ウィズ株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
1.勧告の内容
証券取引等監視委員会は、ウィズ株式に係る相場操縦について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。
2.法令違反の事実関係
(1)株式会社トレード・ラボ(法人番号5010401079339、課徴金納付命令対象者(1)、以下「トレード・ラボ」という。)は、投資事業有限責任組合契約に基づき、トレード・ラボ投資事業有限責任組合(以下「組合」という。)の財産の運用、管理等を行う無限責任組合員として、組合に出資された財産の運用権限を有していたものである。
トレード・ラボの役員として組合財産を運用していた課徴金納付命令対象者(2)は、トレード・ラボの業務に関し、株式会社ウィズの株式につき、同株式の売買を誘引する目的をもって、平成26年8月14日午前9時3分頃から同月18日午後2時59分頃までの間、3取引日にわたり、直前の約定値より高指値の売り注文及び買い注文を、課徴金納付命令対象者(2)の買い注文及び売り注文と対当させて株価を引き上げたり、直前の約定値より高指値の買い注文を発注して株価を引き上げるなどの方法により、同株式合計3800株を買い付ける一方、同株式合計3300株を売り付け、そのうち、トレード・ラボらの同年8月度における組合への出資割合である約0.78パーセントについては自己の計算において、それ以外においては自己以外の者である組合への出資者の計算において、もって、同株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同株式の相場を変動させるべき一連の売買をしたものである。
(2)課徴金納付命令対象者(2)は、株式会社ウィズの株式につき、同株式の売買を誘引する目的をもって、平成26年8月14日午前9時3分頃から同月18日午後2時45分頃までの間、3取引日にわたり、直前の約定値より高指値の買い注文を、課徴金納付命令対象者(1)の売り注文と対当させて株価を引き上げたり、直前の約定値より高指値の買い注文を発注して株価を引き上げるなどの方法により、同株式合計3100株を買い付ける一方、同株式合計4500株を売り付け、そのうち、自己の計算で、同株式合計500株を買い付ける一方、同株式合計2800株を売り付け、もって、同株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同株式の相場を変動させるべき一連の売買をしたものである。
違反行為事実の概要については、別図のとおり。
課徴金納付命令対象者が行った上記の行為は、金融商品取引法第174条の2第1項に規定する「第159条第2項第1号の規定に違反する一連の有価証券売買等」に該当すると認められる。
3.課徴金の額の計算
上記の違法行為に対し金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は、下記のとおりである。
課徴金納付命令対象者(1)382万円
課徴金納付命令対象者(2)1125万円
計算方法の詳細については、別紙のとおり。
(別図)
○違反行為事実の概要について
※小数点以下の端数が生じた場合、小数第三位を切り捨てて表記している。なお、計算の過程においては端数処理を行わず計算している。
(別紙)
○課徴金の額の計算方法について
1.課徴金納付命令対象者(1)
(1)金融商品取引法第174条の2第1項に基づき、課徴金の額は、下記ア.ないしウ.の合計額として計算される。
ア.売買対当数量(注1)に係るものについて、
(自己の計算による有価証券の売付価額)-(自己の計算による有価証券の買付価額)
イ.当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付数量が自己の計算による買付数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、
(有価証券の売付価額)-(当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最低価格×当該超える数量)
または、
当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付数量が自己の計算による売付数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、
(当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格×当該超える数量)-(有価証券の買付価額)
ウ.課徴金納付命令対象者(1)が、自己以外の者の計算において、当該違反行為の開始時から当該違反行為の終了後1月を経過するまでの間に違反行為又は有価証券の売付け等若しくは有価証券の買付け等をした場合、当該違反者は、運用対象財産の運用として当該違反行為又は有価証券の売付け等若しくは有価証券の買付け等を行った者であるので、当該違反行為又は有価証券の売付け等若しくは有価証券の買付け等をした日の属する月における当該運用対象財産のうち金融商品取引法第六章の二の規定による課徴金に関する内閣府令第1条の16第1項で定めるものの運用の対価の額に相当する額として同条第2項で定める額に三を乗じて得た額
