令和7年5月30日
証券取引等監視委員会
大成建設株式会社従業員4名及び同社との契約締結者からの情報受領者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について
1.勧告の内容
証券取引等監視委員会は、大成建設株式会社従業員4名及び同社との契約締結者からの情報受領者による内部者取引について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。
2.法令違反の事実関係
(1)課徴金納付命令対象者(1)について
課徴金納付命令対象者(1)は、大成建設株式会社(以下「大成建設」という。)の従業員であったが、北海道札幌市内で大成建設が施工中の高層ビル(以下「本件ビル」という。)建築工事に関し、大成建設において、①発注者との間で定めた品質基準を満たさない鉄骨建方等の精度不良を生じさせた旨、②工事監理者に対して同精度不良に係る鉄骨精度計測値の虚偽報告を行っていた旨及び③上記①及び②の事実を受けて同精度不良の是正措置として建築途中の本件ビルの地上部分の全部を解体して再建築する計画を定めた旨の大成建設の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実を、その職務に関し知りながら、法定の除外事由がないのに、上記重要事実の公表がされた令和5年3月16日より前の同月2日、大成建設株式合計900株を、自己の計算において、売付価額合計401万6000円で売り付けたものである。
違反行為事実の概要については、
別図のとおり。

課徴金納付命令対象者(1)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第1項の規定に違反して、同項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。
(2)課徴金納付命令対象者(2)について
課徴金納付命令対象者(2)は、大成建設の従業員であったが、北海道札幌市内で大成建設が施工中の高層ビル建築工事に関し、大成建設において、①発注者との間で定めた品質基準を満たさない鉄骨建方等の精度不良を生じさせた旨、②工事監理者に対して同精度不良に係る鉄骨精度計測値の虚偽報告を行っていた旨及び③上記①及び②の事実を受けて同精度不良の是正措置として建築途中の本件ビルの地上部分の全部を解体して再建築する計画を定めた旨の大成建設の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実を、その職務に関し知りながら、法定の除外事由がないのに、上記重要事実の公表がされた令和5年3月16日より前の同月7日、大成建設株式合計100株を、自己の計算において、売付価額合計45万8000円で売り付けたものである。
違反行為事実の概要については、
別図のとおり。

課徴金納付命令対象者(2)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第1項の規定に違反して、同項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。
(3)課徴金納付命令対象者(3)について
課徴金納付命令対象者(3)は、大成建設の従業員であったが、北海道札幌市内で大成建設が施工中の高層ビル建築工事に関し、大成建設において、①発注者との間で定めた品質基準を満たさない鉄骨建方等の精度不良を生じさせた旨、②工事監理者に対して同精度不良に係る鉄骨精度計測値の虚偽報告を行っていた旨及び③上記①及び②の事実を受けて同精度不良の是正措置として建築途中の本件ビルの地上部分の全部を解体して再建築する計画を定めた旨の大成建設の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実を、その職務に関し知りながら、法定の除外事由がないのに、上記重要事実の公表がされた令和5年3月16日より前の同月6日から同月7日にかけて、大成建設株式合計200株を、自己の計算において、売付価額合計91万3500円で売り付けたものである。
違反行為事実の概要については、
別図のとおり。
課徴金納付命令対象者(3)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第1項の規定に違反して、同項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。
違反行為事実の概要については、

課徴金納付命令対象者(3)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第1項の規定に違反して、同項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。
(4)課徴金納付命令対象者(4)について
課徴金納付命令対象者(4)は、大成建設の従業員であったが、北海道札幌市内で大成建設が施工中の高層ビル建築工事に関し、大成建設において、①発注者との間で定めた品質基準を満たさない鉄骨建方等の精度不良を生じさせた旨、②工事監理者に対して同精度不良に係る鉄骨精度計測値の虚偽報告を行っていた旨及び③上記①及び②の事実を受けて同精度不良の是正措置として建築途中の本件ビルの地上部分の全部を解体して再建築する計画を定めた旨の大成建設の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実を、その職務に関し知りながら、法定の除外事由がないのに、上記重要事実の公表がされた令和5年3月16日午後3時頃より前の同日午後1時11分頃、大成建設株式合計900株を、自己の計算において、売付価額合計398万7000円で売り付けたものである。
違反行為事実の概要については、
別図のとおり。
課徴金納付命令対象者(4)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第1項の規定に違反して、同項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。
違反行為事実の概要については、

課徴金納付命令対象者(4)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第1項の規定に違反して、同項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。
(5)課徴金納付命令対象者(5)について
課徴金納付命令対象者(5)は、A社の従業員であったが、大成建設と本件ビルの建築工事請負契約を締結していたエヌ・ティ・ティ都市開発株式会社(以下「NTT都市開発」という。)の従業員であった甲が、同契約の履行に関して知り、その後、NTT都市開発の従業員であった乙らが、その職務に関して知り、NTT都市開発と本件ビルの一室に係る賃貸借予約契約を締結していたA社の従業員であった丙が職務上伝達を受けた、北海道札幌市内で大成建設が施工中の高層ビル建築工事に関し、大成建設において、①発注者との間で定めた品質基準を満たさない鉄骨建方等の精度不良を生じさせた旨、②工事監理者に対して同精度不良に係る鉄骨精度計測値の虚偽報告を行っていた旨及び③上記①及び②の事実を受けて同精度不良の是正措置として建築途中の本件ビルの地上部分の全部を解体して再建築する計画を定めた旨の大成建設の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす事実を、その職務に関し知りながら、法定の除外事由がないのに、上記重要事実の公表がされた令和5年3月16日より前の同月8日から同月14日にかけて、大成建設株式合計2200株を、自己の計算において、売付価額合計1008万3000円で売り付けたものである。
違反行為事実の概要については、
別図のとおり。
課徴金納付命令対象者(5)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第3項の規定に違反して、同条第1項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。
違反行為事実の概要については、

課徴金納付命令対象者(5)が行った上記の行為は、金融商品取引法第175条第1項に規定する「第166条第3項の規定に違反して、同条第1項に規定する売買等をした」行為に該当すると認められる。
3.課徴金の額の計算
上記の違反行為に対し、金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は、下記のとおりである。
課徴金納付命令対象者(1) 60万円
課徴金納付命令対象者(2) 7万円
課徴金納付命令対象者(3) 15万円
課徴金納付命令対象者(4) 57万円
課徴金納付命令対象者(5)173万円
課徴金納付命令対象者(1) 60万円
課徴金納付命令対象者(2) 7万円
課徴金納付命令対象者(3) 15万円
課徴金納付命令対象者(4) 57万円
課徴金納付命令対象者(5)173万円
計算方法の詳細については、
別紙のとおり。

4.その他
本件については、日本取引所自主規制法人より提供された情報等を参考として、実態解明を行ったものである。
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