証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第38号) 平成26年1月6日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm
<目次>
1.新体制発足のご挨拶
2.市場へのメッセージ
3.コラム
1.新体制発足のご挨拶
証券取引等監視委員会 委員長 佐渡賢一
昨年12月13日に、証券取引等監視委員会の委員長として再任され、引き続き市場監視の職務にあたらせていただくこととなりました。
また、同日付で、吉田正之委員が再任されるとともに、園マリ氏が新たに委員として任命され、証券監視委の第8期新体制が発足いたしました。
第6期、第7期体制におきましては、証券監視委のもつ勧告・告発等の手段の戦略的な活用や自主規制機関等の関係機関との連携により、機動的かつ効果的な市場監視に努めて参りました。また、市場規律の強化に向け、市場参加者との対話や、市場への情報発信にも積極的に取り組んで参りました。
新体制におきましても、引き続き、市場の公正性・透明性の確保と、投資者の保護に向けて、最善を尽くして参りますので、皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
2.市場へのメッセージ
◆平成25年7月から12月までに勧告した不公正取引に関する課徴金納付命令勧告事案の特色について◆
証券取引等監視委員会では、市場参加者に課徴金制度への理解を深めていただくため、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令勧告を行った事案の概要について、事案ごとの特色などの説明を加えて取りまとめ、平成20年以降、課徴金事例集として、毎年公表しています。
不公正取引に関する最新の課徴金事例集は、平成24年6月から平成25年6月末までに課徴金納付命令が発出されたものを対象として、平成25年8月に公表しました。
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2013/2013/20130808-2.htm
今回は、平成25年7月から12月までに勧告した不公正取引に関する課徴金納付命令勧告事案の特色についてご紹介したいと思います。
○不公正取引に関する課徴金納付命令勧告事案の件数及び金額
不公正取引に関する課徴金納付命令勧告事案の件数及び金額は、合計で20件(納付命令対象者ベース、以下も同様です。)、45億6,821万円であり、その内訳は、内部者取引が15件、2,211万円、相場操縦が4件、4億5,005万円、偽計が1件、40億9,605万円となっています。
偽計が適用された課徴金納付命令勧告事案は、課徴金制度導入以降初の偽計事案、かつ、課徴金額が過去最高額となっています。事案の概要は、次のURLを参照してください。
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2013/2013/20131101-1.htm
以下では、内部者取引事案と相場操縦事案の特色を説明したいと思います。
○内部者取引事案の特色
内部者取引行為に対する課徴金納付命令勧告事案について、重要事実の別、対象者の属性や情報伝達者の属性等の観点から見た場合、以下のような特色が見られます。
(1)重要事実別
勧告事案を重要事実別に見れば、「新株等発行」が4件、「公開買付け」が3件、「合併」が3件等となっています。なお、「新株等発行」を重要事実とする勧告事案は、全て公募増資インサイダーに関するものです。また、「合併」を重要事実とする勧告事案は、同一事案において3名を勧告した事案です。さらに、これまで同一事案において複数名を勧告した事案が27件である中、上記「合併」を重要事実とする勧告事案は、同一事案で3名以上を勧告した事案として、平成22年以来であり、10件目となっています。
(2)対象者の属性
課徴金納付命令勧告対象者の属性については、第一次情報受領者(会社関係者から情報の伝達を受けた者)が15件中11件と、第一次情報受領者が多い状況が続いています。この11件を情報伝達者との関係で詳細に見れば、友人・同僚が5件、取引先が4件となっています。
(3)情報伝達者の属性
情報伝達者の属性については、契約締結者が8件、発行会社役職員等が3件となっており、契約締結者が多い状況が続いています。この8件のうち、引受証券会社が4件となっています。
(4)借名口座の利用
借名口座が利用された事案は、5件となっています。中には、1人の課徴金納付命令勧告対象者が複数の借名口座を利用した事案や、複数の課徴金納付命令勧告対象者が同一の借名口座を利用した事案もありました。
○相場操縦事案の特色
次に、相場操縦に対する課徴金納付命令勧告事案について、以下の特色が見られます。
(1)場操縦が行われた市場別の状況
勧告事案を市場別に見ると、東証2部(2件)、名証2部(1件)、大証ジャスダック(1件)となっています。なお、これらの市場に上場されている銘柄の特色としては、一般に、時価総額が小さく、日々の取引量も少ないことがあげられます。
(2)特徴的な個別事案
勧告事案のうち1件は、対象者が海外に所在する資産運用会社であり、課徴金額が相場操縦として過去最高額の4億3,118万円となっています。
また、2件は、上場市場指定替えに伴う公募増資において安定操作取引が行われることを利用して相場操縦が行われたものです。
証券取引等監視委員会としては、市場の公正性・透明性を確保し、投資者を保護するため、今後とも、こうした不公正取引に対し、適切に対応してまいります。
3.コラム
[東京証券取引所自主規制法人からの寄稿]
◆上場審査案件の増加について◆
昨年(平成25年)は、株式市場の活況等を背景に新規上場会社数は増加しました。全国の取引所ベースでみたIPOの件数は、58社(東京プロマーケットへの新規上場4社を含む)と一昨年(平成24年)の48社に比較して10社増加し、いわゆるリーマンショック後、増加の一途を辿っています。
平成24年 | 平成25年 | |
東証一・二部 マザーズ JASDAQ その他の取引所 東京プロマーケット 合計 |
7社 23社 14社 2社 2社 48社 |
12社 29社 12社 1社 4社 58社 |
また、東京証券取引所自主規制法人では、新規上場のほか、他市場から東証への上場、市場二部から一部への指定、マザーズから市場一・二部、ジャスダックから市場一・二部への市場変更についても新規上場と同様に審査を行っています。この一部指定、市場変更等の会社数も85社と昨年の75社に比べて10社増加し、IPOと同様に増加傾向を続けています。
平成24年 | 平成25年 | |
一部指定(二部→一部) 市場変更(マザーズ→一・二部) 市場変更(JASDAQ→一・二部) 他取引所→東証 合計 |
36社 11社 26社 2社 75社 |
37社 14社 29社 5社 85社 |
東京証券取引所自主規制法人は、昨年の7月16日の大阪証券取引所との現物市場の統合に合わせて上場審査業務をはじめとする自主規制業務の統合を行っております。これにより、上記業務のうち、その他の取引所へのIPO案件以外は、東京証券取引所自主規制法人で審査業務を行うことになりました。審査業務の統合に合わせて、それまで、大阪証券取引所で行っていた審査との運用面での差異について必要な調整を行い、適正な審査を継続する一方で、利用者の利便性にも考慮しています。
なお、東京証券取引所自主規制法人は、本年4月1日をもって社名を日本取引所自主規制法人に変更いたしますが、社名変更後も業務内容は変わることなく、環境の変化、企業実態、商品特性に即した的確な上場審査機能の発揮による信頼性の向上を図ってまいります。
東京証券取引所自主規制法人
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