(注1)売買対当数量:当該違反行為に係る有価証券の売付数量と買付数量のうち、いずれか少ない数量をいう。
(2)課徴金納付命令対象者(1)の違反行為について、本件における課徴金の額は、下記ア.ないしウ.によりそれぞれ算定される額の合計 3,820,482円
⇒課徴金の額は、1万円未満を切り捨てるため、382万円
ア.当該違反行為に係る売買対当数量は、
(ア)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付数量は、25.98株(注2)(3,300株×出資割合500/63,500(注3))であり、
(イ)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付数量は、実際の買付け等の数量29.92株(3,800株×出資割合500/63,500(注3))に、金融商品取引法第174条の2第8項及び同法施行令第33条の13第1号により、違反行為の開始時にその時における価格(899円)で買付けを自己の計算においてしたものとみなされる当該違反行為の開始時に所有している当該有価証券の数量372.44株(47,300株×出資割合500/63,500(注3))を加えた402.36株である
ことから、25.98株となる。
当該売買対当数量に係るものについて、
売付価額24,712.59円(注4) - 買付価額23,359.84円(注5)
=1,352.75円
(注2)小数点以下の端数が生じた場合は、小数第三位を切り捨てて表記している。当資料において、以下、同じ。なお、計算の過程においては端数処理を行わず計算している。
(注3)平成26年8月時点において、組合への出資63,500口のうち、500口が課徴金納付命令対象者(1)及び課徴金納付命令対象者(1)と密接な関係を有する者等による出資であることから、同出資割合である「500/63,500(約0.78%)」について、自己の計算において行ったものと認められる。
(注4)売付価額は、
「(920円×100株+925円×100株+948円×1,500株+949円×100株+950円×300株+954円×600株+956円×300株+976円×200株+977円×100株)×500/63,500(注3)」
の額である。
(注5)買付価額は、
「(899円×3,300株)×500/63,500(注3)」
の額である。
(注6)買付価額の算定においては、金融商品取引法施行令第33条の14第5項の規定により、当該違反行為に係る有価証券の買付けのうち最も早い時期に行われたものから順次当該売買対当数量に達するまで割り当てることとなる。
本件においては、違反行為の開始時点において所有しており、金融商品取引法第174条の2第8項及び同法施行令第33条の13第1号の規定により、違反行為の開始時点にその時における価格(899円)で買い付けたものとみなされるもの(みなし買付け)から割り当てられることとなる。
イ.上記ア.のとおり、当該違反行為に係る有価証券の買付数量が、売付数量を超えることから、
当該超える数量376.37株(402.36株-25.98株)について、
当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(1,675円)に当該超える数量を乗じて得た額
630,433.07円(1,675円×376.37株)- 買付価額339,548.81円(注7)
=290,884.25円
(注7)買付価額は、
「(899円×44,100株+914円×200株+918円×300株+922円×100株+924円×100株+925円×100株+926円×100株+927円×100株+928円×300株+930円×300株+931円×100株+934円×100株+935円×400株+940円×100株+945円×100株+946円×100株+950円×200株+955円×100株+959円×200株+960円×300株+968円×100株+971円×100株+980円×200株)×500/63,500(注3)」
の額である。
ウ.当該違反行為をした日の属する月における当該運用財産の運用の対価の額は1,176,081.86円であることから、
これに三を乗じて得た額3,528,245.60円(注8)(1,176,081.86円×3)
(注8)課徴金納付命令対象者(1)に対する自己以外の者の計算分の課徴金は、運用を行う金銭その他の財産のうち算定対象取引(注9)に係る利益又は損失が帰属するものについて、算定対象取引が行われた日の属する月に課徴金納付命令対象者(1)に運用の対価として支払われ、又は支払われるべき金銭その他の財産(以下「運用報酬」という。)の価額(運用報酬算定期間が1月を超える場合にあっては、当該運用報酬算定期間の月数で除す方法その他の合理的な方法により算出した額)の総額に三を乗じて得た額になる。
