証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第48号)  平成26年11月4日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

<目次>

市場へのメッセージ


市場へのメッセージ


◆告発事案から見た相場操縦行為に対する犯則調査について◆

証券監視委の主要な任務の一つに、証券取引等の公正を害する悪質な行為の真相を解明し、告発により刑事訴追をもとめる犯則調査があります。犯則調査の対象となる犯則事件の代表的なものとして、インサイダー取引、有価証券報告書虚偽記載、風説の流布や偽計などがありますが、今回は、先日告発が行われた事案を踏まえ、相場操縦に対する犯則調査を紹介したいと思います。

平成26年10月7日、証券監視委は、金融商品取引法違反(相場操縦)の嫌疑でデイトレーダー2名を東京地方検察庁に告発しました。(なお、本件について、翌10月8日に東京地方検察庁が両名を在宅で起訴しています。)

上記の犯則嫌疑者は、東京証券取引所が開設する有価証券市場に上場されている4銘柄の株券につき、売り需要が高い状況を作出することで顧客の売り注文を誘引するなどして同株券を買い付ける一方で、買い需要が高い状況を作出することで顧客の買い注文を誘引するなどして同株券の株価を上昇させ、同株券を高値で売り付けようと考え、財産上の利益を得る目的で、共謀の上、相場を変動させ、当該変動させた相場により有価証券の売買を行ったものです。

今回告発した事案の内容については、証券監視委のサイト(http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2014/2014/20141007-1.htm)にも掲載してありますので、そちらもご覧いただければと思いますが、その手法である見せ玉(みせぎょく)について、もう少し噛み砕いて説明すると、上記の犯則嫌疑者2名は、

(1)まず、ただちに約定しない程度の値の売り注文を大量に出して,一般投資家に「売り需要が高く、株価が下落する」と誤解させ、安値の売り注文を誘い込んだ上で、それを買い付ける

(2)次に、ただちに約定しない程度の値の買い注文を大量に出し、一般投資家に「これから株価が上昇する」と誤解させ,自分が株を買い付けたときよりも高値の買い注文を誘い込み、買い付けていた株をその高値の買い注文に対当させる形で売り抜ける

といった株の委託注文及び売買を行っていました。

平成4年の証券監視委発足以来、今回の告発は、相場操縦事案としては、24件目の告発となります。いわゆる「見せ玉」を主たる手法として用いた相場操縦事案として告発した事例は今回で5件目です。法律上は、金融商品取引法の前身である証券取引法の制定時(昭和23年)から規制の対象となっていましたが、かつては、相場操縦といえば、仮装売買、馴合売買などの外形的に売買をともなうものが一般的で、売買を伴わない注文による「見せ玉」を主たる手法とする相場操縦行為が初めて告発されたのは、平成16年のことであり、今回を含めた残りの4件は直近の約5年間の告発事案であることから、近年になってより目立つようになった手法であることがいえます。

なお、本件より前の「見せ玉」事案において認められたのは、いずれも顧客の買い注文を誘引する行為、すなわち(2)に相当する行為だけであり、顧客の売り注文を誘引する(1)の行為が認められたのは、本件がはじめての事例です。

相場操縦行為は、直接誘引された投資家を含め、価格を操縦された銘柄の取引者に不当な損失をもたらすことがあるだけでなく、適正な価格形成機能を阻害することで市場そのものに対する参加者の信用を傷つける重大な犯罪行為です。監視委員会発足後20年以上が経過し、時代と共に扱う犯則事件の傾向が変わることはありますが、相場操縦については、発足後第1号の告発(平成5年5月21日)も相場操縦事案に対するものであったように、一貫して犯則調査における主要なターゲットであり続けてきました。

ただ、その一方で、業界関係者の間で名を知られたいわゆる仕手筋による組織的な事案だけでなく、これとは全く異質のデイトレーダーによるものも目立ってきたほか、上記の「見せ玉」手法の利用にみられるような、最近になって多く認められるようになった傾向もあります。さらに、こうした取引に手を染める者は、しばしば過去の告発例も踏まえることがあるのか、その行為をより巧妙化、複雑化させていると思われます。したがって、今後も的確な調査を遂行するべく、これまで蓄積された経験に加え、こうした相場操縦事案の性格の変化もくみとっていくことが求められているといえるでしょう。

相場操縦は、通常、不自然な発注や取引を頻繁に繰り返されることによって行われるものであり、その痕跡は必ず残ります。これを慎重に調査し、悪質な行為を確実に告発することで、不公正取引に手を染めようとする者には警告を与え、一般の市場参加者には安心をもたらすべく、我々は監視を続けていきたいと思います。


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