アクセスFSA 第94号(2011年4月)

アクセスFSA 第94号(2011年4月)

写真1 写真2
第25回金融審議会総会・第13回金融分科で、
挨拶をする自見大臣(左)と東副大臣(右)
(3月7日)

目次


「東日本大震災関連情報」について

平成23年(2011年)東日本大震災によりお亡くなりになられた方々に対し改めて衷心よりお悔やみを申し上げますとともに、被害を受けられた被災者の皆様に対して心よりのお見舞いを申し上げます。

金融庁では、以下を窓口として「東日本大震災関連情報」を提供しております。

1.東日本大震災関連情報 金融面の対策に全力を挙げています!

金融庁では、ウェブサイト上に「東日本大震災関連情報」ページを開設し、以下の項目別に情報提供をしております。

  • (1)預金者の皆さまへ

    • ○預金通帳や印鑑を紛失した場合でも、本人であることが確認できる書類の提示により、金融機関は預金の払戻しに応じています。

    • ○本人であることが確認できる書類を紛失してしまった場合についても、住所・氏名等をお伺いし、登録内容との一致を確認したうえで払戻しを行うなど、柔軟な対応に努めています。

    • ○預金者本人の死亡時や行方不明時に、親・子ども・配偶者等の方から預金の払出しの求めがあった場合には、必要な要件を満たすことを確認したうえで一定の金額の払出しに応じるなど、柔軟な対応に努めています。

    • ○今般の震災で亡くなられた方や行方不明の方の預金について、ご遺族やご親族がどの銀行に口座があったか分からない場合には、全国銀行協会にご照会下さい。

    • ○他の地域に避難されている場合、お取引金融機関以外の店舗でも預金の払戻しを取り扱っている金融機関があります。

  • (2)お金を借りておられる皆さまへ

    • ○金融機関は、災害の影響を直接、間接に受けておられる方から、借入金の返済猶予等や、つなぎ資金の供与等の申込みがあった場合には、できる限りこれに応じるよう努めています。

    • ○災害のために支払いができない手形・小切手の不渡処分(銀行等の取引停止処分等)は猶予されます。

    • ○融資の申込みに対しても、被災された方の実情を踏まえ、融資審査に際しての提出書類等を必要最小限のものとするなど、弾力的・迅速な対応に努めています。

  • (3)保険に加入されている皆さまへ

    • ○生命保険・損害保険各社は、保険金の簡易・迅速な支払いに努めています。

    • ○保険証券や本人であることが確認できる書類を紛失してしまった場合でも、それぞれの状況に応じた柔軟な対応を行っています。どの保険会社と契約していたか分からない場合については、保険協会や保険会社にご照会ください。

    • ○被災された方については、申し出があれば、保険料の支払い等を猶予しています。

  • (4)上場企業等の皆さまへ

    • ○震災に伴う有価証券報告書等の提出期限については、特例措置により、本年6月末までに提出すれば済むこととされています。

    • ○さらに、3月決算企業などについては、本年9月末までに提出すれば済む特例を設ける予定です。

  • (5)金融機関の皆さまへ

    • ○震災による直接・間接の影響により、債務者の実態把握が困難な場合等を踏まえ、資産査定に係る特例措置及び運用の明確化を行っています。

    • ○また、被災された金融機関が期限どおりに必要な報告書類を当局に提出できない場合、弾力的に対応することとしています。

    • ○また、貸金業者から借入れを行おうとする被災者の方が、法令に定める手続き等が問題となって、資金を借りられないという不都合が生じないよう、貸金業法施行規則の一部の改正を行いました。

  • (6)金融機関等の相談窓口一覧

  • (7)プレスリリース一覧

  • (8)関連リンク

その他、当ページでは、金融機関等の対応状況として、被災地域の金融機関の状況、金融庁及び財務局の震災対応に関する諸施策並びに金融業界の対応についての情報をご覧になることができます。当該情報は、日々更新しています。

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトのトップページから「被災された皆さまへ金融庁からの重要な情報です」にアクセスして下さい。

