証券取引等監視委員会メ-ルマガジン(第28号)平成25年3月1日
証券監視委ホームページ http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

<目次>

1.新着情報

2.市場へのメッセージ

3.コラム


1.新着情報


◎MJホールディングス株式会社に対する調査結果及びワイズキャピタル合同会社等に対する検査結果について
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2013/2013/20130301-1.htm


2.市場へのメッセージ


◆不公正ファイナンスについて◆

○不公正ファイナンスとは

近年、金融資本市場では、株式の発行過程における不適切な行為と流通市場における不適切な行為が複合的に関連して行われる不公正取引の事案が見受けられます。例えば、架空増資(見せ金増資)や不動産を過大評価した現物出資等によって新株式を取得し、これを流通市場で売却して不当な利益を得るという行為が散見されます。そして、こうした取引の前後には、流通市場で行われるインサイダー取引や相場操縦行為も複合的に絡み合い、あらかじめ一つのシナリオに沿って一連の取引がワンセットとして行われます。

このように有価証券の発行過程(増資等)と流通市場とにおける複数の不適切な行為を要素として構成される不公正な取引を「不公正ファイナンス」と呼んでいます。

こうした不公正ファイナンスで典型的な手法として用いられるのが、第三者割当増資です。第三者割当増資は、新たに資金調達をしたい上場会社が、既存の株主以外の特定の者に新株を割り当てて出資を受ける方法ですが、公募増資に比べて第三者のチェックが入りにくく、不適切な行為や、その隠蔽が発生する恐れがあります。例えば、第三者割当増資の払込原資をたどりますと、その会社が別の目的で支出した資金が回流してきていたり、現物出資に当たって財産評価が水増しされていたりします。また、大幅なディスカウント率で大量の新株式が発行されますと、既存株主の権利が希薄化して会社の支配権に異動が生じ、会社の役職員や既存株主にとって好ましくない者が支配権を握って、会社の資金を不適切な投融資により社外に流出させることもあり得ます。

そして、架空増資や水増し現物出資、不適切な資金の社外流出にもかかわらず、十分な資本増強ができたとする虚偽の情報を開示(IR)して株価を上昇・維持させ、不正に取得した新株式を流通市場で売却することによって、売却代金を搾取するわけです。基本的に新株式に見合う資金の払込みを行っていませんので、売却代金はほぼ全てが不正利得になります。

不公正ファイナンスでは、このように舞台設定をして一連の取引が行われますので、通常、仕掛け全体のシナリオを描く「アレンジャー」、「コンサルタント」、「指南役」などと呼ばれる者が関与し、金主なども登場しますが、これらの者は往々にして反社会的勢力であったり反市場勢力であったりします。

不公正ファイナンスには、経営不振で資金繰りが困難になった上場企業が狙われます。ビジネス環境が変わって経営不振になり、株価が大幅に下落したり、債務超過に陥ったりして上場廃止基準に抵触するような状況になると、銀行の融資が受けられませんので、経営者は上場を維持するために第三者割当増資を行わざるを得ないと考えるようになります。しかし、まともな投資家は増資に応じてくれませんので、アレンジャーが甘言を弄して近づき、前述のような第三者割当増資を用いた不公正ファイナンスに引き込むのです。

○不公正ファイナンスに対する証券監視委の取組み

このような不公正ファイナンスに対し、証券監視委では、金融商品取引法第158条の偽計罪を適用して、7事案の刑事告発を行ってきています。インサイダー取引や相場操縦、風説の流布、開示書類の虚偽記載といった個々の犯罪を捉えるのではなく、一連の不公正ファイナンス行為全体を偽計罪という形で違法性を問うようにしています。具体的な事例については、次回のメールマガジンにおいて説明したいと思います。

