犯則事件の調査及び大阪証券取引所に対する検査結果に基づく勧告について

平成15年8月5日
証券取引等監視委員会


 証券取引等監視委員会は、犯則事件の調査及び大阪証券取引所に対する検査の結果、下記のとおり、大阪証券取引所に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、大阪証券取引所について行政処分を行うよう勧告した。また、当委員会は、犯則事件の調査の結果、下記のとおり、日本電子証券株式会社及びその役員に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、同項の規定に基づき、日本電子証券株式会社について行政処分及びその他の適切な措置を講ずるよう勧告した。



○ 大阪証券取引所



.犯則事件の調査の結果認められた法令違反
 有価証券オプション取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、オプションの付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引を行う行為及び有価証券オプション取引の申込みと同時期に、当該取引の対価の額と同一の対価の額において、他人が当該取引の相手方となることをあらかじめその者と通謀の上、当該取引の申込みをする行為

 大阪証券取引所副理事長(当時。平成11年6月以前は専務理事)野口卓夫は、その業務等に関し、同取引所の株券オプション市場の取引が繁盛に行われていると誤解させる目的をもって、

 

(1)

 平成10年12月ころから平成11年10月ころまでの間、前後約250回にわたり、日本電子証券株式会社の自己注文同士ないしは有限会社ロイトファクスの委託注文同士を対当させる手法により、株券オプション合計約3万8千単位について、オプションの付与又は取得を目的としない仮装の株券オプション取引を行い

(2)

 平成10年12月ころから平成12年3月ころまでの間、前後約340回にわたり、株券オプション合計約7万2千単位について、日本電子証券株式会社の自己注文と有限会社ロイトファクスの委託注文が、株券オプション取引の申込みと同時期に、同取引の対価の額と同一の対価の額で、互いに同取引の相手方となることを通謀の上、株券オプション取引の申込みを行う、いわゆる馴合い取引を行った。
 当該取引所が行った上記行為は、証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)第197条第1項第5号、第207条第1項第1号、第159条第1項第3号及び同項第8号に規定する「有価証券オプション取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、」「オプションの付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引を行う行為」及び「有価証券オプション取引の申込みと同時期に、当該取引の対価の額と同一の対価の額において、他人が当該取引の相手方となることをあらかじめその者と通謀の上、当該取引の申込みをする行為」に該当すると認められる。



.検査の結果認められた自主規制業務の運営に関する問題点
 検査基準日現在、大阪証券取引所の自主規制業務の運営に関して、以下のような問題点が認められた。

 

(1

) 検査業務
 長期的視野に立った検査員の人材育成が十分図られていないほか、検査計画の策定等に関し、組織的かつ十分な検討が行われていなかった。
 また、検査を実施する取引参加者の選定に際し、同取引所市場における取引状況や同取引所内の関係部署で把握された情報など、検査周期以外の要素が加味されていなかった。

(2

) 検査に基づく措置業務
 措置基準が整備されていないほか、組織的な検討がなされないまま、取引参加者に対する措置が行われていた。

(3

) 市場監理業務
 長期的視野に立った審査担当者の人材育成が十分図られていないほか、調査のための抽出基準が市場の実態に見合ったものとなっていなかったため、抽出件数が膨大であったり、皆無であるなど調査対象取引の効果的な抽出が行われていない状況であったにもかかわらず、当該基準の見直しが行われていなかった。
 また、仮装・馴合取引の調査の観点から抽出された取引であるにもかかわらず、対当取引を行った証券会社の自己取引の内容や抽出された取引の委託者の属性把握といった調査が行われていなかった。

(4

) 関連部署間の連携
 自主規制本部内の連携や関係部署との情報交換が十分図られておらず、各種の情報が検査業務及び市場監理業務に活かされていなかった。

 


 特に(3)の市場監理業務の問題点は、前記1の違法行為が長期間放置された原因の一つと考えられ、深刻な自主規制業務の不備となっている。
 このような組織体制等の不備をはじめとする自主規制業務の運営に関する問題点は、同取引所の経営陣において、証券取引所の根幹業務である自主規制業務の重要性に対する認識が著しく欠如していたことにより生じたものと認められる。同取引所は、検査基準日以降様々な改善策に着手しているが、それを実効あるものとするためには、経営陣の自主規制業務の重要性についての意識改革とともに、組織体制の充実を柱とした自主規制業務の刷新に引き続き取り組む必要がある。


○ 日本電子証券株式会社



.犯則事件の調査の結果認められた法令違反
 有価証券オプション取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、オプションの付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引を行う行為及び有価証券オプション取引の申込みと同時期に、当該取引の対価の額と同一の対価の額において、他人が当該取引の相手方となることをあらかじめその者と通謀の上、当該取引の申込みをする行為

 日本電子証券株式会社代表取締役荒木伸夫は、その業務等に関し、同取引所の株券オプション市場の取引が繁盛に行われていると誤解させる目的をもって、

 

(1)

 平成11年1月ころから平成11年10月ころまでの間、前後約240回にわたり、日本電子証券株式会社の自己注文同士ないしは有限会社ロイトファクスの委託注文同士を対当させる手法により、株券オプション合計約3万7千単位について、オプションの付与又は取得を目的としない仮装の株券オプション取引を行い

(2)

 平成10年12月ころから平成12年3月ころまでの間、前後約340回にわたり、株券オプション合計約7万2千単位について、日本電子証券株式会社の自己注文と有限会社ロイトファクスの委託注文が、株券オプション取引の申込みと同時期に、同取引の対価の額と同一の対価の額で、互いに同取引の相手方となることを通謀の上、株券オプション取引の申込みを行う、いわゆる馴合い取引を行った。


 当該証券会社及びその役員が行った上記行為は、証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)第197条第1項第5号、第207条第1項第1号、第159条第1項第3号及び同項第8号に規定する「有価証券オプション取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、」「オプションの付与又は取得を目的としない仮装の有価証券オプション取引を行う行為」及び「有価証券オプション取引の申込みと同時期に、当該取引の対価の額と同一の対価の額において、他人が当該取引の相手方となることをあらかじめその者と通謀の上、当該取引の申込みをする行為」に該当すると認められる。

補足説明

 

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