2.東日本大震災関連情報 金融庁携帯サイトについて

金融庁では、大震災関連情報を掲載した金融庁携帯サイトを開設しております。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトのトップページから「金融庁携帯用サイト」及びQRコード(以下) からアクセスしてください。

3.金融庁(東日本大震災関連情報)ツイッターについて

金融庁では、インターネット上のミニブログサービス「Twitter」で、東日本大震災関連の金融に関する情報をできるだけ速やかに、できるだけ分かりやすく皆様に提供しております。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトのトップページから「金融庁(東日本大震災関連情報)のTwitter」新しいウィンドウで開きますにアクセスしてください。


【特集】

改正「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」の成立・施行等について

金融庁は、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(以下「改正中小企業金融円滑化法」)の期限を1年間延長するための改正法案を、本年1月25日、第177回国会(常会)に提出し、同法は、3月31日に国会で可決・成立、同日に公布・施行されました。

  • (注) 中小企業金融円滑化法は、金融機関に対し、中小企業者や住宅ローンの借り手の申込みがあった場合に、できる限り貸付条件の変更等を行う努力義務を課すこと等を内容とする。制定当時(21年12月)、同法は、23年3月末をもって失効するものとされていた。

これは、昨年12月14日に、決定・公表した「中小企業金融円滑化法の期限の延長等」を踏まえたものであり、その中で、中小企業金融円滑化法については、同法施行後の経済金融情勢や金融機関の金融円滑化に向けた取組状況等に鑑み、

1.中小企業金融円滑化法の期限を1年間延長する。
2.金融機関のコンサルティング機能の発揮に注力するよう促すための、監督指針の改定等を行う。
3.開示・報告資料については、大幅に簡素化する。
こととしておりました。

その後、中小企業金融円滑化法は、東日本大震災が発生したことから、果たす役割が大きくなっております。同震災の影響を直接・間接に受けている方々も含め、全国の中小企業や住宅ローンの借り手の方々におかれては、同法を積極的に活用していただき、経営改善・事業再生等や生活の安定につなげていただきたいと考えております。

金融庁としても、東日本大震災の影響にも配慮しつつ、検査・監督等を通じ、中小企業金融円滑化法の適切な運用に努めることで、中小企業の資金繰りに万全を期すとともに、同法の期限到来後も、金融機関による適切な金融仲介機能が発揮されるような環境づくりを目指します。

なお、金融庁は、中小企業金融円滑化法の期限の延長等について、幅広く周知するため、パンフレットを作成していますので、御参照下さい(併せて、同パンフレットには、震災発生後、金融庁・財務局が、被災した中小企業等のため講じた措置についても、記載しています。)。

【資料】

パンフレット

また、改正中小企業金融円滑化法の公布・施行に併せて、開示・報告様式を簡素化するための内閣府令が3月31日に公布・施行されています。

さらに、金融機関のコンサルティング機能の発揮を促すための改定監督指針(案)が3月31日に公表され、パブリックコメント手続きを経た上で、4月4日から適用されています。

詳細は、次のトピックス「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令等、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する監督指針(コンサルティング機能の発揮にあたり金融機関が果たすべき具体的な役割)の公表について」をご覧ください。

※詳しくは、金融庁のウェブサイトの「報道発表資料」から「改正中小企業金融円滑化法の成立・施行等について」(23年4月1日)、及び「談話等」から「金融担当大臣談話」(23年4月1日)にアクセスして下さい。


中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令等、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する監督指針(コンサルティング機能の発揮にあたり金融機関が果たすべき具体的な役割)の公表について

金融庁は、平成23年3月31日に「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」の期限が1年間延長されたことをふまえ、同日、開示・報告資料の簡素化を図るための「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下、改正内閣府令)等(注)を公布・施行し、また、同法に基づく金融監督に関する指針(コンサルティング機能の発揮にあたり金融機関が果たすべき具体的な役割)(以下、「円滑化指針」という)を策定しました。

