平成29年3月29日

証券取引等監視委員会

ファンドクリエーション・アール・エム株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1.勧告の内容

 証券取引等監視委員会がファンドクリエーション・アール・エム株式会社(東京都千代田区、法人番号6010001140193、資本金2億円、投資運用業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

2.事実関係

 ファンドクリエーション・アール・エム株式会社(以下「当社」という。)は、株式会社ファンドクリエーショングループを持株会社とする会社グループ(以下「FCグループ」という。)に属している。
 FCグループは、外国投資信託であるA不動産証券投資信託(以下「A投信」という。)を管理・運用している。A投信は、社債購入を通して実質的に不動産信託受益権等で運用が行われており(当該社債発行会社を以下、単に「社債発行会社」という。)、当社は、当該不動産信託受益権等に投資する特別目的会社等(以下「物件保有SPC」という。)との間で投資一任契約等を締結し、その資産運用を行っている。
 今回検査において、A投信の運用等に関して、以下のとおり、投資者保護上問題がある業務運営が行われている状況が認められた。

○ 利害関係者間取引において、不適切な業務運営が行われている状況

(1)物件売却に係る問題

 当社は、平成27年2月から同年7月までの間に、物件保有SPCが保有する不動産α、不動産信託受益権β(以下「信託受益権β」という。)及び不動産信託受益権γ(以下「信託受益権γ」といい、不動産α、信託受益権β及び信託受益権γを総称して「本件3物件」という。)を、いずれもFCグループに属するB社に売却する旨の指図を行っている。本件3物件の売却状況等を検証したところ、以下の問題が認められた。

ア 利益相反管理態勢がずさんな状況

 当社では、利益相反取引の弊害防止を目的として、社内規程において、利害関係者と取引を行う場合の行為基準のほか、「投資政策委員会」や「コンプライアンス委員会」での審議・承認に関する手続を定めている。
 しかし、当社は、当該規程に従った利害関係者の範囲の管理を行っていない。また、「投資政策委員会」等においても、鑑定評価額以上での売却かどうかのみが確認され、利益相反管理の観点からの審議がなされていない。
 また、当社の社内規程には、グループ会社間取引における情報遮断の措置等の定めがないため、本件3物件の売却過程において、当社及びB社(及びその実質的意思決定を行っているC社。以下同じ。)の業務が同一の担当者により行われていたほか、両社の業務に関する情報が共有されているなど、業務が渾然一体となって行われている。

イ 本件3物件の売却に係る不適切な業務運営状況

(ア) 信託受益権γについて、当社は、かねてから売却打診をしていた不動産販売業者D社から、平成27年1月末頃、当社が売却額の基準としていた鑑定評価額を超える金額の買付証明書の提出を受けている。     
 当社は、本来権利者の利益を優先し、当該好条件での売却について検討・準備を進めるべきところ、かかる検討等を行わないまま、B社が企図していた新規不動産分譲事業の実現を優先し、信託受益権γを鑑定評価額でB社に売却する旨を決定している。
 なお、その後、B社は、D社と上記買付証明書の金額で買取り保証を行う旨の特約が付された販売委託契約の締結をしている。
 
(イ) また、当社は、不動産α及び信託受益権βの売却においても、自ら主体的に売却先を探索していない中、FCグループが企図していた新規不動産ファンド事業のため、B社がこれら物件の鑑定評価額での買受意思を認めたと同時に売却先の探索を取りやめている。
 
ウ 上記ア及びイの状況は、ずさんな利益相反管理態勢の中、A投信の権利者の利益よりもFCグループの新規事業を優先させる業務運営が行われていたものであると認められ、投資者保護上重大な問題がある。
 

(2)連帯保証債務関連損失に係る問題

 物件保有SPCのうちの2者(以下「本件2SPC」という。)は、実質的にA投信の運用財産から出資を受け、E社からの借入金と併せて不動産信託受益権を取得しているが、当該E社からの借入れに当たり、C社(当時は当社の完全親会社)が連帯保証を引き受けていた。このような中、平成20年9月のリーマン・ショック後、本件2SPCの保有する不動産信託受益権の価格が下落し、運用する不動産信託受益権の売却により当該借入金全額の返済ができないことが判明し、C社の連帯保証債務の履行が現実化した。
 かかる状況において、当社は、本件2SPCの借入金残債務について、C社の実質的負担部分はないとの関係者間の合意があるとするC社の説明を受け、他の2つのSPCが債務引受人又は連帯保証人となる契約を締結することを了承している。その結果、債務を引き受けたSPCは、保有する不動産信託受益権を売却し、上記引受債務を履行したことから、E社からの借入金の残債務分につき損失を被ることとなり、結果として、A投信の投資者も上記残債務と同額の損失を被る事態となっている。
 当社は、上記債務引受契約の了承に際し、利益相反管理上の重大な問題を含むものであるにもかかわらず、慎重な検討等を行わないまま漫然と当該債務引受契約を了承している。
 当社のこのような業務運営状況は、利益相反管理上問題があるものであり、投資者保護上重大な問題がある。
 

(3)上記(1)及び(2)の業務運営状況は、金融商品取引法第51条に規定する「金融商品取引業者の業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。

 

参考資料(PDF:268KB)


(参考条文)

○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(金融商品取引業者に対する業務改善命令)
第五十一条  内閣総理大臣は、金融商品取引業者の「業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」は、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
 

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