高橋新委員長記者会見の概要
(平成13年7月23日(月)14時30分~15時15分)


(高橋)先ほど委員長の辞令を頂いて参りました。いろいろとお世話になると思いますが、よろしくお願いいたします。お手元に私の委員長談話と新体制の活動方針をお配りしていると思います。本来は委員長談話を読み上げるべきではございますが、時間の制約もございますので、各位じっくり読んでください。しかしながら、たたき台がなければ、何もご質問ができないと思いますので、以下、新体制の活動方針のポイントをご説明させていただきます。まず、配布資料の1ページ目、私の認識でございますが、監視委員会の使命としては、取引の公正性の確保を図ることと市場に対する投資者の信頼を保持するということでございます。皆さんご承知のことではございますが、今日の日本経済の中で直接金融の発展が求められているわけでございます。このような中で監視委員会の果たす役割は、これまでにも増して重要なものになったと認識しております。
 そこで、証券市場に関してどのような分析を行っているかということでございますが、2ページ目に書いてありますように3つの不信が挙げられます。1つ目が市場仲介者に対する不信であります。2つ目は市場参加者に対する不信でございます。そして3つ目は、我々に反省を迫るものでございますが、監視当局への不信でございます。
 このような分析を踏まえ、新体制としては何をすべきかということについては、3ページ目にありますように、個人投資家の証券市場に対する不信感の解消を図るために、個人投資家の保護に全力を尽くすことに尽きるわけでございます。これを新体制の最大の目標としたいと考えております。それでは、この目標を達成するために、いかなる戦略を採るかということでございますが、4ページ目に書いてありますように、1つ目は悪質な証券会社などの徹底摘発でございます。個人投資家の利益を犠牲にして自ら利益をあげるような証券会社やその役員・職員等、悪質な市場仲介者の徹底摘発を図るということでございます。2つ目は相場操縦やインサイダー取引など、多数の個人投資家を欺き、証券市場の公正性を損ねる証券犯罪の一掃を図るということでございます。いわゆる仕手筋による大規模な相場操縦についても積極的に摘発を図っていきたいと思います。3つ目は監視委員会のプレゼンスの向上ということでございます。単に摘発実績を上げるだけではなく、タイムリーな摘発、迅速な摘発を通して、監視委員会が不公正取引の効果的な抑止力となるよう、監視委員会のプレゼンスの向上を図るということでございます。
 そこで、以上のような目標を達成するためには、どのような態勢整備を図るかということで、5ページ目に書いてありますように、1つ目は、言い古されたことではございますが、人員の増強でございます。
 これを今後の1つの大きな目標としていきたいと思います。また、不正な取引などの摘発は情報収集・分析能力が必要となります。したがいまして、2つ目は、情報収集能力・分析能力の向上を図っていくということでございます。3つ目は、以前から行ってきたことではございますが、関係当局との連携をこれまで以上に密にしていこうと考えております。さらに、4つ目は、外国当局との連携が要請されております。今日、金融取引がグローバル化しており、また、インターネットによって世界中を駆け巡る金融取引が行われております。このような中で、外国当局とも連携して適切な処置を図っていきたいと考えております。最後に、5つ目として、個人投資家との連携でございます。我々は、ホームページの改善などを通じて個人投資家からも積極的な情報提供を呼びかけるとともに、投資家の自衛努力をサポートする態勢を整備していきたいと考えております。以上が新体制の大まかな目標でございます。加えて、このようなことを知っていただくために、この度、ホームページを刷新いたしました。これは今日から見ていただけます。ロゴ・マークも作成いたしました。2つの楕円の中に、SESCという文字が入っております。その下に、副題として、"for investors , with investors"という言葉も入っております。この楕円2つは、我々の監視対象であります証券市場と金融先物市場を表現しております。それと同時に、監視委員会と関係当局との連携、あるいは海外当局との連携、さらには投資家との連携を表現しております。是非、このホームページをご愛用していただければと思います。私からご挨拶代わりに申し上げることは以上でございます。

(記者)態勢整備方針でございますが、人員の増強というのはどの程度お考えなのでしょうか。

(高橋)なかなか難しい話ではございます。予算等の中で考えていかなければなりません。また、当然、社会の流れというものも考えていかなければなりません。少なくとも、例えば、違法事犯の摘発を行っている調査関係の部署、現在40名でやっておりますが、これを倍増していただければ相当程度の仕事ができるであろうと考えております。

(記者)監視委員会と金融庁の関係部局を一本化するですとか、準司法的な機能を持たせてはどうだろうか、さらには民間から職員を採用しやすい組織にしてはどうか、という米国のSECを目指す考えがあると思いますが、このような考えについて、どのようにお考えですか。