改正内閣府令等と円滑化指針の概要については、以下のとおりです。

【改正内閣府令等及び円滑化指針の主な内容】

  • 1.改正内閣府令等について

    監督上の必要性を考慮しつつも、金融機関の事務負担をできる限り軽減する観点から、以下の3点をはじめとする各開示・報告項目の削除・簡素化等を行いました。

    • (1)中小企業者から貸付条件の変更等の申込みを受けた貸付債権について、債務者が中小企業者であって、当該中小企業者に対し他の金融機関も貸付債権を有する場合における、貸付条件の変更等の実施状況に係る開示・報告を削除

    • (2)中小企業者から貸付条件の変更等の申込みを受けた貸付債権について、「信用保証協会が条件変更対応保証を応諾する旨の判断を示した」場合の貸付債権の貸付条件の変更等の対応状況に係る開示・報告を削除

    • (3)債務者が貸付条件の変更等の申込みを取下げた事案、及び金融機関が貸付条件の変更等の申込みを謝絶した場合に、案件毎にその理由を200字程度で詳細に報告するよう金融機関から求めていたが、これを止め、選択方式の報告へと簡素化

  • 2.円滑化指針について

    • (1)コンサルティング機能の発揮の意義

      円滑化指針の策定にあたっての基本的な考え方、当該指針の位置付け等を整理

    • (2)コンサルティング機能の発揮に際し金融機関が果たすべき役割

      債務者の経営課題の把握・分析からソリューションの提案・実行後のモニタリングまで、金融機関が果たすべき具体的な役割を整理

    • (3)主な着眼点

      金融機関におけるコンサルティング機能の発揮状況や、コンサルティング機能を発揮するための態勢整備の状況等を検証するための着眼点を整理

    • (4)監督手法・対応

      金融機関におけるコンサルティング機能を発揮するための対応状況等について、各種ヒアリング等を通じて確認すること、必要に応じた行政対応を行うこと等を整理

また、改正内閣府令等は、銀行においては本年6月末時点の開示・報告から、銀行以外の金融機関においては本年9月末時点の開示・報告から、それぞれ適用されます。また、円滑化指針は、平成23年4月4日より適用されております。

  • (注)改正内閣府令と同時に、「労働金庫および労働金庫連合会に係る中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する命令の一部を改正する命令」および「農水産業協同組合に係る中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する命令の一部を改正する命令」も公布・施行されています。


【トピックス】

「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」、「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正について

金融庁では、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」・「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正について、平成23年1月26日から平成23年2月25日にかけて広く意見の募集を行い、平成23年3月18日にパブリックコメントの結果を公表し、監督指針の一部改正を行いました。

改正の概要は以下のとおりです。

  • 1.「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」改正の概要

    • (1)平成22年金融商品取引法改正により、金融商品取引業者グループに対する連結規制・監督の枠組みが導入されたことを踏まえた改正

      金融商品取引業者グループ全体の健全性の状況等を踏まえた適切な行政対応が実施できるよう、以下の留意事項等を追加しました。

      • a.「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準を定める件」を適用して連結自己資本規制比率を算出する場合の留意点

      • b.連結自己資本規制比率の状況に応じて行政処分を行う場合の留意点

      • c.外国グループ日本拠点に対するグループ各社からの流動性の供給状況の把握等に関する留意点

    • (2)「デリバティブ取引に対する不招請勧誘規制等のあり方」(平成22年9月13日金融庁公表)を踏まえた改正

      デリバティブ取引に係る販売勧誘ルールを強化するため、自主規制の策定が求められた以下の項目について、各業者において、自主規制を踏まえた適切な対応が行われているかを監督上の着眼点として追加しました。

      • a.デリバティブ取引を行う際の注意喚起文書の配布

      • b.店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債・投資信託について、投資者へ販売する商品としての適合性(合理的根拠適合性)の事前検証及び勧誘開始基準の策定

