証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第105号)

平成30年1月30日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm


<目次>
市場へのメッセージ
 1.岩井コスモ証券株式会社に対する検査結果及び勧告について
 2.株式会社シーズ・ホールディングス役員からの情報受領者によるインサイダー取引に対する課徴金納付命令の勧告について
 3.株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について
 4.公開買付者の社員及び同人から情報を受領した者によるエヌジェーケー株式に係る内部者取引違反行為並びに当該社員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について


市場へのメッセージ


1.岩井コスモ証券株式会社に対する検査結果及び勧告について
 
 近畿財務局が岩井コスモ証券株式会社(以下「当社」といいます。)を検査した結果、下記のとおり問題が認められたので、証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、平成29年12月12日、金融庁に対して行政処分を行うよう勧告いたしました(詳細は以下URL参照)。
 
平成29年12月12日 岩井コスモ証券株式会社に対する検査結果及び勧告について
         ( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171212-1.htm )
 
【事案の概要】
 今回検査において、当社の業務運営の状況を検証したところ、上記公表文に記載のとおり、当社のアナリストが作成したアナリスト・レポートについて、以下のような問題が認められました。
 
(1)一部の顧客に対して公表前のアナリスト・レポートに記載される情報を用いて勧誘する行為
(2)アナリスト・レポートに記載される情報の取扱いが不適切な状況
(3)内部管理態勢が不十分な状況
(4)経営陣による不十分な態勢整備
 
 上記の根本原因は、当社の経営陣が、法令等遵守態勢や内部管理態勢について規制環境の変化や規制の趣旨を十分に踏まえた実効性のある態勢に見直していく認識が不十分であったことに起因しているものと考えられます。
 今後も投資家保護上問題のある業務運営については厳正に対処していくこととします。
 なお、当社に対しては、平成29年12月19日に、近畿財務局から業務改善命令の行政処分が発出されています。
 

2.株式会社シーズ・ホールディングス役員からの情報受領者によるインサイダー取引に対する課徴金納付命令の勧告について 

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
平成29年12月8日 株式会社シーズ・ホールディングス役員からの情報受領者によるインサイダー取引に対する課徴金納付命令の勧告について
         ( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171208-1.htm )
  
【事案の概要】
 課徴金納付命令対象者は、株式会社シーズ・ホールディングス(以下「シーズHD」といいます。)の役員から、同人がその職務に関し知った、シーズHDの業務執行を決定する機関が、ジョンソン・エンド・ジョンソンのグループ企業との業務上の提携を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件重要事実」といいます。)の伝達を受けながら、本件重要事実の公表前にシーズHD株式を買い付けたものです。
 
【事案の特色等】
 本事案は、本件重要事実に関わった上場会社の役員から業務上の提携に関する情報の伝達を受けた情報受領者によるインサイダー取引事案です。業務上の提携はその性質上、決定から公表までの日数が長くなる傾向にあり、インサイダー情報として規制の対象とされる期間が長期化することがあり得ますので、インサイダー取引の未然防止の観点からも上場会社として適切な情報管理が求められます。
 平成28年度の勧告事案を振り返ってみますと、インサイダー取引における重要事実等別の分類によれば、勧告件数43件のうち、業務上の提携を重要事実とする勧告件数は15件で、重要事実等別の分類では最多となっています(詳しくは以下URL(平成29年8月29日公表「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」13ページ、23ページ)をご参照ください。)。
URL: http://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20170829.htm
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。
 

3.株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー社員による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
平成29年12月15日 株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー社員によるインサイダー取引
          ( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171215-3.htm
 
