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令和5年5月26日
証券取引等監視委員会

 

ロンナル・フォレックス株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

1.勧告の内容

  四国財務局長がロンナル・フォレックス株式会社(香川県高松市、法人番号6010401068745、代表取締役 井上 成雄(いのうえ しげお)、資本金90百万円、常勤役職員5名、第一種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。
 

2.事実関係

 ⑴ 虚偽の事業報告書等の提出等
 ロンナル・フォレックス株式会社(以下「当社」という。)は、店頭デリバティブ取引の媒介業務の専門業者であるが、当該業務に係る収益は僅少(令和2年3月期から令和4年3月期までの直近3期合計で約4万円)となっている中、当社が付随業務として行っているとされるコンサルティング業務に係る収益(直近3期合計で約42百万円)が、当社の収益の大宗(99.9%)を占めている状況にある。
 そして、当社は、当社の代表取締役である井上成雄(以下「井上代表」という。)の母親及び中国在住の井上代表の知人の2名が代表取締役を務める法人との間で締結した経営コンサルティング契約に基づくコンサルティング収益として、直近3期合計で約29百万円を売上げとして計上し、当該売上げを売上高に含めて記載した事業報告書を四国財務局長に提出しているほか、当該事業報告書の写しを備え置く方法により説明書類を公衆の縦覧に供している。
 しかしながら、検査において、当該法人の事業実態が確認できなかったほか、当社が当該法人に対して報酬額に見合うようなコンサルティング業務を行ったことを示す証跡も何ら提出されていない。他方、当該法人から当社に支払われるコンサルティング報酬の大部分(約19百万円)を、当該法人の業務に一切関与していないと説明していた井上代表が、自己の個人名義の預金口座から当該法人名義に振込人名義の変更をした上で当社名義の預金口座に送金している状況が認められた。
 以上によれば、当該法人から得たとするコンサルティング業務に係る収益のうち、少なくとも井上代表が送金した約19百万円は、井上代表が、自己の個人名義の預金口座から拠出した資金をもって当社が行ったコンサルティング業務に係る収益と見せかけているにすぎないものと認められ、当社は、当該コンサルティング業務に係る収益(売上げ)を架空計上したものと認められる。
 当社による上記の行為は、虚偽の記載をした事業報告書を提出したものとして金融商品取引法第46条の3第1項に違反するほか、虚偽の記載をした説明書類を公衆の縦覧に供したものとして同法第46条の4に違反するものと認められる。
 
   ⑵ 純財産額及び自己資本規制比率が法定の基準を下回っている状況等
 当社の貸借対照表、決算報告資料等によると、当社は、直近3期(令和2年3月期から令和4年3月期)及び令和4年8月末のいずれの時点においても、その総資産のうち大半が現金(例えば、令和4年8月末現在、総資産約71百万円のうち約65百万円(91.3%)が現金)で占められている状況にある。一方で、令和2年1月1日から令和4年12月31日までの間における当社の預金残高の状況は、そのほとんどの期間で数万円から数十万円程度で推移している。
 そのような中、当社の唯一の拠点である高松本社には上記金額に相当する現金は存在せず、検査の過程でもそのような大口の現金の存在は確認できなかった。
 井上代表によると、当社が保有する現金は井上代表の自宅等に保管しているとのことであるが、総資産の大半に当たる金銭をあえて現金で保管する理由や当社の事務所内ではなく井上代表個人の自宅等で保管する理由について、井上代表は、保管方法は経営者による経営判断で決めるものであるなどといった説明を行うのみで、何ら合理的な説明がなされていない。また、当社は、四国財務局による監督対応等のため保有現金の実在を示す必要が生じた都度、井上代表の知人等が経営する他社から一時的に井上代表個人名義の預金口座を介して当社名義の預金口座に入金を受け、銀行から預金残高証明書の発行を受けて四国財務局に提出するなどの対応をとった後、当該他社に返金を行っている状況が認められた。
 上記のとおり、検査において上記金額に相当する現金の存在は確認できていない上、総資産の大半に当たる金銭をあえて現金保有とする理由や保管場所をあえて井上代表個人の自宅等とする理由について何ら合理的な説明もなく、かえって、真にそのような額の現金を当社が保有しているのであれば行う必要のない資金移動が行われていることからすれば、当社が保有しているとする現金相当額(令和4年8月末現在で約65百万円)は、実際には存在していないものと認められる。
 そうすると、当社の純財産額については、少なくとも令和2年1月1日から検査基準日現在(令和4年9月2日)に至るまで、金融商品取引法第29条の4第1項第5号ロに基づく金融商品取引法施行令第15条の9第1項に定める金額(50百万円)を下回っているものと認められ、加えて、当社の自己資本規制比率についても、金融商品取引法第46条の6第2項において下回ることのないようにしなければならないとされる比率(120%)を下回り、更に100%を著しく下回る状況にあると認められる。
 当社による上記の状況は、金融商品取引法第29条の4第1項第5号ロに規定する「純財産額が、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める金額に満たない者」に該当し、同法第52条第1項第3号に該当するものと認められる。また、当社は、自己資本規制比率が120%を下回っていることから、金融商品取引法第46条の6第2項に違反するものと認められ、加えて、当社の自己資本規制比率は100%を著しく下回っていることから、同法第53条第2項に該当するものと認められる。
 