    • (3)その他

      • a.外国投資信託を国内から直接設定・指図する運用業に係る留意点

      • b.勤労者財産形成促進法に基づく累積投資に係る払込金の取扱い

      • c.警告を行った類似商号使用者に対する対応 等

  • 2.「主要行等向けの総合的な監督指針」、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」改正の概要仕組預金に関して、1(2)に準じた改正を行いました。

  • 3.実施期日等

    改正された監督指針のうち、金融商業者等向けの総合的な監督指針における1(3)(c)の改正については平成23年3月18日から、その他については平成23年4月1日から適用しています。


中小企業向け為替デリバティブ取引状況(米ドル/円)に関する調査の結果について(速報値)

金融庁では、平成16年度以降に販売された中小企業向け為替デリバティブ取引契約(米ドル/円)に関して、銀行(121行)に対し、平成22年9月30日時点における取引契約の状況の聞取り調査を行い、その結果(速報値)を、3月11日(金)に公表しました。

主な聞き取り調査結果の概要については、以下のとおりです。

1.16年度以降の全販売契約数、及び22年9月末現在の残存契約数

  • 販売契約数をみると、16~19年度までは毎年度約12,000件前後で推移し、合計では約6万強の契約が販売されていました。いわゆるリーマンショックが発生した20年度以降、販売契約数は大幅に減少しています。その結果、16年度以降の販売契約総数のうち、16~19年度に販売されたものが全体の約8割に上っています。
  • 年度別の残存契約数(22年9月30日現在)をみると、16年度以降の残存契約合計約4万契約のうち、16~19年度に販売されたものが約8割となっています。ただし、16~17年度に販売された契約は概ね半減している一方で、18~19年度に販売された契約は約7~8割が残存しているため、残存契約ベースでみると、18~19年度に販売されたものの比率が高くなっています(約5割)。
  • 22年9月末現在で契約を保有する企業数は、約1万9千社です。

2.22年1月以降に銀行へ寄せられた苦情件数(契約年度別)

  • リーマンショックが平成20年9月に発生しているところ、16~19年度までに販売された契約の苦情件数が全体の約9割を占めています。
  • このうち、契約残存数が多い18~19年度の販売分が全体の6割以上を占めています。
  • 銀行へ苦情を寄せた企業数は約300社です。

3.損益状況

  • 主要行等が中小企業に対して販売した契約のうち、集計可能なもの(主要行等の残存契約数の9割弱相当)を合算すれば以下のとおりです。
  • (注)輸入業者(代金を外貨で支払う者)の場合の典型的な為替デリバティブ契約では、円安になれば利益が、円高になれば損失が発生することとなります。このため、契約全体の損益状況をみるためには、現下の損益状況だけではなく、過去における損益を通算する必要があると考えられます。

1 通算利益の合計   約3,700億円
2 通算損失の合計   約▲5,100億円
差引(1-2)   約▲1,400億円
    1契約当たり 約▲600万円(残存契約数 約25千件)
  • (注)「中小企業」とは、中小企業基本法第2条に定めるもので、例えば、資本金が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社であって、製造業に属する事業を主たる事業として営むものなどが該当します。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、「中小企業向け為替デリバティブ取引状況(米ドル/円)に関する調査の結果について(速報値)」(平成23年3月11日)にアクセスしてください。


CPSS・IOSCOによる市中協議報告書「金融市場インフラのための原則」の公表について

【原則策定の経緯・概要】

支払決済システム委員会(CPSS)と証券監督者国際機構(IOSCO)専門委員会は、先般の世界的な金融危機の教訓や、CPSS及びCPSS・IOSCOが策定した既存の資金決済システム、証券決済システム、清算機関に関する国際基準(「システミックな影響の大きい資金決済システムに関するコア・プリンシプル」(CPSS 2001年公表)、「証券決済システムのための勧告」(CPSS・IOSCO 2001年公表)、「清算機関のための勧告」(CPSS・IOSCO 2004年公表))のこれまでの運用経験を踏まえ、決済システムの頑健性向上の観点から、昨年2月より、これら国際基準の包括的な見直しを実施してきました(我が国からは、当庁及び日本銀行がメンバーとして作業に参加)。

