平成27年6月30日
証券取引等監視委員会
証券取引等監視委員会の活動状況の公表について
証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」という。)は、金融庁設置法第22条の規定に基づき、毎年、活動状況等を公表しています。今回は、その23回目として、平成26年度(平成26年4月1日~同27年3月31日)の「証券取引等監視委員会の活動状況」を公表します。
公表内容の主なポイント
第1章組織
第2章市場分析審査
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1.一般投資家等からの情報の受付
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○ 一般投資家からの情報提供を呼びかけるポスター・リーフレットを新たに作成し、全国の自治体や警察等に配布。有用性の高い情報の収集に努めた。
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○ 受付件数5,688件
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(内訳)
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・個別銘柄に関するもの3,904件
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・発行体に関するもの410件
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・金融商品取引業者の営業姿勢等に関するもの652件
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・その他(無登録業者等)722件
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2.市場動向分析
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○ 発行市場・流通市場全体に目を向けた市場監視を実施
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○ 新たな金融商品等の実態把握
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3.取引審査
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○ 1,084件の取引審査を実施 *平成25年度は1,043件
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(内訳)
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・価格形成に関するもの94件
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・内部者取引に関するもの978件
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・その他(偽計等)12件
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第3章証券検査
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1.検査の実施状況
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○ 全体で266業者〔着手ベース〕の検査を実施
第一種金商業者(77業者)、登録金融機関(1業者)、投資運用業者(15業者)、
第二種金商業者(72業者)、投資助言・代理業者(42業者)、
適格機関投資家等特例業務届出者(31業者)等、多様な業態をカバー
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(注1)検査対象先が複数の業種の登録を受けている場合は、主たる業種に分類して計上
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(注2)検査対象先は、金融商品取引法の施行を含む数次にわたる制度改正により多様化するとともに、対象業者数が大幅に増加し、全体で延べ約8,000業者(平成26年度末時点)
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○ 検査等の結果、重大な法令違反等が認められた16件について、行政処分を求める勧告を行い、これら事案を含め、法令違反や内部管理態勢等の問題点が認められた105業者に対して、問題点を通知
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2.主な勧告事例
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○ 第一種金融商品取引業者
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・株券に係る市場デリバティブ取引の自己売買に係る売買審査態勢に不備が認められる状況(むさし証券(株))
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○ 第二種金融商品取引業者
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・顧客に対する虚偽告知、無登録業者に対する名義貸し(ジースリー(株))
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○ 投資助言・代理業者
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・無登録で店頭デリバティブ取引の媒介を行っている状況((株)チャートマスター)
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○ 投資運用業者
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・年金基金との投資一任契約における忠実義務違反(ばんせい投信投資顧問(株))
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3.適格機関投資家等特例業務届出者に対する検査結果等の公表
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○ 出資金の流用、顧客に対する虚偽告知等重大な法令違反等が認められた17件の検査等の結果を公表
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(注)適格機関投資家等特例業務届出者については、行政処分を行うことができないことを踏まえ、平成24年度から、証券検査の結果、金商法違反行為や投資者保護上問題のある行為が認められた場合に、検査対象先の名称・代表者名・法令違反行為等の公表を行っている。
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4.無登録業者等に対する裁判所への禁止命令等の申立て
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○ 6件の申立てを実施
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・無登録金商業(投資一任契約の締結の媒介及びファンド等の私募等の取扱い)の禁止((株)グランター他2名)
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・無登録金商業(投資一任契約に基づく運用)の禁止(MASTERS DPB LIMITED他1名) 等
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第4章取引調査
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取引調査の結果に基づく勧告状況
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○ 23事案について38件*の勧告を実施(国際取引等調査に基づく勧告を除く)
*課徴金勧告対象者ベース
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(内訳)
- 相場操縦:7事案7件、内部者取引:16事案31
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○ 平成26年度の内部者取引31件(16事案)のうち公開買付けに係るものが22件(7事案)を占めており、過去2年間の実績(各5件・4事案)と比べ、事案数・件数とも大幅に増加
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○ 主な勧告事例
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・公開買付者との契約締結交渉者の役員からの情報受領者によるトーメンエレクトロニクス株式に係る内部者取引(平成27年3月24日勧告)
→ 公開買付者の子会社役員が、公開買付けの実施に関する情報をゴルフ仲間に伝達し、その情報をもとに4名が対象銘柄の売買を行った事例
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・大陽日酸株式会社の役員等からの情報受領者による内部者取引(平成27年3月27日勧告)