【事案の概要・特色等】
 本件は、上場会社の様々な情報に触れる立場にある者が、職務上知った重要事実を利用してインサイダー取引を行ったという典型的な事案です。本件課徴金納付命令対象者(以下本節において「対象者」といいます。) は、対象者が勤務していた上場会社で、職務上知った重要事実を利用して複数回にわたりインサイダー取引を行いました。課徴金納付命令勧告の対象となった重要事実は、合計3件にも及んだ悪質な事案です。
 職務に関し知った複数の重要事実による違反行為は、パイオニア事案(3重要事実、平成27年9月8日勧告)、ピクセラ事案(3重要事実、平成28年7月12日勧告)、ロングライフホールディング事案(4重要事実、平成29年2月10日勧告)などがあります。証券監視委では、調査対象者の属性に応じて過去の取引にも幅広く目を向けるなど、深度ある調査を実施しています。
 改めて、重要事実を知り得る立場にある上場会社の役職員がインサイダー取引を行った場合、発覚しないことはないということを、上場会社に勤務する役職員に強く認識していただければ幸いです。なお、本件及び前記3事案における対象者は、いずれも勤務していた会社を退社しています。インサイダー取引により失うものは小さくありません。また、各上場会社にはインサイダー取引未然防止のために社内規程が整備されていると思いますが、今一度、社内規程を精読のうえ未然防止に努めていただきたいと思います。
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。
 

4.公開買付者の社員及び同人から情報を受領した者によるエヌジェーケー株式に係る内部者取引違反行為並びに当該社員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達違反行為に対する課徴金納付命令の勧告について
 
 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
平成29年12月15日 公開買付者の社員及び同人から情報を受領した者によるエヌジェーケー株式に係る内部者取引違反行為並びに当該社員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達違反行為
          ( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171215-2.htm
 
【事案の概要】
 本件は、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下「NTTデータ」といいます。)が平成28年5月10日午後3時頃に公表した、子会社である株式会社エヌジェーケー(以下「NJK」といいます。)株式に対する公開買付けの実施に関するインサイダー取引です。
 本件は、課徴金納付命令対象者(以下本節において「対象者」といいます。) が2名、違反行為が3件の事案です。
 対象者(1)はNTTデータの社員でしたが、同人がその職務に関し知ったNTTデータの業務執行を決定する機関がNJKの株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実(以下「本件事実」といいます。)を知りながら、本件事実が公表される前に自己の計算において、NJK株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反行為)。
 また、対象者(1)は、対象者(2)に対し、本件事実が公表される前にNJK株式を買い付けさせることにより、対象者(2)に利益を得させる目的をもって本件事実を伝達し(伝達違反行為)、対象者(2)は、本件事実公表前に、自己の計算において、NJK株式を買い付けています(インサイダー取引違反行為)。
 
【事案の特色等】
 平成17年4月の課徴金制度導入後、本件を含めこれまでにインサイダー取引による課徴金勧告を行った累計件数は276件(違反行為者ベース)であり、重要事実等別に分類すると、「公開買付け等事実」によるものが77件(伝達違反除く)と一番多い結果となっています。
 これまでのメルマガでお伝えしているとおり、公開買付けについては、公開買付けの当事者である買付企業や買付対象会社のみならず、コンサルティング会社や金融機関など多くの関係者が関与すること、また、当事者間での検討開始から最終的な合意・公表までに相当な時間を要することから、他の重要事実に比べてインサイダー取引が行われやすいとの指摘があります。繰り返しになりますが、公開買付けに関わる全ての関係者において厳正な情報管理に努めることが強く求められていると言えます。
 また本件は、公開買付けの実施に関する事実に係る伝達違反行為についての勧告事案でもあります。利益を得させる等の目的をもって、未公表の重要事実等を伝達した場合、伝達者は取引により利益を得ていない場合であっても伝達された者が行った取引金額に応じて課徴金が課せられることになり得ます。自身のインサイダー取引だけではなく、情報伝達行為も課徴金納付命令の対象となることを十分ご理解いただきたいと思います。
 本件は、公開買付者の社員が、公開買付け等事実を職務に関し知り、友人に取引を依頼(いわゆる借名取引)したことから、3件もの違反行為を招いた事案です。自らが利益を得たい気持ち、友人にも利益を得てもらいたいという気持ちから、双方及び勤務先等が証券監視委の検査・調査の対象となり、課徴金を支払うこととなりました。課徴金に加え、友人や勤務先の上司・同僚等との人間関係も考えると、インサイダー取引の誘惑に負けた結果支払う代償は、決して小さくありません。たとえ借名取引であっても、証券監視委は実態を解明します。
 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。

 


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