こうした作業を経て、世界の金融市場を支えるために不可欠なインフラを更に頑健なものとし、それによって金融危機への耐性を高めることを目的として上記3つの国際基準を1つにまとめた「金融市場インフラのための原則」(以下「原則」)が策定され、その市中協議が2011年3月10日から開始されました。

本原則(以下の図のとおり、9つの観点から24の原則で構成)は、システミックな影響の大きい全ての資金決済システム、証券集中振替機関・証券決済システム・清算機関および取引情報蓄積機関(以下、「金融市場インフラ」と総称)に適用されることが意図されています。また、参加者の破綻に備えるためのリスク管理策を中心に、金融市場インフラの充足すべき水準が多面的に引き上げられるとともに、参加者の破綻以外のビジネスリスクへの備えや、参加形態の階層化への対応に関する基準が新設されるなど、決済システムの頑健性向上の観点から基準が強化されています。

【今後の予定】

市中協議期間は、公表から約4 か月となっており、2011 年7 月29 日がコメントの提出期限となっています。CPSS とIOSCO では、コメントの内容を確認した後、必要な修正を行い、2012 年初頭までに最終報告書を公表する予定となっています。また、CPSSとIOSCOは、各国の関係当局に対し、2012 年末までに、原則を各国それぞれの制度に反映させ、可及的速やかに運用するよう努めることを提案しています。金融市場インフラは、原則を遵守するために適切で迅速な行動を取ることが期待されています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「CPSS・IOSCOによる市中協議報告書「金融市場インフラのための原則」の公表について」(平成23年3月10日)にアクセスして下さい。

「金融市場インフラのための原則」の概要

内部統制基準・実施基準の改訂、内閣統制府令・同ガイドラインの改正等について

1.はじめに

平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用されている内部統制報告制度については、制度導入後2年が経過し、企業会計審議会(会長 安藤英義 専修大学教授)が策定した内部統制の基準・実施基準の更なる簡素化・明確化等のための改訂が行われるなど、内部統制報告制度の運用の見直しが図られました。

本制度については、当制度適用直前の平成20年3月に公表した内部統制報告制度の円滑な実施に向けた対応において、制度導入後、適時にレビューを行い、その結果を踏まえて、必要に応じ、内部統制基準・実施基準の見直しや更なる明確化等を検討することとされていました。さらに、平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」においても、中堅・中小上場企業に係る内部統制報告制度等の見直しが、具体的な実施事項として記載されました。

企業会計審議会では、平成22年5月から、内部統制部会において検討を開始し、実際に制度を実施した上場企業等から、その経験を踏まえた内部統制基準・実施基準等の更なる簡素化・明確化等を求める要望・意見等を聴取・分析するとともに、様々な工夫を行うことにより、内部統制の有効性を保ちつつも、効率的に内部統制の評価等を行っている事例等を検証しました。同審議会は、平成22年12月に内部統制基準・実施基準の改訂案を公表し、広く意見を求め、寄せられた意見等も踏まえ、平成23年3月30日に意見書をとりまとめました。併せて、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」(以下「内部統制府令」といいます。)の一部を改正する内閣府令が公布等され、平成23年3月31日には、金融庁が改訂「内部統制報告制度に関するQ&A」及び「内部統制報告制度に関する事例集」を公表しました。

2.内部統制基準・実施基準の改訂の概要

今般の内部統制報告制度の見直しの主な内容は、(1)企業の創意工夫を活かした監査人の対応の確保、(2)内部統制報告制度の効率的な運用手法を確立するための見直し、(3)「重要な欠陥」の用語の見直し、(4)中堅・中小上場企業向けの効率的な内部統制報告実務の「事例集」の作成の4項目です。(1)~(3)は、改訂内部統制基準・実施基準に関わるものであり、主な内容は以下のとおりです。

