証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第103号)

平成29年12月12日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm


<目次>
1)新着情報
2)市場へのメッセージ
1.不公正取引に関する課徴金事例集の公表について
2.「開示検査事例集」の公表について
3.合同会社NGIキャピタル、合同会社FCキャピタル及び株式会社E-RAキャピタルに対する検査結果及び勧告について
4.株式会社文教堂グループホールディング社員による内部者取引違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について
5.平成29事務年度 証券モニタリング基本方針について


1)新着情報


◎岩井コスモ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171212-1.htm
◎刊行物等への掲載を更新しました
http://www.fsa.go.jp/sesc/keisai/keisai29.htm


2)市場へのメッセージ


1.不公正取引に関する課徴金事例集の公表について
 
 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、平成29年8月29日、「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」(以下本節において「事例集」といいます。)を公表いたしました。
 http://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20170829/01.pdf

 事例集は、市場参加者に課徴金制度への理解を深めていただくため、また不公正取引の未然防止という観点から、金融商品取引法違反となる不公正取引に関し勧告を行った事例について、事例毎の特色などの説明を加えて取りまとめたものです。
 本年度の事例集においては、全ての市場利用者がルールを守るために参考となるよう、

(1) 分かりやすさ、読みやすさを追求するため、個別事例について、概要図内の情報の充実を図るとともに、1事例を見開きページで掲載し、相場操縦事例については、株価チャートを追加
(2) 勧告事例を分析し、情報伝達・取引推奨規制違反に係る勧告の状況について記載し、自身のインサイダー取引だけではなく、情報伝達・取引推奨行為も課徴金納付命令の対象となることを周知
(3) 新たな試みとして、監視委コラムを設け、重要事実等の決定・発生から公表までの日数、インサイダー取引における課徴金額と利得額等との差額の状況を掲載
(4) 過去にバスケット条項が適用された個別事例について、バスケット条項適用の判断要素を取りまとめることにより、バスケット条項該当性を判断する上での参考となる資料を掲載
(5) 上場会社におけるインサイダー取引管理態勢の状況について、重要事実等の決定・発生から違反行為者において売買が行われるまでの時間軸に沿って整理、分類

 するなどの工夫を行いました。 
 

 証券監視委としては、事例集を、

・ 重要事実等の発生源となる上場会社等におけるインサイダー取引管理態勢の一層の充実
・ 公開買付け等企業再編の当事者からフィナンシャル・アドバイザリー業務等を受託する証券会社・投資銀行等における重要事実等の情報管理の徹底
・ 証券市場のゲートキーパーとしての役割を担う証券会社における適正な売買審査の実施

のためにそれぞれ役立てていただくことを期待しています。

 また、一般投資者におかれても、不公正取引の疑いがある場合には、証券監視委による調査等の対象となり、法令違反が認められた場合には課徴金が課されることを十分にご理解いただければ幸いです。
 事例集が活用されることにより、全ての市場利用者による自己規律、市場の公正性・透明性の確保及び投資者保護につながることを強く期待しています。

 

2.「開示検査事例集」の公表について
 
○事例集の見直しについて
  証券監視委では、平成20年以降、開示検査により課徴金納付命令勧告を行った事例の内容等をまとめた「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」を作成・公表しています。
 本年版の事例集では、これまで以上に開示規制違反の再発防止・未然防止につながり、かつ、市場関係者にとって利用しやすいものとなるよう、例えば、個別事例の掲載を課徴金納付命令勧告の事例に限定せず、市場関係者が参考となるような事例を幅広く紹介する、あるいは、事例の概要等をまとめた「事例のポイント」を各事例に設けて簡単に事例の大枠が掴めるようにするなど、従来の事例集の構成・内容等について見直しを行いました。こうした見直しに伴い、事例集の名称も「開示検査事例集」と変更しました。


