令和7年6月20日
証券取引等監視委員会
金融庁設置法第21条の規定に基づく建議について
証券取引等監視委員会は、金融庁設置法第21条の規定に基づき、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、下記のとおり建議を行った。
記
市場監視機能強化に向けた建議について
(建議1)
内部者取引規制における関係者の範囲について
発行者との契約締結者などの公開買付者等関係者と同等の内部者とみなされるべき者から情報受領した者が内部者取引規制の対象外になる場合があるなど、内部者取引規制の趣旨に鑑みると不正と考えられる行為でありながら、現行制度では規制の対象とならなかった事例等を踏まえ、公開買付者等関係者の範囲等について、各関係者と同等の内部者とみなされるべき者が含まれるよう拡大する必要がある。
(建議2)
(建議2)
課徴金の適用範囲及び算定基準について
他人名義口座の提供を受けるなどして不公正取引を行う悪質な事案が多く発生しており、なかには提供先の不公正取引を認識した上で口座提供をしている課徴金対象とならない協力者も存在する。また、継続的に株式の買い集めを行う投資者による大量保有報告書の不提出など、想定される利得額と比較して現行の課徴金額の水準が抑止効果としては不十分とみられるものがある。さらに、新しい形態として高速取引行為による不公正取引事案が認められている。こうした状況に鑑みれば、実効的な抑止力を発揮するための課徴金水準の引上げ及び対象の拡大、新しい取引形態に対応した算定方法の見直しなどの適切な措置を講ずる必要がある。
(建議3)
⑴ 課徴金の減算制度の見直し
⑵ 検査等対象者の出頭命令の範囲拡大及び強化された多国間情報交換枠組みの署名
⑶ 無登録業者に対する犯則調査権限の創設
・ 不正と考えられる行為について、現行制度では規制の対象とならず、法令違反行為として捕捉できない事例
・ 課徴金の額が低く(あるいは直接の対象にならず)、違反行為に対する抑止効果が不十分な事例
・ 効果的・効率的な検査・調査に困難が生じている事例
が認められており、これらに適切に対応できる実効性のある措置等を整備していく必要がある。
(建議3)
効果的・効率的な検査・調査の実施のための措置について
⑴ 課徴金の減算制度の見直し
課徴金水準の引上げ等が図られることと併せて、検査・調査においても、より一層、実効性・効率性を高めていくことが重要となることを踏まえ、対象者の自発的な協力を促すよう減算制度の拡大などの適切な措置を講ずる必要がある。
⑵ 検査等対象者の出頭命令の範囲拡大及び強化された多国間情報交換枠組みの署名
不公正取引事案の国際化や当局間の国際協力に加え、国内検査対象の多様化も進展していることなどを踏まえ、国内事業者等を対象とする検査及び外国当局に対する調査協力に関して、出頭命令の権限を追加するなどとともに、証券監督者国際機構(IOSCO)の強化された多国間情報交換枠組み(EMMoU)の早期署名に向けた取組みを行うといった適切な措置を講ずる必要がある。
⑶ 無登録業者に対する犯則調査権限の創設
近年顕在化している金融商品取引業の無登録業と偽計、相場操縦等の不公正取引との複合型と疑われる事案等に適切に対応するため、無登録業を行う者に対する犯則調査権限を創設するなどの適切な措置を講ずる必要がある。
今回の建議についての補足説明
資産運用立国に向けた官民一体の取組みが進展し、誰もが投資者となり得る中で、市場監視機能を一層強化し、従前の投資者も新たな投資者も共に安心して投資ができる公正・透明な市場を確立していくことが重要となっている。
金融商品取引の複雑化・高度化・国際化の進展などがみられるなか、近年における証券取引等監視委員会の検査・調査の結果等を踏まえると、
・ 課徴金の額が低く(あるいは直接の対象にならず)、違反行為に対する抑止効果が不十分な事例
・ 効果的・効率的な検査・調査に困難が生じている事例
が認められており、これらに適切に対応できる実効性のある措置等を整備していく必要がある。