  • (1)企業の創意工夫を活かした監査人の対応の確保

    • a.経営者が創意工夫した内部統制の評価方法・手続等について、監査人の理解・尊重

      内部統制報告制度においては、内部統制をどのように整備し、運用するかは、個々の企業等が 置かれた環境や事業の特性、規模等によって異なることから、経営者には、それぞれの企業の状況等に応じて、内部統制の機能と役割が効果的に達成されるよう、自ら適切に創意工夫を行っていくことが期待されています。

      しかしながら、実態としては、監査人に企業独自の内部統制の手法を尊重してもらえない、と いった意見が企業側から寄せられたところです。こうしたことから、監査人は、経営者の内部統 制の評価の方法等を適切に理解・尊重した上で内部統制監査を実施する必要があることを明記しました。

    • b.中堅・中小上場企業に対する監査人の適切な「指導的機能」の発揮

      事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造を有している組織等の場合には、当該組織等の内部統制の構築や評価における経営資源配分上の制約から、監査人に対して効率的な内部統制対応に係る相談等を行うことがあります。このような相談等に対しては、特に効果的かつ効率的な内部統制の構築や評価を行うとの観点から、適切な指摘を行うなどいわゆる指導的機能の適切な発揮に留意することとしました。

  • (2)部統制の効率的な運用手法を確立するための見直し

    財務諸表作成者、監査人その他の関係者にとって過度のコスト負担をかけることなく、内部統制を整備することを目指してきており、効果的かつ効率的な運用手法を確立するため、以下の見直しを行いました。

    • a.企業において可能となる簡素化・明確化

      • イ.全社的な内部統制の評価範囲の明確化

      • ロ.全社的な内部統制の評価方法の簡素化

      • ハ.業務プロセスに係る内部統制の整備状況及び運用状況の評価範囲の更なる絞り込み

      • 二.業務プロセスに係る内部統制の評価手続の簡素化・明確化

      • ホ.サンプリングの合理化・簡素化

      • へ.持分法適用となる関連会社に係る評価・監査方法の明確化

      • ト.ITに係る全般統制及び業務処理統制の評価手続の簡素化・明確化

    • b.「重要な欠陥」(改訂後は「開示すべき重要な不備」。以下同じ)の判断基準等の明確化

      • イ.「重要な欠陥」の判断基準の明確化

      • ロ.M&A等により、新たにグループ会社に加わった会社等に対する内部統制の評価・監査の方法等の明確化

    • c.中堅・中小上場企業に対する簡素化・明確化

      • イ.業務プロセスの評価手続の合理化

      • ロ.代替手続の容認

      • ハ.評価手続等に係る記録及び保存の簡素化・明確化

  • (3)「重要な欠陥」の用語の見直し

    「重要な欠陥」とは、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い内部統制の不備をいうとされています。この「重要な欠陥」の用語については、制度上、基準上の用語として既に定着しているとの指摘もある一方で、企業自体に「欠陥」があるとの誤解を招くおそれがあるとの指摘があり、「開示すべき重要な不備」と見直すこととしました。

 

3.内部統制府令・同ガイドラインの改正

内部統制府令等においては、今般の内部統制基準・実施基準の改訂内容と合わせた改正が行われました。また、内部統制府令ガイドラインにおいては、訂正内部統制報告書には内部統制監査は求められていないこと、内部統制報告書の「代表者の役職氏名」及び「最高財務責任者の氏名」については、内部統制報告書提出日現在のものを記載することを明確化しました。

4.内部統制報告制度に関するQ&Aの改訂、内部統制報告制度に関する事例集の作成

  • (1)内部統制報告制度に関するQ&Aの改訂

    内部統制報告制度に関するQ&Aについては、これまで累次にわたり、Q&Aの追加等を行ってきましたが、今般の内部統制基準・実施基準の改訂に併せ、一部のQ&Aの改訂・追加を行いました。

  • (2)効率的な内部統制報告実務に向けての「事例集」の作成

    内部統制報告制度において、内部統制の構築・評価・監査にあたっては、企業の状況等に応じた工夫を行い、内部統制の有効性は保ちつつも、当該企業の実態にあった、効率的な内部統制が整備・運用されることを目指しています。