課徴金納付命令対象者(1)の受領した運用報酬算定期間が1月を超えるので、当該運用報酬算定期間の月数で除す方法により算出すると、違反行為期間が含まれる平成26年8月における課徴金納付命令対象者(1)の管理報酬及び成功報酬の月額のうち、課徴金納付命令対象者(1)及び課徴金納付命令対象者(1)と密接な関係を有する者等の出資割合である約0.78%(注3)分を除いた金額は1,176,081.86円となる。したがって、課徴金納付命令対象者(1)に対する自己以外の者の計算分の課徴金額は、この1,176,081.86円に3を乗じて得た金額である3,528,245.60円となる。
(注9)算定対象取引:算定対象取引とは、金融商品取引法第174条の2第1項第2号ニの違反行為又は有価証券の売付け等若しくは有価証券の買付け等のうち違反行為に係る有価証券等に係るものを指す(金融商品取引法第六章の二の規定による課徴金に関する内閣府令第1条の16第1項第1号)。
2.課徴金納付命令対象者(2)
(1)金融商品取引法第174条の2第1項に基づき、課徴金の額は、下記ア.及びイ.の合計額として計算される。
ア.売買対当数量(注1)に係るものについて、
(自己の計算による有価証券の売付価額)-(自己の計算による有価証券の買付価額)
イ.当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付数量が自己の計算による買付数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、
(有価証券の売付価額)-(当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最低価格×当該超える数量)
または、
当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付数量が自己の計算による売付数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、
(当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格×当該超える数量)-(有価証券の買付価額)
(2)課徴金納付命令対象者(2)の違反行為について、本件における課徴金の額は、下記ア.及びイ.によりそれぞれ算定される額の合計 11,254,600円
⇒課徴金の額は、1万円未満を切り捨てるため、1125万円
ア.当該違反行為に係る売買対当数量は、
(ア)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付数量は、2,800株であり、
(イ)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付数量は、実際の買付け等の数量500株に、金融商品取引法第174条の2第8項及び同法施行令第33条の13第1号により、違反行為の開始時にその時における価格(914円)で買付けを自己の計算においてしたものとみなされる当該違反行為の開始時に所有している当該有価証券の数量17,000株を加えた17,500株である
ことから、2,800株となる。
当該売買対当数量に係るものについて、
売付価額2,647,900円(注10) - 買付価額2,559,200円(注11)
=88,700円
(注10)売付価額は、
「940円×400株+941円×300株+942円×200株+944円×300株+948円×1000株+950円×600株」
の額である。
(注11)買付価額は、
「914円×2,800株」
の額である。
(注12)買付価額の算定においては、金融商品取引法施行令第33条の14第5項の規定により、当該違反行為に係る有価証券の買付けのうち最も早い時期に行われたものから順次当該売買対当数量に達するまで割り当てることとなる。
本件においては、違反行為の開始時点において所有しており、金融商品取引法第174条の2第8項及び同法施行令第33条の13第1号の規定により、違反行為の開始時点にその時における価格(914円)で買い付けたものとみなされるもの(みなし買付け)から割り当てられることとなる。
イ.上記ア.のとおり、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付数量が、自己の計算による売付数量を超えることから、
当該超える数量14,700株(17,500株-2,800株)について、
当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の当該有価証券の最高価格(1,675円)に当該超える数量を乗じて得た額
24,622,500円(1,675円×14,700株)- 買付価額13,456,600円(注13)
=11,165,900円
(注13)買付価額は、
「914円×14,200株+950円×100株+951円×100株+958円×100株+959円×100株+960円×100株」
の額である。