⑶ 第一種金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有していない状況及び第一種金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていない状況
 当社の業務運営は、当社の発行済株式の9割超を保有し、かつ、当社の代表取締役である井上代表が実質的に一人で行っているほか、会社全体の財務管理及び資金繰り等も一手に担っており、業務運営の適切性の確保等は同人に委ねられている状況にある。
 こうした状況において、当社は、第一種金融商品取引業を適切に行うに当たり当該業務に関する十分な知識及び経験を有する役員又は使用人を確保していなければならないところ、井上代表は、上記⑴及び⑵の法令違反行為を自ら主導して行っていたほか、今回検査において、当社の主要株主としての井上代表個人への報告徴取命令に対して虚偽の報告を行っているなど、同人の業務運営の適切性の確保等に対する意識及び法令等遵守意識は著しく欠如しているものと認められることから、当社は、第一種金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有していないものと認められる。
 また、当社において、井上代表以外の役職員により井上代表の当該法令違反行為等をけん制・抑止する態勢となっていないことから、当社は、第一種金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていない状況にあるものと認められる。
 当社における上記の状況は、金融商品取引法第29条の4第1項第1号ホに規定する「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者」及び同号ヘに規定する「金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者」に該当し、同法第52条第1項第1号に該当するものと認められる。
   
参考資料(PDF:436KB)

 


(参考条文)

○ 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)
 
  (登録の拒否)
第二十九条の四 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはこれに添付すべき書類若しくは電磁的記録のうちに虚偽の記載若しくは記録があり、若しくは重要な事実の記載若しくは記録が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない。
 一 次のいずれかに該当する者
 イ~ニ (略)
 ホ 金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者
 ヘ 金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者
 二~四 (略)
 五 第一種金融商品取引業又は投資運用業を行おうとする場合にあつては、次のいずれかに該当する者
 イ (略)
ロ 純財産額(内閣府令で定めるところにより、資産の合計金額から負債の合計金額を控除して算出した額をいう。)が、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める金額に満たない者
 ハ~ヘ (略)
 六・七 (略)
2~6 (略)
 
  (事業報告書の提出等)
第四十六条の三 金融商品取引業者は、事業年度ごとに、内閣府令で定めるところにより、事業報告書を作成し、毎事業年度経過後三月以内に、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
2・3 (略)
 
  (説明書類の縦覧)
第四十六条の四 金融商品取引業者は、事業年度ごとに、業務及び財産の状況に関する事項として内閣府令で定めるものを記載した説明書類を作成し、毎事業年度経過後政令で定める期間を経過した日から一年間、これを全ての営業所若しくは事務所に備え置いて公衆の縦覧に供し、又は内閣府令で定めるところにより、インターネットの利用その他の方法により公表しなければならない。
 
  (自己資本規制比率)
第四十六条の六 金融商品取引業者は、資本金、準備金その他の内閣府令で定めるものの額の合計額から固定資産その他の内閣府令で定めるものの額の合計額を控除した額の、保有する有価証券の価格の変動その他の理由により発生し得る危険に対応する額として内閣府令で定めるものの合計額に対する比率(以下「自己資本規制比率」という。)を算出し、毎月末及び内閣府令で定める場合に、内閣総理大臣に届け出なければならない。
2 金融商品取引業者は、自己資本規制比率が百二十パーセントを下回ることのないようにしなければならない。
3 (略)
 
  (金融商品取引業者に対する監督上の処分)
第五十二条 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消し、第三十条第一項の認可を取り消し、又は六月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
 一 第二十九条の四第一項第一号、第二号又は第三号に該当することとなつたとき。
 二 (略)
三 第一種金融商品取引業又は投資運用業を行う金融商品取引業者が、第二十九条の四第一項第五号イ又はロに該当することとなつたとき。
 四~十二 (略)
2~5 (略)
 
  (自己資本規制比率についての命令)
第五十三条 (略)
2 内閣総理大臣は、金融商品取引業者が第四十六条の六第二項の規定に違反している場合(自己資本規制比率が、百パーセントを下回るときに限る。)において、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、三月以内の期間を定めて業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
3 内閣総理大臣は、前項の規定により業務の全部又は一部の停止を命じた場合において、その日から三月を経過した日における当該金融商品取引業者の自己資本規制比率が引き続き百パーセントを下回り、かつ、当該金融商品取引業者の自己資本規制比率の状況が回復する見込みがないと認められるときは、当該金融商品取引業者の第二十九条の登録を取り消すことができる。
 
○ 金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号)(抄)
 
  (金融商品取引業者の最低資本金の額等)
第十五条の七 法第二十九条の四第一項第四号イ(法第三十一条第五項において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
 一~二の二 (略)
三 第一種金融商品取引業(第一種少額電子募集取扱業務(法第二十九条の四の二第十項に規定する第一種少額電子募集取扱業務をいう。以下同じ。)を除く。)を行おうとする場合(前三号に掲げる場合を除く。) 五千万円
 四~八 (略)
2 (略)
 
  (金融商品取引業者の最低純財産額)
第十五条の九 法第二十九条の四第一項第五号ロ(法第三十一条第五項において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める金額は、第十五条の七第一項各号(第五号及び第八号を除く。)に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。
2 (略)
 
 

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