令和4年6月21日
証券取引等監視委員会

アトランティック・トレーディング・ロンドン・リミテッドによる長期国債先物に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について

1.勧告の内容

証券取引等監視委員会は、Atlantic Trading London Limited(以下「アトランティック・トレーディング・ロンドン・リミテッド」という。)による長期国債先物に係る相場操縦について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

2.法令違反の事実関係

アトランティック・トレーディング・ロンドン・リミテッドは、高速取引行為を行うことにつき関東財務局の登録を受けた英国法人であるが、同社の自己勘定での金融商品取引等に従事していたトレーダーにおける手動取引により、同社の業務に関し、株式会社大阪取引所(以下「大阪取引所」という。)に上場されていた長期国債先物2020年3月限月について、その売買を誘引する目的をもって、別表記載のとおり、令和2年1月9日午前8時57分8秒頃から同月10日午後1時52分15秒頃までの間、大阪取引所において、最良売り気配よりも劣後する価格に約定させる意図のない多数の売り注文を発注する方法、又は、最良買い気配あるいはこれに劣後する価格に約定させる意図のない多数の買い注文を発注する方法により、合計380枚の売付けの委託を行うとともに合計12枚を買い付ける一方、合計520枚の買付けの委託を行うとともに合計23枚を売り付けるなどし、もって、自己の計算において、同先物の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、大阪取引所における同先物の相場を変動させるべき一連の市場デリバティブ取引及びその委託をしたものである。
 
 違反行為事実の概要については、別図のとおり。
 
 アトランティック・トレーディング・ロンドン・リミテッドが行った上記の行為は、金融商品取引法(以下「金商法」という。)第174条の2第1項に規定する「第159条第2項第1号の規定に違反する一連の有価証券売買等」及び「委託等」に該当すると認められる。

3.課徴金の額の計算

上記の違法行為について金融商品取引法に基づき算定される課徴金の額は、4,285万円である。
 計算方法の詳細については、別紙1のとおり。

4.その他

本件については、日本取引所自主規制法人から提供された情報も参考として、実態解明を行ったものである。


(別図)

○違反行為事実の概要について

 

 

(別表)

(別紙1)

○ 課徴金の額の計算方法について

1.別表の各違反行為に係る課徴金の額の計算の基礎は以下のとおりである。

金商法第174条の2第1項第1号の規定により、当該違反行為に係る課徴金の額は、
 
(1)当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量に係るものについて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額
 
及び
 
(2)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量を超える場合、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の買付け等についての金融商品取引法第67条の19又は第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額
 
の合計額として算定。
 
2.本件における課徴金の額は、
別表記載の違反行為期間について、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量は、12枚であり、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量は、実際の売付け等の数量23枚に、金融商品取引法第174条の2第7項及び金融商品取引法施行令第33条の12第1号の規定により、違反行為の開始時にその時における価格(151.94円)で売付け等を自己の計算においてしたものとみなされる当該違反行為の開始時に所有している有価証券の数量181枚を加えた204枚であることから、
 
(1)当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量(12枚)に係るものについて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額
 
(有価証券の売付け等の価額:1,823,280,000円)-(有価証券の買付け等の価額:1,824,000,000円)=-720,000円
 
及び
 
(2)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量(204枚)が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量(12枚)を超えていることから、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額(a)から、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の買付け等についての金融商品取引法第67条の19又は第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格(151.73円)に当該超える数量192枚(売付け等の数量204枚-買付け等の数量12枚)を乗じて得た額(b)を控除した額
 
(a:29,175,730,000円)-(b:29,132,160,000円)=43,570,000円
 
の合計額42,850,000円となる。
 
※ 各違反行為期間における売付け等の価額及び買付け等の価額の詳細については、別紙2を参照。
 

 

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