○市場関係者へのメッセージ
 証券監視委から、上場企業、会計監査人、投資家等の市場関係者に向けたメッセージを発信しています。

 (1) 上場企業へのメッセージ
 取締役の皆様に対して、自社におけるガバナンス体制や情報開示体制が実効的に機能しているか等について、再点検をお願いしています。また、監査役・監査委員の皆様に対して、取締役の業務執行等を監査・監督するという本来の役割を果たしていただくことをお願いしています。
 その上で、経営陣、監査役等が積極的かつ密接にコミュニケーションを図ることをお願いしています。
 (2) 会計監査人へのメッセージ
 会計監査人の皆様に対して、適切な会計監査の実施と品質の確保に努めていただくとともに、監査対象企業と十分かつ活発なコミュニケーションを行っていただくことをお願いしています。
 (3) 投資家等へのメッセージ
 投資家の皆様に対して、本事例集を通じ、企業による情報開示の適正性や会計監査の品質などに関心を寄せていただき、投資先企業と建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)を行う中で、ガバナンスの機能強化、コンプライアンス経営の徹底等を求めていただくことをお願いしています。


○最近の開示検査の実施状況及び特色・傾向
  平成28年度に終了した開示検査の実施状況や開示規制違反の形態、原因等についてまとめています。個別の検査事例の詳細については、事例集において確認してください。

(1) 開示検査の実施状況
 平成28年度に実施した開示検査は25件であり、そのうち、15件の開示検査が終了しました。終了した15件のうち、5件は課徴金納付命令勧告を行い、2件は訂正報告書の自発的な提出を促しました。
(2) 開示規制違反の形態、背景、原因等
 認められた開示規制違反のほとんどは、不適正な会計処理による有価証券報告書等の虚偽記載(他には、無届募集事例が1件)であり、架空売上や売上の前倒し計上など、売上をめぐる不適正な会計処理が目立ちました。
 また、こうした開示規制違反が認められた会社では、経営者等による売上目標達成へのプレッシャーや上場廃止基準への抵触回避、会計処理を検討する体制面の不備などさまざまな原因が把握されていますが、これらの会社に共通する背景として、経営陣のコンプライアンス意識の欠如及びガバナンスの機能不全が認められました。


○おわりに
 証券監視委としては、本事例集が、市場関係者の皆様にとって貴重なコミュニケーション・ツールとなり、開示規制違反の早期発見・早期是正、あるいは再発防止・未然防止につながることを期待しています。
 是非、下記URLにアクセスしてみてください。 
 ※「開示検査事例集」
  http://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/kaiji/20171003.htm

 

3.合同会社NGIキャピタル、合同会社FCキャピタル及び株式会社E-RAキャピタルに対する検査結果及び勧告について

 証券監視委は、平成29年11月7日、合同会社NGIキャピタル、合同会社FCキャピタル及び株式会社E-RAキャピタル(以下「NGIキャピタル外2社」といいます。)に対する検査結果を公表するとともに、金融庁に対して、合同会社FCキャピタル(以下「FCキャピタル」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。
 
 平成29年11月7日 合同会社NGIキャピタル、合同会社FCキャピタル及び株式会社E-RAキャピタルに対する検査結果及び勧告について
          ( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171107-1.htm

【事案の概要】
 NGIキャピタル外2社は、いずれも、適格機関投資家等特例業務届出者(いわゆるプロ向けファンド業者)であり、適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」といいます。)として、匿名組合(以下「ファンド」といいます。)の出資持分の取得勧誘を行っています。
 特例業務の要件の1つに適格機関投資家(いわゆるプロ)からの出資を受けることがありますが、NGIキャピタル外2社のファンドのうち、いくつかのファンドは、適格機関投資家からの出資を受けておらず、特例業務の要件を満たしていませんでした。このため、NGIキャピタル外2社が行っていたファンドの取得勧誘は、金融商品取引業の登録が必要なものとなっていました。
 また、FCキャピタルのファンドの一部については、会計帳簿を適切に作成・管理していなかったため、出資金の一部(730万円)の使途が把握できない状況となっていました。
 上記の根本原因としては、NGIキャピタル外2社の代表者らの法令遵守意識の欠如等にあると考えられます。
 適格機関投資家等特例業務届出者に対しては、平成28年3月の改正金融商品取引法の施行によって行政処分が可能となり、上記のうち、FCキャピタルのファンドの一部において出資金の一部の使途が把握できない状況となっていることについては、上記改正金融商品取引法の施行後も継続していることから、行政処分を求める勧告の対象となっています。
 なお、FCキャピタルに対しては、平成29年11月15日に、関東財務局から業務改善命令の行政処分が発出されています。
 

