平成9年度版年次公表
証券取引等監視委員会の事務処理状況の公表について 平成10年10月1日 証券取引等監視委員会 1.事務処理状況の公表 証券取引等監視委員会の活動状況については、金融監督庁設置法第21条の規定に基づき、公表することとされており、本年は、平成9年7月1日から10年6月30日までの期間における事務の処理状況を10月1日に「証券取引等監視委員会の活動状況」として公表した。 本公表は、平成4年7月に委員会が発足後、6回目となる。 なお、本年6月22日に金融監督庁が発足したが、証券取引等監視委員会は、従来の体制のまま同庁に移管された。 2.全般的な評価 一般的には、ルール遵守の重要性の認識が深まりつつあると思われるものの、一方で、証券会社及びその役職員による損失補てん行為が、依然として繰り返されているなど、証券会社等及びその役職員の法令遵守意識が十分とは言いがたい。今後、金融システム改革の本格化に伴い、市場監視機能は一層重要になるものと予想され、委員会の果たす役割もますます重要となることから、与えられた権限を最大限に活用し、その責務を果たしていきたい。 3.概要 (1) 犯則事件の調査・告発 犯則事件の調査については、大手証券会社による損失補てんの事実につき5件、山一証券の有価証券報告書の虚偽記載の事実につき1件、トーソク株式にかかる内部者取引の事実につき1件、計7件を証取法違反に該当するとして告発を行った(年間7件は過去最高)。その概要は次のとおりである。 ○ 大手証券会社による損失補てん事件 いわゆる総会屋等との間で取引一任勘定取引の契約を締結した上で、数年にわたり取引の受託、執行を行い、これらの中で生じた損失を補てん、或いは利益を追加するため、多額の財産上の利益を提供していることが判明した。 ○ 山一証券に係るいわゆる「とばし」事件 山一証券は、国内顧客に対する損失補てん等により発生した損失について、含み損のある公社債を自社の海外現地法人に疎開させる方法により、当期未処理損失を過少又は当期未処分利益を過大に記載した有価証券報告書を提出した。 ○ その他 トーソク(株)株式に係るインサイダー取引 (2) 大蔵大臣に対する勧告 委員会は、上記の結果に基づき、大手証券会社のいわゆる総会屋等に対する損失補てん及び山一証券の有価証券報告書の虚偽記載に対して、行政処分及びその他の適切な措置を講ずるよう大蔵大臣に勧告した。 (3) 犯則事件調査等の結果に基づく建議 大手証券会社による損失補てん事件について、犯則事件の調査等を行った結果、法令遵守のための内部管理に関して問題点が認められたので、平成9年12月24日、次の点について必要かつ適切な措置を講ずるよう大蔵大臣に対して建議を行った。 ○ 委託注文と自己の計算による取引の区分の制度化等 ○ 法令遵守のための内部管理体制の充実・強化 (4) 検査 検査については、本事務年度中に国内証券会社72社、外国証券会社7社、金融先物取引業者1機関、自主規制機関1機関に対して検査に着手した。 本事務年度において検査が終了したものは、前期繰越分を含め、国内証券会社87社、外国証券会社9社10支店、証券業務の認可を受けた金融機関1機関となっている(合計97社)。このうち74社に問題点が認められ(問題点の割合76.3%)、うち73社は取引ルール違反の問題が認められた。 (5) 大蔵大臣に対する勧告及び措置報告 大蔵大臣に対して、犯則事件の調査及び検査結果に基づいて重大な法令違反として40件の勧告を行った(年間40件は過去最高)。うち1件は検査及び犯則事件の調査の結果に基づくもので、残り39件のうち検査結果に基づくものが35件、犯則事件の調査結果に基づくものが4件である。事案の内容別内訳は次のとおり。
|
|
会社 |
個人 |
○ |
損失補てん |
6社 |
37人 |
○ |
取引一任勘定取引の契約を締結する行為 |
6社 |
27人 |
○ |
投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買取引 |
- |
11人 |
○ |
向い呑み及び呑行為 |
5社 |
3人 |
○ |
取引報告書の不交付又は虚偽の取引報告書の交付 |
1社 |
3人 |
○ |
作為的相場を形成させるべき売買又はそれを知りながら受託 |
1社 |
2人 |
○ |
有価証券報告書の虚偽記載 |
1社 |
3人 |
○ |
損失の負担を約した勧誘 |
2社 |
5人 |
○ |
特別の利益を提供することを約した勧誘 |
1社 |
4人 |
○ |
その他 |
2社 |
2人 |
(6) 取引審査 本事務年度中に行った審査件数は、価格形成に関するもの 124件、内部者取引に関するもの59件、その他風説の流布等の観点からのもの20件、計 203件となっている。 ○ 価格形成に関する審査 株価が急騰・急落するなど不自然な動きをしたもの、株価が一定水準に固定されていると認められた銘柄を中心に審査。 ○ 内部者取引に関する審査 会社更生手続き開始の申立て、業績予想の下方修正、上場等の廃止、手形の不渡りなど投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすと思われる情報を公開することにより、株価が大きく変動したものを中心に審査。 ○ その他風説の流布等の審査 各種情報により株価が大きく変動したと思われる銘柄を中心に審査。 「証券取引等監視委員会の活動状況」の閲覧等 ・閲覧場所 監視委員会事務局、大蔵省各財務(支)局、財務事務所等 ・官報掲載 平成10年10月8日(号外)掲載
|