106名
2.情報収集・分析能力の向上
証券総合システムの活用:東証arrowheadへの対応等
職員研修の充実:最先端の知識、ノウハウの習得:海外当局への派遣
3.システム・インフラの強化
ITシステムの高度化:コンプライアンスWANの稼動
デジタルフォレンジック態勢の整備
4.市場参加者との対話、情報発信
講演会、意見交換:開催回数の増加、対象の拡大
新たな手法の導入:メルマガ、寄稿、執筆等
Webサイトの充実:デザインの見直し(発足以来初)
5.関係当局との連携強化
金融庁・財務局
自主規制機関:双方向での情報共有
海外当局:情報交換、人材交流等
- 活動状況のポイント(PDF/260KB)
- 「証券監視委の活動状況」(一覧表)へ (PDF/64KB)
- 「証券取引等監視委員会の活動状況」の本文へ