4.株式会社文教堂グループホールディング社員による内部者取引違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券監視委は,取引調査の結果に基づいて,以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
 平成29年11月10日 株式会社文教堂グループホールディング社員による内部者取引違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について
          ( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171110-1.htm )
 
事案の概要】
 本件は、株式会社文教堂グループホールディングの社員であった者が、その職務に関し、同社の経常利益が下方修正となる見込みであり、直近の予想値に比較して投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異が生じた旨の重要事実(以下「本件重要事実」といいます。)を知りながら、本件重要事実の公表前に文教堂株式を売り付けたものです。
【事案の特色等】
 本事案は、比較的シンプルな構造のインサイダー取引事案ですが、重要事実を知り得る立場にある上場会社の社員がインサイダー取引を行った場合、発覚しないことはないということを、上場会社に勤務する役職員は強く認識していただければ幸いです。また、各上場会社にはインサイダー取引未然防止のために社内規程が整備されていると思いますので、今一度、社内規程を精読のうえ未然防止に努めていただきたいと思います。
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています 

 

5.平成29事務年度 証券モニタリング基本方針について

 証券監視委は、11月14日に、今事務年度の金融商品取引業者等に対する証券モニタリングの基本的な取組み方針等を「平成29事務年度 証券モニタリング基本方針」として公表しました。 
<平成29事務年度 証券モニタリング基本方針(本文)>
 http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171114-1/01.pdf
 
<証券モニタリング基本方針の主なポイント>
○ 証券モニタリングの基本的な進め方 ~昨事務年度に引き続いて~
  昨事務年度から本格的に導入している以下の取組みを引き続き継続していきます。

・ 全ての金融商品取引業者等を対象に、経済動向や業界動向等の環境分析やビジネスモデルの分析等のオフサイトによるリスクアセスメントを踏まえてリスクベースでオンサイト先を選定します。
・ オンサイト・モニタリングにおいては、問題の全体像を検証・把握し、実効性ある再発防止策の策定につながるように根本原因を究明します。
・ 問題が顕在化していないものの、業務運営態勢等について改善が必要であると認められた場合には、証券監視委の問題意識をモニタリング先と共有し、実効性ある内部管理態勢の構築等を促していきます。

○ 今事務年度の取組方針 ~新たな取組み~
  今事務年度は、新たに以下の取組みを重視していきます。

・ 昨事務年度に行ったガバナンスの有効性やリスク管理の適切性についてのモニタリングで得た知見を基礎として、各社のビジネスモデルに、より注視したオフサイト・モニタリングを実施していきます。
・ 個別の法令違反事項等について早期に深度ある検証が必要な場合、リスクの所在が不明確で勧誘実態等の検証が必要な場合、投資者保護上重大な問題が懸念される場合等については、機動的にオンサイト・モニタリングを実施していきます。

 ○ テーマ別のモニタリング事項
  証券モニタリングでは、金融行政方針を踏まえつつ、以下の項目について業態横断的な検証を行うとともに、機動的にその他のテーマ別の検証にも取り組んでいきます。

・ 顧客本位の業務運営の定着状況
・ サイバーセキュリティ対策の十分性
・ 高速取引注文に係る売買審査の高度化の取組状況
・ マネー・ローンダリング対策、テロ資金供与対策に係る犯罪収益移転防止法の遵守状況等

○ 規模・業態別の主な検証事項
  金融商品取引業者等の規模、業態や特性等に応じて、金融行政方針を踏まえつつ、検証を行っていきます。(業態別の主な検証事項は本文参照)
 
 今後とも、証券監視委は、市場の公正性・透明性を確保し、投資者保護を図るため、金融庁関連部局、各財務局等及び関係機関との連携を一層強化し、効果的・効率的な証券モニタリングを実施することで、投資者が安心して投資できる環境の確保に努めてまいります。
 


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<発 行>
証券取引等監視委員会 事務局総務課
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