平成23年6月28日
証券取引等監視委員会
証券取引等監視委員会の事務処理状況の公表について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」という。)は、発足以来毎年、事務処理状況を公表していますが、今回は、その19回目として、平成22年4月1日から同23年3月31日までの期間における事務の処理状況を「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表します。
公表内容の主なポイント
第2章: 証券監視委の活動方針
第7期体制(平成22年12月発足)の中期的な戦略である活動方針(平成23年1月公表)について、その策定の背景と基本的な考え方を掲載
1.証券監視委の使命
○市場の公正性・透明性の確保
○投資者の保護
2.基本的な考え方
(1) 機動性・戦略性の高い市場監視の実現
(2) 市場規律の強化に向けた働きかけ
(3) 市場のグローバル化への対応
3.重点施策
(1) 包括的かつ機動的な市場監視
(2) 不公正取引や虚偽記載等への厳正な対応
(3) ディスクロージャー違反に対する迅速・効率的な検査・調査の実施
(4) 課徴金制度の一層の活用
(5) 検査対象先の特性に応じた効率的かつ実効性ある証券検査の実施
(6) 自主規制機関などとの連携
第3章:市場分析審査
1.一般投資家等からの情報受付
平成22年度:6,927件
(内容別内訳)
・個別銘柄に関するもの3,640件
・発行体に関するもの597件
・金融商品取引業者の営業姿勢等に関するもの1,142件
・その他の意見等1,548件
2.市場動向分析
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第三者割当を中心としたファイナンスを巡る最近の動向調査
企業等不祥事における第三者調査委員会の設立及び調査報告状況の把握
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新たな取引形態(高頻度取引(HFT)等)の実態把握
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株式公開買付け(TOB)に係る実務及びインサイダー取引のリスクに関する実態把握と対応策の提言
・摘発件数の増加を受け、TOB関係者に対して実態把握を実施
・実態把握を踏まえ、各関係者の情報漏えいリスクを特定し、 インサイダー取引未然防止の観点から、その対応策を提言
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3.取引審査
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平成22年度:691件
(内訳:価格形成に関するもの54件、内部者取引に関するもの613件、その他:24件)
・不公正ファイナンス事案の疑いがあるものについては、偽計等の観点から取引審査を実施
・クロスボーダー取引について、必要に応じ、海外証券規制当局等から情報収集
・自主規制機関との緊密な連携
・東日本大震災後の対応
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第4章:証券検査
1.検査の実施状況
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証券会社(82社)、投資助言・代理業者(35社)、二種(ファンド) 業者(18社)、FX業者(18社)等、多様な業態をカバーし、全体で 210社(昨年度211社)の登録業者を検査
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全体の約5割に当たる103社に対し、問題点を通知
うち重大な法令違反等が認められた19社(18件)について行政処分勧告を実施
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多種多様な検査対象の特性に応じ、メリハリを効かせ対応
・グローバルに活動する大手証券会社については、リスク管理態勢等を重点的に検証。金商業者検査マニュアルを改正し(平成23年4月1日公表)、検証項目も整備
・ファンド販売業者、投資助言・代理業者については、集中的に法令遵守状況を検査
・無登録業者等に対する金商法第192条(申立て)、第187条(調査)の活用に着手
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2.ファンド販売業者、投資助言・代理業者に対する集中的な検査
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ファンド販売業者35先、投資助言・代理業者74先の検査結果を取りまとめ、公表(ファンド販売業者平成22年10月、投資助言・代理業者平成23年2月) 出資金の流用、無登録営業等の重大な法令違反が多数発覚
⇒業界に対し法令遵守への取組みを要請、投資者には、問題事例を示し、注意喚起 -
検査結果に基づき、「事業型ファンド」の販売規制の拡充、投資助言・代理業者の登録拒否要件の拡充につき建議。いずれも実現化
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3.無登録業者に対する裁判所への禁止命令等の申立て
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平成20年の金商法改正により、監視委に申立て権限を委任。平成22年の同法改正で申立て違反に対する罰則を強化。
⇒申立制度の実効性強化
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これらの制度整備を受け、無登録で未公開株式等の勧誘を行っていた(株)大経及びその役員について、昭和23年の制度導入以来初となる申立てを実施(平成22年11月17日)
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第5章:課徴金調査
課徴金調査の結果に基づく勧告状況
内部者取引20件、相場操縦6件
(内部者取引の件数は平成21年度に次ぐ。相場操縦の件数は過去最多。)
⇒計26件の勧告を実施
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勧告事案例