→ 公開買付対象者の役職員等が、公開買付けに関する情報を取引先に伝達し、その情報をもとに複数の取引先関係者(個人7名、法人2社)が対象銘柄の売買を行った事例
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第5章国際取引等調査
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国際取引等調査の結果に基づく勧告状況
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○ クロスボーダー取引を利用した相場操縦等、4件の勧告を実施
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・証券規制当局の多国間情報交換枠組み(MMOU)を積極的に活用し、海外当局を訪問して協議を行うなどの手法を用いながら法執行を実施
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・クロスボーダー取引を利用した高頻度取引(HFT)による違反行為について、自主規制機関の協力を得るなどして効果的に摘発
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○ 勧告事例
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・長期国債先物に係る相場操縦(平成26年9月5日勧告)
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→ 発注の一部にアルゴリズム取引による自動発注を利用した相場操縦に対する勧告
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・Areion Asset Management Company Limitedによる相場操縦(平成26年12月5日勧告)
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→ 大引け前30秒間に大量の買い注文を発注した相場操縦に対する勧告
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・むさし証券株式会社による相場操縦(平成26年6月13日勧告)
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→ 市場デリバティブ取引の相場操縦に対する初めての勧告
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・Select Vantage Inc.による相場操縦(平成27年3月6日勧告)
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→ 取引所の昼休み(場間)に取引所とPTSをまたいで行われた相場操縦に対する初めての勧告
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第6章開示検査
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開示検査の結果に基づく勧告状況
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○ 8件の勧告を実施
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○ 勧告事例
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・売上の過大計上、貸倒引当金繰入額の過少計上、架空資産の計上、仕掛品の過大計上
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・大量保有者の所有株式数や株券等保有割合を適切に記載していなかった事案
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→ 多岐にわたる虚偽記載の内容について勧告
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(注)勧告に至らない場合でも、必要に応じ、自発的な訂正を促している。
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第7章犯則事件の調査・告発
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告発の状況
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○ 6件の告発を実施 *平成25年度は3件
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(内訳)
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内部者取引1件、相場操縦2件、偽計1件、虚偽有価証券報告書提出2件
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→ 事案の内容に応じて、捜査当局等の関係機関と連携して調査を実施
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(株式会社fonfun株券に係る相場操縦事件、株式会社太陽商会に係る虚偽有価証券報告書提出事件等)
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第8章建議
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証券監視委の建議に基づいて執られた措置
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○ 適格機関投資家等特例業務に関する特例についての建議(平成26年4月18日建議)
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・適格機関投資家等特例業務届出者に対するこれまでの検査を踏まえ、適格機関投資家等特例業務に関する特例について、出資者に係る要件を厳格化する等、一般投資家の被害の発生等を防止するための必要な措置を講ずるよう、建議を実施
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→ 金融庁は、「金融商品取引法の一部を改正する法律」案を国会に提出し、
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同法は平成27年6月3日に公布された。
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第9章市場のグローバル化への対応に向けての取り組み
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1.情報交換枠組みの活用
クロスボーダー取引による違反行為に対し、証券規制当局間の情報交換枠組み等を通じた海外証券規制当局からの情報提供などにより、課徴金納付命令勧告等を実施し、適切に対応
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2.意見交換等
アジアの市場監視当局が実務レベルの諸問題について意見交換を行うアジア太平洋市場監視当局者対話の東京での主催や、海外当局が主催する研修への職員派遣・海外当局職員の証券監視委への受入れ、意見交換の実施等により、海外規制当局との一層の連携強化を図った。
第10章監視活動の機能強化への取組み等
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1.市場監視体制の充実・強化
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○ デジタルフォレンジック体制の強化・整備や投資型クラウドファンディングを取扱う業者及び適格機関投資家等特例業者届出者等に対する検査体制の整備について増員要求
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→ 4人の増員(証券監視委の平成27年度末の定員は410人)
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○ 民間専門家の採用:弁護士、公認会計士等(平成26年度末現在、121名在籍)
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2.システム・インフラの強化
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○ デジタルフォレンジックの環境整備(機材の整備、研修の充実等)
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3.市場参加者との対話、情報発信
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○ 市場参加者に対する講演や意見交換の実施
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○ 各種専門誌への寄稿や証券監視委メールマガジン等を通じた情報発信
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4.関係当局等との連携
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○ 金融庁の関係部局や自主規制機関との緊密な連携のもと、問題意識の共有を図り、総体としての市場監視活動の強化に努めた。
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