シンガポール政府投資公社の従業員による我が国証券市場におけるインサイダー取引に対して同国通貨監督庁が行った処分について

平成16年10月21日
証券取引等監視委員会

.本日、シンガポール通貨監督庁(Monetary Authority of Singapore、以下「MAS」という。)は、シンガポール政府投資公社(Government of Singapore Investment Corporation、以下「GIC」という。)の従業員が日本の証券市場においてインサイダー取引を行ったことが判明したため、同国証券先物法違反として、当該従業員に対して民事制裁金(Civil Penalty)を課した旨、発表した。
 本件は、外国に居住する者が我が国証券市場において証券取引を行うといういわゆるクロス・ボーダー取引において、インサイダー取引が行われたものであるが、当証券取引等監視委員会が端緒を把握した後、我が国とシンガポールとの間の情報交換取極(以下「MOU」という。)に基づき、MASに対して情報提供及び調査依頼を行った結果、今般のMASによる処分に至ったものである。
 本件は、クロス・ボーダー取引における違法行為に対する国際的な証券当局間の協力の成果であり、当委員会としては、MASの協力に対して感謝するとともに、今後ともこうした国際的な協力を促進していきたいと考えている。



.事案の概要

 

(1)

 (株)三井住友フィナンシャルグループ(以下「SMFG」という。)は、平成15年2月17日の立会取引開始前に、同社が3,000億円以上の規模で優先株式を発行することを公表した。GICの従業員3名は当該情報を公表前に入手し、同月13日、当該情報を利用し、GICが保有するSMFG株式の売付け等を行い、当該情報が公表された後のSMFG株式の価格下落による損失(約71万シンガポール・ドル=約4,860万円※)を回避した。当該損失回避による利得は、当該従業員ではなく、GICに帰属していた。
※ 当時のレート(1シンガポール・ドル=68.3 円)で換算


(2)


 MASは証券先物法第219条のインサイダー取引条項により当該従業員3名に対して民事制裁金を課した。
 当該従業員の氏名及びそれぞれがMASに支払う民事制裁金額は以下のとおり。

 

氏 名

民事制裁金額

Mr. Lim Kee Chong

 40万シンガポール・ドル

Mr. Teng Cheong Thye

 24万  〃

Mr. Choo Yong Cheen

  7.5万 〃


(3)


 MASが調査した限り、GIC(法人自体)の証券先物法違反の事実は認められなかったが、GICは自発的に、約71万シンガポール・ドル(従業員3名の上記取引による利得相当額)をMASに提供した。





参考)

 

.シンガポールとの間の情報交換取極
 平成13年12月、日本・シンガポール間で締結。両国の証券規制当局が相手国当局からの要請に応じて、市場における取引等に係る情報を相互に提供する枠組み。MOU(Memorandum of Understanding)ともいう。



.SMFG株式の株価は、以下のとおり(参照別紙)。

 

平成15年2月14日(金)

終値403,000円

    2月17日(月)

午前8時 SMFGが優先株式の発行を公表。
同日終値374,000円



.シンガポール証券先物法第219条の概要
 未公表で証券の価格に影響を与える重要な情報を入手している内部者が、当該情報が未公表で価格に影響を与える重要なものであることを認識する場合、

 

(1)

関係する証券の売買を行うこと 【219(2)(a)】、

(2)

他の者をして関係する証券の売買をさせること 【219(2)(b)】、

(3)

上記(1)(2)の行為を行いそうな他の者へ未公表で価格に影響を与える重要な情報を伝達すること 【219(3)】、

が禁止されている。



(MASプレスリリースの日本語仮訳)
 

 

 

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