(高橋)紋切り型の答えをするならば、組織運営の問題は監視委員会の権限外であるといえば済むことであります。しかしながら、皆さんそれでは満足されないと思いますので、私の個人的な見解としてお聞きいただきたいと思います。いろいろと論議されているものの中心は、権限を拡大することと人員を増やすということであります。このような考えについて、監視委員会の委員長である私が「それはおかしい」というのは、それこそおかしい話で、大変ありがたい話であると思います。しかしながら、組織というものは、それぞれ一長一短があります。したがいまして、組織論を論ずるならば、それぞれの組織のメリット、デメリットはどこにあるかということを十分に考え、しかも1つの組織論がまとまった段階であっても、その組織をどこに所属させるかということも十分に考えなければなりません。結論を申し上げますと、組織論をその時々の流れの中で十分に議論していくというのは望ましいことではありますが、その中で考えていかなければならない問題は山ほどあるということでございます。証券資本市場に対する権限は主として、私どもの委員会と金融庁のいくつかの部局が行使していますが、現段階では、それぞれの権限を前提にしながら、どうすれば個人投資家の信頼を得ることのできるような市場にできるか、そのための効果的な働きをする方法とは何かということを考えていくことが先決だと思っております。

(記者)先日の国際証券の事案では、執行役員自らが検査忌避を行っており、証券市場の一方の主人公である証券会社があまりにも旧態依然としているのではないかと思いますが、今後、このような問題に対して委員長はどのように対処していくのか、お話しいただきたい。

(高橋)監視委員会の権限としては、1つ目は証券市場を審査、すなわち、証券市場を眺め回して問題点はないか点検するというやり方、2つ目は検査で証券会社に赴いて、その会社の取引、その他を見させていただいて、その中に公正性を害するような行為、法違反的な行為がないかどうかということを調査していくやり方、そして、3つ目は特別調査課が行う違法事犯を摘発し、それを告発して刑事裁判として処理をするというやり方でございます。皆さんご承知の通り、検査においても、調査においても、問題点が多く指摘されております。したがいまして、ご指摘のように、まだまだ証券会社をはじめとして問題点は解消されてはいないということでございます。国際証券の場合は、やや特異な事例で、これがすべての証券会社であるということではありません。しかも、証券会社の中で、役員の方もそうでございますし、一般の職員の方々も、だんだんと顧客のために適正な行為を行うことの重要性について認識を持ち始めているところでございます。それで、私は決して証券会社のあり方に絶望しているわけではございません。しかしながら、問題があることも間違いございません。この問題への対策で1番重要なことは、証券会社の皆さんに、仮に利益に結びつかなくても、あるいは多少利益に響いたとしても、投資家の利益のために働くことがひいては自社の利益になるということを理解していただくことであります。ここをきっちりと理解していただけば、このような問題は起きないであろうと思います。また、先ほど申し上げましたが、監視委員会は、法令違反があれば指摘し、あるいは調査し、けりをつけていくという姿勢を続けていくということでございます。この2つを重視したいと思います。

(記者)なぜ個人投資家の保護なのか、また、インターネットについてですが、他の国々に比べて日本の法体系でインターネット取引を規制していく上で難しい面、情報収集活動で具体的にはどのようなものが足りないか、どのように強化していくか、ということをお願い致します。

(高橋)まず、なぜ個人投資家かということでございますが、日本の経済は、これまで銀行を中心とした間接金融により発展してきたわけであります。しかし、今日、そこにいろいろな問題が出て来たということでございます。さらに、金利が下がってきたということも影響しておりますが、個人が証券市場に目を向け始めています。今、このような状況で個人投資家が火傷をしたならば、証券市場から手を引いていく可能性が強いと思います。個人投資家の保護は、日本の経済が健全に発展していくために極めて重要なことだと思います。
 インターネットは通信でございますが、通信の秘密という憲法的な保障があり、インターネットに載った情報源を直ちに我々が何の制約もなく、取得するということは非常に難しいことであります。結局、最終的には令状によって求めていくということになります。これが1番の大きな問題だと思います。その他の点につきましては、他の国々と比べてインターネットによる証券犯罪の摘発が難しいことはないと思います。ただ、インターネットというのは駆け巡っておりますから、そのインターネットの中の情報をすべて把握するということは非常に難しいと思います。ご存知の通り、委員会でもインターネット巡回システムを構築し、情報の把握に努めております。これが効果を発揮してまいりますと、インターネットによる犯罪についても、適切なアクセスが可能になっていくと思います。
 情報収集につきましても、なかなか難しい問題でございます。122名の本庁職員で集めて回るというわけにもいきません。そこで、先ほど申し上げましたように取引審査部門が日々、取引を十分に審査しながら、その中からおかしな動きはないかと情報を探り当てております。また、インターネットの巡回システムをもって、情報を収集しております。私は、投資家の方々からできるだけ多くの情報を寄せていただきたいと思います。現在も、投資家の方々から情報が寄せられておりますが、今後はますます多くの情報を寄せていただいて、それを活用していきたいと考えております。

(記者)アナリストの監視の強化という問題もあり、その中で、アナリストの株価のプライス・ターゲットが違法であるとの一部報道がなされているが、このことについては、どのようにお考えでしょうか。

(高橋)監視委員会に与えられているのは、市場の公正性の確保についての権限でございます。アナリストの行動に対応する権限は私どもには与えられておりません。ですから、アナリストが何かをしているようだから、調査をするということはできません。ただ、仮に、アナリストの中に意識的に虚偽の情報を流して株価を操縦するというようなことがあれば、風説の流布ということになり、そういう形でのアクセスであれば私どもでもできます。その他のことにつきましては、権限外でございますので、コメントを控えさせていただきます。

(記者)どうもありがとうございました。

(高橋)どうもありがとうございました。

 

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