・公認会計士が職務上知り得た情報を元に内部者取引を行った事案
・アルゴリズム取引の特性を利用することを意図した相場操縦事案
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内部者取引事案の傾向
・昨年度に引き続き、第一次情報受領者による事案の件数が、会社関係者・公開買付者等関係者による事案の件数を上回った
・契約締結者等として内部情報を得た者が情報伝達を行った事案が増加
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第6章:開示検査
1.開示検査の結果に基づく勧告状況
虚偽記載等の開示義務違反に対し、19件(過去最多)の勧告を実施
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勧告事案例
・有価証券報告書等の虚偽記載及び当該開示会社役員が所有する同社株券売出しに係る目論見書の虚偽記載に係る事案((株)シニアコミュニケーション)
・有価証券報告書等の不提出に対して課徴金納付命令勧告を初めて行った事案((株)ゼクス)
(注)勧告に至らない場合にも、自発的な訂正を促している
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2.無届募集に対する裁判所への禁止命令等の申立て
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平成22年の金商法改正による申立制度の実効性強化
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制度整備を受け、無届けで自社株式等の取得の勧誘を行っていた(株)生物化学研究所について、申立てを実施(平成22年11月26日)
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第7章:犯則事件の調査・告発
1.告発の状況
8件を告発
(内訳:内部者取引4件、相場操縦1件、偽計1件、虚偽有価証券届出書提出1件、 無届募集1件)
2.主な告発事例
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(株)エフオーアイによる新規上場時の粉飾を伴う公募増資
・一般投資家への更なる被害の拡大を最小限にするため、同社株の取引制限(ロックアップ)が解除される前に強制調査に着手
・新規上場時の粉飾を伴う公募増資について、「有価証券届出書の虚偽記載」に加え「株式の募集のための偽計」(金商法158条)を適用した初のケース
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(株) 丸美に係る無届社債券募集
・無届募集を告発した初のケース
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大分在住のデイトレーダーによる見せ玉手法等を用いた相場操縦
・東証の新売買システム「arrowhead」稼動後の相場操縦行為を摘発した初のケース
・インターネット取引の進展に伴う証券犯罪のローカル化に対応
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(株)西友株券の公開買付けに係る内部者取引
・犯則嫌疑者が、(株)西友株券のTOBが行われる旨を同社の社外取締役である配偶者から伝達を受け、内部者取引を行った事例
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第8章:建議
建議を通じたルール整備への貢献
事業型ファンドにおける分別管理に係る販売規制についての建議 (平成22年10月19日)
⇒金融庁は建議に基づく措置として、「金融商品取引業者等に関する内閣府令」を改正し、契約締結前交付書面の記載事項に次の内容を追加(平成23年4月1日施行)・ファンド毎の出資金の具体的な預託先、支店名、口座名等
・分別管理の実施状況及びその確認を行った方法
投資助言・代理業者の登録拒否事由についての建議(平成23年2月8日)
⇒金融庁は、建議に基づく措置として、投資助言・代理業の登録拒否事由に人的構成要件を追加する金商法の改正を含む「資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律」案を国会に提出(平成23年5月25日公布)
第9章:監視活動の機能強化
1.市場監視体制の充実・強化
組織の拡充:定員384→392人(8人増)
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民間専門家の増加:弁護士、公認会計士、IT専門家等106→111名(5人増)
2.情報収集・分析能力の向上
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証券総合システムの改修
・大証における新デリバティブ売買システム「J-GATE」への対応
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3.システム・インフラの強化
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デジタルフォレンジック運用体制の強化
・専門機材、ソフトフェア等の整備
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4.市場参加者との対話、情報発信
市場参加者に対する講演や意見交換等の実施
新たな情報発信ツールとして、証券監視委メールマガジンを発刊
5.関係当局等との連携
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金融庁、財務局、自主規制機関と定期的な意見交換を実施
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6.海外証券規制当局等との連携
情報交換枠組み(多国間MOU)等を活用したクロスボーダー事案への対応
海外規制当局(米SEC等)への職員派遣
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- 活動状況のポイント(PDF/260KB)
- 「証券監視委の活動状況」(一覧表)へ (PDF/64KB)
- 「証券取引等監視委員会の活動状況」の本文へ