    ただし、事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造を有している組織等の場合には、当該組織等の内部統制の構築や評価における経営資源配分上の制約から、必ずしも効率的な内部統制報告実務を行えない場合が想定されます。したがって、関係者において、制度導入後2年間にわたり、基準・実施基準に基づいて内部統制報告制度が実施されてきた中で、事業規模が小規模で、比較的簡素な構造を有している組織等が、資源の制約等がある中で、様々な工夫を行ったことにより、内部統制の有効性を保ちつつも、効率的に内部統制の評価等を行っている事例を集めた事例集を金融庁において作成し、実務の参考に供することとしました。

5.適用時期

改訂基準及び改訂実施基準並びに改正内部統制府令及び同ガイドラインは、平成23年4月1日以後開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用することになっています。

※ 詳しくは、金融庁のウェブサイトの「報道発表資料」から


平成23年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画について

証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」)は、証券検査を計画的に管理・実施するため、毎年度、証券検査基本方針(以下「基本方針」)及び証券検査基本計画(以下「基本計画」)を定めています。平成23年度は、4月8日に基本方針及び基本計画を策定・公表しました。

本年度の基本方針の主な内容は、以下のとおりです。

近年、証券検査は、累次の制度改正に伴う対象業者の拡大・増加、金融商品・取引のイノベーション、クロスボーダー取引や市場参加者の国際的活動の日常化、世界的な金融危機の経験、ITシステムの金融商品取引への浸透、無登録業者等による被害の社会問題化、東日本大震災による影響といった大きな環境変化に直面しています。

こうした環境変化に対応し、効率的かつ効果的な検査を実施する観点から、以下の取組みを実施することとしています。

  • 1.リスクに基づいた検査

  • 2.実効性のある検査の実施(予告検査の実施、内部管理態勢・リスク管理態勢の適切性の検証、双方向の対話の充実)

  • 3.関係部局等(監督・検査・開示業務担当部局、自主規制機関、外国当局、捜査当局等)との連携強化

  • 4.検査マニュアルの見直し

  • また、重点検証分野として、以下の項目を挙げています。

  • 1.ゲートキーパーとしての機能発揮に係る検証(市場仲介機能(顧客管理、売買管理、引受審査等)、法人関係情報の管理、公正な価格形成を阻害するおそれのある行為)

  • 2.内部管理態勢等に係る検証(大規模かつ複雑な業務をグループ一体として行う証券会社グループの内部管理態勢・リスク管理態勢、システムリスク管理態勢)

  • 3.投資者保護等の観点からの検証(投資勧誘の状況(投資信託や店頭デリバティブ取引等に係るリスク等の説明状況等)、投資運用業者等の業務の適切性、ファンド業者の法令遵守状況、投資助言・代理業者の法令遵守状況、無登録業者等に対する対応(裁判所への緊急差止命令の申立て及びそのための調査))

  • 4.その他(自主規制機関の機能発揮、信用格付業者の業務管理態勢、災害の発生等に乗じた不適切な取引や違法行為への対応)

  • 本年度の基本計画の主な内容は、以下のとおりです。

第一種金融商品取引業者(登録金融機関を含む。)、
投資運用業者及び信用格付業者
随時実施(注)
第二種金融商品取引業者、投資助言・代理業者、
適格機関投資家等特例業務届出者、金融商品仲介業者等
随時実施
自主規制機関 必要に応じて実施
無登録業者等 随時実施

(注)例年は検査計画数を示していますが、今年度については、東日本大震災等の影響により、現時点では、検査計画数を示すことは困難です。

証券監視委としては、本基本方針及び基本計画に則して証券検査を実施することにより、引き続き、市場の公正性・透明性の確保及び投資者の保護に努めます。

※ 詳しくは、証券監視委ウェブサイトから「平成23年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画について」(平成23年4月8日)」にアクセスしてください。


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