また、証券監視委は、金融庁や証券取引所と連携して、第三者割当増資に係る規制を強化しました。金融庁は、平成21年12月に「企業内容等の開示に関する内閣府令」を改正し、(1)25%以上の希薄化や支配株主異動が生ずる場合には、その理由を開示すること(株式発行数量の妥当性を確認)、(2)発行価格の算定根拠や発行条件の合理性について考え方を開示すること(発行価額の妥当性を確認)、(3)割当先の概要、会社との関係、割当先選定の理由などを開示すること(割当先選定の妥当性を確認)としました。証券取引所は、取引所規制の改正により、(1)希薄化率が300%超の場合には上場廃止とすること、(2)希薄化率が25%以上の場合は、原則として相当性について第三者機関の意見または株主総会決議等を必要とすること(株式発行数量の妥当性を確認)、(3)払込金額の算定根拠、監査役等の意見の開示をすること(発行価額の妥当性を確認)としました。

○不公正ファイナンスの被害に遭わないために

不公正ファイナンスでは、会社の実態は何ら改善せず、単に反社会的勢力・反市場勢力に会社の新株式が渡るだけです。会社が再建できるどころか、むしろこうした勢力に協力することによって、会社自身の経営が困難になり、関係した会社の役職員も刑事責任を問われることになります。

こうした不公正ファイナンスの被害に遭わないようにするためには、意外と近くに出没する「アレンジャー」といわれる人たちに注意していただくことです。反社会的勢力・反市場勢力の手口としては、例えば、新会社を使ってカモフラージュする、役員などを送り込む、業務提携候補先や資金の出し手を紹介する「救世主」の顔をして近寄ってくる、来訪時にこれらに同道してくるコンサルタントなどが実は実権を持っていることなどがあります。

また、不公正ファイナンスでは、第三者割当先として海外籍のファンド(英領バージン諸島などのタックス・ヘイブンや規制の緩いオフショア金融センターに設立されたSPCなど)がよく出てきます。

上場会社の経営者の皆様におかれては、上場維持のために不正な手段を行っても、上場を維持することができないばかりか、会社としても社会的生命を絶たれてしまうことになりかねません。会社の信用の保持や、株主・投資家・従業員に対する責任などをもう一度考えて、冷静に対応していただきたいと思います。

また、投資者の皆様におかれては、保有している、あるいは投資しようとしている有価証券の発行会社に、海外のSPCやファンドに対する大規模な第三者割当増資や、経営陣の突然の大幅な交代、監査法人の突然の辞任・交代など不公正ファイナンスの兆候があれば、その投資について再考していただき、その後の開示情報を注視していただく必要があると思います。


3.コラム
[大阪証券取引所からの寄稿]


◆東京証券取引所との現物市場の統合について◆

本年1月1日の株式会社日本取引所グループの発足に伴い,本年7月16日付で,当社の現物市場を株式会社東京証券取引所(以下,「東証」という。)の現物市場に統合することを予定しています。これに伴う各種制度改正について,現在,当社及び東証においてパブリック・コメントの募集がおこなわれております(当社:「東京証券取引所との現物市場の統合に伴う関連諸制度の整備について(案)」,東証:「2013/1/30 大阪証券取引所との現物市場の統合に伴う関連諸制度の整備について」)。本制度改正において,当社の現物市場に上場している銘柄は東証現物市場に上場する予定ですが,その主な内容は以下のとおりです。

1市場第一部・第二部上場銘柄

統合日前日において,東証の現物市場に上場していない銘柄は,統合日において東証の現物市場に上場することになります。このうち,当社の市場第一部上場銘柄については,統合日において東証第一部銘柄に指定されます。

なお,上場廃止基準は東証の現行制度となりますが,その適用については,統合日後3年間を経過するまで,当社の現行基準を適用する経過措置が設けられます。

2JASDAQ上場銘柄

統合日前日において,東証の現物市場に上場していない銘柄は,統合日において東証が新設するJASDAQに上場されます。上場審査基準及び廃止基準は当社の現行制度が踏襲されます。

3重複上場銘柄

当社と東証の重複上場銘柄のうち,当社の市場第一部及び東証の市場第二部に上場している銘柄については,統合日後,東証の市場第一部又は市場第二部のいずれかを上場市場区分として当該銘柄の発行者が選択することとなります。また東証の市場第一部・第二部又はマザーズと重複上場しているJASDAQ銘柄については,当該銘柄の発行者がJASDAQと東証の重複上場先の市場のいずれか一方を上場市場として選択することとなります。

その他,詳細な事項については,上記リンクより,制度要綱をご覧ください。

大阪証券取引所 自主規制総務グループ


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