インスペック株式に係る偽計に対する課徴金納付命令の勧告について
1.勧告の内容
証券取引等監視委員会は、インスペック株式に係る偽計について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。
2.法令違反の事実関係
インスペック株式会社(法人番号7410001008548、以下「インスペック」という。)は、秋田県仙北市角館町雲然荒屋敷79番地の1に本店を置き、電子部品の製造、販売等を目的とし、その発行する株式が東京証券取引所マザーズ市場に上場されている上場会社である。
同社役員甲は、同社株式の月間平均時価総額及び月末時価総額(以下、両者併せて「時価総額」という。)が平成24年6月に3億円未満となり、東京証券取引所有価証券上場規程(当時)によって、平成24年7月1日から平成25年3月29日までの9か月の間に同社株式の時価総額が3億円以上にならなければ同社株式の上場が廃止される状況にあったところ、同社株式の株価を高値形成させることで上場廃止を免れようと企て、平成25年3月28日午後1時11分頃から同月29日午後1時9分頃にかけて、同社の業務として、同社社員をして、同社株式につき、合計31株の買い注文を発注させて約定させ、同社株式の株価を2万4000円から時価総額が3億円を超える株価である2万5600円に引き上げるなどした上、同年4月1日午後4時頃、東京証券取引所が提供する適時開示情報伝達システムであるTDnetにより、上記事情を秘して、あたかも自然の需給によって同社株式の時価総額が3億円以上になったかのように装う内容の「当社株式の時価総額が3億円以上になったことについて」と題する文章を公表し、もって同社株式の相場の変動を図る目的をもって偽計を用い、当該偽計により有価証券の価格に影響を与えたものである。
違反行為事実の概要については、別図のとおり。
課徴金納付命令対象者が行った上記の行為は、金融商品取引法第173条第1項に規定する「第158条の規定に違反して、偽計を用い、」これにより「有価証券等の価格に影響を与えた」ものと認められる。
3.課徴金の額の計算
上記の違法行為に対し金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は、1224万円である。
計算方法の詳細については、別紙のとおり。
(別図)
○違反行為事実の概要について
(別紙)
○課徴金の額の計算方法について
1.金融商品取引法第173条第1項に基づき、課徴金の額は、
当該違反行為に係る有価証券の売付数量が買付数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、
(有価証券の売付価額)-(当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最低価格×当該超える数量)
または、
当該違反行為に係る有価証券の買付数量が売付数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、
(当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格×当該超える数量)-(有価証券の買付価額)
として計算される。
2.課徴金納付命令対象者の違反行為について、本件における課徴金の額は、下記により算定される額 12,241,930円
⇒課徴金の額は、1万円未満を切り捨てるため、1224万円
当該違反行為に係る有価証券の売付数量は、0株であり、
当該違反行為に係る有価証券の買付数量は、実際の買付け等の数量31株に、金融商品取引法第173条第7項及び同法施行令第33条の8の3第1号により、違反行為の開始時に違反行為の開始前の価格(24,000円)で買付けをしたものとみなされる当該違反行為の開始時に所有している当該有価証券の数量2,893株を加えた2,924株である。
当該違反行為に係る有価証券の買付数量が、売付数量を超えることから、
当該超える数量2,924株(2,924株-0株)について、
当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(28,200円)に当該超える数量を乗じて得た額
82,456,800円(28,200円×2,924株)- 買付価額70,214,870円(注)
=12,241,930円
(注)買付価額は、
「24,000円×2,893株+24,200円×1株+24,220円×1株+24,300円×2株+24,340円×1株+24,460円×2株+24,800円×1株+24,990円×1株+25,400円×2株+25,600円×20株」
の額である。